宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第三話 『ビッグY』任務部隊

 

【第3話】

 

 

安全保障体制の変動に伴う地球連邦防衛宇宙海軍艦隊の再編・改組は、

ガトランティス戦争の終結から数か月後、西暦2203年10月から開始された。

 

白色彗星迎撃作戦時、地球防衛軍は有人・無人混成の巨大な戦闘艦隊を有し、

同作戦の戦闘終了後においても艦艇の損耗は軽微であった。

 

体力的限界で勇退した芹沢から防衛軍を託されたタナカ前防衛軍統括司令長官は

国防局の新長官・藤堂平九郎や宇宙海軍艦政本部長・谷鋼三中将らと協力し、

これまでの仮想敵ガトランティスの消滅によって生じた、

地球連邦の『高度国防国家』から『平和通商国家』への路線変更と

連邦防衛宇宙海軍に対し要求される作戦能力内容の変化を鑑み、

地球艦隊を"新時代"に適合した体制へ組み直すことに心血を注いだ。

 

幸いなことに彗星戦役前、プリエーゼ・芹沢両統括司令長官期に行われていた

新世代地球艦隊の整備計画の時点で、"ガトランティスに勝利した後"の

戦後軍縮は予測されていたようで、艦船・装備面での軍縮は円滑に進んだ。

 

当時の防衛軍最上層部は"無人艦隊"、とりわけ"波動砲船団"を

宇宙海軍艦隊の数的主力と位置付けており、高コストな有人艦艇の調達は

戦後の軍縮下でも維持できるような最低限の数に留められていた。

つまり平時においては"無人艦隊"を、設計上転換が容易な民間輸送船へと

改造し放出する形でパージするだけで軍縮が可能な状態になっていたのである。

 

芹沢たちの"遺産"ともいうべきこの仕組みを、

タナカら戦後防衛軍・連邦政府は最大限に活用。

驚異的な速度での兵力のスリム化を果たした上に、余剰の改造輸送船は

移民計画のため船腹を欲するガミラスへ供与することで、

同盟関係強化と地球復興時の借款返済に繋げ、一石三鳥の効果を生み出した。

 

 

無人艦隊を手放し軍縮を果たした地球連邦宇宙海軍は、残る有人艦隊についても

大規模な再編を行うことで、"平和の時代"の任務に適合可能な部隊へ作り替える。

 

終戦時点で12個存在した有人の戦闘艦隊と、練習艦隊・輸送艦隊ほか諸部隊を、

6つの"方面艦隊"へと統合再編したのである。

 

新たな第一(方面)艦隊は、通称『地球防衛艦隊』または『系内部隊』と呼ばれ、

その任務は通称が示すように、人類の根拠地たる太陽系・特に内惑星系の防備だ。

同部隊にはアンドロメダ(A)級・ドレッドノート(D)級宇宙戦艦など、

連邦防衛宇宙海軍が保有する波動砲搭載艦艇が集中配備されているが、

これは地ガ両国が締結した『次元波動兵器不拡散条約』の条文にある、

"地球軍の波動砲搭載艦艇の運用は、基本的に自国防衛に限定する"旨に基づく。

また、第一(方面)艦隊は旧編成での練習艦隊を取り込んでおり、

将兵の育成についても受け持つ任務の一つとなっている。

 

第二(方面)艦隊は通称を『外周艦隊』あるいは『系外部隊』とされ、

主任務は太陽系外縁にて来航する宇宙船の臨検を行うなど、対系外監視である。

足の長いエディンバラ(E)級宇宙巡洋艦が多数配備されている他、

波動砲非装備で条約の制約を受けない改ドレッドノート(D)級宇宙空母が属し、

太陽系外縁に配置された系外監視システム群の管制も同部隊が担っている。

 

第三・第四・第五(方面)艦隊は、それぞれ『プロキオン航路警備部隊』

『アルタイル航路警備部隊』『ベガ航路警備部隊』の通称を冠されており、

任務はその名の通り、旧ガミラス親衛隊クローン兵士を中心とした

ガミラス『新領土(ノエンランテ)開発連盟』の開拓団が入植・開発を進めている

オリオン腕宙域の植民惑星群への需品輸送・産物の輸出を行う船舶が通る

空間航路を、ガミラスの天ノ川銀河系駐留艦隊と協同して警備することである。

同部隊にはエディンバラ(E)級宇宙巡洋艦の戦隊を基幹部隊として、

複数の宙雷戦隊(フォークナー(F)級)・護衛戦隊(在来設計改型艦)が配されていた。

 

最後に、第六(方面)艦隊___通称『シリウス航路警備部隊』、

もしくは『銀河間航路警備部隊』と称される艦隊。

基本的に上記の第三~第五方面艦隊と編制・任務を共通しているが、

任地たる航路が大小マゼラン銀河からガミラス商船が太陽系へ向かう際に用いる

地ガ交易のメインルートであるため通過船舶数なども多く、管轄範囲も

(ガミラス軍との共同ではあるが)銀河外縁の亜空間ゲートまでと広大であるため

艦艇数は上記の他部隊より優遇されていた。

 

なお、ガミラスからの賠償供与艦やFE級宇宙輸送艦などで構成された輸送艦隊は

元来従事していた資源採掘任務が連邦資源生産局に移管されたことに伴って、

大半の艦が所属を防衛軍から連邦官衙に改め、軍需物資輸送に要するなどで

軍籍に残留した一部が各方面艦隊の後方支援群に分散配置されている。

 

 

かくして、2205年時の地球連邦防衛宇宙海軍は、地球ならびに太陽系防衛に加え

オリオン腕の地ガ共同開発宙域内の民間商業航路の保全という、

平和な時代らしい新たな任務に、相応の新体制で以って臨んでいたのであった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

「0900。 ……本艦の設置せる周辺観測プローブ、異常を検知せず。

 

 ____ま、する訳もないだろうよ、こんな僻地じゃあなぁ。」

 

 

上述した第六(方面)艦隊の隷下・第八宙雷戦隊に属する、

第三四駆逐隊の一艦であるフォークナー級宇宙駆逐艦「ティモシー・ハンター」。

 

北米管区に艦籍を置く同艦は、

その艦名を21世紀初頭の旧アメリカ合衆国海軍特殊部隊員に因む。

現中東管区に相当する地域における治安任務にて勲章を与えられる活躍をした人物で、

その後も活躍を重ね、宇宙軍艦の名として時を越えて記憶される資格を得たのだ。

 

西暦2205年3月31日、

駆逐艦『T・ハンター』は第六艦隊司令部の命令で、駆逐隊の僚艦「メイトリックス」、

「トーマス・J・ホイットモア」、「ウィリアム・シャープ」と、

同じく第六艦隊に属するエディンバラ級宇宙巡洋艦「ヴィンセンズ」と共に、

司令部から指定された原始星系を警備していたが、駆逐隊司令を兼ねる艦長以外の乗員は

なぜこんな艦隊担当宙域内でも辺境・未開の星系に派遣されたのか、理解できずにいた。

 

 

「警戒を緩めるなよ。

 敵はともかくとして、恒星風や小惑星の予期せぬ動きがあるかもしれん」

 

ぼやきを発したレーダー員を、駆逐艦の航海長が諫めた。

しかし彼もまた、わざわざ警備に出動する価値の無さそうな星系に、

自分たちが送り込まれた理由がわからず、疑問符を浮かべている。

 

地球軍の第三四駆逐隊が星系に展開してから、既に丸一日が経過しようとしていた。

同隊は星系への進出時、各艦に設定された担当区域をカバーするため

星系内の要部に系外観測・重力波測定用プローブを複数設置しており、

その反応から、"外敵"が星系に侵入しないかを確かめる、警備任務に就いていた。

 

「訓練にしても妙だし、ウチの艦長(キャプテン)もカーバー大佐も司令部も、

 一体何を考えているのやら……」

 

今度は駆逐艦の砲雷長が溜息をつく。

彼は視線を、星間物質のガスが映るばかりの艦橋窓の彼方に___

第三四駆逐隊をこの任務に駆り立てた指揮官が乗る、

E級巡洋艦「ヴィンセンズ」が展開しているであろう方向へ向けた。

その時。

 

 

「!? ___こいつは、ワープアウト反応!?」

 

レーダー士が、突然モニターに生じた反応に驚き、声を荒げる。

艦橋に詰めていた士官たちも敵襲か、と顔色を変え、

慌ただしく戦闘配置に移ろうとしていた。

しかし。

 

 

「落ち着け諸君、その反応は味方だ」

 

「「「艦長(キャプテン)!?」」」

 

艦長室から戻ってきた駆逐艦の艦長が、部下を制止する。

艦橋要員らが驚く中、艦長はすまなそうな苦笑の表情を返した。

 

 

 

程なくして、原始星系内の星間物質が濃密に漂う空間に、ワープアウトの光が灯る。

それは、駆逐艦「ハンター」の艦長が言う通り味方___地球軍艦の特徴である

青白い空間波紋(ワープアウトエフェクト)であった。

その数は、一つや二つではない。

 

「来たか……」

 

通常空間に飛び出してくる友軍艦艇の姿を天井モニターに認め、

巡洋艦「ヴィンセンズ」にて隊の指揮を執っていた地球連邦防衛軍の士官、

第六(方面)艦隊の宙雷群司令官ダニエル・カーバー大佐が呟く。

 

彼が見上げる天井モニターの映像には、あの宇宙戦艦「ヤマト」の姿もあった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

「ワープ終了、艦に損傷認められず!」

 

「『アスカ』、後続を確認!」

 

「二時の方向に友軍艦を確認、誘導艦『ヴィンセンズ』です!」

 

ワープ明けの「ヤマト」艦橋では、報告が矢継ぎ早に艦長へ届けられた。

しかし、艦長席に身を置くその男は、冷静にそれらの情報を処理・把握する。

 

「了解した。 ……"任務部隊"全艦が到着次第、報告せよ」

 

その男、四代目宇宙戦艦「ヤマト」艦長・古代進中佐は、動じることなく発令した___

 

 

 

……最終的に、第三四駆逐隊と「ヴィンセンズ」が先行展開していた

原始恒星系へワープアウトした地球軍艦艇の総数は、24隻にも上った。

 

集結したこれらの艦艇は、原始星系の惑星の陰へ移動したのに対して、

星系へのワープ座標を送信し誘導を行った「ヴィンセンズ」と

第三四駆逐隊のF級4隻は引き続き星系の警備に従事する。

 

恒星風を警戒し原始惑星の陰に移った地球艦群では、

各艦の会議室に艦長らが集まってリモートによる会議が開かれていた。

 

映像に"艦隊司令"として登場したのは、かつてガトランティス戦役にて

合計三隻のメダルーサ級戦艦を葬り去ったことで、宇宙艦隊司令部から

《火竜狩り》の綽名で称揚された男である。

 

 

『___諸艦艦長、そしてクルー諸君、遠路遥々ご苦労だった。

 小官は、この共和政ガミラス親善派遣艦隊・第六五任務部隊(タスクフォース65)の司令官を拝命した、

 ルーベン・ワード少将である。___』

 

宇宙戦艦「ヤマト」の艦長たる古代らも例外なく、「ヤマト」の大会議室から

第六五任務部隊(TF65)を構成する僚艦艦長らや任務部隊司令部との会議に出席する。

 

尤も、会議とはいっても顔合わせと今後の艦隊行動についての再確認だけだ。

同盟国へ派遣する親善艦隊への参加と行動の詳細は、既に各艦に伝達されている。

任務の主目的は、地球時間換算で西暦2205年5月8日に開催される

共和政ガミラス国防軍航宙艦隊による、

「対ガトランティス戦勝二周年記念観艦式」への地球艦隊のゲスト参加と、

前後して行われる新ガミラスへの遷都完了を記念して行われる式典に

地球側の使節団を送り届け、その後イスカンダル星に使節団の表敬訪問・

地球艦隊の寄航を実施することであった。

 

そうした外交的意図で派遣される艦隊であるため、任務部隊名には

第六(方面)艦隊に属することを示す「六〇番台」の数字が掲げられているが、

実際には、司令部直属の外交特務艦「ヤマト」をはじめ、隊を構成する艦は

第一艦隊など各方面艦隊から抽出されており、

連邦政府および防衛軍司令部直轄で設けられた特務混成艦隊というのが、

第六五任務部隊を一言で表すのにふさわしい表現といえる。

(しかも、地球の全管区所属艦を網羅するような編制であった。)

 

宇宙戦艦「ヤマト」ほか任務部隊への参加が決まった艦艇は、

銀河間航路が一応民間開放されたこともあり、警備上の都合から個艦または

戦隊単位での秘密裏の移動が命じられ、この原始星系で初めて集結した。

「ヤマト」も、表面上は新乗組員を乗せた長期航海訓練の体で、

3月初旬に地球を発っている。

 

 

かくして、親善派遣任務部隊は集結を完了し、

ここから艦隊を編成して銀河系外縁の亜空間ゲートへと進行する。

バラン星のゲートが復旧され全線再開通した銀河間航路を急進し、

一カ月後には大マゼラン銀河のガミラス中枢宙域へ進出する予定だ。

その間にも、新兵が多い「ヤマト」はもちろん他艦も、所属が違う

艦同士とは行動を共にした経験が少ないため、訓練を欠かさない予定である。

 

 

『___任務部隊は、本日1200時を以てこの星系を抜錨。

 以降は、銀河外縁の亜空間ゲートを目指す。到達は明後日を予定している』

 

ワード提督の進行で、事実上のスケジュール再確認となった会議が終盤に近付く。

その中で艦隊司令は、映像越しに古代「ヤマト」艦長の目を覗き込むような、

ぎょろりとした目をつきつけてきた。

 

『コダイ艦長、トウドウ艦長。

 我が任務部隊の中心となる艦は、貴官らの『ヤマト』と『アスカ』だ。

 万一、有事となれば他の全艦を以てこれを支援することになる。

 使節団を乗艦させる都合上、行動に制約が出るかもしれんが、

 そのあたりはくれぐれもよろしくお願いする。』

 

「はっ!」

 

半ば当然ながら、新ガミラス及びイスカンダル星を訪問する予定の地球使節団は

外交特務艦である宇宙戦艦「ヤマト」、本来は技術本部に属する艤装試験艦で

現在は艦隊補給ユニットを積み、臨時の艦隊補給艦として任務部隊に参加した

改ドレッドノート級特設宇宙補給艦「アスカ」に分かれて乗艦している。

 

中でも使節団長は「ヤマト」に乗艦しているため、使節団側と任務部隊の

意思疎通に当たって古代中佐は重要な役割を担っていた。

 

しかし、古代に、気負ったような様子はない。

これまでに積んできた経験が彼に自信を与えているのか、

古代の親友で「ヤマト」航海長兼副長の島大介少佐や、

同じく使節団を乗せている「アスカ」の艦長・藤堂早紀少佐の存在を

補佐・相談役として頼りにしているのか___理由はまだわからない。

 

 

 

___第六五任務部隊(TF65)は、隷下各艦または各戦隊に、

この任務における限定の〈呼出符丁(コールサイン)〉を設定していた。

 

そこから、後世ではこの任務部隊は、司令官ワード少将が称したように

任務部隊の中枢と言えた宇宙戦艦「ヤマト」に設定されたコードネームを取り、

『〈ビッグY〉任務部隊(タスクフォース)』と呼ばれる。

 

その名は、これから先に生起する"大事件"と共に、

地球・ガミラス市民に深く記憶されることになるのである_____

 

 





◯地球連邦防衛軍 共和政ガミラス親善派遣艦隊・第六五任務部隊(TF65)
・特派戦艦戦隊(極東・北米管区所属)
 ヤマト級宇宙戦艦「ヤマト」(符丁:ビッグY)
 D級宇宙戦艦「ワシントン」(符丁:マイティW)、「サウスダコタ」(符丁:ブラックX)
・特派第一巡洋艦戦隊(符丁:V(ヴェスパー)+数字)(欧州管区所属)
 E級宇宙巡洋艦「ブダペスト」「シェフィールド」「ストックホルム」
・特派第二巡洋艦戦隊(符丁:U(ウルトラ)+数字)(南米・地中海・オセアニア管区所属)
 E級宇宙巡洋艦「カラカス」「ナポリ」「シドニー」
・特派第一駆逐隊(符丁:T(トリガー)+数字)(南阿・北阿・南亜管区所属)
 F級宇宙駆逐艦「ムハンマド・アリー」「イブン・バットゥータ」
        「ショーテル」「ジャマダハル」「ウルミ」
・特派第二駆逐隊(符丁:S(シャーク)+数字)(東南亜・中東管区所属)
 F級宇宙駆逐艦「ギヌンティン」「カランビット」「マンダウ」
        「ハンジャール」「シャムシール」
・特派第三駆逐隊(符丁:R(ローズ)+数字)(東亜・北ユーラシア管区所属)
 F級宇宙駆逐艦「項羽(シャン・ユー)」「鄭成功(チェン・チェンコン)」「サハロフ」「メニショフ」
・改D級特設補給艦「アスカ」(符丁:グレースQ)(極東管区所属)

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