宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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祝☆「ヤマトよ永遠に REBEL3199」第七章公開記念!




第三十八話 ドッグ・ファイト

 

【第38話】

 

 

「一時はどうなることかと思ったが、結構うまくいくものだな。

 "運命"というヤツが我々に加勢してくれているのを感じるぜ」

 

不意に、恰幅の良い青肌の中年男―――セグドル・ヴァム=ツァインフェルテ伯爵が呟く。

 

ツァインフェルテ伯爵はこの時、車上の人であった。

一線を退いた実業家で、共和政ガミラス貴族院の議員を務めるこの男は今、

星間国家ガミラスの首都、新(ノエン)ガミラス星・新(ノエン)バレラスにある

貴族院における集まりから、議員宿舎と別に私用で購入した屋敷へと帰る途中で、

大型の浮揚リムジンの上質なシートにどっかりと身を沈めていた。

 

同じ車内には、元はガミラス国防軍に籍を置いていた三人の退役軍人の姿がある。

"特別"な出生を持ちながらも、社会勉強のため伯爵の議員秘書を務めるクラウス・キーマン。

元将官で、ツァインフェルテが最も信頼を置く伯爵家の軍事顧問デーツァー・ヴァタル。

専用大型リムジンのハンドルを預かる伯爵の運転手兼警護役、グレメッツ・シュロク。

鼎の脚とも言える彼ら青肌の参謀・副官たちを相手に、ツァインフェルテは口を開いたのだ。

伯爵の傍ら、横長のシートに腰かけたキーマンが、伯爵の呟きに神妙な顔で首肯する。

 

「……確かに、現状では以前に危惧したほどの状況にはなっていません。

 それどころか、伯爵の読みが大当たりしています。

 ユノール社長も、「叔父様の慧眼が恐ろしい」と仰っていました。」

 

「ユンがか。ま、年の功という奴よ!」

 

キーマンと向い合せで反対側の横長座席に着いていたヴァタルも、

板型のデバイスを取りツァインフェルテが主導した、

伯爵家が営む星間運輸・開発企業の新事業が好調であることを示す資料を読み上げた。

 

「……地球(テロン)のボラー援助船団に、本邦の「国家予備商船隊」の船が出揃うまでの間

 オリオン共同開発宙域にあった手空きの船をリースした最終的な利益は想定以上でした。

 加えて、伯爵が音頭を取り政府と議会で推進した我が国(ガミラス)独自の援助船団派遣計画が

 正式決定されたのに伴い、マゼラン連邦内各地の業者が請け負った援助物資生産計画への投資や

 援助物資生産用の資源産地・工場用地の高値での売却、それに物資の中継輸送で得られた金は

 まさしく『特需』と呼ぶにふさわしい額です。しかも、現在進行形で継続中。」

 

「うむ。ツァインフェルテ社だけでなく競合の連中もかなり稼いどるそうだ。

 ユンから同業の集まりで他社の人間も俺に礼を言っていたと聞いた。

 こりゃあ、今度の選挙ももらったな!」

 

ツァインフェルテ伯爵は自身が糸を引き、姪に経営させている企業が大いに潤った上、

貴族院議員としての票田がある星間輸送業者や天体開発業者から支持と好感を得、

次期選挙でも再選確実と判断し、今ぞ我が世の春とばかりに呵呵と笑う。

だが、すぐに表情を冷静なそれに切り替えた。

 

「……だが、暫くしたら特需も落ち着き始める可能性がある。

 内戦中のボラーを市場として開拓できるかも現状不確実ではあるからな。

 いい加減に甘い汁を吸ったら、本道へ立ち戻って堅実に足場固めをしたいところだ」

 

「では、地球(テロン)船団との傭船契約が切れた銀河系の我が社の商船隊は

 ガミラス船団への中間荷役には回さず、銀河系での運用を続けられますか?」

 

「いや、ユンとも話し合ったんだが、惑星ツヴァルワールの酒造連合が

 政府に援助物資に登録させた『キルヴァー酒』の大口輸送をツァインフェルテ宙運に

 依頼してきたから、船腹が少しばかり足りないらしくてな。

 銀河系に今いる輸送船の半分はマゼランに戻すことになっとる」

 

伯爵の口を出た、数多あるツァインフェルテ社の商取引の一つ。

その内容に、これまで運転に注力して口を挟まなかったシュロクが反応を見せた。

 

「『キルヴァー酒』と言やぁ、なかなか値が張る酒です。

 そんなもんまで、内戦中のボラーへの援助物資に認められたんですか?」

 

「少し前にはメランの茶葉や元帥の実(ゼルグーデンフルーツ)を用いた菓子なども登録されたと聞きましたが、

 我が国の政府が『高官向け嗜好品の試供、将来的な交易への取り組み』と言い張っても、

 国民が援助物資リストにそんなものを見つけたら確実に文句を言うと思いますが……」

 

キーマンもシュロクに続き「援助」名目で外国に送るには余りに贅沢な品に苦言を漏らす。

これに対し年長者かつ、軍事顧問の肩書ながら政経にも知見があるヴァタルが返した。

 

「落ち着け。似たようなことは地球(テロン)の方でも行われている。

 彼らに倣い酒は援助物資としての種別を薬品――『体温保持剤』として送られるらしい。」

 

「なるほど、言い得て妙ですなァ。」

 

「いやまあ、寒冷惑星が多い国家とは聞いていますが……」

 

方便とは言え、地ガ当局のせ(・)こ(・)い(・)遣り口に呆れ交じりに嘆息するキーマン。

そんな彼に向けて今度はツァインフェルテが口を開く。

 

「……それはそれとして、だ。

 さっき言った通り、俺はユノールの会社に今後暫くは援助船団への間接投資と

 旧来からの事業の二本立てでも、後者に注力させるつもりでいる。

 そこでだクラウス、またガルマン星に行って貰いたい。

 しばらくの間はお前さんの手を借りるほど議会関連の仕事が入ってないからな」

 

「……ガルマン星。と言うと、例の空間採掘の母港整備の件ですか」

 

「ああ」

 

愛飲する地球キューバ産の葉巻に火をつけたツァインフェルテが頷いた。

嘗て、地球とガミラス、ボラー間の国交締結時の懸案となり、

さらに、現在展開中のボラー内戦の遠因ともなった怪事件、

「第二次サレザー事変」によって大マゼラン銀河サレザー恒星系の旧第四惑星軌道に

突如として出現したガミラス民族の発祥地ガルマン星(及び双子星のバルパラ星)。

 

公式的には記録が削除されたものの、ボラー連邦の悪代官による苛烈な統治により

満足なインフラも整備されなかった同惑星では、ツァインフェルテ社以外の

ガミラス天体開発業者がインフラや都市の整備、ガルマン星人の生活改善事業を

主に請け負っていたが、ツァインフェルテ天体開発社も唯一の例外として

ガルマン人の将来的な雇用口という名目でちゃっかりガミラス政府の交付金を受けつつ、

ガルマン星転移以前に同軌道にあったが、「第一次サレザー事変」で相次いで崩壊した

ガミラス星人の故郷ガミラス星と、ガミラス人の精神的聖地イスカンダル星の

破片を回収する空間採掘事業のための基地宇宙港の建設が計画されていた。

 

「旧来からの本業の一環である、ガミラス・イスカンダルの破片の回収。

 その第一歩にもなるガルマンの事業基地建設。これらの計画をそろそろ進めたい。」

 

「確かに、この一年ばかり色々なことが起こりすぎて後回しになってましたねぇ」

 

「本来なら銀河系の共同開発宙域の事業と併せて

 ツァインフェルテ社の基幹事業に据える予定だったのだが

 ボラーとの接触、その上同国での内戦勃発とあっては、な……。」

 

夜の帳に包まれた新(ノエン)バレラスの高速道路を走る浮揚リムジン。

その車内にいる只者ならぬ男たちにとっても、第一次サレザー事変以降生起した

激動の日々には頭を痛めるほどだったらしく、シュロクは遠い目をして、

ヴァタルは溜息交じりにぼやく。それを尻目に、キーマンは本題に斬り込んだ。

 

「それで、ガルマン星で私に何を?

 現地有力者である神官のキーリング氏とはそれなりに知己を得ましたから、

 土地取得における折衝の支援、ですか?」

 

「鋭いな、概ねその通りだ。

 ……ユンからの報告だと、山間に良さげな盆地があるらしくてな。

 その辺の土地がちょうど神官一族の管轄だったらしく、

 キーリング長老とその御子息と交流があるお前さんに協力して欲しいらしい」

 

「なるほど、分かりました。」

 

ツァインフェルテの意向を受けて、第二次サレザー事変の際には

まだ未知の惑星の段階だったガルマン星へ調査団として降下し、

ガルマン星人との初接触を果たした人間の一人にもなったクラウス・キーマンは

なんだかんだでガミラス人始原の地である惑星ガルマンと同地の人々を気に入っており、

ツァインフェルテ企業グループ現社長かつ、伯爵家先代当主の遺児(庶子)で

伯爵が可愛がる姪ユノール・ヴァム・ツァインフェルテからの協力要請を快諾した。

 

そんな折、車内に通信デバイスの通話呼び出しの通知音が響く。

音源は――運転席、ダッシュボード近くのホルダーに収まるシュロクの携帯デバイスである。

シュロクは主人である伯爵に口頭で許可を取り、音声認識で通話に出た。

 

『よう、グレム。――ありゃ、運転中だった?』

 

「いいさ、旦那の許可は取ったし」

 

『おっと、ツァインフェルテの旦那、御無沙汰してます』

 

「おう、そちらさんも元気そうで何よりだ」

 

電話の声はシュロク、そして伯爵に対しても砕けた調子で話しかけており、

それが咎められることもなかった。 電話をかけて来た相手こそは、

運転手グレメッツ・シュロクがガミラス国防軍情報部門で大佐を務めていた頃の相棒で、

時として伯爵たちに重要な機密情報をもそれとなくもたらしてくれる軍内の協力者であった。

 

『いや、実はね。ツァインフェルテの旦那にゃ耳寄りな話があるんですよ』

 

「へぇ、お前がそこまで言うとはね」

 

「面白そうだな。是非、聞かせてもらおうじゃないか」

 

「「………」」

 

電話の主が持ってきた「話」に、元相棒のシュロクとツァインフェルテ伯爵は興味津々、

慎重派の軍事顧問ヴァタルとキーマンは訝しみながら耳を傾ける。

 

―――その内容は、現在の銀河情勢を大きく揺るがすものであった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

………時に、西暦2206年12月14日。

 

宇宙戦艦『ペンシルバニア』及び『アリゾナ』が率いる対ボラー人道援助物資船団『TB-16』は

援ボ船団としては初となる規模・輸送船48隻という大所帯ゆえか、若干の遅延を生じながらも

船団行程の第一の中継点となる、銀河系オリオン腕・地ガ共同開発宙域外縁部の

射手座ガンマⅠ星系に位置する北銀河方面への地球軍の一大拠点・サルタ基地へと入泊した。

 

円筒型スペースコロニーを改装したサルタ基地の宇宙軍港に旗艦『ペンシルバニア』以下

船団の輸送船・護衛艦艇は入港し、ボラー勢力圏内へ向かう前の最終整備が行われる。

また、船団で唯一有人である護衛戦艦の乗員には軍港の娯楽区画などでの休息が与えられた。

その一方、『TB-16』船団司令官アレクサンドル・アラルコン少将と二隻の護衛戦艦の艦長、

旗艦の指揮官ラルフ・O・A・ドイル中佐と『アリゾナ』を預かるチャンス・P・オニール中佐、

それに数人の士官は、廃鉱小惑星を搬入・改造したサルタ宇宙基地・中枢要塞島に向かった。

要塞内には、援ボ船団実施部隊である山南修中将ら第七(方面)艦隊の司令部が置かれている。

 

 

「船団司令アラルコン以下『TB-16』船団司令部、出頭いたしました。」

 

「初の大規模船団によるここまでの運航、ご苦労だった。」

 

要塞内の艦隊司令部に隣接する作戦会議室で、船団の責任者たちは山南7F長官と対面した。

山南がアラルコンらを労う傍らで第七艦隊の幕僚たちが準備を進め、

程なくして今後の船団運航についての協議が開始される。

初の大規模援ボ船団である「TB-16」は特に、隻数が多い分輸送する物資も膨大な量に上り

ボラー体制側からの期待も大きいため、運航計画については慎重を期さねばならなかった。

 

「――今回、TB-16船団が向かう体制側ボラー勢力圏内の目的地は「惑星ネリン」だ。

 これまで船団が向かった惑星の中で、ムルマン星に次いでボラー内戦の前線に近い。」

 

表情を険しくした山南が告げた目的地の位置を示すため、作戦会議室床面の

大型モニターに、船団が向かう「ネリン軍管区」を示した宇宙図が広げられる。

その奥には、叛乱勢力「統治再建機構」に与するバルジク軍管区との境界…即ち前線や、

まるで手のひらのように中心から複数の"指"を広げるラガド暗黒星雲が存在する。

そしてネリン軍管区宇宙図の一角にピンが置かれ、「惑星ネリン」と表記された。

確かにネリン軍管区外縁――暗黒星雲を挟んで隣接する

バルジク軍管区のボラー叛乱軍との戦闘宙域からは、決して遠い距離とは言えない。

 

「そのためボラー体制派当局と協議した結果、

 TB-16船団には戦闘宙域方面を大きく迂回する航路を取ってもらうことになります。」

 

続いて発言したのは、第七艦隊参謀長のダニエル・カーバー大佐だ。

彼はオニール『アリゾナ』艦長、ドイル『ペンシルバニア』艦長とは同期の

「北米管区の当たり年」の一人で、しかもその出世頭であった。

 

「内戦の影響を避ける上で迂回航路を取るのは、致し方ありませんな。

 それで、迂回航路についての詳細をお教えいただけますか?」

 

「うむ。」

 

今度は船団司令部側から、アラルコン提督が返す。

山南司令長官もそれに頷き、その意を受けた艦隊幕僚がデバイスを操作する。

すると、床面モニターの宇宙図に船団の予定航路が線として描かれ、

同時に航路が経由する宙域・天体を略表したアイコンが数個、映し出された。

 

「概要については以前に伝えた通りだが、ボラー側が一点、変更を要請してきた。

 ――ここを見てくれ。」

 

山南が視線を落とした床面モニターの一点に、列席者の目が集中する。

そこには、「ボスナ星雲」と銘打たれた発光星雲の姿があった。

 

「行程の後半も後半、目的地たる惑星ネリンへの到着三日前辺りに差し掛かる宙域ですな」

 

「その通りだ。」

 

『アリゾナ』艦長・オニール中佐の反応に、山南が頷く。

ボスナ星雲はボラー語で「(国家の)力となる」という命名の通り、周辺や内部に資源天体を

複数抱えており、ボラー連邦ネリン管区宙域における鉱物資源産出の中心地となっている。

同時に、ボラー領らしく星間物質が濃い宙域でもあるため航行には細心の注意を要したが

ボラー首都星ラスカウなど連邦中央方面とネリン軍管区中心部を結ぶ最短ルートだったため、

星雲内には監視サイトやビーコンなどの設備を擁する連絡航路が整備されていた。

TB-16船団も、このボスナ星雲を貫く直通航路を取る予定だったが……。

 

「ボラー側曰く、このボスナ星雲の中にある恒星のうち一つが

 核融合反応が不安定化している兆候を見せたようで、

 事故を避けるためボスナ星雲を通過するコースを変更してもらいたい、との事です。」

 

カーバー参謀長の言葉と共に、床面モニターに映っていたボスナ星雲を通過する航路を示す

線が消え、代替となる新たな航路の線と、それが通過する天体が宇宙図に現れる。

それを認めて山南が再び口を開いた。

 

「航路変更によって遅延が生じる点についてはボラー側も承知の上だ。

 その上で、我々としても初となる大規模船団――その積荷である大量の援助物資に、

 事故なく到着してほしいというボラー側の要望という訳だ。

 この方面における内戦が激しくなっている点にも、留意しておいてくれ。」

 

「……了解しました!」

 

船団司令部を代表して、アラルコンが短く、されど力強く言った。

「船団を必ず無事に到着させよ」という言外の指示を正確に読み取ったのである。

山南は現場責任者に負担を負わせることに対し若干申し訳なさげな顔を見せていたが、

アラルコンの自信に満ちた返答に勇気づけられたようで、表情を引き締めた。

 

「――変更後のコースでも、この宙域……"星団"を通過するようですが?」

 

そう言ったのは、『ペンシルバニア』艦長を務めるドイル中佐だ。

「北米軍の当たり年」同期の中でも慎重な性格の彼らしく、ボスナ星雲経由航路から

変更されたコース上にも宇宙船の航行、とりわけ軍艦より低速な輸送船の群れを

動かす上で大きな障害になり得そうな天体の存在を目敏く発見したのである。

 

「……航路設備の整備度合いでボスナ星雲に譲るために第二案となって居たが、

 航行難易度的には前に伝えておいたボスナ星雲のそれとは大差ない――らしい。

 ともかく、船団の運航においては確かに警戒を要する宙域だ、気をつけてくれよ。」

 

同期生ゆえか、相手の階級が下のためか、少し崩した口調でカーバー大佐が返す。

続いて口を開いたのは、これまたカーバーの同期の一人であるオニール中佐。

 

「それで、この星団の名前は?」

 

カーバー参謀長より先に『アリゾナ』艦長の質問に応じたのは、山南司令長官だった。

 

 

「『スカラゲック海峡星団』。

 参謀長の言う通り、中々の難所とのことだ。くれぐれも注意するように。」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

対ボラー連邦人道援助船団「TB-16」は2206年12月16日未明にサルタ基地を発ち、

三日後の19日、ボラー連邦体制側勢力圏へ進入。27日にはネリン軍管区の境界へと到達した。

同時期には銀河間空間方面――ガミラス側からも最初の援ボ船団が発進している。

 

この頃になると、地球船団側でボラー連邦勢力圏宙域での航行経験・データが蓄積されたこと、

上記の通りガミラス側での船団も開始されるなど運航船団数が増え先導艦のローテーションが

厳しくなった一方、相も変わらず内戦の戦況が体制側に厳しいことから

御目付け役を兼ねて船団に派遣される体制側ボラーの先導艦が廃止されていた。

それでも、万一の場合に備えて各援助船団にはボラー連邦軍の間接護衛艦隊が

それなりの距離を置きつつ付随させられている―――

 

 

「……航海は順調そのものだが、やはり目的地が遠い……着く頃には、地球は2207年か。」

 

「直線距離ならまだしも、

 『魔女の棲処』とかいう暗黒星雲をはじめ航行の難所が多いのが厄介ですね。

 長距離ワープのエネルギー回復まで、あと5時間です。」

 

地球連邦防衛宇宙海軍・北米管区軍籍、宇宙戦艦『アリゾナ』第一艦橋にて。

『アリゾナ』艦長のチャンス・P・オニール中佐の呟きに、同艦の航海長が応答する。

地球連邦による対ボラー連邦人道物資供与船団の運航が始められて以降最長の旅程を、

初の大規模船団を率いて征く彼らには、着実に疲労が溜まり始めている。

先例のない規模の船団運航に加え、長距離――しかも通過に気が抜けない危険宙域続き。

極めつけに可能性を排除しきれないボラー反体制派による襲撃への不安が重なることで

北米管区軍内でも選抜を受けた精強を誇る『アリゾナ』乗組員の心身は蝕まれており、

それは僚艦である船団旗艦『ペンシルバニア』においても同様であった。

 

一方で船団は、発進前にサルタ基地で入念に組まれた

艦隊運動自動制御プログラムのお陰か、乱れない陣形を保っている。

48隻を数える無人制御の連邦(フェデラル)(FE)級標準宇宙輸送船は、

四隻の縦列を横に四列連ねたものを三段重ねる形で立体方形陣を形成しており、

二隻の有人護衛戦艦に率いられたハンドラー級・ハウンド級無人戦闘艦計32隻は

輸送艦で作られた「立方体」の前後左右上下に張り付く形で随行していた。

 

船団で唯2隻の有人艦である旗艦『ペンシルバニア』と次席艦『アリゾナ』は

地球・ガミラス間の銀河航路を航行した「銀河鉄道」船団などに倣い、

貨物列車の牽引機関車と推進機関車の如く、それぞれ無人船団の前後に配され

船団の前に立ち塞がる障害・船団を追尾する襲撃者の姿が無いか、目を光らせている。

 

そして、地球時間にして西暦2206年12月28日。

武装船・非武装船合わせて総数80隻超の大輸送船団は、

目的地たるボラー連邦体制派勢力圏・ネリン軍管区中枢「惑星ネリン」に向かう中で

最後の難所となる宙域「スカラゲック海峡星団」のγ星近傍空間に達していた………。

 

 

「本艦及び後衛無人艦群のレーダーに感!

 五時方向・距離6万にボラー軍艦艇の反応あり、数1!」

 

北米管区軍籍の艦らしくアフリカにルーツを持つらしいレーダー手が報告を上げ、

宇宙戦艦『アリゾナ』艦橋内に緊張が走る。

索敵手席のレーダースクリーンには、ボラー軍艦特有の動力波紋(エネルギーパターン)反応が検知されていた。

現在、船団が航行中のスカラゲック海峡星団は星間物質濃度が相当に高いため

地球軍艦のコスモレーダー、特にその広域探知機能は軽微では済まない支障を来しており

船団にかなり近付かれた段階での対象艦艇の発見となった。

 

「直ちに旗艦と情報共有、及び詳細の把握だ!

 通信長、『ペンシルバニア』との通信回線も開け! ―――全艦、第一種警戒態勢!」

 

「「「はっ!」」」

 

オニール『アリゾナ』艦長が矢継ぎ早に指示を飛ばし、艦と船団を即応体制へ移行させる。

天井の大型モニターには、船団指揮官アラルコン少将と旗艦艦長ドイル中佐が現れた。

 

『……敵襲、ということかね?』

 

「まだ分かりません。――旗艦に間接護衛艦隊からの連絡は?」

 

『いや、ない。

 星間物質が多いこの宙域だ、通信トラブルが生じている可能性も否定は出来んが……』

 

オニールからの問いに同期生でもあるドイルが応えるが、その表情は険しい。

突如として船団の遥か後方に現れたボラー軍艦艇の反応。

船団から距離を開けて追尾・遊弋しているであろう

ボラー体制側が派遣した間接護衛艦隊から分派された艦の可能性があるが、

ボラー叛乱軍が船団を妨害――攻撃するために送り込んだ襲撃者である線も捨てきれない。

 

スカラゲック海峡星団宙域に滞留する星間物質の密度が濃さはレーダーのみならず

光学観測にも影響を及ぼしており、船団はボラー艦を望遠映像で捉えることが出来ず、

その詳細を掴めていない。星間物質が濃い航行の難所で突然出現した事実は

地球軍援ボ船団司令部の面々の頭脳にこれが襲撃者である確率を高めさせる。

だがその反面、「ボラー体制側の護衛艦隊から地球船団に至急の伝達事項があるが

星間物質が濃いため通信ができず直接伝令の艦を派遣した」という筋書きにも

一定の説得力を生んでいた。

 

『体制側の艦であった場合、対応をしくじれば外交問題となります。

 迂闊な行動はとれません』

 

『……だが叛乱軍の艦という可能性もある。ムルマン星の一件を鑑みるに、

 ボラー叛乱軍が援助物資……ひいては船団に手を出さないという確証もない。』

 

モニターの向こう側、旗艦『ペンシルバニア』ではアラルコンとドイルが

後方に出現したボラー艦への見解を異にしている。彼らに向け、オニール中佐は提案する。

 

「どの道、ここからではボラー艦の正体を見極めることはできません。

 無人艦の中から一隻、ボラー艦の方へ動かしましょう。」

 

そうして近づけた無人艦のカメラやセンサーでボラー艦を確認させ、

正体判断の材料としよう――オニールの献策に対し、ドイルが頷いた。

 

『そうだな。……ボラー護衛艦隊からの派遣艦だった場合は

 その無人艦にリレーさせて通信を行えばよいかと、アラルコン司令。』

 

『うむ。ただ、叛乱軍の艦だった場合はどうする?

 最悪、近づいた所をいきなり攻撃してくる恐れがあるぞ』

 

一方のアラルコン司令は、あくまでボラー艦が"敵"であるリスクを捨てず

その辺りへの対応を発案者である『アリゾナ』艦長へ求めた。

オニール中佐はこれを予期していたらしく、落ち着いて視線を艦橋の窓――

そこから見える船団後衛部隊に属する僚艦、ハンドラー級大型無人艦に向けて答える。

 

「後衛群の大型艦『シャムシール』を向かわせます。

 あの艦は重力子スプレッド砲を装備していますから、

 奇襲攻撃を受けても波動防壁と併せて二重の対処が可能です。」

 

『……いいだろう。まだ、敵と決まった訳でもないからな』

 

淀みない答えを受けてアラルコンも納得したらしく、間もなく彼の許可を受け

船団後衛隊を管制する『アリゾナ』からの指令で、後衛無人艦群の中から

唯一のハンドラー級艦『シャムシール』が反転し、後方のボラー艦に向かっていった。

 

援ボ船団「TB-16」に属するハンドラー級・ハウンド級無人艦には、

それぞれ地球の古代~近世までの武具の名称が艦名代わりの符号として用いられている。

ハンドラー級四隻は「クレイモア」「トライデント」「ファルシオン」「シャムシール」の

符号を冠され、側衛に配された前者二隻は四式波動防壁弾と波動共鳴波発振器を積んでおり、

有人護衛戦艦と共に前後衛に置かれた後者二隻が重力子スプレッド砲を搭載していた。

一方のハウンド級は28隻と数が多いため、武器名は4~6隻で成る護衛隊に冠され、

各艦はそれに1~6ないし1~4の番号を加える形で呼称される。

前衛の6隻は「ダガー」、後衛の6隻は「メイス」。上下左右に展開する

各4隻の護衛隊はそれぞれ「レイピア」「カタール」「シミター」「フレイル」とされていた。

 

 

「『シャムシール』、ボラー艦に接近。これより光学観測可能域に入ります」

 

「まァ、叛乱軍もあからさまに地球とガミラスへ戦争をふっかける真似はするまい。

 普通に体制軍の護衛艦隊が送った伝令船だと思うがな―――」

 

レーダー手からの報告を受け、オニール艦長は腕組みしながら呟く。

アラルコンの言う通り第一回船団が運んだ物資が全て喪われた「ムルマン星事件」でも

叛乱軍による攻撃は行われただろうが、明らかに『ヤマト』以下地球船団がムルマン星を

遠く離れてから現地の宇宙港が破壊されている。

このことは、ボラー叛乱軍の「援助物資が体制側の手に渡るのは妨害したいが、

直接地球・ガミラスの船団を攻撃して両国と事を構えるのは避けたい」という意図の表れだ。

それを考慮すれば、ボラー叛乱軍が直接自分たち地球船団を襲う確率は限りなく低い――

少なくとも『アリゾナ』艦長オニール中佐は、そう判断していた。

 

「『シャムシール』の観測したボラー艦の画像、出ます!」

 

「……これは……!?」

 

天井モニターに映し出された、船団後方に現れた謎のボラー艦の正体。

それは、かつて地球が破ったガトランティスから接収した偵察データによって

防衛軍が存在を確認したボラー連邦軍の主力駆逐艦(ミサイル投射艦)、カルチヤ級。

だが、ボラー連邦勢力圏での任務を行うにあたって

同国軍艦艇の情報を入念に頭へ叩き込んだ『アリゾナ』乗組員たちが見るや、

『シャムシール』が観測したカルチヤ級の不審点がすぐに明らかとなった。

 

「なんだこいつは、艦橋が無いぞ? 代わりにあるのは……通信マストか?」

 

「船体やらも何か安っぽい。戦時急造艦らしいが、これは……」

 

「……まさか、彗星戦争時のガミラス艦と同じ、無人艦か!?」

 

かつて、防衛宇宙海軍・旧第二艦隊に属したE級宇宙巡洋艦『サンフランシスコ』の

艦長として白色彗星戦争・土星決戦に参戦した経験を持つオニール中佐は、

その際に共闘したガミラス艦隊の無人艦と同じ「艦橋構造物の廃止」

「簡略化された船体設計」という特徴から、謎のボラー艦の正体を看破する。

オニール艦長はさらに思考を続けんとしたが、部下からの報告がそれを遮った。

 

「『シャムシール』のセンサーが例のボラー艦周囲にワープアウト反応を検知!

 数12、同じくカルチヤ級の模様!」

 

「なんだと!?」

 

同時に、『シャムシール』から送られてくる観測映像には

空間の"境界"を叩き割るような空間波紋(ワープエフェクト)の光と共に、

同じく無人艦らしい艦橋のないカルチヤ級複数隻の姿が現れる。

オニール艦長はそれを見るや、通信長に命じて直ちに旗艦との通信回線を再開させた。

 

「アラルコン司令、ボラー艦から通信は入っていますか!?」

 

『いや、「シャムシール」を通じて呼びかけているが反応がない。』

 

「でしょうな、相手は恐らく無人艦です。

 『シャムシール』を直ちに船団に戻すか、即応態勢を取らせるべきかと考えますが」

 

『待てオニール、まだ敵――いや、叛乱軍の艦と断定できた訳ではない。

 無人艦でも護衛艦隊が船団への触接に寄越した艦である線もある。

 下手な動きでもすればボラー軍との戦争口実になり得るんだぞ』

 

「それは、そうだが……」

 

オニール中佐は、現れたボラー無人艦が叛乱軍のものという前提で意見を述べたが、

ドイル『ペンシルバニア』艦長の反論に口ごもる。

確かに、ボラー体制側の護衛艦隊が船団に無人艦を差し向け、地球側からの通信にも

応じようとしない事の蓋然性は低く、無人艦が叛乱軍のものである確率は高い。

だが現状、あくまでそれは推論に留まっているのも事実だ。

無人艦が体制側のものだった場合、地球船団が不用意な動きをすれば

地球に無用の火種を抱え込ませることにもなりかねない―――。

 

『たとえ叛乱軍の艦だったとしても、あくまで我が船団には手を出さず威圧し、

 こちらに手を出させる狙いかもしれんのだ。落ち着け、オニール』

 

「うむ……」

 

同期生からの説得を受け、オニールはいささか血がのぼった頭を冷やす。

状況を最悪のものとばかり考えていた――オニール艦長は自省し、別の具申を述べた。

 

「では、どうにかしてボラーの間接護衛艦隊に連絡を取りましょう。

 無人艦が彼らのものであれば良し、

 万一叛乱軍のものだった場合は対処を彼らに委ねるということで……」

 

『いいだろう。「シャムシール」にはボラー艦群と現在の距離を維持させる』

 

「はっ。兎も角、あの無人艦からは目を―――」

 

「『シャムシール』、ボラー無人艦からの火器管制レーダー波照射を検知!

 ――ボラー艦群、『シャムシール』へミサイル発射の模様!!」

 

 

オニールは『アリゾナ』戦術長からの、モニターの向こうのアラルコンとドイルは

『ペンシルバニア』戦術長の悲鳴にも似た報告を聞き、顔を青褪めさせる。

先ほどのオニールの危惧の通り、どうも状況は「最悪」だったようであった。

 

「クソッ……重力子スプレッド砲、ミサイル、パルスレーザーで迎撃させろ!

 司令、よろしいですね!!」

 

『ああ!!』

 

オニールは引き攣った表情で攻撃を受けた麾下無人艦に自衛措置を取らせ、

アラルコンも衝撃と憤怒半々の顔で、それを追認する。

 

――船団の後方でただ一隻、敵10数隻からの奇襲的ミサイル飽和攻撃を受けることになった

大型無人戦闘艦『シャムシール』。同艦は人の血が通わない全鋼鉄製の戦闘機械らしく

微塵の狼狽えもせず、指揮艦の許可を得て粛々と戦闘態勢へ移行した。

 

今や明白な「敵」となったボラー無人艦へ接近したとはいえ

彼我にまだ相当の距離が空いていたことも幸いし、ミサイル到達までには猶予があったため

『シャムシール』は艦首部に格納されていた連装重力子スプレッド砲を展開するや、

艦橋に内蔵された半自律戦闘AIが余裕をもって飛来するミサイル群を捉え、正確に判別。

最も効果的な位置で重力子の遮蔽防御幕が展開するよう、二つの砲門から二方向へ

一発ずつ重力子弾を射出し、続いてVLSから迎撃ミサイルを射出した。

 

「『シャムシール』、敵ミサイル全弾迎撃成功!」

 

「よし!『シャムシール』には全速で船団に戻るよう指示しろ!

 ……司令、こうなれば直ちにこの宙域を離れなければなりません!」

 

「TB-16」船団の後方で展開される戦闘を気にしつつも、

オニール『アリゾナ』艦長はアラルコン船団司令に至極尤もな見解を伝える。

画面に映るアラルコンもそれに頷くが、厳めしい顔で口を開いた。

 

『だがどうする。『ヤマト』のカレル163の戦例を見るまでもなく、

 このまま星団深部へ向け緊急ワープを実施したとしても

 内部天体の干渉を受けワープアウトする地点は決まっているようなものだ。

 当然、敵が待ち伏せている公算が高いぞ』

 

「では、コースを外れ星団外へ脱出すべきです!

 ボラーの間接護衛艦隊は星団を迂回するルートにいると思われますから、

 何としてでも彼らと合流する必要があります!」

 

『それで行こう。

 だが、無人船団を連れて事前設定の航路外への緊急ワープは少し時間が必要だ。

 それまでに敵の新手が現れ、さらなる追撃を受ける危険性がある』

 

『しかし司令、事ここに至れば無人艦を伴う必要はないのでは!?

 無人戦艦は機密保持のため全て自爆させ、無人輸送船は放置し、

 本艦と「アリゾナ」のみで脱出すれば良いと考えます!

 政府や上層部の方針は何よりも戦争回避と人命重視だったはずです!』

 

通信の彼方、船団旗艦『ペンシルバニア』上の船団司令と艦長の間で対立が生じる。

ドイル中佐の言は『ペンシルバニア』乗員の命を預かる人間として至極真っ当な

主張ではあったが、アラルコン少将も考えを譲れぬ根拠を語った。

 

『確かにそうだが、ここで我々が船団を放棄するのは地球に禍根を残す。

 無人艦の糸を引いているであろうボラー叛乱軍、さらにボラー体制側が

 我ら地球軍が「無人艦の襲撃に恐れをなして船団を置いて逃げ去った」などと知れば、

 この先地球は大いに侮られ、ひいてはいつかボラーの侵略を呼び込む恐れがある……

 この際、自衛戦闘による敵艦撃沈も止むを得ん。

 我々の名誉などではない、地球全体の威信が懸かっているのだ!!』

 

 

「―――船団の離脱に時間がかかるなら、我が『アリゾナ』が敵の足止めを務めます。

 つきましては、後衛隊の「シャムシール」、「メイス」隊に加え

 「クレイモア」と「カタール」「シミター」の両隊をお預け願いたい」

 

『なにっ!?』

 

北米軍屈指の俊英たるオニールは脳内で瞬時に現状を整理し、援ボ船団「TB-16」、

中でも自身が率いる護衛戦艦『アリゾナ』がどのような行動をとるべきか――

善後策を弾き出した。彼の結論に、同級の盟友ドイルが血相を変えた。

 

『やめろオニール、無茶だ! 敵は絶対にあの無人駆逐艦13隻では済まん!

 「アリゾナ」と無人艦十数隻では太刀打ちできない、

 何十…百隻単位の敵が増援で出てくる可能性が高いんだぞ!』

 

「このまま船団を守りながら現位置を維持するにしても同じことだろう。

 戦力分散のリスクはあるが、船団を逃がせる可能性に賭けるべきだ」

 

『確かにな……すまんが頼めるか、オニール中佐』

 

『司令!!』

 

『アリゾナ』艦長の身を挺した献策を容れる意向を見せる船団司令に対し、

その僚友が叫ぶ。そんなドイル中佐に対し、級友オニールは自信満々で告げる。

 

「そう心配するな、我が『アリゾナ』は不沈戦艦だ。

 その妹(ペンシルバニア)に乗るお前なら分かるだろう? ―――お互い生きてまた会おう、ドイル」

 

『大馬鹿野郎が……死ぬなよ!!』

 

「無論だ。」

 

斯くして回線は閉じられ、後方の敵駆逐艦群が援ボ船団との距離を詰めてくるまでの

僅かな時間の間ながら、船団が降って湧いた危機を退けるための作戦が決まった。

 

オニール『アリゾナ』艦長は、先ほどまで友へ見せていた自信に満ちた笑みを消し去り

緊張した、それでいて悲観的ではない、神妙な表情で艦内放送向けのマイクを取る。

先ほどの通信で決まった内容は、既に副長が各部に通達していたが、

それに続ける形でオニールは『アリゾナ』全艦へ演説を行った。

 

 

「諸君、勝手に決めて済まんな。

 ――だがこれは将来の地球の、我々の子供たちの危機でもある。

 私と、この『アリゾナ』と共に、生命を張ってくれるか!!」

 

「「「「「オオオォォォーーーッ!!!」」」」」

 

オニール艦長以下幹部乗員が着座する『アリゾナ』第一艦橋からだけではない。

『アリゾナ』初実戦に昂る艦内全体からの鬨の声が

艦橋へつながるエレベーターシャフトを介してか、

「北米軍の当たり年」が一人、チャンス・P(ピルズベリー)・オニール中佐の耳に確かに届いていた。

 

オニール『アリゾナ』艦長は、旗艦から制御(コントロール)権を移行されて船団直掩から離れた無人戦闘艦を、

戻ってきた『シャムシール』以下後衛無人艦隊に追加した

16隻の殿軍僚艦を窓越しに見渡し、高らかに作戦開始を宣言する。

 

「よォし、やるぞ諸君。

 連中がさしずめ野犬……狂犬であるのに対し、我が味方は精悍なる猟犬だ。

 ドッグ・ファイトと洒落込もう――

 『アリゾナ』という優れた主人(マスター)の有無による差を思い知らせてやれ!」

 

 

西暦2206年12月28日午前8時37分。

援ボ船団TB-16の直衛任務を解かれた護衛戦艦『アリゾナ』以下17隻は、

突如としてTB-16船団後方に出現、攻撃を開始したボラー無人艦群との戦闘を開始した。

後に言う、「スカラゲック海峡星団海戦」の幕開けである―――。

 

 

 





次話は明日18時投稿予定です。
3199公式第七章でも大活躍なアリゾナと無人艦隊の、
拙作独自の活躍にご期待下さい!

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