GODEATER3>>Remember Chains. 作:志乃木千進
――――ハウンドスレッド
「なにごと、エイミー!?」
<き、機関エリア・D
ドアが破壊され、内部にトレイズ博士の姿がありません!!>
「まさか、脱走!?」
イルダが驚くのも無理はなく、その船倉にはニウロフ・トレイズが
しかし、アインだけはただ一人、冷静なまま申し出る。
「俺が確認に向かう。
お前達は作戦に集中しろ。
こちらのゴタゴタは、前線に伝えてはならん」
ハウンドスクワッドは、今や全員総出で、命がけの作戦の最中。
そして、この艦に残っている人員でこのような事態に対処できるのも、アインだけだった。
「ですが、1人では・・・・っ」
「いざとなれば、機関エリアを閉鎖して時間を稼げ。
最も、しくじるつもりは無いがな。
――――キース、話は聞いていたな?
お前も、自分の職務に集中していろ」
<り、了解っす!!>
通信機越しに指示を送り、アインは速やかにエレベーターへと乗り込んだ。
(急がなければならない。
”あの男”が動く理由など、他でもない自分の
となれば、この船で真っ先に狙うのは、その”
<―――― アアアアァァァァッ !!!!>
機関エリアに到着した途端、
更に、続けてエリア
<アインさん、医務室です!!
トレイズ博士はシャロンを狙っています!!>
果たして、アインの予想はそこで裏付けられていた。
そして、どうやら相手は
アインは警戒を張り詰めさせ、医務室へと駆け込む。
「そこまでだ、シャロンを離せ」
「・・・・なんだ、貴様は。
貴様は・・・・貴様も、私のローレライを奪おうとする、
医務室内にはやはり、ぐったりとしたシャロンを捕まえているニウロフ・トレイズの姿があった。
そして、トレイズは何処に隠し持っていたのか、先端から放電する
「大した執念だな。
己の血肉を機械へ置き換えるに留まらず、その
「それは貴様らが
この世界に
完全に錯乱して叫び散らすトレイズは、気絶したシャロンの頭髪を掴み、盾にするように立っている。
加えて、何の動力かは知らないが、あの鞭の放電に当たれば
アインは慎重に
「その少女は、シャロンだ。
”ローレライ”などではない。
お前こそ、よくもそこまで他者を
研究者ならば、己の理屈だけで
「愚物が
わざわざ
この私を裏切り、あまつさえ・・・・あまつさえ、ローレライを破壊しおってぇっ!!!!
あれほどの条件をもう一度整えるのに、どれだけの時間と労力を要するか、お前達に分かるか!!??
人類の未来を否定し放棄した、その罪は
果たして、狂乱しているトレイズだったが、その意識はおそらく、アインを
自分にしか見えていない”誰か”に向かって、凄まじい憎悪と
「――――
世界の
無能、無力、
ああ、言ってみろ!!??
”あの日”、お前達が何をした!!??
何が出来たっ、えぇっ!!??」
「・・・・生憎と、何を言っているのか分からんな。
そして、今の我々がお前に求めるのは、言い訳めいた恨み言などでなく、”
まずは、自ずから認めろ。
お前のローレライには”重大な欠陥”があり、この
その結論は過去、
ヒクリと、トレイズは歪んだ顔面を更に引きつらせる。
おそらく、
また、アインとて、今更この男に交渉が通じるとは思っていない。
重要なのは、どうにかして隙を作り、シャロンの
「――――かつて、” エイジス計画 ”というプロジェクトがあった。
・・・・だが、問題はそれが
遺された大量の機材、物資を目当てに、エイジス島には膨大なアラガミが密集した。
その過度な密集状況は、奴らに異常な
「
借りてきた言葉で、私に説教をするつもりか!!??」
「・・・・ならば、改めて言おう、
だが、その影響によって追いやられ、不自然に一箇所へ集中したアラガミ達は、予想の付かない”イレギュラー”を発生させるでしょう。
今回のようなスタンピードや、
――――もしもこの時、この場に普段のアインを知る者がいたなら、彼の雰囲気が明らかに変化したのに気付いたろう。
この荒廃した時代を立ち回る
「だからどうした!?
あのような害悪共など、
ローレライが、歌う限り!!!!
人類は、オラクル細胞の悲劇から開放されるのだ!!!!」
「・・・・その為に、ただ一つの命に、全ての
アインは、残された右眼を
慇懃な物腰は崩さないまま、その
「
だが、なによりも。
貴方の
欠けがえのない
そして、もしも、何者かに犠牲を押し付けて
後には、過酷な世界に立ち向かう事を忘れた、
トレイズは全身を不気味に震わせ、怒りに支配されていた。
それもそのはず、彼にとってこの言葉は、
「我々、研究者など、所詮は同じ。
滅亡を先延ばすため、
だが、Prof.トレイズ。
”ローレライの歌”に
安寧の対価に、失われるもの。
それらから目を背け、利己的な現状維持に走り、よりよい世界を導く責任を放棄する。
それこそが、本当の”
「・・・・貴様は、何者だ。
なぜ、その言葉を知っている・・・・!!??」
初めて、トレイズは明確にアインを見据えていた。
「・・・・いつの時代も、科学など”手段の一つ”でしかない。
だが、それを忘れた”
今の
「・・・・ふざけるな。
一緒にするな、あの”
”
「・・・・・・・・・・」
その名称とは、今、世界に生き残った全ての人類が知るところだろう。
かつての世界は、アラガミという脅威に晒されながらも、”
十数年の長きに渡る犠牲と尽力の果てに、未来は少しずつ
――――その、
「”あの日”。
ローレライが起動できていれば、あのような
ローレライが、凍結などされていなくば。
フェンリル
優秀な研究者達も、あの場に暮らす人々もっ、喪われることなどなかったのだ!!!!
それを、”
貴様のような
全ては
「・・・・・・・・・・」
「”エイジス計画”を繰り返したのは
どこに逃げたっ!!!!
” ソーマ・シックザール ”っっっっ!!!!」
「――――っ!!」
瞬間、
その絶好の機会を見逃さず、アインは一気に飛びかかる。
所詮はひ
「おのれっ、おのれぇっ!!!!
私の研究が、ローレライさえあれば、私は!!!!
私はああああっ!!!!」
「・・・・確かに、ソーマ・シックザールは、
だが、ヤツが、母なるこの
己の責任・・・・罪を
この世の何処かで、
――――怒りと哀しみ、
そしていつも沈着冷静に現実を見据える彼の眼差しはこの時、今を通り過ぎた場所へ、
「・・・・こちら、アイン。
医務室にて、トレイズを確保した。
だが、シャロンの
おそらく高圧電流を受けたショックだろう」
再びトレイズを厳重に縛った後、アインは気絶するシャロンの
ただでさえ弱っていた彼女へ、トレイズの
ブリッジのイルダへ通信しながら容態を
<彼女は無事なのですか、アインさん!?>
「・・・・なんとも言えん。
一先ず、こちらで応急処置を試みる。
あとは彼女の、”ヒト型アラガミ”としての生命力に賭けるしか――――」
その
突然、シャロンの
そして、アインはぞわり、という不吉な
目の前のシャロンの小さな身体が激しく痙攣し、その奥底からなにか
< キィアアアアァァァァッッッッ―――― !!!!>
シャロンは、大きく開かせた口から、耳を
それと同時に、クリサンセマムの電灯や機能も乱れ、船体が激しく揺れ動いた。
そしてアインは
「ぐぅっ、っ!?
これは、
生身で、なんという強度だ・・・・!!!!
っ、落ち着け・・・・落ち着くんだっ、シャロン・・・・!!!!」
シャロンは、断末魔のような狂おしい叫びを上げ続ける。
彼女の絶望は、底無しだった。
己を苦しめる、何もかもを
そして、それらを
シャロンの悲鳴は、決して
「――――くくくくっ、ひ、っひひ、 ぃははははっ !!!!
ああ、そうだ、歌え!!!!
愛しき
古い時代、全ての悲劇を終わらせ、お前の願いを見せてくれ!!!!」
その時、縛り上げられているトレイズが、突如として狂ったように笑い出し、
跳ね回る芋虫のような
「トレイズ・・・・っ!!」
「”重大な欠陥”、だと?
イレギュラーの可能性?
この私が、その程度を予想していないとでも思ったか?
”
そして、貴様らはっ!!!!
人間は、
荒ぶる神々の
トレイズは、間違えようなく本気だった。
自分を含めた、なにもかもが滅亡する未来。
そこへと
本気で、正気を失った思想に
「馬鹿な・・・・っ!!」
「新たな時代を謳えよ、ローレライっ!!!!
お前の導きによって、”全てを
――――”終末捕喰”。
あらゆる物を
この
今、この世界で生きる生命、しがらみの全ては”リセット”され、歴史は再び
その実例は空の向こうに、
しかし、地球までもが同じ結果を辿るかは、定かではない。
もしもその結果が示されたとして、その時、それを確かめられる者はこの世に
だが、トレイズはそんな絵空事に取り憑かれ、全てを投げ打ってみせたのだ。
アイン達は、この男を見誤っていた。
奴の望みとは、ローレライの完成ではなく、その果ての虚無。
己の研究の
<ヴィイイイイィィィィッ!!!!>
その時、
船の機能不全どころではない甚大な危険の発生に、オペレーターのエイミーが金切り声で放送を叫んだ。
<全員、衝撃に備えてください!!!!
か、”
「来るぞぉ、新たなる時代がぁっ!!!!
全てを喰らえっ!!!!
この汚らわしい世界を喰らい尽くし、私を連れて行ってくれぇっ!!!!
ヒャアァッハハハハアアアア !!!!」
狂気のままに叫び散らすトレイズ。
そしてアインは、のしかかってくる苦悶や弱音など噛み潰すように、無様に震える身体で、それでも立ち上がろうともがき続けていた。
「――――”因果応報”、と
だが、俺は・・・・人類は、まだ足掻ける、筈だ・・・・。
・・・・例え、あの
・・・・
・・・
・・
・
――――改めて、
その威力がただの嵐と同じなはずはなく、吹き
そんなものが迫り来るというエイミーの警告と、それを呼び込んだと思われる感応波は、ハウンドスクワッド達にも届いていた。
「ぐ、ぅっ・・・・!!??
どういうことだよ、エイミー・・・・っ!?
灰嵐って、そんなに
身体に急激に襲い掛かる
だが、その問いへ的確に答えられるものは居はしなかった。
<わ、分かりません!!
小規模ながら強大な反応が、突然に出現っ。
アラガミの群れを
ホイールチームを率いて戦闘中のリカルドも、ローレライの影響下のような不調に見舞われていた。
しかし今は、迫り来る灰嵐へ迅速に対処せねば、生身の自分達どころか、
「どうしますか、オーナー・・・・っ!?
まさか、無防備に食らう訳には行かないでしょう!?」
<全員、即時撤退よ!!
各自、ここから南西にある
「それしかないだろうな。
だが、今はタイミングが悪い・・・・っ」
眉を
――――いっそ
漆黒の身体は
そして、
途端、紅色の帯や、白銀の身体や
その身体を中心に”真紅の渦”が巻き起こり、そしてローレライのように広範囲へ拡散していった。
果たして、
「ふぃむも、わかるよっ。
なかま、よんでる!!」
周囲から、次々に野太い遠吠えが
それに続き、マルドゥークによく似た、しかし
そのアラガミ・”ガルム”は、マルドゥークに明確に
しかも今回、他にあらゆるアラガミに取り囲まれているこの状況では、感応種の能力は
このままでは別種のアラガミ達までもが呼応し、群れの規模は無尽蔵に増していくだろう。
勘弁してくれよ、と思わずぼやくリカルド。
「だが、なんにせよ・・・・此処は踏ん張り切るしか無いな!!」
「おうよっ!!
それに、やるといったらやるのが、俺ら”ハウンドスクワッド”だってんだよっ!!」
――――そして、前方に展開するリードチームにも、緊急事態の報は伝わっていた。
「これは、ローレライ・・・・いいえ、シャロンの声・・・・っ?
この灰嵐は・・・・あの子が呼んでしまったの!?」
「
だが、これほど離れていても影響があるのなら、もしかしたら・・・・!?」
ユリハの
元より”ヒト型アラガミ”は高い感応能力を持ち、更にシャロンの場合は、長らく人為的な強化処置までも施されていた。
そうなれば、もはやローレライを介さずともオラクル細胞に干渉し、周囲の環境までも激しく乱す事すら、有り得るのかも知れない。
「こちら、ユリハ!!
お願い、誰か、シャロンに声を届けさせて!!!!
このままだと、あの子は本当に自分を失ってしまう・・・・!!!!」
「・・・・悪いが、そんな暇は無さそうだ!!
リード1より、全員撤退だ!!
ユウゴ、装甲車を回せ!!
時間は、俺が
兎にも角にも、イルダの避難指示を実行せねば、即死。
ジェットは神機を構え、活路を拓くべく飛び出した。
「そんな、ジェット!?」
「さっさと行け、クレアっ!!」
「っ――――!!」
ジェット達だけでなく、周辺のアラガミ達もまた、波動の影響に混乱した様子でいた。
先程から戦闘に突入した、
そして
それら複数体が
とはいえ、放っておいてそのままやり過ごせるような状況でもない。
「おら、腰抜かしてんなよ!!!!
ジェットは堂々と言い放ち、アラガミを
<は、ハウンド1、神機喚起率200%!!
>> ・制御ユニット 攻撃力+30%・バーストアーツ攻撃力+20%・”
引き出される”力”に手応えを感じるジェットだが、それでも状況は
とにかく、時間が無い。
窮地へと追いやられて行く
その振動とは明らかに異なる、激しい地震が断続的に起こっている。
迫り来る灰嵐の威力が、大地を引き裂き、揺るがしていた。
だが、
<クレア、ユリハ!!
こっちにもアラガミが流れて来ている!!
車両の進路を開いてくれ!!>
「っ・・・・了解したわ」
「は、はいっ!!
っ、・・・・ジェット・・・・っ」
そして仲間達の
対して、ネヴァンは
舞い散った羽がエネルギーの槍へ変じ、前方を広く刺し貫いて制圧するも、ジェットはそれより速く間合いを詰め、二刀で乱れ斬る。
かと思えば、周囲に
その
そして、後退したユリハとクレアも、小型アラガミが群れ集まる中を、剣と槍、
もはや進む以外に無い覚悟の奮戦で、ユウゴの操る装甲車が割り込めるには十分な空間をこじ開ける。
<戻れ、ジェット!!
これ以上は、灰嵐に吹っ飛ばされるぞ!!>
「おう、待ちわびてた、ってな!!」
<――――っ!?
ジェット、
刹那、通信機からのクレアの叫び声に、ジェットは思い切り飛び
凍てつく
それを辛うじて察したジェットは軌道から逃れ、唸りを上げる
「カリギュラ・・・・っ!!」
鬼気の
活性化したカリギュラ、最大の技の構え。
己に土を付けた、漆黒の双刃と
「こっちは時間が無いってのによ。
・・・・使うしかねぇか、”
もはやジェットも腹を
その効果や
しかし今、
「ジェット、助太刀するわ」
ところが、ただ1人の勝負を覚悟していたジェットの
「ユリハっ!?
だが――――」
「
そうよね?」
何処かで聞いたような
勝負の結果を、1人で背負うか、分かち合うか。
少なくとも、さっきよりも
「へっ・・・・そうこなくちゃな」
こうなってはもはや、速攻をかけて押し通る以外に活路は無い。
ジェットは、
――――ところが、2人が前のめりに踏み出したその時、ふと辺りが急速に暗くなっていた。
陽が傾いた暗さではない。
切れ切れの雲が差し掛かった時のように、周りには
果たして、その現象の
「・・・・嘘・・・・っ」
そうして、思考が固まりかけてしまうほどに異常な光景が、もはや間近に迫る
巨大な、真っ赤に燃える
激しい
その落下軌道にある小さな岩山、崖壁を幾つも巻き込み、打ち崩しながら。
次第に姿は小さくなれど、その
「 二人共、逃げてっ !!!!
こっちに、早くっ !!!!」
考える余裕も
――――ッッッッ―――― !!!!
誰かの叫びか、迫り来る土石流の轟音か、まるで判別などつかなかった。
先程までと比較にならない
そして弾け飛んでくる落石の雨は、直撃すればアラガミすらも暴力的に薙ぎ倒す。
身体の大小、効果の有無に関わらない絶大な質量衝撃は、人間ならば骨ごと
ましてその威力は、地形すらも激しく破壊しようとしていた。
そしてそれは、落石の度に急激に深さ、長さを増していき、ジェット達がいる場所全体へと広がっていく。
「おいおい、マジかよ!!??」
「く、崩れる・・・・ あぁっ !!??」
刹那、悲鳴と共にユリハの姿が地面へ引きずり込まれた。
崩壊によって地面が急激に沈み、その落差に呑まれたのだ。
「 ユリハっ !!!!」
「だ、ダメっ!!??
戻って、ジェットっ!!!!」
もはや周囲一帯が粉々に砕かれ、巨大な地滑りが引き起こされつつあった。
震動と落石は止まず、一度始まった崩壊は止め処なく、加速度的に進行していく。
そんなものに巻き込まれれば、
ジェットは、ユリハを助ける
クレアも、咄嗟にそれを止めようと駆け出す。
「 来るな、クレアっ !!!!」
だが、ジェットはそれを、声も
驚愕するクレアを見つめ返し、悲壮なまでの決意で、彼女へ伝えていた。
「 逃げろ !!!!
――――クレアは、拒絶と
その一瞬の内にすらも、事態は急激に進行し続ける。
目に見えない、しかし吹き飛ばされそうに分厚い
此処にいたら間違いなく死ぬと、クレアの生存本能が叫び散らしている。
土石流の向こうへ、大切な人が消えていく。
なのに、このままただ
恐怖と切望の間で、クレアが理解できたのはただそれだけだった。
「そんな・・・・ユリハ、ジェットっ!!
ジェットぉっ !!!!」
――――恐るべき灰嵐の轟き。
クレアの
ジェット達と、作戦の行方。
土石流の唸りは、全てを呑み込み、押し流していく。
深く、暗い、
この烈しき戦いの本領。
待ち受ける、本当の”試練”の許へと。
Next to 「GODEATER3>>Remember Chains. Vol3」....
・Tips.12
「”
原理としては、オラクル
その着想は、かつて
しかし、その実情は数多くの問題点を
特殊な薬剤・インプラント装置などで無理矢理に増幅された被験者の”苦痛”は、アラガミにも本能的な
このような悲惨な失敗が繰り返された為に、ローレライ計画は当時のフェンリル本部の研究員だった、”ソーマ・シックザール博士”からの非難を受ける。
この