宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者 作:モアンゴル
【第39話】
「敵がミサイルを撃って来る前に仕留める! 前部主砲、
「『クレイモア』『シャムシール』主砲射撃開始!」
同型艦『ペンシルバニア』が船団護衛に残った半数の無人護衛艦と共に
ボラー連邦体制側の民間人に供与する人道援助物資を満載した無人輸送船を護衛して
スカラゲック海峡星団からの脱出を目指し現宙域を離脱していくのを尻目に、
護衛戦艦『アリゾナ』とハンドラー級・ハウンド級無人戦闘艦計16隻は
船団を追尾していた襲撃者、改カルチヤ級無人投射艦13隻との対決に臨む。
戦力で言えば、戦艦1隻・大型巡洋艦2隻・重駆逐艦14隻に対し敵は駆逐艦13隻。
宙雷武装ではともかく、火砲兵装においては圧倒的に地球艦隊が優勢であり、
アンドロメダ級譲りの長射程かつ高威力の収束圧縮式
『アリゾナ』の正確な長距離砲撃――それも間断ない連射によって、
ミサイルによる再攻撃をする間も与えられずボラー無人艦は次々に血祭りに上げられていった。
「敵艦の後方、新手です!」
「ぬぅっ!」
だが、最後の無人カルチヤ級二隻がそれぞれ『アリゾナ』『クレイモア』の射撃を受け
爆発四散する直前に、新たなボラー襲撃艦隊がワープアウトしてくる。
「巡洋艦18、駆逐艦9! 左右に展開しこちらを包囲せんとしています!」
「連中の編成を見るに、先ほどの駆逐艦隊はボラー軍で言う『投射艦中隊』、
今出てきた混成艦隊は『打撃艦大隊』と言った所か。 ……空母はいないか!?」
敵後続の陣容から編制を推測するチャンス・P・オニール『アリゾナ』艦長。
彼は記憶していたボラー軍の標準編制から、敵に空母が居る可能性に思い至り
レーダー手に問い掛ける。
「現時点ではそれらしき敵艦も、敵航空機の姿も確認できません」
「そうか、だが無人機隊の射出準備はしておけ! 対空警戒も厳とせよ!」
幸いにも未だ襲撃側の航空戦力の出現はない、と答えを受ける艦長だったが、
敵艦隊の襲撃というこれまでの想定では「万が一」が起きてしまった今、
オニールはどんな可能性もあり得るという前提で殿軍の指揮を執っていた。
そのため、『アリゾナ』格納庫に搭載されている二式無人迎撃機「コスモクロウ」24機は
敵航空戦力の出現に備え、全機が発進準備を整えて待機中であった。
「しかし、包囲を試みているとなると……やはり波動砲が使えないのは痛手ですね」
硬い表情で呟いたのはネイティブアメリカン系に先祖を持つらしい『アリゾナ』副長。
彼の言う通り、援ボ船団を率いる地球軍のヤマト級・アリゾナ級護衛戦艦は
ボラー連邦勢力圏への進入の条件として、発射回路の一部撤去による
波動砲の使用不能化が厳しく義務付けられていた。当然この時も例外ではなく、
『アリゾナ』は地球軍戦艦の切り札・波動砲抜きでの初実戦を余儀なくされていた。
「構わん。波動砲がなくとも『アリゾナ』の戦闘力はそこらの戦艦を遥かに上回る。
それに孤立無援でもないのだ。敵が包囲を企てているなら、食い破るまでのこと!」
全く気後れの色を見せずに艦長が返す。
宇宙戦艦『アリゾナ』も彼の言葉に応え、証明するかの如く、
艦上にある三基の主砲と船体左右側面に各一基ある副砲から青い光条を放ち、
地球艦隊を圧し包まんとする敵の艦列から一隻、また一隻ともぎ取っていく。
だが、恐怖を抱かない無人艦で揃えられた襲撃者はたじろぎもせず歩を進め続けた。
やがて敵艦も自らの兵装の射程に襲撃目標を捉えたらしく、
緑色の陽電子ビームとミサイルが地球艦隊へ迫る。
「『クレイモア』、防壁弾発射!」
包囲を図る敵が放った、怒涛の砲火に応じたのが
大型無人艦『クレイモア』から射出された一発のロケット。
それは地球艦隊全面で傘のように青い防禦の幕を広げ、ビームの雨とミサイルの礫を阻む。
数と質の相克、それを制したのは―――質、地球側だった。
「敵無人艦群第二波、撃滅!!」
「船団は?」
「海峡星団外周へ向首……緊急ワープを開始した模様!」
「よし、ワープまでの時間稼ぎは果たしたらしい。後は追撃させんよう引き付けねばな」
報告を聞いたオニール艦長は目的の半分を果たしたことを確認し、相好を崩す。
が、それも長くは続かなかった。
「敵第三波がワープアウトした模様、星団深部側からの転移です!
規模は先程の『打撃艦大隊』と同等!」
「やはり向こう側で待ち伏せていたらしいな……
敵の進路を塞ぐぞ、ワープ中の船団の盾になれ!」
オニールは敵と船団を挟んで逆方向にいた『アリゾナ』以下殿軍部隊を変針、
二十隻の巡洋艦と十隻弱の駆逐艦からなる敵第三波の前に急進させて立ちはだかる。
さらに彼は、先ほどよりも積極的な攻撃を『アリゾナ』と無人艦隊に命じた。
「敵に船団のワープを
敵にワープする余裕を与えるな!」
「舵、敵艦隊へ正対! 最大戦速へ!」
「波動防壁、艦首に集中展開!」
「主砲・副砲、各個目標へ全力射撃!
「無人艦各隊、フォーメーションDで航続!」
オニール艦長は、『アリゾナ』艦長席で獅子吼する。
彼は先ほどは防御、波動防壁に重きを置いて回していたエネルギーを、
今度は推進・加速に割り振ることで、『アリゾナ』を高速で敵艦隊に突撃させた。
青白い光を纏い・振り撒くドリルと化した『アリゾナ』がこじ開けた敵陣の傷孔には
後続する大小の無人艦が食らいつき、破孔を押し広げる。
「ローリングしつつ射撃をばら撒く!
『アリゾナ』の主砲・副砲が吠え、無人仕様のアールヴァ級・バルツイル級に大穴を開け、
あるいは船体そのものを抉り取り、次の瞬間には爆光に変じさせる。
「『クレイモア』『シャムシール』目標、敵駆逐艦列!」
それにハンドラー級大型無人艦が続き、12インチ(30.5cm)
三連装三基(艦上二基・艦底一基)九門という巡洋戦艦相当の火力と空間魚雷を
艦列が乱れて浮足立った無人型カルチヤ級投射艦群へ浴びせ、叩き潰す。
「『メイス』『カタール』『シミター』各隊、ミサイル攻撃を開始せよ!」
トドメとばかりに、ハウンド級無人戦闘艦が雷撃の網を投じ、
敵無人艦隊はこれにかかるか、回避すべく無理な機動をとったために
互いに衝突し爆散、かくして残余の艦も余さず始末されていく。
それはまさに、熟練の
「我が船団、宙域からの離脱を完了させました!」
最後の敵艦が破壊されるのと、離脱する船団の最後の艦(無人護衛艦)が
スカラゲック海峡星団を後にするのとは、ほぼ同時であった。
後には、『アリゾナ』以下殿軍となった地球艦隊のみが残される。
「ふぅ、一先ず
オニール『アリゾナ』艦長が若干の安堵を顔に表出させ、言葉にも滲ませた。
これを受け、副長が爾後の方針を尋ねてくる。
「では、船団を追う形で追跡ワープを?」
「いや、念には念を入れて別方向へ向かう。
そうだな―――まぁ、来た道を引き返すとしよう。
索敵、敵の撃ち漏らし・捉え損ねはないか?
無人艦のも動員して、全方位をレーダー・センサーで再度チェックしろ!」
「ハッ!」
オニール艦長は慎重を期して、周囲に敵の目が残っていないか再確認させた。
2203年の防衛軍戦術教本には、当時の芹沢虎鉄統括司令長官直々の提言によって
「戦域離脱時、後方宙域へのワープを行うにあたっては残存する敵から
進路を
記載されており、オニールはこれを忠実に実行している。
そして、無人艦群とも連携した宙域の残敵捕捉の試みは、
『アリゾナ』レーダー手からの報告で締め括られることになった。
「―――敵性物体の反応、やはり確認できません。あるのは敵艦の残骸だけです」
「艦長、敵新手の出現は既に一時間近く途絶しています。
星団に潜んでいた敵無人艦隊は全て撃破したと判断しても良いのでは?
そうでなかったとしても、これ以上当宙域に残っているのは無意味――
それこそ、撤退の好機を逸すると考えます」
ボヤボヤしていると、いつまた敵が来るとも分からない――その意を込めた
『アリゾナ』副長の具申に、オニールはいささかの迷いを振り切るように頷いた。
「……そうだな、全艦反転180度。ワープを以て現宙域を撤する!」
敵襲は完全に退けて当面の危機は去ったと認め、
『アリゾナ』以下の船団護衛艦隊分艦隊17隻は予定航路を遡る形で
スカラゲック海峡星団γ星沖宙域からワープによる離脱を開始した―――。
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「ワープ終了!船体・艤装に損傷認められず!」
「随伴無人艦隊、脱落艦ありません!」
「機関、出力異常なし! ただし、戦闘とワープの連続により暫くワープは不可能です」
「前方1時方向にスカラゲック海峡星団β星及びその惑星群!」
「星間物質の濃度変わらず、コスモレーダーの広域探知に制限あり。
されど、敵らしき艦影は認められません!」
ワープが明け、『アリゾナ』の艦橋要員から報告が次々と上がる。
特に「敵影なし」の報は、乗員一同に「危地を脱した」という安堵を抱かせた。
「多分、さっきの敵第二波はここで待ち伏せてたんでしょうね。」
「うむ、第一波をさっさと片付けてすぐ船団全艦で引き返すコースを取っていた場合、
ワープでエネルギーが乏しくなったところで第二波の敵に鉢合わせていたかもしれん。
そう考えると、艦長の判断が無ければ危ない所だったな……」
『アリゾナ』第一艦橋では、同艦の通信長と戦術長が先ほどの敵について
敵は周到にも援ボ船団の退路を断っていたに違いない、と考察し、艦長の"英断"を讃えた。
その一方、当の艦長オニールは腕組みし、皺立てた思案顔で副長へと話しかけた。
「――副長、『アリゾナ』技術長としての貴官に訊きたい。
敵の無人艦だが、やはり自律制御か?
正直言って動きは単調、遠隔指令されていたようには見えなかったが」
「はっ、恐らくその通りかと。高度な人工頭脳による自律制御でもなく、
事前にプログラミングされた通りに動いていたと考えるのが妥当でしょう」
「だが予め我が船団の動きを読んで、このスカラゲック海峡星団に
あの無人艦隊を配置し行動をインプットした相手はいると考えられる。
もしそいつがいるなら、目的は何だ? どこまでやるつもりだ……?」
片手を顎に当て、無人艦を差し向けたであろう敵――ボラー叛乱軍の思惑を推理する艦長。
戦闘開始前、ボラー叛乱軍のものであろう無人駆逐艦が最初に発見された時にオニールは
「ボラー叛乱軍も現状では中立勢力である地球・ガミラスを敵に回しかねない
"船団への直接襲撃"という冒険はしない」と高をくくっていたが、
実際には数十隻ものボラー無人艦隊が援ボ船団の前に現れ、襲撃を仕掛けている。
「この辺りの叛乱軍部隊の独断専行でしょうか? その場合、厄介な事に……」
「その線も絶対に無いとまでは言えんが、地球と完全な敵対関係になるリスクがある
作戦である上、あの数の無人艦隊を動かすとなれば叛乱軍全体の上層部、
特にトップであるドゥハデス将軍に話を通していない可能性は考えられん。
だがその場合、彼らが地球とわざわざ事を構えようとする理由はない筈だ……。
―――まさか、叛乱軍による攻撃ではないのか……?」
オニール中佐は船団襲撃を行った"敵"の事情について推測を深めるが、その時だった。
「「「!?」」」
突如として、『アリゾナ』第一艦橋にけたたましくアラートが響き渡る。
次いで、悲鳴と化したレーダー手の報告がオニールの耳に飛び込んできた。
「後方にボラー軍艦のワープアウト反応!!―――数、およそ百五十!!」
「なんだとォ!?」
同時に宇宙戦艦『アリゾナ』後方の宇宙空間――超空間との境界面が
散弾銃の子弾を受けた壁のように無数の穴を穿たれ、宙域は新たな来訪者たちを迎えた。
従来より簡易な艦容省略された艦橋構造物という特徴を持つボラー軍艦艇。
それは先立って『アリゾナ』隊が干戈を交えた無人襲撃艦隊と寸分の違いもなかった。
しかも、先ほどはいなかった無人型クロトガ級・アマンガ級戦艦を含む百隻超の大艦隊である。
後衛無人艦の光学カメラが捉えた敵影が映る天井スクリーンを仰ぎ、オニールは唸った。
「この数……星団の奥で待ち伏せていた本隊か!!」
「ば、バカな……なぜ追ってこれたんだ!?」
動揺の声を漏らした副長同様『アリゾナ』乗組員の大半が予想の範疇に置いていた、
「敵大艦隊が」「これほど早く」「『アリゾナ』に追いつく」という非常事態の生起。
ワープ前、入念に周辺宙域を捜索し『アリゾナ』隊のワープを
敵残存艦・潜伏艦艇の不在は確認していたはずだ―――。
副長が驚愕と共に発した言葉はこれを論拠としており、『アリゾナ』艦橋の全員が同意見だった。
『アリゾナ』隊が先の戦場から移動したことを敵が知る術がない以上、
敵本隊がワープを行う場合先ほどまで『アリゾナ』隊がいた星団γ星宙域に出現するはずだ。
仮に一度、γ星沖にワープした場合、ワープエネルギーの回復までには時間がかかり
『アリゾナ』隊が星団β星沖に向かったことが分かったとしてもここまで早くは追いつけない。
『アリゾナ』隊がγ星沖からβ星沖へ移動することを正確に予測できる情報は何もない以上、
いきなり敵が星団内の待ち伏せ宙域からβ星沖にワープする理由はまずないだろう。
単艦か、先に戦った敵先遣隊・前衛部隊のように数十隻単位であれば
「敵本隊が分散して捜索に出、偶然鉢合わせてしまった」という仮説も成立するが、
恐らく敵襲撃艦隊主力の全軍であろう百五十隻もの数がいきなり現れた以上は破綻してしまう。
それこそ、「敵の一か八かによるβ星沖への全力移動が偶然"当たり"を引いた」などという
推理も何もない結論になってしまうため、『アリゾナ』幹部乗員らは混乱し、当惑した。
「―――敵戦艦群のエネルギー値増大、"ボラー砲"を使用する模様!!」
「いかん!! 『シャムシール』、重力子スプレッド発射!」
だが、地球軍人が動揺から立ち直るのをボラー無人艦隊は待ってくれない。
およそ四十隻を数える敵無人戦艦は、ワープ明けでエネルギー回復もそこそこの状態から
決戦兵器たる艦首の重粒子砲『
かつてない危機を察知した『アリゾナ』艦長は、即座に自衛手段を講じる。
「敵、重粒子砲発射!!」
(間に合え……!!)
ハンドラー級大型無人艦『シャムシール』が艦首上部から重力子スプレッド砲塔を展開、
後方へ旋回させるのと相前後して、ボラー無人戦艦群の艦首に眩い黄赤色の閃光が灯された。
重粒子ボラーチウム100が形作る破壊の光芒は、真っ直ぐに前方…地球艦隊へと延びていく。
そして、群れなす"狂犬"の重粒子の牙は、主に忠実な"猟犬"が構えた重力子の盾が受け止めた。
一方は奔流、一方は遮幕となった黄赤と青白の光が激突しては互いに打ち消し合っていく。
しかし、如何せん1対40という数の差から、程なく限界が訪れた。
「重力子フィールド、消失します!」
「クソッ、中和しきれんか!!」
敵が僅かな時間差を置き連続発射したボラー砲光流の最後の一群……十本近い光条を
食い止めていたところで、『シャムシール』の投じた重力子スプレッド弾が変じた
防禦力場は輝きと厚みを失い、とうとう黄赤色の閃光の突破を許してしまう。
そして残った重粒子の束は、三十本もの同胞を無為に散らしたことへの報復か、
あるいは自らを阻み切れなかったことを罰するかの如く、『シャムシール』へ殺到する。
「敵弾、『シャムシール』への直撃コース!!」
「距離と防壁で減衰している、耐え切れるはずだ!」
無人戦艦『シャムシール』は『アリゾナ』戦術長が願望半ばに口にした言葉に応えてか、
ボラーチウムの光線群の大半を回避し、二弾は自艦が備える波動防壁によって弾いた。
が、残る二弾が『シャムシール』の下部砲塔と艦後方の機関ブロック側部に突き刺さった。
長い歴史を持つ星間国家・ボラー連邦が国名を冠するほどに
国防の要を託した決戦兵器ボラー砲は、帝星ガトランティス経由で得た情報から
ガミラス国防軍は「威力は反射衛星砲と同等以上」と評価している。
その見立ては正確であったということが、この瞬間に証明された―――。
「―――『シャムシール』轟沈!!」
「「「―――――!!!」」」
『シャムシール』は頼みとしていた波動防壁という「永久機関がもたらす魔法の盾」が
先に命中した敵弾によって剝ぎ取られた所で、更なる追撃をしたたかに受ける。
同艦の生涯において直に受けた打撃としては最初で最後、最強のものであった。
かくして大型無人戦闘艦『シャムシール』はスカラゲック海峡星団海戦で
最初に敵無人艦による攻撃を受けた艦であると共に、最初に撃沈された艦となったのだ。
援ボ船団開始以降、否、ガトランティス戦争終結後以来、
地球連邦防衛軍宇宙艦隊の大型戦闘艦艇で初の撃沈艦を出した事によって
護衛戦艦『アリゾナ』乗員は大きな衝撃を受けていたが、敵は容赦なく次の動きに出る。
「後方の敵艦隊、左右両端を鶴翼状に展開……両翼を分離させつつあり!」
「快速艦を先に出して包囲するつもりか!!」
オニール艦長は初の僚艦撃沈の衝撃が抜けきらぬ中でも、敵の狙いを看破する。
だが、随伴無人艦隊の戦力的主軸の一角だった『シャムシール』喪失は
その後の対応策定にすぐさま影を落とすことになった。
「艦長、あの数に三方から包囲されてはひとたまりもありません!
一部の無人艦を差し向けて、誘引・牽制しては!?」
「駄目だ。攻撃にも使える重力子砲を持つ『シャムシール』が健在なら
それも一案だったが、ハウンド級数隻を送っても袋叩きにされるだけだろう」
「『クレイモア』は敵戦艦隊のボラー砲再攻撃を防ぐためにも
本艦後方からは動かせません。ここは、本艦を中心として守りを固めるべきです」
オニール艦長は戦術長が出した積極策の具申を退け、副長の意見に頷く。
「敵が優勢な中で消極策に甘んじるのは危うい橋だが、現状そうせざるを得ん。
通信長、周辺への救援要請は行っているな!?」
「はい、先のγ星宙域よりは星団外への通信環境は好条件である筈ですが、
今の所外部からの応答はありません……」
「『ペンシルバニア』ともダメとなると、まさか船団も……?」
「そうだとしても、現状我々にはどうすることもできん。
こちらはこちらで、この状況をなんとしてでも切り抜けねばならん」
『アリゾナ』隊が予想外の追撃を受けている以上、
同じく最初に襲撃を受けたγ星宙域からスカラゲック海峡星団の外に避退した
『ペンシルバニア』以下船団本隊も敵別部隊の襲撃を受けていないとは言い切れない。
しかし、相互に連絡がつかない以上は自力での自衛を全うするので精一杯だった。
その中でオニール『アリゾナ』艦長は方針を固め、麾下各艦の新たな配置を指示する。
「とにかく、救援要請を発信し続けろ。
今の所はエネルギーが足りん上、間違いなく
我々はこの場でヤツらの攻撃に耐えつつボラー体制軍の救援艦隊を待つほかないのだ。
……『クレイモア』へ『メイス5』と『メイス6』を
『クレイモア』自体は後方の敵戦艦隊に正対させ、いつでも波動防壁弾が使えるよう
待機させておくのだ。『クレイモア』の推進は貼り付けた2隻で行わせる!
他のハウンド級は『アリゾナ』の側衛に回して
左右に出てくる敵快速部隊の攻撃、特に敵カルチヤ級のミサイル攻撃を迎撃させる!
陣形転換を急がせろ! 敵両翼の射程に入るまで時間が無い!」
「「「ハッ!」」」
オニールの命令通り、鋼鉄製の"猟犬"たちは慌ただしく陣形を組み直す。
それが終わるか終わらないかの所で、両舷後方から迫り来るボラー無人艦隊快速艦群は
標的である地球軍護衛艦隊分遣部隊との交戦距離に突入してきた……。
右後方からはアールヴァ級十三隻、バルツイル級十二隻、カルチヤ級二十一隻。
左後方からはアールヴァ級十四隻、バルツイル級十一隻、カルチヤ級十九隻。
両方合わせて装甲艦五十隻、投射艦四十隻に上る大兵力であった。
これに、後方からボラー砲で『アリゾナ』隊を狙うボラー戦艦四十一隻と
その随伴艦二十三隻を加えた、計百五十四隻が敵無人襲撃艦隊の総力である。
星団γ星宙域で『アリゾナ』隊が戦った敵第三波の装甲艦・投射艦約三十隻は
星団の奥に潜んでいた本命の伏撃部隊と思われていたが、
それは前衛艦隊に過ぎず、その五倍に相当する艦隊が更に後続していたのだ―――
「接近中の敵艦隊最前列、本艦の主砲有効射程に入ります!」
「頭を抑えようとしているのだろうがそうはいかん。片っ端から叩き潰せ!!」
「第一から第三主砲、左右目標に対し
ボラー無人艦隊快速艦群との交戦の先手は、あのアンドロメダ級戦艦から転用された
長砲身16インチ収束圧縮型
威力向上を主目的として砲身途中にも陽電子収束器が配された形式の砲ゆえ
長砲身であることは収束器の多さに直結、放たれる陽電子ビームは高密度となる。
このため陽電子の収束が解けるまでの時間、
即ちビームの飛距離が長くなることから、射程が延伸されていると言えた。
そしてその長射程・大威力砲が吐き出した、目を焼くばかりの青い光矢は
防衛軍北米部隊選りすぐりの砲術科員の腕により、狂いなく敵艦を射抜いていく。
『アリゾナ』とその随伴艦に並行――先行を図った敵の無人装甲艦・投射艦は
巨大な錐や三叉槍を刺されたかのように船体全てが歪む程の大穴を穿たれ、
或いは羆や獅子の爪を受けたかの如く前後にかけて艦構造を抉られ、削り取られては
爆炎を噴き出して隊列から落伍、火球へと変じていった。
「間もなく、無人艦の交戦圏に入ります!」
「……となると、敵もそろそろ撃ってくるな。『クレイモア』のみ主砲で敵両翼部隊を攻撃!
『メイス』『カタール』『シミター』各隊は敵ミサイルの迎撃に集中しろ!」
随伴無人艦隊と敵快速艦の射程距離がほぼ同等であることから、
戦闘が自軍によるアウトレンジから両軍でのクロスレンジに移ったことを悟るオニール艦長。
先の実戦から命中精度はあまり高くないことを知ったボラー軍の
大威力であると分かった投射艦によるミサイル攻撃への対応に優先順位を置いた彼は、
乗艦『アリゾナ』に対しても新たな指示を発した。
「厄介なミサイル攻撃は根源から叩く。主砲、
「しかしそれでは、敵巡洋艦の砲火を受けることになりますが……」
「確かに近づかれれば精度も多少上がるが、まだ波動防壁で耐えられる範疇の筈だ!」
艦長のこうした判断の下、『アリゾナ』が放つ火線は次々に敵の無人型投射艦へ伸び
終端に鮮やかな断末魔の爆光を点灯させる。俯瞰で見れば、青い光の茎を持つ爆炎の華だ。
しかし、それでも居並ぶカルチヤ級は船体中央のランチャーからミサイルを文字通り"投射"、
大威力の対艦ミサイルが致死の霰として左右から地球艦隊へと降り注ぐ。
「『カタール3』『シミター2』被弾!……『シミター2』轟沈!」
「先の戦いで無駄玉を撃ちすぎたか……!?」
この時点で『アリゾナ』隊は連戦に次ぐ連戦であり、
各艦が搭載する迎撃用ミサイルも払底が近い状況にあるため対空パルスレーザーで
飛来する敵ミサイルに対応するハウンド級無人艦も増え、被弾する艦も現れた。
それだけではない。
「敵巡洋艦、左右より接近! 砲戦距離を縮めつつあります!」
「敵ビーム、右舷に命中! 波動防壁で弾きましたが、このままでは……!」
「くっ! 図に乗りやがって……!」
レーダー手の報告を証明するように、『アリゾナ』を敵バルツイル級のビームが揺るがす。
だが、厄介なミサイル攻撃を止めるためには敵装甲艦に砲を向けるわけにはいかない。
『アリゾナ』戦術長が悪態をつくのも無理からぬことであった。
「『メイス2』爆沈!!」
「ぬぅ……陣形外郭の艦は内側の艦と交代! 波動防壁を再展開させろ!」
敵無人艦隊による包囲網が狭められ、今度は敵艦のビームによって三隻目の喪失艦が出た。
指揮官オニールは必死に応急措置を講じるが、乗員たちの脳内には"手詰まり"の文字が浮かぶ。
「ヤマト型の《ARGOシステム》のような特殊武装が本艦にもあれば……!」
「無い物ねだりは禁物だが、地球に戻ったら
オニール艦長はさも『アリゾナ』が無事にこの場を切り抜け、地球へ帰還できる体で応じた。
彼は誰よりも自艦が危機的状況にある事実を知っているが、
艦長という立場上にあり部下の士気維持を鑑みて、努めて強気に振る舞っている。
そんな中でとうとう、恐れていた事態が起きた………
「敵戦艦隊のエネルギー値上昇! ボラー砲再充填中の模様!!」
「来たか! 『クレイモア』、四式波動防壁弾射出!」
焦燥を隠し切れなくなってきたオニールは引き攣った顔で命じる。
防壁を展開する装置が艦首にある仕様から、推進を両舷に固定した僚艦に任せて
後背に展開する敵戦艦群へ正対した大型無人艦『クレイモア』が防壁弾を展開した。
「敵戦艦よりボラー砲発射反応! しかし……!」
「波動共鳴波発振装置起動! どうした!?」
何かに動揺し、報告の言葉を濁したレーダー手に対して鋭くオニール艦長が問うた。
戦場で不明瞭な言葉は許されないが、仔細を聞くとオニールもまた血相を変えることになる。
「後方の敵戦艦、
「し、しまった!!」
思わず艦長席から尻を浮かしてしまうオニール。
それから少しして、十本の黄赤色をした
発射母艦である『クレイモア』から共鳴波エネルギー供給を受け、
重力子スプレッド防御膜と同等以上の防御力を発揮する波動防壁弾の前に
敵
が、同時に防壁展開弾もその機能を停止し傘状に広げていたフレーム面から
防御フィールドが消失する。
「敵戦艦群よりボラー砲第二射! また十隻だけです!」
「おのれ……! 防壁弾の弱点に勘付きやがったな!!」
まるで血を吐くかのように、『アリゾナ』艦長は苦々しく言い捨てた。
彼が言う通り、かつて『ヤマト』への抜き打ち演習で得られた戦訓から
外交派遣艦に随行する無人護衛艦隊に配備されることになった「四式波動防壁展開弾」は
その運用において無視できない"弱み"を抱えていたのである。
第一に、防壁弾本体から防壁発振元の艦が一定の距離以上を離れると
波動共鳴波が届かなくなり、本来の防壁展開可能時間よりも早く稼働限界を迎える点。
第二に、防壁弾そのものは「実体弾」であるため、積載スペースが必要になることから
物理的な制約がつく―――即ち、「弾切れ」の問題があることだ。
「波動防壁弾は残り6発……! 背に腹は代えられん、射出急げ!」
本来、上記の防壁弾の弱点は防壁弾自体の使用が高頻度でないとする想定――
「防壁弾で攻撃を一時凌ぎ緊急ワープで戦闘宙域を離脱、味方の救援を受ける」という
外交特務艦隊での防壁弾の運用思想から、顕在化しないであろうとされていた。
だが、『アリゾナ』隊が陥った状況は見事にその「想定外」に当てはまっており、
「敵に追われながら後方に防壁弾を張る」状況は第一の弱点を露わにさせてしまい、
敵ボラー無人戦艦部隊が繰り出したボラー砲「多段撃ち」戦術は
数に限りがある防壁弾の消耗を加速させる。
かといって、強力な敵ボラー砲の斉射を防壁弾以外に凌げる方策は『アリゾナ』隊にはない。
非実体のエネルギー弾ゆえ弾数の限りはない重力子スプレッド弾が使える
大型無人艦『シャムシール』は既になく、艦隊散開による回避行動も
左右両方から敵無人快速部隊からの圧迫を受ける状況ではリスキーな選択だった。
しかも、敵先行部隊の挟撃は彼我の距離を一層縮め、攻撃は苛烈になっている……
「『メイス4』機関出力低下、落伍します! 『シミター1』轟沈!」
「敵ボラー砲第三弾、来ます!!」
「艦長、このままでは! ――艦長!!」
「くっ……!!」
万策を尽くし、打つ手なしの状況にまで追い込まれたオニールは、悔し気に呻いた。
自分は何と浅はかだったのか―――そんな考えが胸中に沸き起こる。
無人艦隊は既に半数近くまで撃ち減らされつつあり、全滅するのはそう遠くない。
そうなれば既に全力戦闘を長時間繰り広げて消耗している
『アリゾナ』単艦で敵艦隊と渡り合わなければならない。
そうなれば、『アリゾナ』もただでは済まない――"撃沈"の二文字が艦長の脳裏をよぎった。
「……緊急ワープのエネルギー回復はまだか!?」
「駄目です、あと20…15分はかかります!!」
それでも、オニールは艦長として『アリゾナ』乗組員たちの生命を諦めるわけにはいかない。
戦場からの離脱ができないか機関長に訊くも、満足できる答えではなかった。
(……ワープさえできるようになれば、『アリゾナ』はハウンド級を貼り付けて
トランスワープし、そこからさらに二重ワープを行うことで敵の
後の無人艦隊には遅滞戦闘と機密保持を兼ね自爆特攻を命じればいいが……
エネルギーがない以上は、それも望めんか)
オニールは最後の手段として温めていたアイデアの実現も絶望的であると思い至り、
万事休す、とばかりに瞑目する。このまま『アリゾナ』隊は、数の暴力の前に―――。
(皆、それに『アリゾナ』、すまん―――)
宇宙戦艦『アリゾナ』艦長チャンス・
変転はその瞬間に起きる。
『アリゾナ』電探員席のモニターに突如、新たな反応検知のアイコンが現れた。
「本艦上方にワープアウト反応多数!!」
「敵はまだいるのか……?」
そんなに我々を仕留めたいのか――そんな思いを滲ませ、心底辟易した顔で
オニール艦長が尋ねるが、アフリカ系のレーダー手は表情をこれまでのものと一転させた。
希望の光明が見えたと言わんばかりの声で、彼は叫ぶ。
「識別信号確認!! 体制側の救援艦隊です!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
スカラゲック海峡星団β星沖の戦闘宙域、
苦境にあった宇宙戦艦『アリゾナ』以下・援ボ船団「TB-16」護衛艦隊分遣隊の上方に
ワープ、あるいは装甲艦をブースターに使ったトランスワープで乱入してきたのは、
ボラー連邦現体制に属し、地球連邦の対ボラー人道援助物資船団の間接護衛を拝命していた
ボラー連邦正規軍・第三戦闘艦隊の艦艇群である。
その先頭には、赤い艦体色が際立つ艦隊旗艦『ボルボガフ』号の姿もあった。
「下方、地球艦隊を確認! 数を減じていますが、有人戦艦は健在の模様!」
「なんとか、間に合ったようですな……」
「戦艦隊全艦、ボラー砲斉射!! 目標、地球艦隊を追撃する敵無人戦艦!!」
「ハッ!――木偶どもの好きにはさせるな!
救援艦隊を率いるアーコフ級指揮戦艦『ボルボガフ』艦橋では、
艦隊司令官テヴァン・マガロク中将と旗艦艦長キョードル・ガンプキン大佐が声を張り上げる。
その号令一下、ボラー有人戦艦群の艦首から赤みを帯びた黄色の閃光が一斉に打ち下ろされた。
その様はかつてのボラーの人々が、閉塞した体制打破のために帝政ボラーへ振るった
"鉄槌"を連想、幻視させるような壮観な光景であった。
今まで『アリゾナ』隊へさんざん放ってきたボラー砲を、
今度は浴びせられる側と化したボラー無人襲撃艦隊の戦艦部隊。
簡易仕様の無人艦とはいえ、元がクロトガ級・アマンガ級であるためか
ボラー版波動防壁である
だが、それは防壁の飽和・使用不能化と引き換えの延命でもあった。
「立て直す暇を与えるな! このまま圧し掛かれ!!
「各部ミサイル一斉発射! エネルギー回復次第、陽電子砲の射撃も開始だ!」
戦域突入とほぼ同時のボラー砲斉射で敵戦艦隊の防御力を低下させた所で、
機甲戦を得意とする第三戦闘艦隊はそのままボラー無人艦隊の上方へと突撃する。
「一気呵成」の表現が相応しい猛然たる侵攻だが、敵無人戦艦の反撃は疎ら……
否、相手方の突然の援軍襲来という事態に、地球艦隊の追撃に集中していた無人艦隊は
咄嗟の目標の切り替えが遅れたのである。そしてその遅れは、致命的な隙となった――
ボラー第三戦闘艦隊主力の戦艦部隊が敵無人艦隊戦艦列を蹂躙しているのと同時に、
地球の護衛戦艦『アリゾナ』と随伴無人艦隊を左右から猛射していた敵快速部隊も
上方からの救援艦隊にやや遅れて別に現れた、ボラー救援艦隊高速艦群の猛攻を受ける。
「第一投射艦中隊全艦、『アリゾナ』を取り囲む敵に対し、突撃!!」
戦列の最前に立つのは、援ボ船団の先導艦も務めた投射艦『ヴォルシュティ63号』、
そしてそれに座乗して麾下の僚艦12隻を統率するユーゲニ・ゴノレフ大尉だ。
「
投射艦群を指揮するゴノレフは、『ヤマト』の第一次船団先導中に起きた
ムルマン星壊滅事件の際に味わった無念を晴らすかの如く、敵無人艦群へ果敢に挑む。
やがて、敵戦艦列を平らげたボラー艦隊主力の一部も、取って返してこれに加わる。
旗艦『ボルボガフ』艦橋に仁王立ちするマガロク提督が凛とした声で全軍に命じた。
「これ以上地球の客人に手を出させるな! バース軍生え抜きの意地を見せてやれ!!」
かつてはボラー連邦の属国・バース星の軍に属し、
後にボラー連邦軍へ編入されたマガロク中将麾下の第三戦闘艦隊。
バース星元首にして偉大な革命戦士ラム・ラ=ジェンドラ大公の薫陶を受けた彼らは、
その誇りと共に、「地球艦隊を守る」大任を遅ればせながら果たさんとしていた―――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……どうやら、助かったようですな」
急場を乗り越えたという一抹の安堵を抱きながら、『アリゾナ』副長が呟いた。
艦外の宇宙空間では既に戦闘は終結しており、一時は『アリゾナ』隊を取り囲んだ敵無人艦隊は
ボラー軍救援艦隊によって完全に掃討され、現在は『アリゾナ』を起点として
ボラー軍救援艦隊が再集結中であった。
「だが、油断は禁物だ。まだ何があるか分からん」
艦長オニール中佐は開戦以来何度も形勢が変化したことから警戒を解いていなかったが、
彼もまた、険しく皺立てていた表情を緩めている。
「……艦隊の残存艦を報告しろ」
「はっ。本艦のほかに健在な艦はハンドラー級『クレイモア』、
ハウンド級『メイス1』『メイス5』『メイス6』『カタール1』『シミター3』。
以上、6隻です。残存艦もミサイルはほぼ払底、全艦が損傷しています」
「半数以上、いや、2/3が……!」
「そんなにやられたのか……」
『アリゾナ』戦術長の損害報告に、他の艦橋クルーは絶句する。
TB-16船団護衛艦隊分遣隊にとって、このスカラゲック海峡星団における戦闘……
特にβ星宙域における敵主力との遭遇戦が如何に苛烈であったかを物語っていた。
この報告を聞いたオニールは感慨深い表情を浮かべ、艦内放送のマイクを取る。
「もしも、我が『アリゾナ』単艦で戦闘に臨んでいたら……撃沈は免れ得なかっただろう。
……我々の刃となり、盾となり、そして散っていった無人艦には、感謝の念に堪えない。
『アリゾナ』全乗員に告ぐ。忠実で勇敢なる我らが"猟犬"たちに、敬礼!!」
艦橋含め、宇宙戦艦『アリゾナ』の艦内各所からは無数の敬礼が虚空へ向け捧げられた。
『アリゾナ』を囲む大小の無人戦闘艦は各所に損傷を受けているのに対し、
青を基調とする『アリゾナ』の船体・艤装に大したダメージはない。
波動防壁の展開も大きいが、攻撃の多くを護衛無人艦が吸収していた事の表れでもある。
無人戦闘艦たちは、「艦艇乗員の死傷を極限まで減らす」という設計・建造時から
与えられていた使命を十全に務め、このスカラゲック海峡星団に果てていったのだ。
こうして、公式的には敵味方に戦死傷者が一人もいないという世にも奇妙な宇宙戦闘、
この世界において「スカラゲック海峡星団海戦」と呼ばれることになる戦いは終幕を迎えた。
時に、西暦2206年12月28日・夕刻のことである………
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