宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第五話 厄日

 

【第5話】

 

 

デスラー紀元109年某日、地球時間換算で西暦2205年4月27日。

 

大小マゼラン銀河を勢力圏とする星間国家・共和政ガミラスが新首都星に定めた

ラドン=エジラ恒星系第三惑星『(ノエン)ガミラス』(旧ゴア星)にて。

 

 

かつては前首都惑星・旧ガミラス星を始めとする国家の中枢・サレザー大管区に属する

都市惑星群に各種食料品原料を供給していた農業プランテーション天体だったゴア星。

惑星の平野は、農業用自動労働力が管理する広大な農地として開墾されていたが、

それらは全て都市移築用地へと転換され、食料生産の役目を終えている。

 

ツァインフェルテ家のような有力貴族がバックにある旧来からのもの、

()デスラー政権打倒に伴う民主化後に誕生した新興のものが入り混じった

多数の大規模天体開発業者によって旧農業用地は都市化のための地盤整備が行われ、

次いでエネルギー・水道や交通機関など生活基盤インフラが整えられ、

綿密な都市計画に伴う低~中層都市建造物の建設が猛スピードで展開。

 

極めつけに、宇宙線などに耐えられるよう表面に特殊な加工を施され、

巨大なリング型重量物輸送艦によってガミラス星から輸送されてきた

ガミラス圏都市特有のキノコやツクシに似た形状の巨大ビルディングが

予め建設工事が為された基礎部へと突き刺さるように"移植"された。

こうして、驚くべき速度で旧首都星住民を受け入れる新興都市が誕生する。

 

新ガミラス星全土における、移築とも形容できる都市建設は

大小マゼラン全域の工業力を結集した一大事業であり、

既に旧ガミラス星人口の7割が稼働を開始した市街に転入し、

かつての首都星での生活と何ら変わらない暮らしを享受している。

青い肌を持つ"ガルマン系"ガミラス人には、免疫強化剤の接取が義務付けられ、

旧ガミラス星以外での環境で長く生きられないという民族体質の改善も進められていた。

 

 

一方、旧首都星に点在した、ガミラス大公国時代ないしそれ以前からある

歴史的建造物も、都市高層建造物などと共に、星間移送に耐えうるよう処置を受け、

地球が供与ないし外部生産を許可したO級重量物輸送艦で地盤ごと星外へ持ち出され

新首都星の中でも、かつての所在地に近い環境・地形へ移設されている。

 

2203年の帰還後初期、デスラー総統の臨時官邸となっていた旧デスラー家別荘もまた、

かつて館が建っていた森林公園とよく似た場所へと移されており、

現在では(ノエン)ガミラス星の主水源の一つたる巨大湖・新バンパレラ湖上に

建設されている人工島、水上総統府『デスラーパレス』が完成するまでの繋ぎとして、

再び臨時総統官邸となる栄誉に服していた。

 

 

そんな周囲と隔絶された環境にあると言っていい臨時官邸の最奥部、

機械人形(ガミロイド)兵に守られた総統執務室の重厚なドアを、何者かが叩いた。

室内で一服していた共和政ガミラス総統アベルト・デスラーは、入室許可を出す。

 

 

「失礼いたします」

 

室内に歩み入り、恭しく敬礼をしたのは、将官用軍服を着た眼鏡の青年将校だった。

 

「___ダークナス将軍か。何かあったのかね」

 

"信奉者"から定期的に送られてくる、惑星メラン産の高級茶葉で淹れた

琥珀色の紅茶が入ったカップとソーサーを両手に収めていたデスラーの

意外そうな声が執務室に響く。

 

このとき総統に謁見したガミラス軍人、ガルヒ・ダークナス少将は、

総統付き侍従連絡武官長職にあり、臨時総統府の一角に部屋を割り当てられているため

彼がここにいることについてデスラー総統は何の疑問も抱いていない。

デスラーにとって意外だったのは、彼が軍務関係の業務がない日には、

決まった時刻以外に執務室を訪れないという通常の習慣から外れたことだった。

 

「ゲル中将から連絡が入っております。

 悪天候が予想されるため、明日の『デウスーラⅢ世』への乗艦について、

 軍港までの移動には陸路をご使用いただきたい___とのことです。」

 

「心配性だな、彼は」

 

報告を聞いたデスラーは苦笑を浮かべた。

ダークナスが口にした『ゲル中将』とは、総統府警備責任者を務めている

ガミラス国防軍のグレマン・ゲル中将を指す。

彼は現在、湖上に建設中の新総督府のセキュリティシステムの監査などのため

部下に総統の警護を任せ、(ノエン)バンパレラ湖に赴いていた。

 

ゲル将軍___本名:グレムト・ゲールも、ダークナス侍従武官長も、

かつてはデスラー派秘密組織『救国軍事会議』の構成員であった。

デスラーの帰還と、それに続くガミラス星の危機の周知、移民計画開始など

目的が順調に達成されたため、『救国軍事会議』は解散する運びとなったが

その繋がりは未だに生きている。

 

「かけがえない御身です、小官もゲル中将の考えに賛成いたします。」

 

真剣な口調で、ダークナスは進言する。

彼も一応、本来脱獄囚として再収監されなければならないゲール元少将の

総統と民族、国家への忠誠心を認めており、彼が新たな名で表舞台に留まり、

彼が敬愛する総統のために働くことを支持していた。

そんなゲールが勧告する以上、ダークナスとしても(たとえ杞憂だったとしても)

デスラーの安全を保障する方策を提示しなければならなかった。

 

「ま、私としても死に急ぐつもりはない。

 少なくとも、国家統合の象徴に相応しい"後継者"が現れるまではね」

 

ゲール、ダークナスの忠告を受けたデスラーは、あっさりとそれを受け入れる。

その様子にダークナスは表情に安堵の色をにじませた。

 

(良かった、万一のことがあればタラン将軍に申し訳が立たない)

 

『救国軍事会議』解散直後、ダークナスは本来の所属であるガミラス国防軍の

参謀本部に人事局長として籍を置いていたが、参謀本部次長職の経験者で

面識もあったガデル・タラン大将によって総統付き侍従連絡武官に推挙された。

本来であれば、タラン自身がその職に就きたかったであろうことは

ダークナスもよく理解していたが、タランは移民計画本部長となったため、

他者にデスラーの側近役を譲らざるを得なかった。

 

その中で、タランが自分を選んだのは、「自身の代役として十分務まる」という

彼からの無言の信頼の証だ、とダークナスは解釈している。

これでもし、デスラー総統に万一のことがあれば、彼の信頼を裏切ることになり

命を以て償わねばならない。いや、とても償えるものではない___

それを思えば、デスラーの判断に感謝する他なかった。

 

(……しかし、"後継者"か。 恐らく、それは____)

 

ダークナスは、デスラーの言葉を聞いて思考を切り替える。

眼前の総統が呟いた、自身の後継者。

旧デスラー派組織に属していたダークナスには、その人物に心当たりがあった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

ダークナス少将が想像した人物の姿は、ガミラスの盟邦・地球(テロン)にあった。

 

 

彼らの立つ舞台は、紺碧の海原に浮かぶ緑豊かな南溟の島・グアム。

 

地球連邦政府から共和政ガミラスが租借している同地には、ガミラス大使館の他、

地ガ両国人が混在する都市、通称『ガミラス租界』が建設されている。

直線を基調とする地球様式のビルと、茸や土筆を思わせる植物的な意匠・

色合いのガミラス様式のビルが共生するように林立する町の一角には、

ガミラス地球駐留軍に属する高級軍人向けのラウンジホールも存在していた。

 

 

「いやぁ、お会いできて光栄です。」

 

「こちらこそ。お忙しい間を縫って時間を作って頂き、感謝の念に堪えません」

 

儀礼的挨拶を交わすのは、共和政ガミラス国防軍軍人バレルド・アクション中将と、

同貴族院議員セグドル・ヴァム=ツァインフェルテ伯爵である。

 

「ご高名はかねがね伺っております。

 バラン星の戦いでは、船団を守るためにご活躍されたとか」

 

「いやぁ、私だけの功績ではありません。

 ソト総司令やヘプラー将軍、銀河機甲軍将兵全員の努力あってこその成果です」

 

アクション将軍の輝かしい功績に触れる伯爵に対し、当人は謙遜で返す。

そんな彼らの様子を見て、伯爵の議員秘書として随行してきた

クラウス・キーマン元少佐は、二人の思惑について推理する。

 

(……伯爵がここに来た訳は、

 前に言っていた"地球駐留軍とのコネづくり"だけではないハズだ。

 もっと直接___地球やオリオン腕植民星群についての情報を探りに来たのか)

 

ツァインフェルテ伯爵一行が、遥か天ノ川銀河の同盟国・地球(テロン)を訪れてから

既に一カ月以上が経過しようとしている。

ガミラスの交渉使節団としての本来の目的であった経済協定締結は

2週間前につつがなく終わっており、使節団長のドルジ帝国銀行総裁をはじめ

使節団の大半は、彼らを乗せてきた要人輸送艦『シャングリ・ラー』号で

既に帰路についているが、伯爵ら一部の団員は現地解散し地球に残留していた。

 

彼らが地球に残った理由は当然、今後進出する天ノ川銀河市場のハブとなる

惑星国家における基盤の確立と情報収集にある。

そうした中で、最も地球の中枢との交流があり、情報を有しているであろう

大使館及び駐留軍に着目されるのは自然な流れであった。

 

(……対して、アクション中将も大使館から何かしら言い含められているのか、

 そう容易く情報を渡す気はないらしい。伯爵の会社に対する交渉材料にする気か)

 

ツァインフェルテ伯爵は、既にメフィルス・ミューラー遣地球(テロン)全権大使が仕切る

キーマンの古巣・地球大使館へ表敬訪問を名目に訪れており、

ミューラー大使はもちろん、大使館付武官長クライクァルス・ノルティオ大佐や

ローレン・バレル参事官ら主要な面々と談話を行い、情報収集をしていた。

この際キーマンも同席させられ、近況報告という形で

会話の口火を切る役回りをさせられている。

 

そんなことがあった以上、アクション中将に対しミューラー大使から

何かしらの勧告がされていてもおかしくはないだろう。

ツァインフェルテ伯爵の宙運企業は、各地のガミラス駐留軍も取引先としており、

地球に展開する部隊もその例外ではない。

情報を与える代わりに、何らかの譲歩を引き出すつもりなのかもしれない。

 

(……ドメル将軍、ソト将軍が前線から去った今、ルント将軍、グデル将軍、

 それにフラーゲ提督と並んで国防軍の屋台骨を担うであろう軍人(ひと)だ。

 流石に一筋縄ではいかないか)

 

 

対ガトランティス戦争後、両国が結んだ天ノ川銀河における軍縮条約に基づき

銀河間航路及びオリオン腕宙域のガミラス軍部隊は大規模な再編がなされた。

 

軍縮条約を抜きにしても、白色彗星帝国との度重なる激戦により、

オリオン腕宙域に展開していたガミラス第一四空間機甲軍団は特に疲労しており

他部隊への交代と本国での休養・再編は不可避であった。

 

そこで、フラーゲ提督麾下のガミラス第七空間機甲師団艦隊に代わって

ガミラス国防軍のオリオン腕宙域部隊の中核として地球に進出したのが、

バレルド・アクション将軍が指揮する、第二空間機甲師団艦隊だった。

同艦隊は、2202年に生起したバラン星攻防戦の勝利に貢献した、精鋭部隊である。

 

またそれに伴い、第一四空間機甲軍団司令官職もフラーゲ提督から

アクション提督へ交代することになったため、

アクションはオリオン腕展開のガミラス全軍を束ねる総大将となっている。

ツァインフェルテ伯爵と張り合うにあたり、相手にとって不足はない。

 

政経と軍事、異なる分野での雄たる二人のガミラス人。

彼らが無言の交渉で、どのような妥結点を見出すのか___

それを見届けることが、今日の課題になるとキーマンは確信した。

 

 

「……伯爵閣下が御息女に事業をお委ねになってから、どれほど経ちますかな」

 

「本国の民主化とほぼ同時だったから……地球(テロン)時間で5年近く経ちますな。

 ま、私に言わせれば、何年たっても可愛い娘っ子ですよ。」

 

キーマンが思索にふけるうちにも、伯爵と将軍による言葉の鍔迫り合いは続く。

世間話に見せかけて、どれだけの手札(カード)を相手に提示できるか。

両人の()()()()()だった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

遠く離れた交渉の場で、ツァインフェルテ伯爵から『娘っ子』と呼ばれた

ユノール・ヴァム=ツァインフェルテ。

 

同伯爵家の令嬢にして、伯爵家が有する企業グループの経営者を務める彼女は

サレザー星系内空間に錨泊させた伯爵家所有の宇宙旅客船を司令部として、

崩壊の危険性から廃星・立ち入り禁止天体となり、全住民が強制退去させられた

かつての大ガミラス本星における天体土壌大規模採掘業(天体解体業)を監督していた。

 

 

元来、ガミラスにおいては惑星の地表の一部を切り離し

天体外へ移送する技術を有している。

大ガミラス帝星時代における、太陽(ゾル星)系・木星(ズピスト)に移送されていた

ガミラスフォーミング研究用の浮遊大陸などが良い例だ。

 

また、対ガトランティス戦争での勝利によって戦利品として入手した

同国の(科学奴隷が開発した)技術情報の中には、大陸規模での天体掘削と

その移送についての技術も含まれていたため、それを併用した研究も行われた。

 

 

___寿命があと何十年となく、廃星となっても、惑星ガミラスは

イスカンダル帝国の時代からガミラス大公国、大ガミラス帝星期を経た

長い歴史を有するガミラス星人たちにとっては精神的な拠り所であった。

またガミラス人がそうだったように、ガミラス星特有の自然環境、

土壌や水などでしか生育しない動植物も少なからぬ数が存在している。

 

例え一部分の大陸だけであっても"故郷の土を踏みたい"という人々の願望を利用し

ガス惑星に浮遊大陸として切り取った大陸を移送・観光業へ活用したり、

上述の限定的環境でしか生育不能な生物種の保存場として用いられることを

念頭に置き、ツァインフェルテ家は作業用の膨大な資材を手配して

ガミラス星で『天体解体業』と揶揄される大規模な天体土壌掘削事業を

独占的に実施する権利を買い取り、巨大事業を開始した。

 

 

事業が開始されて半年が経過しようとしている今。

既に、掘削しやすい外殻と、そこに空いた穴から覗く一部内殻を中心に

大陸級の土壌及び岩盤が切り出され、宇宙空間での移送に耐えるように

各種の処置を施されてからサレザー系の外縁部、さらに系外へと運ばれている。

加えて、内殻海洋・湖沼の海水・湖水も大量に吸い上げられ、搬出されていた。

かつての母星は、軍のガミラス星封鎖監視部隊を率いるワルトハイム大佐をして、

「まるで〈かじられ星〉のようだ」と言わしめるような外観と化していた。

 

これら作業を行うのは、軍縮を行う国防軍が放出したものが中心の機械人形(ガミロイド)軍団と

それらが操る自動機械・無人船舶群である。

星外移送時に表面の環境が維持されるよう特殊なフィールドを展開する装置を

設営したり、岩盤が移送中に崩壊しないよう薬剤を注入したり、

岩盤爆破用の発破を積載した特殊削岩弾(ドリルミサイル)を撃ち込み、"大陸の切り出し"を行い

惑星間弾道弾を転用した超巨大牽引船で大陸を押したり引っ張ったり、

作業は多岐に渡り、どれ一つとして小さなミスも許されない。

これらは、万一に備え危険圏外の軌道空間に展開する、

ユノールが座上する客船を旗艦とした作業船団から遠隔管制されていた。

 

 

「ふあぁ……。

 想像していたよりも進まないものですわねぇ、『天体解体』というのは」

 

「は……。 各段階に、緻密な測定・計算・作業計画が求められますから」

 

船団旗艦たる宇宙客船のホールで、休憩中の伯爵令嬢兼社長ユノールが言う。

それに応じるのは、セグドル・ヴァム=ツァインフェルテ伯爵が自身の右腕、

伯爵家の『大番頭』として頼みにする、伯爵家の軍事顧問デーツァー・ヴァタル。

 

ツァインフェルテ家先代伯爵の忘れ形見ユノールは、亡父の弟で

彼女が「おじさま」と慕う現伯爵セグドルに養女として迎えられ、

蝶よ花よと手厚く育てられたためか、性格は彼に似ておおらかなものに育った。

(とはいえ、社長としての業務はしっかりとこなしているが)

 

対して、国防軍の空間師団艦隊を率いた経験もある切れ者の軍人であった

ヴァタルは寡黙な武人然とした男で、地球(テロン)に向かった伯爵から令嬢の補佐を頼まれ

高い実務能力によって現場作業部門とユノール令嬢の折衝役を務めていた。

 

彼らは既に、いくつもの大陸級地盤がガミラス星から切り出され、

外宇宙へ運ばれていく現場に立ち会い、見届けている。

そのためか、ユノールは惑星が"解体"されるという

圧巻の一言に尽きる光景についても既に見飽きており、

近日開かれる予定の戦勝記念観艦式を見に行くのを心待ちにしていた。

 

 

 

ところが。

 

 

"変転"は突如として発生した。

 

 

『____ヴァタルさん、社長! ガミラス星が急激な地殻変動を始めました!』

 

「「!?」」

 

実際の作業の大部分を統括していた制御母船から船団旗艦に、緊急信が飛び込む。

惑星岩盤の切り出しによる衝撃が蓄積し、大きな歪みとなって

惑星コアを蝕んだのか、元来の寿命だったのか、詳細は不明ながら、

今この時、ガミラス星の旦夕が急速に近づきつつあった。

 

 

『計測機器によりますと、内殻の溶融が異常な速度で進んでいます!

 このままでは……6タム以内にガミラス星は崩壊してしまいます!!』

 

「……お嬢様!!」

 

「えぇ、全船に退避命令!! 封鎖艦隊にも全情報を共有しなさい!」

 

非常事態の報告に、元軍人らしく即座に反応したヴァタルは、

自らが補佐する伯爵令嬢にして事業の最高責任者に即断を促す。

ユノールも伯爵家の後継者に相応しく、凛とした声で応じた。

 

伯爵令嬢の号令一下、緊急事態の際のマニュアルに則って、

全ての作業が放棄され、危険指定区域:ガミラス星に残る全物資・資材を破棄。

『天体解体』作業を管制していた船団の系外脱出が始まる。

同時に、無人の野となったガミラス星を警備する国防軍艦隊へ

惑星の崩壊が差し迫っていることが伝えられ、退避を促した。

 

一刻の猶予もない緊急事態下で対応措置が回っていく中、ヴァタルは、

重い決断を下して力を使い果たしたかのようにソファにへたり込んだ令嬢から、

先ほどの凛としたものとは打って変わった弱気な声を聴いた。

 

「………今日は厄日だわ……。

 おじさまに何と言ってお詫びすればいいの…‥‥?」

 

「………」

 

伯爵からの信頼と支援の下、大事業に打って出たユノール令嬢。

それが一気に水泡に帰そうとしている現状を前に、失意に暮れるのは無理もない。

ヴァタルは彼女に慰めの言葉をかけようとしたが、

何といえば良いのかわからない、自身の不器用さを呪った。

 

 

 

一方、作業船団からの非常事態警報を受け取ったガミラス星封鎖艦隊でも

事前の計画に基づき、安全圏への撤退が開始されようとしている。

 

しかし、一隻だけ例外があった。

それは封鎖艦隊指揮官ワルトハイム大佐の旗艦・戦艦「ワルドルギス」。

同艦橋上で大佐は、高らかに宣言した。

 

「これより本艦は、イスカルダル星王都イスク=サン=アリアへ進出。

 スターシャ・イスカンダル女王猊下とユリーシャ・イスカンダル皇女殿下、

 メルダ・ディッツ侍従武官を救出する!!」

 

「大佐、危険過ぎます!

 もし予想時刻より早く惑星が崩壊してしまえば……!」

 

旗艦艦長や副官は、ワルトハイムに対し翻意を促す。

いくらイスカンダル王族救出のためとはいえ、あまりにも危険だ___と。

 

「わかっている。

 だが、ここでもし我々が全員イスカンダルの高貴なお方たちを見捨てて

 逃げれば最期、君たちも私も総統閣下に処刑されるのは免れまい。

 兵たちも暴徒化した群衆に襲われる可能性もあるのだ。

 すまんが、皆の命を私に預けてくれ」

 

ワルトハイムはもしこのまま脱出してイスカンダル王族に万一のことが

起こった場合でも、自分たちの破滅は免れないと主張、意見を押し通す。

 

「ガミラス星の崩壊予想時刻では、

 イスカンダルの王都はちょうど、ガミラス星に面さない位置にあります。

 ディッツ武官に連絡して、お二方を地下に避難させられれば、

 万一間に合わなかったとしても何とか!」

 

止む無くワルトハイムの決断を了承した副官は、

情報デバイスと睨めっこし、現状で最善と思われる案をひねり出す。

 

「そうか、ならば直ちに連絡しろ!

 ___本国と、総統閣下への至急電は終わったのか!?」

 

「ハッ!」

 

作業船団の民間船や封鎖艦隊の僚艦が次々にワープしていく中、

旗艦のガイデロール級戦艦は単艦でイスカンダル星への加速を開始したのだった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

そして、地球・極東管区時間換算で、2205年4月29日0219時。

 

サレザー恒星系第四惑星ガミラスは、崩壊予想時刻を待たずして爆発崩壊した___。

 

 

 

 






「みんな下がれ、早く! ガミラス星が爆発する!」

「ほわあああああああああ!!」

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