GODEATER3>>Remember Chains. 作:志乃木千進
――――”ローレライ”の二度目の起動から、
ミナト・”グラジオラス”の中心部から放たれた高出力の
果たして、グラジオラスに閉じ込められた人々は、何ら消耗することなくこの
だが、しかし。
その結果とは、灰域踏破船・クリサンセマムの面々にとり、”敗北”と同義でもあった。
加えて、その後、クリサンセマムにはグラジオラスの
極めて
一方、
そして、グラジオラスを遠巻きに包囲するアラガミの群れもまた、散逸する様子は無かった。
身動きを封じられてしまったクリサンセマムと、”
だが、もはや彼らには勿論、グラジオラスの面々にも、時間は残されていない。
ならば、その
決断の期限は
そして、いざその時に、ハウンドスクワッドの進むべき路とは、何処か。
望むべきを見定めておくべく、彼らは”とある思惑”を抱えて、遂に動き出そうとしていた。
「――――あのユリハって女・・・・誰かに似てないか?」
その日の朝、クリサンセマムのブリッジには、”とある目的”の為にクルー達が集合していた。
分かり易く
彼にしてはどうにも冴えない様子は、前日のローレライの影響もあるのだろう。
クリサンセマムはその効果の直下にいたが、キース
「なんか・・・・妙に、
「私達の中の誰かに、ですか?
見た目や雰囲気は、イルダさんに似ているような・・・・?」
「・・・・そう、だろうか。
私には、もっと
今日はオペレーターブースを離れているエイミーは、傍らのルルと顔を見合わせた。
すると、その横のジークは一転して
「誰って・・・・そりゃ、”リノン”に似てるんじゃねぇの?」
「・・・・言われてみれば、そうだな。
なるほど、それでジェットの奴、やたらと彼女を気にするのかもな・・・・」
「んー・・・・まぁ、今だってわざわざ自分で、
「・・・・ねぇ。
リノンって誰のこと?」
「よぉ、クレア」
「おはよう」
と、遅れてそこに加わったクレアは、それで?、となんだか有無を言わせぬ調子で、更に2人へ問い詰める。
挨拶もそこそこに、彼女にしては珍しいぶっきらぼうさに、少し
しかし、ユウゴは気にした
「なんのことはない、
「それって・・・・?」
「リノン・ペニーウォートは、俺達より少し上の
腕利きで、ガキの頃の
・・・・もっとも、その
「じゃあ、今はもう・・・・?」
当時のことに思いを
すると、クレアははっとして俯き、それから消え入りそうな声でごめんなさい、と呟いた。
「おいおい、そんな謝るなって。
本当に、随分と昔の話だしな。
そう言えば、ジェットとリノンは、特に
今更ながらに気にしちまうのも、アイツらしいと言えばそうかも知れない。
・・・・どうした、クレア?」
「ううん。
ごめんね、変なことを聞いて・・・・っ」
「・・・・ユウゴの
「・・・・あ?」
「――――クレア」
その一方、ルルに声を掛けられたクレアは、何処かぼんやりとした笑みを浮かべた。
「・・・・ジェットって、
それはもしかしたら、その”大事な先輩”を尊敬してて・・・・
もう、
だからこそ、自分の中に大きく
「・・・・そうだな。
尊敬する人の
その感覚は、私にも理解できる。
でも、ならその上で、
「え・・・・?」
「
憧れている人がいるとして、ただその
決して
なら、目指したい場所を
揺るがない、自分の
何か、大きな
真面目、堅実、謙虚・・・・
いつの間にか、すぐにそんな風に
しかし、その内側に確かにある、
「・・・・どう、かな?
でも・・・・うん。
私は・・・・
それなら、やりたいようにやらないとって、”今はもう知ってる”。
その筈、だよね」
「・・・・そうですよ!!
流石、クレアさんです!!」
と、なんだか
その時、ブリッジのエレベーターが稼働し、開いた扉から勢いよくキースが姿を表した。
「皆、おまたせ!!
兄ちゃん達の”アリバイ工作”、完了したよ!!
でも、通信の方は使えないし、ダミー映像も単純なものだから、
”用事”は素早く済ませてね」
「グラジオラスの反応は、こちらでも常に監視しておきます。
いよいよ、これからの私達を
皆さん、張り切っていってらっしゃい!!」
・・・・
・・・
・・
・
――――クリサンセマムの運行を支えるエイミーとキースの支援を受け、ユウゴ達はグラジオラスの
「ジェットの奴、ちゃんと話をつけられたんだろうな~?」
「大丈夫だろう。
見たところ、”彼女”の方もアイツにはかなり気を許しているようだしな」
「・・・・・・・・・・」
”とある事情”によって通信が行えない為に、
そして、一行は施設の少し奥まった区画にある、
「――――驚いたな、本当に”図書館”なのか」
「
・・・・持って帰って、イルダと少し
こんな時代ではもはや
「でも、カビ臭ぇなぁ、
”バガラリー”とかも、見れなそうだしよー・・・・」
「・・・・ジークに、こういう場所は少し難しいかもね・・・・」
「・・・・どういう意味だ、クレア?」
1人、気も
ひとまずそれ以上の
読書用に壁際に置かれたろう古いソファで本を広げているその人物は、”交渉”の為に先に船を降りた、ジェットだった。
そして、仲間達に気付いたジェットは、横で寝ているフィムを起こさないよう、小さく手を挙げて応えた。
「優雅に構えてるじゃないか。
此処が待ち合わせ場所で、間違いはないんだな?」
「おう。
だが、時間まではまだ少しあるし、せっかくの機会なんだし、ってな」
呆れ半分に話しかけるユウゴに、なんとも
一方、おそらくおとさんの真似をして絵本を読もうとした痕跡のあるフィムに、ルルは口元を綻ばせた。
「ふふふ・・・・フィムは、それに付き合いきれなかったのか」
「ジェットって、落ち着きねぇくせに
たまにイルダやリカルドから、わざわざ
「何を読んでたの、ジェット?」
クレアの問いに、読んでいた本の表紙を向ける。
タイトルは「北欧神話の世界」。
あまり難しい表記の使われない、低年齢向けの本だった。
「なんつーか、アラガミって、どうも
コンゴウとかラーは、実際に神の名前みたいだが、ヴァジュラやバルムンクは武器の名前だし、クアドリガに至ってはただの乗り物らしいぜ。
特徴を捉えている、といえばそうだがな」
と、せっかくの発見を語るジェットだったが、
「・・・・ふふふ」
「おいおいなんだよ、クレアまで興味無しか?」
「あぁ、ごめん、違うの。
ちょっと、”昔のこと”を思い出しちゃって」
「まぁ、俺が読むのなんて、クレアの医学書みたいな
今でも医療について勉強を欠かさないクレアを思い出して、屈託なく話すジェット。
すると、クレアは首を横に振り、それから少し考える素振りの後、ゆっくりと言葉を続ける。
「もっともっと、
私の
ヴィクトリアス
たぶん、
ジェットや、周囲の皆も、少しの驚きを浮かべていた。
クレアとはもうそれなりに長い付き合いだったが、自身のプライベートを語ることはかなり珍しかったからだ。
「へぇ・・・・クレアの家族の事を聞くのは、初めてだな。
クレアの兄貴ならたぶん、こいつらみたいな
「おい、言っとくが
「ユウゴ、お前もしれっと嫌味か、コラ・・・・っ」
後ろでひそひそと
「・・・・ジェットは、少し兄さんに似てるかも。
こうしてじっと集中するところとか、年下の子を見ると構いたがるところ、とか」
「俺って、そんなか?」
「・・・・・・・・・・」
「クレア・・・・?」
どうにもぼんやりとした様子のクレアへ、つい聞き返すジェット。
何か思い悩んでいる事でもあるのかも知れなかったが、しかしクレアはそれを明かそうとはせず、なんでもない、と首を振ってみせた。
「安心しろって、たぶん性格までは似てねーって。
クレアの兄貴だったら、ジェットみてぇに軽口だらけでうるさいタイプじゃないだろうしよ」
「へっ、そのまま返すってんだよ」
「――――ん・・・・んゅ~・・・・」
ジークやジェットを筆頭にしたこの口数では、いくら小声であろうと
フィムがふと目をぼんやりと開かせ、幼稚な仕草で起き上がっていた。
「悪い、起こしちまったか」
「・・・・おとさんも、みんなも、おそろい~。
いひひ」
途中で起こされても、寝起きの顔を
なんともご
「・・・・そうだな、
しかし、ルルはふとその雰囲気を引き締めて、振り返る。
その1人であるユリハは、昨日のボディースーツ型の戦闘服から、カジュアルな衣装に着替えていた。
深緑色で、頑強な生地を使ったアーミーズボンと、コンバットブーツ。
というのも、その上衣はちょうどエプロンのような
(・・・・クレアもそうだが、あんなデカいのが
さておき、ユウゴは、ユリハの傍に付き従っている
「お前も来たのか、カミル」
「悪いかよ」
つっけんどんに返事をするカミル。
ジェット達にとっては招かれざる客ではあったが、彼がそうした
「昨日の今日で、
まぁ、とにかくこうして二人が来たわけだし、昨日の
「でも・・・・」
ジェットの言葉に、ユリハはそれとなく図書室を見回す仕草をする。
不安そうなその仕草の意味に、他の皆も
「心配は要らない。
今この部屋は、
俺達の仲間に、そういうのに強いのがいてね」
「っ!!」
「・・・・昨日の、あの”
あいつは、俺達だって直前まで知らなかった”シールド機能”を、知ってるようだった。
もしやと思って調べてみたら、どうやら”ハッキング”ってのを食らった形跡があったらしい」
然り、ジェットは昨日、大型ガードロボットを通したやり取りの際、その
おそらく、
ちなみに、これを調べ上げたエイミーとキースは、大事なクリサンセマムを
「そういう訳で、此処で何を話そうと、暫くは気付かれないはずだ。
だから、あとは二人次第だ」
ジェットがそう
すると、そこへ更に急かすようにユウゴが割って入った。
「もう皆、気付いてるんだよ。
今、こうしてる間も、全員を
だから、まずは今度こそ知らなきゃならない。
あの、”ローレライ”ってののことをな」
「っ!!」
「・・・・なぁっ、助けてくれって、言ってたじゃんかよ!?
なにも俺達だけじゃない。
あのガキ共の
全部、お前ら次第なんだって!!」
焦れったそうにジークが声を上げた。
良くも悪くも感情的な彼であるが、その面倒見の良さで、本気でグラジオラスの人間達を心配していた。
そんな態度が、あるいはユリハの決意を促す
「・・・・ならば、その前に私とも”取引”をしてほしいの」
ユリハは姿勢を正し、
「貴方達がここを出ていく時には、子供達を全員、一緒に連れて行って。
あの子達の生命を救って・・・・そして、生きていくのを助けてあげてほしいの」
「あ、あの・・・・ユリハ?
それは――――」
気を張り詰めさせるユリハへ、声をかけようとするクレア。
しかし、ユウゴはそれを強引に遮って、進み出ていた。
「取引には、”対価”が必要だ。
だが、こちらは2つで、そちらは1つ。
こうも吊り合わないのなら、俺達としては応じないという判断もあり得る」
仲間達の戸惑う視線の中でも、ユウゴは
それでも、ユリハは怯むことなく向かい合った。
「無茶な話というのは、分かっているわ。
だから、この取引には”私自身”を差し出すわ。
この先、貴方達が脱出する時には、私がアラガミと戦う。
「おい、ユリハ!?」
「それでも、私は皆を守らなきゃいけない。
他の仲間達も、そうしてずっと、
子供達を・・・・シャロンを助ける為なら、私はどこまでも戦い続けてみせる。
だから、だから、どうか・・・・っ」
「
しかし、そうして無茶に
「それ以上は言わせられねぇな。
悪かったな。
ウチの参謀は、どのくらいユリハが本気なのか、確かめたかったんだろう」
「・・・・
彼が、
そして、ユリハの決心の程もまた、揺るぎなく真っ直ぐであると、ジェットが見込んでいた通りであった。
ユリハは、
すると其処に、にこやかで
「あのね。
おとさんたち、みーんなをたすける、から!!」
「え・・・・!?」
「フィム・・・・ジェットのそういうマネは、しなくていいんだぞ」
「ルル、人を
・・・・ともかく、最初から
ま、少なくない人数だが、幸い俺達の
「それじゃ・・・・」
まだ事態の変化を理解しかねて、しかし高まっている期待に頬を染めているユリハ。
しかし、話はそう都合の良いばかりではないと、ジェットは改めて真剣に
「なぁ、ユリハ、カミル。
俺は昨日、この場所に”
弱い奴らを見下して、テメェのしたいように踏みつける・・・・そういう、見覚えあるクソ野郎をな。
そして、そう言う奴らはそれを
だったら・・・・そいつを押し退けて
「”戦う”・・・・博士と・・・・」
勇ましく言い放つジェットに、ユリハは何処か呆然として呟く。
例えるなら、回り道で避けてゆくのに慣れきって、一番の
そんな、
「・・・・ユリハは、前から誰かに似てると思ってたんだが、やっと分かった」
「え?」
「追い詰められて、そこへいきなり現れた逆転のチャンスに、とにかく必死で食らいつこうとしてる。
この先、どうなるかなんて分からねぇ。
だが、それでも”大事なもの”の為に、絶対に退くもんか、ってな。
そうやって
言いながら仲間達を見回せば、これまた言外の肯定とばかりの笑みが
こうして、気付いてしまえば、単純なことだ。
立ちはだかるものに、逃げるだけではいつか追いつかれる。
打ち勝ち、乗り越えて、初めて今までより先へと向かえるのだ。
「あ、あの、私っ・・・・出来るの、かしら・・・・」
戸惑いと不安に揺れるユリハ。
其処へクレアが、彼女らしい柔らかな
「大丈夫だよ、ユリハさん。
守りたい、
そんなの許せなくて、だけど助けられるか分からなくて・・・・それでも、動き出せずにいられない。
そういう気持ち・・・・此処にいる皆、分かってるから」
このグラジオラスに渦巻く事情の全てが、分かった訳ではない。
しかし昨日、泣きじゃくりながら助けを求めたユリハと、シャロンの変貌ぶりとを見れば、判断するには十分な材料だと思えたからだ。
「そういう訳だ。
そろそろ、そちらも腹を
どちらに”懸ける”のかをな」
ユウゴは、含みのある言い方でユリハと、そして
実際、彼女達が
だからこそ、全てが
外にはアラガミと灰域、中には謎の兵器”ローレライ”が待ち構える中を振り切り、脱出しようとするその時。
”敵”として
そして、”守るべきもの”は何なのかを。
そんなハウンドスクワッドの
「分かったわ。
私達も、覚悟を決めないといけないのね。
この地も、トレイズ博士も、私達を守ってはくれない。
生き延びるには・・・・シャロンの
するとその時、こうしてユリハが動かされる時、その切っ掛けになる”人物”について、ふとクレアが
「聞いても良い?
ユリハさんはどうして、そんなにもシャロンを心配するの?」
「・・・・それはきっと、貴方達と同じ
ねぇ、貴方・・・・フィム、っていうのよね?」
物憂げな表情のユリハは、以前のように話し合いから離れて待つ、小さな姿へ視線を移す。
「――――初めに貴方を見た時、驚いたわ。
昔のシャロンと、そっくりだったから」
この時、ふとジェットは昨日、ユリハと通信越しに話した時を思い出していた。
ユリハはあの時、実はジェットでなくフィムを見たことで、思わず言葉に詰まるぐらいに驚いていたのかもしれない。
「・・・・シャロンは、数年前に突然、このグラジオラスへと迷い込んだの。
ただの小さな女の子じゃないのは、明らかだった。
だけど、
そんなあの子を放っておくなんて出来なくて、グラジオラスの皆で、
フィムみたいに愛らしい子で、直ぐに牢獄の皆とも仲良くなったわ。
私にも、良く
ユリハの語った経緯に、ユウゴはなんとも
「随分と、思い切ったもんだな」
――――ヒト型アラガミは、十数年前の”
なぜならば、その身に宿る特殊な”力”は、特に”灰域種アラガミ”の標的とされていること。
そして、仮に保護しようとも、今度は”貴重な研究材料”として、
されど、そのようなリスクなどユリハ達は
「・・・・けれど、
私達は、常に監視され、逆らうことも出来はしない。
・・・・分かって、いたのに。
シャロンのことを、あの人に・・・・”トレイズ博士”にだけは、知られてはいけなかった・・・・!!」
「つまりは・・・・ユリハの焦りも、シャロンの異変も、全ては
ルルの言葉に、ユリハは激しい無念を噛みしめ、首肯する。
「トレイズ博士は、グラジオラスを
あの、”フェンリル本部”に在籍していたのを、”厄災”に追われて此処へ流れ着いた。
”私のローレライを完成させるためには、この地は都合が良い”。
・・・・以前に、そう言っていたわ」
「・・・・研究者ってのは、どいつもこいつも
もしもキースまでそんなキモくなったらと思うと、ゾッとするぜ」
よほど自分の研究に執心しているのだろう
「・・・・都合が良い、と言うのは、グレイプニルの目が届きにくい以外にも、”
一方で、その話へ冷静に意見したユウゴに、ユリハやハウンドスクワッドは目を見開いた。
「この辺りの地図と、アラガミの異常な密集を見てて、思ったのさ。
グラジオラスは、南西の
そして、
「なら、そうしてあれだけのアラガミを追い込んで、殆ど争わせずに押し込め続けているのは・・・・”ローレライ”の力?」
ハウンドスクワッド参謀の分析に、更に付け加えるクレア。
2人の
「・・・・あの山も、元は
だけど、”ローレライ”はそれすらも変えてしまった。
博士は、
何度も、何度もあの”悪魔の機械”を実験をして・・・・私達は・・・・っ」
語気の強さに
「――――最初は傷ついて、戦えなくなった
それが出来なくなったら、次は成長したAGE候補の子達。
酷い時には、一日に3人も連れて行かれて・・・・その誰もが、帰ってこなかった」
「AGEを連れて行く・・・・あの、中央施設にか?」
ユウゴの問いに、しかしユリハは聞こえてないかのように俯き、拳を強く握りしめた。
「――――”全ては、ローレライに
しかし、ありふれたAGE
・・・・博士は、あの子達のことをそう言い捨てた。
役に立たない
「まさか・・・・っ」
ルルが、言葉を詰まらせた。
そもそもに、”感応波”という
「より良い触媒を探して、博士は監獄から
でも、私は・・・・実験体No,D-29。
適正に劣るも、ミナトの防衛には使える
・・・・同じく不適合とされた仲間達と、この場所を守るためにずっと戦ったわ。
けれど・・・・けれど、実験は止まらなかった」
身体を酷く震わせるユリハに、ジェットは声をかけるべきか
だが、おそらく今すべきなのは、ユリハの言葉を、
その筈だと、ジェットは自分に言い聞かせた。
「いずれは、カミルも。
それでもダメなら、もっと幼い子達にまで・・・・。
・・・・でも、そうはならなかった。
シャロンを・・・・”ヒト型アラガミ”を使うことで、ローレライの安定起動に成功したから」
「っ!!
なら、シャロンの変化は、やっぱり・・・・!!」
「・・・・嫌がるシャロンを監獄から引きずり出して、博士はローレライを起動し続けたわ。
それから、シャロンが
言葉も辿々しくなって、いつも見えない何かに怯えて、酷い頭痛でふらついて。
・・・・そんな状態で、私達の元に
”壊れ切ったら、触媒としての価値が下がる”・・・・そう言って・・・・!!」
ユリハの怒りと哀しみに、クレアは息を呑み、そして堪らなそうにフィムを見詰めた。
フィムと出会った当初、無垢な赤ん坊のようだった頃から今に至るまで、クレアは全てを知っている。
人と関わり、その繋がりで成長し、愛を覚えられる奇跡の存在を、残酷に使い潰す。
その行いに、言葉に言い表しきれぬ
「・・・・あの子は近頃、異常に長く眠るようになったわ。
眠りながら、起きている。
その逆なのかもしれないような、
ローレライの起動の度に、状態はもっと悪くなっていく。
記憶や、理性も薄まり出して・・・・だけど、私にはなにもしてあげられない!!
あの子を守ってあげたいっ。
でも、博士に逆らえば、私達は物資を絶たれ、3日と生きていけない!!
そして、ローレライを使わなければ、グラジオラスはアラガミの群れに呑み込まれるのだから!!」
「ユリハ・・・・っ」
悲鳴を上げて身悶えるユリハへ、カミルが身を乗り出す。
だが、その
同じように涙を流す、クレアだった。
「――――詰まるところ、あの”
内心の
「・・・・クソがよ・・・・っ。
相手はまだ
なんで・・・・よくも、そんな事が出来るんだよ・・・・!?」
「・・・・
命を、何とも思っていない。
同じだ・・・・バランと」
「・・・・かわいそう。
シャロンも・・・・ユリハも・・・・」
同じ”ヒト”への非道な行いに、ギリギリで
その小さな頭を優しく撫でつつ、ジェットはふと思い当たっていた。
「・・・・一昨日、ユリハの救難信号は
最低限、ご自慢のオモチャの囮になれば、生きようが死のうが構わないってか。
ああ、
安全な場所に引き
そのような
あまりにも身勝手で冷酷な
それは相手への
「――――なぁ、皆。
先に謝っとくわ」
唐突なジェットの言葉に、仲間達の視線が集まる。
まずはユウゴが、なぜかそこはかとなく
「どうするんだ、ジェット?」
「・・・・イルダは、勇敢さより慎重さを、って言ってたな。
それで言えば、外のアラガミも、中のローレライも、まともに付き合うべきじゃない。
そして明日、トレイズの協力に乗れば、俺達はせいぜい安全にこの場を
ただでさえ弱っているシャロンに、更にローレライを使わせるのと引き換えにな」
「っ・・・・!!」
昨日、寝台に縛られていたシャロンは、ジェットの見る限り、もはや
その境遇を哀れみ、助けようとしても、天秤にかけられるリスクの大きさに、ユウゴが嘆息しながら答える。
「だが、極めて安全で、確実な策ではある。
いや・・・・
ローレライの起動と同時に脱出するとなれば、シャロンを収容している暇も無い。
その、”ただ一つ”さえ諦めれば、俺達を含めた多くを救うことが出来る」
「そんなっ・・・・そんなの」
「おう。
そんなのは
お前達にだけじゃない。
他でもない”
だからこそ、ジェットは先に謝罪していた。
安全で確実で
そんなリーダーらしからぬ判断に対し、しかしハウンドスクワッドの仲間達は、次々に
「そんなキモいやつに、”助けてくださいお願いします”の握手をするって?
んなダセェ真似、こっちから願い下げだぜ。
俺なら、自分でアラガミをぶっ飛ばしまくるほうがマシだね」
「危険上等。
どんな任務だって切り抜けて、結果で黙らせる。
それが俺達、ハウンドスクワッドだろうよ」
「なによりも・・・・動き出さなきゃ、大事なものを
それなら、迷うことなんてないよね。
勝手に諦めて、後悔するよりも、
それが、ヴィクトリアスの・・・・ううん、私達の戦いなんだから!!」
「我々は、言われるがまま、
生き抜く為、自分で
ならば、今度もまた戦うことを選ぶ、というだけだ」
「いひひひっ、やっぱり、かっこいいっ!!
おとさんたち、ハウンド
ジーク、ユウゴ、クレア、ルル、フィム。
誰もがなんら恐れることも無い、その自信の程は
されど、皆に
「――――やれやれ、やっぱりそういう話になってたか」
ところが、その時。
突然に、話し合いの外から聞こえた
しかも、その先に立っていた人物は、つい目を疑ってしまうほどに
「リ、”リカルド”っ!?」
「ね、寝込んでるはずじゃなかったのか!!??
動いて大丈夫なのかよ!?」
素っ頓狂な声を上げるジェットとジークに、リカルド・スフォルツァは余裕綽々な態度で笑ってみせた。
「心配をかけて済まなかったな、皆。
だが、ひとまずその辺りは後にしよう。
先に、勢いばかりで突っ込もうとしている
「・・・・リカルドも、そこまで違わないと思うが」
ルルのクールな指摘はともかく、リカルドが情報端末を差し出すと、その画面には膨大なデータが表示されていた。
「”グラジオラス中央施設”の内部構造と、警備情報だ。
どうやら、中には警備装置と連動したガードロボットだらけらしい。
半端な備えじゃ、返り討ちだぞ」
確かに、建物上面図や立体図、
「コイツをどこで?」
「あの”ローレライ”を危険視したのは、お前達だけじゃないってことさ。
さぁ、キースの
オーナー
「ちぇっ、
渡りに船、とばかりではあったが、あまりに見事なお
一方、リカルドとはこれが初対面のユリハ達は、その緊張のほうが勝っているようだ。
「ああ、心配すんなユリハ。
リカルドも、俺達の仲間なんだ。
ついでに、
どうやら、とうとう
「”
「状況は、
だが、それを押し通ろうとする奴らが、どんどん集まって
そして、こういう
俺達は、ようやく”勝負の席”に
「――――・・・・なんでだよ」
ところが、確かに勝ち目を見出しているジェットに対し、
「カミル・・・・?」
ただ1人だけ、険しい眼差しのカミルは、思わずユリハが心配して声をかけるほどだった。
しかし、そんな彼女を振り切ってまで、カミルは更に声を荒げた。
「お前らは、
全部、トレイズに協力した方が、お前らには
トレイズも、アラガミも、灰域も・・・・何か1つを抜けたって、また直ぐに追い詰められる。
しかも、お前はシャロンに
そんな相手の為に無理をして、失敗すれば全部、
・・・・本気なのか?」
突き刺すような剣幕で、カミルはジェットを見上げる。
否や、
だからこそ、ジェットは不敵に笑い、真っ直ぐに向き合ってみせた。
「前にも言ったろ?
俺は、お前と同じ、こういう場所で育ったんだ。
俺と、俺の仲間を
だが、その全部を
「・・・・っ!!」
「だから、お前達が見ている現実は、
そして、俺は・・・・俺達は
それだけだ」
ジェットが語り、その
だが、カミル達を
自分の心と、他者の命と、
その為なら、立ち塞がるものを
心のままに戦い、
ただの
「――――・・・・どうしたら、そうなれるんだ?
なんで、立ち向かえる?
オレ達と、何が違う?
オレは・・・・どうしたら皆を守って、ユリハを助けて、生きていけるんだ?」
「・・・・そいつは、お前だって見てきた筈だぜ。
自分一人じゃ、勝てない。
だったら、今を耐えて、生き抜いて、
一緒に戦ってくれる、信じられる仲間達をな」
>> To be Continued....
・Tips.8
「カミル・グラジオラス」
年齢 11
現在の牢獄内では2番目に成長している為、他の子供達の纏め役ともなっている。
物心ついた時から厳しい監視生活に置かれていた故に、仲間達以外への不信感が強く、屈折した態度を取りがち。
しかし、数多くの
今や、唯一残ったAGEであるユリハとは仲が良く、互いに信頼を置いている。
それだけに、彼女の助けになれない今の自分の
また、その