宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第四話 往く艦、来る艦

 

【第4話】

 

 

共和政ガミラス本星にて開催される観艦式に参加するため、

宇宙戦艦「ヤマト」を筆頭とした地球連邦防衛宇宙海軍・第六五任務部隊(TF65)は

銀河間航路を一路大マゼラン銀河へ向け航行している。

 

任務部隊の集結地点であった原始星系から、天ノ川銀河系外縁部にある

亜空間ゲートへ向けた道のりでの最後のワープを終えてから程なくして。

宇宙戦艦「ヤマト」艦内の、同艦の事実上の応接間となっている士官室では、

「ヤマト」に乗艦している使節団に対し古代艦長が航海状況の説明が行われた。

 

「成程……現在のところ、航海は順調と。それを聞いて安心しました。

 将兵の皆さんに、よろしくお伝えください、古代艦長」

 

「はっ」

 

OMCS製のコーヒーが置かれたテーブルを挟んで古代と向かい合っていたのは、

大多数の「ヤマト」乗組員たちと同じく極東管区の出身者である、

遣共和政ガミラス友好使節団団長・曽根川恒夫(そねかわつねお)外務局次官。

彼は、慇懃な口調で古代との相互事務連絡を締め括った。

 

 

 

「よぉ、お疲れ。艦長」

 

「島!」

 

古代が士官室を後にすると、その道中で島大介「ヤマト」副長兼航海長と遭遇する。

どうやら、使節団長との連絡業務が終わるのを待っていたようだった。

 

「話さないか、艦長室で」

 

「あぁ、構わないが。 どうしたんだ?」

 

立場上は「ヤマト」のトップとNo.2だが、周囲に他の乗員がいないため

互いの口調は同期生・親友のそれとなっている。

二人はそのまま、「ヤマト」の塔型艦橋最上部にある艦長室へ移った。

 

 

「……古代。お前の目にはあの使節団長、どう映る?」

 

「……どう、と言ってもな。 回りくどい言い方するなよ、島」

 

艦長席の三方を占める窓には宇宙空間と任務部隊の僚艦の姿が映っており、

古代と島の二人はその中で、OMCS製の紅茶を片手に語らっている。

 

「曽根川外務次官。……あの人を見てると、思い出すんだよ。

 伊東さんとか、ヴェルニー副団長を」

 

「……!」

 

島の口から出た言葉に、一瞬目を丸くする古代。

だが同時に、彼の胸中には"納得"の感情も沸き上がった。

 

島の言う曽根川使節団長から想起される二人、伊東真也とクロード・ヴェルニー。

そのどちらも、古代進にとっては苦い記憶の象徴であった。

 

前者はイスカンダルへの最初の航海の際、"イズモ計画派"のスパイとして

「ヤマト」のビーメラ4寄航時に造反を起こし、その失敗後は営倉へ送られたが

七色星団海戦時の混乱で脱走・収容所惑星レプタポーダに行く輸送機に密航し

そこで命を落とした。なお、当時「ヤマト」のイスカンダルへの水先案内人だった

ユリーシャ皇女は彼との交流とその死を看取ることで少なからぬ影響を受け、

最終的なCRS(コスモリバースシステム)の地球への供与に貢献している。

 

後者は二度目のマゼラン銀河への派遣行時に乗艦した使節団の副団長で、

マゼラン圏のガミラス属州惑星の分離独立派を鎮圧するため、

「ヤマト」がガミラス民主政府と協同姿勢を取っていることを示す

デモンストレーションを行わせたが、その裏では地球の波動砲軍備を

正当化・既成事実化するために動いていた。

古代ら「ヤマト」クルーが内心反発していたこれらの行動は結果的に

地球の復興とその後の対ガトランティス戦争における勝利に繋がった。

 

彼らの思想や行動は、決して古代らの理想に沿うようなものではなかったが、

それが地球人類の存続に欠かせない結果を与えたことは認めざるを得ない。

必然的に彼らは古代が抱える理想に立ちはだかる現実という名の壁を

代弁するかのような存在として記憶されていた。

 

 

が、それがなぜ曽根川外務次官から想起されるのであろうか。

古代と島は考えたが、「雰囲気と立ち振る舞い」がその原因と結論付けた。

慇懃な口調に、油断のない冷たい視線__そういう面では、確かに似ている。

しかし、無視できない"繋がり"もあった。

 

「曽根川次官は、現外務長官のヴェルニー氏の子飼いの部下らしい。」

 

「似た者同士だから引き揚げた可能性もある、か。

 ……やっぱり前回みたいに何か腹に一物あるんじゃないのか?」

 

曽根川はヴェルニーが次官時代から目をかけてきた人材で、

目を見張るほどの勤勉ぶりによってヴェルニー新体制下の連邦外務局で

外務次官へと出世したらしい。

因縁ある上司を持つため、島は曽根川に疑いの目を向けたが……。

 

「……どうだろうな。」

 

古代は歯切れの悪い答えを返す。

島が疑問符を浮かべた表情を盟友に帰すと、古代はぽつぽつと語りだした。

 

「これは他の使節団員から聞いた話なんだが……

 曽根川次官には、もう家族がいないらしい。

 婚約者もいたそうだが、やはりガミラスとの戦争時に、な。」

 

「……そんな事情の人間が、ガミラスに友好使節として送り出されれば

 そんな雰囲気にもなる、って訳か。 向こうで問題が起きなきゃいいが……」

 

島は外務局は何を考えているんだ、といいたげな顔でこぼした。

一方で古代は、別の感想を抱いている。

が、ここで口に出すことはせず、代わりに沈滞した空気を変えるため

新しい話題を持ち出した。

 

 

「……それより、俺が気になるのは新人たちのことだ」

 

「お、出たな、鬼の古代」

 

「茶化すなよ、島」

 

2205年の宇宙戦艦「ヤマト」には、

防衛大学校を卒業したばかりの新乗組員が数多く乗艦している。

その中には、かつて古代に握手を求めたことがある者や、財閥令息のエースなど、

古代らには2199年の自分たちを思い出させるような個性豊かで将来有望な者が多い。

彼らをこの航海の中で、立派な宇宙戦士に育て上げることもまた、

古代にとって重要な事項の一つであった。

 

訓練計画について副長と意見交換をする中で、古代はふと視線を窓の外へやる。

そこには、同じく極東管区に籍を置く改D級特設補給艦「アスカ」の姿があった。

 

「………」

 

古代はその艦に向け刹那、慈しむような優しい視線を向けると、

現在は部下となった盟友との議論に戻ったのであった。

 

 

 

 

対して、古代が愛情の滲む視線を送った先の「アスカ」では。

 

「……あら、やっぱりお父さんのフネが気になるの?」

 

金色の長髪を垂らした女性が、窓際から「ヤマト」の姿を見ている。

その腕には、幼い命が抱かれていた。

 

「もうしばらくよ。

 ……もうしばらくしたら、お父さんにまた会えるからね、()()

 

 

金髪の女性……遣共和政ガミラス使節団員の一員となった古代進の伴侶・雪から、

『美雪』と名を呼ばれた黒髪の赤子は、彼女の言葉を理解しているかのように

喜びの感情を顔に、全身に表していた_____

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

一方。

 

第六五任務部隊旗艦・ドレッドノート級宇宙戦艦「ワシントン」艦内にて。

 

艦隊司令官ルーベン・ワード少将の執務室に割り当てられた部屋に、

旗艦艦長を務めるジェームズ・ハーモン大佐が訪れた。

 

ワードとハーモンは共に、地球連邦と帝星ガトランティスの本格的衝突としては

初となる戦い『ガミロニアⅧ海戦』に、艦隊司令と旗艦艦長という現在と同じ立場で

参加したことがあり、その勝利に貢献した功績によってそれぞれ昇進。

その後ガトランティス戦争が本格化し、昇進した先でも重要作戦に参加したことで

生き延びたワードとハーモンは今でも防衛軍の第一線将官・士官としてここにいる。

 

そんな彼らは、執務室のソファに向かい合う形で腰掛け、談笑していた。

 

 

「それで、訊きたいことがあると言ったな。話せることなら何でも話すぞ」

 

ワードが紅茶を啜りながら言った。ハーモンはそれを受け、話を切り出す。

 

「……閣下、我が『ワシントン』にTF65の将旗を掲げて頂けるのは光栄でありますが、

 詳細な理由をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

 閣下が小官の艦に乗艦なさるのは、あの"ガミロニアⅧ海戦"以来ですが、

 その時の"ゲンカツギ"だけが理由ではありますまい?」

 

馴染みの旗艦艦長の口から出た問いに、しばし目をパチクリとまじろぐTF65司令官。

彼は紅茶を飲み干し、喉をしっかり潤してから質問に答えることにした。

 

「その事か……。

 確かに、使節団と諸々の調整をする面で考えれば、

 彼らが乗艦する『ヤマト』や『アスカ』を旗艦とすべきだったのだろうが、

 万一のことが起きた場合、あの二艦は艦隊を離れて避退する手筈となっている。

 これは、君も知っているな?

 艦隊司令官が、部下を見捨ててトンズラこくわけにはいくまい。」

 

「ハッ。」

 

ハーモンが淀みなく応えることから、ここまでは予測の範囲内で、

"その先"の理由を知りたがっているのだろう、とワードは気付く。

 

艦隊司令は今後の彼との関係を考え、本音を明かすことにした。

 

 

「……それに、あの二隻は極東管区の艦だ。

 正直、同郷の艦に身を置いた方が、

 私としても、北米出が多い司令部スタッフとしても気が楽でな」

 

「なるほど……。

 しかし、それでは『サウスダコタ』でも問題なかったのでは?」

 

「ん?」

 

艦長からの思わぬ追加質問に面食らうワード提督。

彼は続けて疑問に思った訳を述べる。

 

「本艦より完成が早かった分、ブラックウェル艦長を始め、

 同艦クルーは運用に習熟しています。万一を考えれば、あちらの方が……」

 

D級戦艦「ワシントン」を預かるハーモン大佐からの問いは、

なるほど、()()()()()()()()()にとって、極めて合理的なものである。

 

"前回"の地球軍艦による大マゼラン遠征である、

2201年の「ヤマト」のガミラス治安回復支援航海で、旧親衛隊残党の奇襲を受け

危うく「ヤマト」を沈められかけた防衛軍としては"万一"の非常事態への対応を

より確実性の高いものとするのは、当然である。

非戦闘員である外務局の使節団員を乗せていれば、尚更だ。

 

対して、ワード提督は()()()()()()()()()()()()という面から

ハーモン艦長の疑問に答えるのだった。

 

 

「……まぁ、正論だな。

 だが、実を言うとな、私とブラックウェル艦長は同期なんだ。

 ……貴官なら、これが意味するところが分かるのではないかね?」

 

「あぁ、そういうことですか……」

 

任務部隊司令官によるカミングアウトを受け、ハーモン大佐は得心が行った。

先ほどハーモンが「自分よりD級の運用に長じている」と評した、

D級戦艦「サウスダコタ」艦長、ジン・ブラックウェル大佐とは

同じ戦艦戦隊に属する艦長同士交流があり、彼の為人・事情について知っている。

 

ワードは、軍帽を外した頭を掻きながら呟くように語る。

 

「あいつが遊星爆弾症で伏せてる間、私は昇進したからな……。

 艦隊司令と旗艦艦長として、毎日のように顔を合わせるには、気まずいじゃないか。

 上役二人がぎこちないと、司令部スタッフとクルーの士気にも関わる。

 だから、貴官の艦にお邪魔させてもらったという訳だ。」

 

ワードが軍人と言う一種の組織人として、ある程度上り詰めることができた理由に

相応の視野の広さと、上司・部下・同僚・そして敵の考えを推測できる頭脳が

一端として挙げられるだろう。

 

納得のいく答えが得られたハーモンは帽子を被り直すと、

執務室のソファから立ち上がり、見事な敬礼を提督へ向けた。

 

「……疑問が氷解しました、閣下。

 小官の些事にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 旗艦艦長としましては、全力で任務に努めさせていただくのみですが、

 よろしくお願いいたします。」

 

対するワードも、軽く敬礼を返す。

 

「こちらこそよろしく頼む、ハーモン艦長」

 

 

軍人として忠実に任務に励む彼らだったが、

この時はまだ、自分たちに待ち受ける"非常事態"について、知る由もなかった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

……同じ頃、地球の親善派遣艦隊(正確にはその一部の構成艦)が通過した、

銀河系内空間を太陽系方面へ向けて進行する、一隻の船があった。

 

船籍はガミラスだが、おおよその艦型は地球連邦の23世紀標準輸送艦・連邦(フェデラル)(FE)型だ。

 

"おおよそ"という前句が付く理由は明白である。

そのFE型輸送艦は、貨物ブロックが通常より二回りほど巨大化しているのだ。

貨物区画だけで通常のFE型に相当し、艦の全長は300mに達しているであろう。

 

これほどの大型艦にも拘わらずその艦橋内にある人影、否、

乗艦する全操船人員は僅か三人で、残りは機械人形(ガミロイド)が占めている。

とは言え、この艦のベースとなったのは旧波動砲船団に属し、

戦後に共和政ガミラス移民計画を支援する一環として改装・供与された輸送艦。

土星沖での白色彗星迎撃戦・ガミラスへの回航など、艦歴のうち大半は

少人数による運用どころか無人運航が占めており、初めて乗艦した人間は

建造国・地球の人間ではなく、供与後の運用国・ガミラスの人間という始末だった。

 

同船はガミラスへ移譲された後、しばらく移民計画用の物資輸送船として運用されたが、

地球暦2204年の末に同任務から外され、上記の異様な外見へと改装され、

2205年2月に新たな特命を帯びて、ガミラス中枢から同盟国・地球へ向け発進する。

 

この船___ガミラス当局から出航を知らされた地球側によって与えられた

符丁(コードネーム):『レッド・ワン』がそのまま艦名となった改FE型輸送船が、

どのような使命を担っているのかは、艦橋に居る乗員の顔ぶれから、

概ね把握することができた……。

 

 

「ハイニ大尉、報告します!! 本船は只今、第20予定空間点を通過しました!

 目的地:地球(テロン)までの予想航海期間は、現時刻より一週間となります!!」

 

「おう、ご苦労さん、レダール。相変わらず声でけェな」

 

「ありがとうございます!

 ……スケルジ先輩、機関状況はいかがでしょうか?」

 

「あぁ、問題ないよ。 バラン星で整備したのが効いたみたいだ」

 

改装に伴い、ガミラス艦船特有の緑色系統の色で塗り直されたFE級の艦橋内部に、

若く張りに満ちた声が響き渡り、二つの壮年男性の声がそれに応じた。

 

報告したのは、共和政ガミラス国防軍の航海士、レダール・グロツバワ。

この宇宙輸送船「レッドワン」の船長役であるゴル・ハイニ大尉とは同郷で、

ハイニがガミラス軍内で『猟犬』と名高いヴォルフ・フラーケンの副長として

活躍していることから、彼に憧れ同部署を目指したという経歴を持つ。

ハイニも、「レッドワン」機関長役のヤーブ・スケルジ機関兵曹も、

この実直で軍務にひたむきな若者に好感を抱き、よき指導役として接していた。

 

「しかし、一週間か。 まぁ元の計画の誤差の範疇だが……」

 

「我々の任務期間を考えますと、本国への帰還時期は、概ね予定通りかと!」

 

特務輸送船「レッドワン」は、大マゼラン出立後しばらく機関不調が発生したため

ハイニ船長の判断で新バラン鎮守府に入港し、入念な機関整備を行った影響から

予定スケジュールから若干の遅れが生じている。

だが、彼らが輸送しているものは、それほどまでに重要で、

同盟国・地球へ確実に届ける必要性があったのである。

 

「確かに"帰るまでが遠足"って言うしな。キャプテンに要らん心配はかけられんぜ。

 ……それにしたって、まさか()()()地球(テロン)にくれてやるとはなぁ……」

 

グロツバワの言葉にうなずきつつ、

ハイニは「レッドワン」が運ぶ"荷物"に複雑な思いを抱いていた。

 

「現在は同盟国ですから、まぁ……。

 それに本国では、新型の次元潜航艦が建造中であると聞き及んでおります!」

 

「それはそうだがよ、上層部(うえ)も思い切ったことをしやがるぜ……」

 

 

改FE型宇宙輸送艦「レッドワン」が、異様なまでに巨大化した船倉に格納し、

共和政ガミラスの同盟国・地球に向けて輸送している"荷物"。

 

それは、かつて宇宙戦艦「ヤマト」を苦しめた〈異次元の刺客〉、

UX01型次元潜航艦の同型艦「UX13」を、丸ごと一隻分であった。

 

本来12隻で調達が打ち切られる筈だったUX01型次元潜航艦を、

ガミラス軍がわざわざもう一隻追加建造してまで地球に供与する背景には、

複雑な事情が存在した。

 

対ガトランティス戦後、ガミラスに帰還した()()()デスラー総統と

ヴェルテ・タラン軍需相は、彼らのいないガミラスでは失われたと思われていた

デスラー砲(ゲシュ=ダール・バム)』の設計情報を有していたため、

ガミラスは波動砲の自国生産が再び可能となったのである。

 

ところがそうなると、これまでの地ガ関係の前提が覆るため、

地球側はガミラスによる波動砲の再保有に懸念を示すことになった。

共和政ガミラス及び軍は、同盟国にデスラー砲の保有を認めさせる条件として、

これまで国防軍の最高機密としてきた次元潜航艦技術の開示・輸出を呑んだのだ___

 

 

グロツバワの語ったような事情もあるとはいえハイニは、

自分たちが乗っていた(今でも乗っている)次元潜航艦の情報を、

かつて戦火を交えていた国家に渡すことについて思う所がある。

 

それでも彼らは、輸出のために造られたUX01型のイレギュラー・「UX13」の

回航要員として、次元潜航艦の運用について地球側を指導する技術交流官として、

職責を果たすべく地球へと向かっている。

そこには、危険と隣り合わせの亜空間で闘ってきた、

次元潜航艦乗組員(スペースサブマリナー)としての矜持と誇りがあった。

 

 

「そういやヤーブ、お前最近元気がないが、お前も不安なのか?」

 

「あぁ、いえ。……家族は今どうしてるかな、と思いまして……」

 

そんな中、ハイニはフラーケンの下で鍛えられた嗅覚・勘で、

近頃のヤーブ・スケルジの異変を感じ取っていた。

ヤーブは昨年、食堂を経営していた未亡人と結婚し所帯を持った身であり

「レッドワン」乗艦中は外部への通信が制限されているので、

家族と連絡ができないのが不安という言い分に納得し、ハイニは追及を止める。

 

ヤーブ・スケルジの弁の半分は本音ではあったが、

地球に向かう中で彼を蝕みつつある不安はもう一つの事情に由来している。

 

ガミラス国防軍・次元潜航艦「UX01」機関兵曹ヤーブ・スケルジ。

彼の正体は、宇宙戦艦「ヤマト」から離反・脱出した機関士・藪助治。

つまり地球は、彼が背を向けた本当の故郷なのである。

 

地球には、もう藪の家族はいないが、彼の顔を知っている者はいる。

そうした人々とこの先遭遇して、これまで彼がガミラスで築いてきたものが

水泡に帰すことを、ヤーブは、藪は、何よりも恐れていたのだ。

 

彼としては、

「おやっさん」と慕った元上司・徳川彦左衛門「ヤマト」機関長を始め、

かつての自分を知る人間と地球で出逢わないことを祈るばかりであった。

 

 

 

そんな思惑を乗せながら、次元潜航艦を内部に忍ばせた輸送艦「レッドワン」は、

ゆっくりと、しかし着実に、地球へ向かっていたのだった………

 

 

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