GODEATER3>>Remember Chains. 作:志乃木千進
更に、非道な実験兵器を
周囲には、依然として異常なアラガミの群れが顕在であり、目の前の
窮地は、改善どころか深まる一方だった。
だが、彼らは真っ向からこれに
その名を、”ハウンドスレッド作戦”。
そして、この
<――――アインさん、ダスティミラーの
現状把握と作戦支援の
諦めることなく行っていた
「俺の定時連絡が
それらと連絡が取れたならば、あわよくば作戦の
作戦開始と同時、
そして、更にこちら側でも
アインに続き、機関エリアで作業中のキースが、通信映像の中で得意げに説明を始める。
<先輩達がローレライに頼らないとしても、その
グラジオラスのコアジェネレーターをオーバーロードさせて、ミナトごと吹っ飛ばす!!
大量の資材と
「我々は、これらと同時に離脱を図ることで、アラガミに追撃されるリスクを最大限に減らすことが出来ますね」
「ローレライを用いないという、私達の決断。
その代わりとなり得る、大きな一手だわ」
ブリッジのモニターを見上げ、作戦に頷くリカルドとイルダ。
しかしながら、この作戦の
だが、それは首脳陣も承知の上だった。
彼らは今、”旅立ち”にあたって欠かすことの出来ない、ある
――――”
ここがかつて居住区だった頃、公園として使われていたという広場は、今は高いドーム天井に覆われ、そこに幾つもある天窓から空を
見えるのは
ハウンドスクワッドの面々にユリハ、カミル。
そして、牢獄の子供達。
本来、作戦に備えていなければならない筈の彼らだが、衣服や手足をすっかり汚させ、廃材で組み上げた
果たしてその理由は、グラジオラスの面々にとってこの場所は”墓場”であり、そして
「手伝ってくれてありがとう、皆さん」
振り向いたユリハの言葉に、気にするな、とばかりに首を振るジェット。
むしろ、本当に心配なのは、グラジオラスの人々の筈だった。
「これで、良かったのか?
このミナトは、完全に吹っ飛んじまう。
やっとこうして仲間達を
――――ニウロフ・トレイズ博士を拘束し、シャロンを救出した後。
作戦準備の為に研究エリアを探索していたハウンドスクワッドは、
だが、其処に放り込まれていたのは、遺体の山だった。
今まで、ローレライの触媒にさせられただろう何人ものAGE達が、何の
とうの昔に腐敗し、中には白骨化して散らばった者までもが横たわっている。
だが、彼ら、彼女らは間違いなく、このグラジオラスに生きていた、ユリハの大切な仲間達だった。
「――――あぁっ・・・・そんな、っ・・・・っ!!!!
あ・・・・っぅ・・・・ああ、ああああぁぁぁぁ・・・・っ!!!!
それを見たユリハは、
あまりにも
されど、やがてユリハはその長く、哀しい涙を、自分の意志で断ち切っていた。
自分の足で、再び立ち上がり、歩き出してみせた。
それは
そして同時に、今もまだ生きて、待っている仲間達の元へ
「――――
他の皆も、此処にいるわ。
だから、あの子達もきっと・・・・安心できる筈、っ・・・・」
どんなに
「ユリハさん」
「・・・・もうっ。
貴方達には、泣いているとこばかり見られてるわね」
「・・・・かもな」
彼女だけではない。
牢獄の子供達も皆、大切な人達との
するとそんな時、ふとユウゴがため息を吐いていた。
「こんな事を言うのも何だろうが、俺には少し、お前達が
「そうだな。
俺達の時は、
「けど、俺らだって絶対に忘れねぇ。
あの場所で、皆、生きるために必死でもがいてたことも、一緒に戦ったことも。
いつまでだってよ」
「ええ、その通りよ。
私達が今、この大きな
だから、私達は彼らの記憶を、想いを、いつまでも
必ず・・・・これから
大切な記憶を恐れずに背負い、その心を明日へと進ませようとするユリハ。
その姿に、ジェットもまた思い出していた。
自分達を捕らえていた
故郷、と言うには
「
俺達は、俺達を踏みつける奴らの
其処で何を見て、何を選ぶのか、決めつけてくる奴は居ない。
決めてくれる奴も、居ないけどな」
「・・・・だからこそ、きっと
「それはあんたも一緒だろう、ユリハ。
あんたが此処で、最後の一線を張り続けた。
望んだものに手が届くかどうかは、案外そういう僅かな踏ん張りで決まるもんさ」
と、
「そうだね。
ユリハさん達は、
これまでも・・・・そして、これから先も」
自分を肯定する言葉に慣れてないようなユリハへ、すっかり距離の近付いたクレアとルルが励ましていた。
こうして肩を並べた今、ユリハの
「
それは、思えばなんて過酷で、恐ろしいことだったのだろうと思う。
でも、私達には
忘れかけていた
――――新しい景色と出会いに、変わっていく自分。
それでも、歩んできた道、
だから、遠く離れようとも、例え命が尽きたとしても、分かち合えた記憶と思い出は途切れない。
忘れぬ限り、想い合う限り、今生の別れすらも
その想う心をこそ、本当の絆、と言うのかも知れない。
・・・・
・・・
・・
・
――――”
ブリッジのオペレーションブースにて、エイミーは作戦の最終確認を行っていた。
「クリサンセマム、船体機能効率97%。
感応波レーダー、問題無し。
グラジオラス、メインシステムの
想定作戦ルート、算出。
ハウンド1より、部隊表の提出――――」
作戦完遂に必要な要素は、着々と整いつつあった。
すると、傍らに立っていたイルダが、ミッションに参加する
其処へ、ジェットを先頭にハウンドスクワッドの面々も集まる。
「準備は、整ったのかしら?」
「・・・・あぁ」
「・・・・ジェット、
突然のクレアの言葉に、図星を突かれたジェットは目を見開いていた。
「分かりやすいんだから・・・・」
意外そうな皆の視線に、言い
決断力の
「らしくないな、ジェット。
今回は、文字通りの”総力戦”なんだ。
不安や
吐き出せ」
ユウゴの言った通り、このハウンドスレッド作戦・最終段階は、クリサンセマムの
何処の持ち場にも
「・・・・そりゃな。
こうまで孤立無援の時に、分散行動をするとなれば、どうしたって不安はあるさ。
もしも、どちらかになんかあったとしても、互いに援護も出来やしないからな」
軽口を叩ける余裕すらもなく、ジェットには珍しい弱音は真実だった。
今回、クリサンセマムの
脱出行の先頭を担う主部隊として、ジェット、ユリハ、ユウゴ、ジークという、現状最大攻撃力を集めた、”リードチーム”。
補助として
そして、防衛対象であるクリサンセマムは、一度走り出せばもう止まる事は出来ない。
即ち、迫り来るアラガミを突破するまで、全軍一丸となって
歴戦のハウンドスクワッドであっても、いまだかつて体験したことのない危険な任務だった。
その過酷さを
「その点は、俺を信じてもらうしか無いなァ。
これでも、
戦力としてはお前さんには及ばないだろうが、課された役割はこなすつもりさ」
――――この時、リカルドの言葉の
確かに、彼はそういった戦場を戦い抜いてきた猛者ではあるが、同時にその時、”大きな傷”を受けてしまってもいた。
しかしながら、今は言い訳も通じねば、代役の務まる者も存在しない。
そして、何よりもリカルドならば、過去の無念から学び、やり遂げられると信じればこその沈黙だった。
「・・・・悪い。
こいつは、皆の力を疑ってるわけじゃなくて、ただの俺の
その分、
この船の進路は、俺が絶対に切り拓くぜ」
ハウンドスクワッド最強の戦力として、クリサンセマムに乗る数十名の
仲間達もまた、
「及ばずながら、私も。
グラジオラスの皆を助けてもらった恩は、必ず働きで返してみせるわ」
そして、グラジオラス唯一のAGEであるユリハもまた、同郷の仲間達の未来の為、雄々しく名乗りを上げる。
「おう。
期待してるぜ、ユリハ」
”現状最大攻撃力”という評価は伊達ではなく、リードチームの戦力も、士気も、この極めて過酷な任務を
「――――少し、いいかしら?」
ところが、そこへ不意に
しかも彼女にしては珍しく、歯切れ悪く、
「
「・・・・私には、正直に言って
けれど、なにか大きな
理屈だけでなく、自分の直感も信じるようにしているのよ。
・・・・ジェット。
極めて過酷な貴方のチームだからこそ、”クレア”を同行させてくれないかしら?」
イルダの提案に、ハウンドスクワッドは皆、意表を突かれ、反応に
ジェットも、本当にイルダの意図を計りかね、
「・・・・いや、悪いがそれは出来ないな。
”普通の神機使い”のクレアじゃ荷が重い、と俺は見る」
「・・・・っ」
「ならば、俺も元”普通の神機使い”としての意見を言おう。
リードチームにはクレアを加えるべきと、俺も同意する」
否定の意を示すジェットへ、またしても意外な人物、アインが意見を述べていた。
「突破力、というだけを見れば、”バーストアーツ”の使えるAGE達で固めることに、確かに理はある。
だが、この作戦の
まして長距離を行く連戦ともなれば、治療と支援に長けた彼女のスタンスは、戦力以上の
「・・・・確かに、その選択肢も考え続けてたよな、ジェット。
俺達は、絶えず前線を作り続けなければならない以上、体勢を整える為に下がることも出来ない。
治療の得意なクレアが加われば、攻撃力以外の強みも
「それは・・・・」
「今回は
しかし、忘れちゃならんのは、もしもどちらかがリタイヤすれば、その時点で作戦失敗なんだ。
実際、最も危険なお前さん方ほど、安定を取るのも大事なんじゃないか?」
ユウゴとリカルドまでもが、そこに助言を加えていた。
ジェットとて、これが
今一度、深くその重大さを並べ比べる。
そして、それでもやはり、首を横に振っていた。
「旦那達には悪いが、それでも無理だ。
戦力配分は、もう決めたんだ。
クレアには、ホイールの皆のフォローをしてもらう。
今回、最も重視するのは突破力だ」
――――そう、ジェットが改めて決定づけた、直後だった。
自分の話だと言うのに、
「ジェットはっ!!
・・・・私のこと、信じられない?」
「・・・・そういうんじゃないんだ。
第一、そんなことを言ってる場合でもないだろ。
リードは・・・・俺は、おそらくどこまでも突っ込んでかなきゃならないからな」
どうしてか感情を高ぶらせているクレアは、冷静に
「私じゃ、ついていけないとでも?
今まで、そんなこと・・・・
確かに実力不足だとしても、私に出来るのはそれだけじゃないっ。
皆に
違う!?」
ああ、とジェットは
これが自分なりに考え抜いての回答だと言うならば、そう簡単に曲げたり、引っ込めたりしてはならない筈だ。
「そういうことでもねぇんだよ。
こっちの戦い、俺は全力で動き続けなきゃならないんだ。
過酷さから言って、お前のフォローも出来ないかもしれない・・・・」
「そんなの必要ないよ!!
頼んでだってない!!
私だって”
戦場で、誰かに頼り切る気なんて無い!!
「バカ言ってんじゃねぇって!!
俺は、ハウンドスクワッドから誰一人、死人なんぞ出させやしねぇ。
これは、お前がどうこうじゃなく、リーダーとしての判断だっ!!」
「お、おいジェット?
何を熱くなってんだよ!?」
「クレアも、落ち着くんだ」
白熱する2人へ、ジークとルルが割って入る。
クレアは、まだ何かを言いたげに
其処へ、何かかける言葉があるはずなのに思いつかない。
そんな
「――――今更、混乱させるようなことを言って、ごめんなさい。
だけど、ジェット。
今の貴方は、戦うこと、突き進むことに意識を囚われ過ぎている。
私には、そう感じられて、ならないのよ」
「イルダ・・・・」
「この作戦に、失敗は許されない。
だからこそ、一人で背負い切ろうとするのでなく、仲間達から目を離さないで。
貴方にとって、作戦の成功と、
それが
「・・・・・簡単に言ってくれるぜ」
「だが、お前は今までそうしてきたはずだ。
ハウンドスクワッドの
戸惑い、頭を抱えるジェットへ、更にアインが言葉をかけていた。
「お前は、言っていたな。
どのような苦境だろうが、信頼できる仲間と共に戦うことに変わりはないと。
そして、お前達の
その時こそ、お前という
その為の、
「・・・・・・・・・・」
アイン達は、いつの間にか入れ込みすぎていたジェットを見切り、戒めてくれているのかも知れなかった。
そしてジェットは、この作戦も、今までの実績も、ただ1人では成し得ないものだとは、知っているつもりだ。
全軍一丸に、互いを補い合って来たのがハウンドスクワッドだと、よく分かっているつもりだった。
ならば、ジェットがすべきなのは、
「――――分かった。
ジーク、”ホイール4”へ変更。
クレアは”リード4”に移動させる」
「・・・・ありがとう。
私達のこの判断が、より良い結果に繋がることを、心から祈るわ」
最後に、イルダが
そしてジェットも、この判断が正しく果たされることを思いながら1人、
そんな背中を心配して、そこへフィムとユリハが歩み寄ろうとする。
「おとさん・・・・」
「あの、ジェット・・・・」
しかし、進み出たルルとユウゴがそれを、制していた。
「戦いのことなら、心配は要らない。
ジェットなら、直ぐに自分を研ぎ澄まさせる。
だから、問題は――――」
――――
「なぁ、クレア。
・・・・さっきは悪かったな」
「・・・・聞いていい、
私は・・・・ジェットにとっては、やっぱり
だから、反対し続けるのかと、クレアは不安にかられていた。
クレアが一緒では、失敗の可能性が高まるから。
どれだけ
ジェットは、それに戸惑いつつも、慎重に言葉を選び出そうとする。
「それは、
ただ、俺はお前が――――」
言い淀んだジェットの、露骨な
「変に突っかかって、ごめんなさい。
それなら、いいんです。
今からでも、変更してくれていいから。
大事な作戦の
ただ・・・・そうならそうと、言って欲しい・・・・っ」
一刻も早く
だが、ジェットはその腕をしっかりと
壊れ物を扱うように。
しかし決して離さないように。
「聞いてくれって。
違うんだ、マジで」
それきり、また黙ったジェットへ、クレアは身体半分だけを振り返らせる。
恐る恐るに、目を伏せたままな彼女の横顔に、ジェットはどうにも思考が
「俺は、ハウンドスクワッドのリーダーだ。
絶対に死なないし、誰も死なせやしない。
俺が戦うんなら、絶対に。
だが、
「・・・・・・・・・・」
「さっき、クレアの言った通りだ。
俺は迷ってるし・・・・ビビってる。
1人で
だが、だから俺は、ハウンドスクワッドを、クレアを信頼するんだ。
全員、頼もしい力と根性があって、助けることもあれば、助けられることだってある。
俺達はそういうチームだと思ってる・・・・”筈”なんだ」
歯切れの悪い言い方に、クレアは今度こそジェットへ振り返った。
クレアは、どうしても他の皆に追いつけない自分に思い悩んでいる。
生真面目な彼女らしい態度ではあるし、彼女らしい
だが、そんな
「たぶん・・・・俺の、この弱気は、作戦のことなんかじゃねぇんだ」
「なら・・・・」
「・・・・俺は、お前には・・・・お前にだけは、危険な場所に行って欲しくないと、思っちまう。
此処で待ってて、帰って来る俺達を迎えに来てくれる。
AGEとか神機使いとかも関係なく、
「・・・・っ・・・・!!」
ジェットの身勝手な言い草に、クレアは大きく目を見開く。
ジェットも、自分の
一人前の”
だから、この言葉は所詮、理由も分からず
「・・・・散々、似たようなことで叱られといて、どの
だが・・・・もしも、俺の届かないところで、お前に何かあったら。
お前を、守りきれなかったら。
俺は・・・・絶対に、俺自身を
ジェットはその
彼女の問いたげな
そして――――
「――――っ、待っ・・・・っ」
待って欲しい、というクレアの呼びかけも、言葉になりきらなかった。
胸の
其処からの大きな震えが広がってしまい、伝えたい想いを遮ってしまっていた。
(これは、何?
不安や緊張、じゃなくて。
”嬉しい”?
・・・・ううん、それだけじゃない。
もっと、もっと強くて・・・・熱い。
なのに、
ジェットが、自分へ向けた感情。
初めてくらいに、
大きな
離れていくジェットへ、自分にとってかけがえの無い感情が
――――果たして、激しくも未熟な
だが、大切な仲間達と”試練”へ
あるいは、それが
改めて、ハウンドスクワッドの描く未来は、まだ
これから向かう苛烈な任務とても、乗り越えるべき
彼らは決然として
>>
――――
・Tips.10
「
ミナト・"グラジオラス”近辺にある広大な山岳地帯。
上から見ると、ちょうど
かつては雪深く、その溶け出した水が川となって流れ、大きな湖と、発電施設が存在していた。
しかし、”ローレライ”の
複雑な地形へと追い込まれた
そして、その
アラガミすらも避けて通るこの一帯は、かつて一度だけ”極めて大きな反応”が観測されたというが、当時の記録は