遅くなって申し訳ない。まあ三連休中に出すとは言ったけど三連休中に読めるとは言ってないので()
こちらは前回言った通り9話を平和にした回です。実は3000字くらい書き直しているのでぜひ前回のやつを読んだ人も読んで欲しい。だいぶ平和な回になっていると思います。
それでは本編どうぞ。
『昔、ここから遠く離れた場所に、一つの里があった。
その里にはたくさんの獣人と一家族のオニが住んでいた。里の外との交流こそ少なかったが、里の中では全員が顔見知りであり、領主であるオニと他の里民との距離も近かった。
『おはよ〜」
「おはようございます!お嬢!朝早くからお散歩ですか?」
『うん!たまにはこういうのもいいかなって思って。そっちも朝早くからご苦労様!』
「いえいえ、我々農家はこれが大事ですから。いつも領収様方にはよくして頂いていますので、その分は奉公させて頂きますよ!」
『おぉー。じゃ、頑張れ〜』
いつも平和で楽しい村だった。そんなある日…
「——という訳だ。ってあやめ、聞いているのか?」
『え?ごめん、余、なんも聞いとらんかった。父上、もう一回言って?』
「はあ…あやめ、お前もそろそろ外の事を知っておくべきだ。旅に出て里の外を色々見てきなさい」
『え〜。余、別に外の事なんて知らなくても大丈夫だよ』
「大丈夫ではない。例えば、あやめは人間のことは全然知らないだろう?」
人間。角も獣耳も尻尾もない種族だと聞いたことはあるけれど、見たことはないし詳しいことは何も知らない。
『確かに、人間はちょっと見てみたいかも。…で、どれくらい見てくればいいの?3日ぐらい?』
「うーん…30年ぐらいだろうか」
『さ、30年⁉︎』
「まあ、苦しくなったらいつでも帰ってきなさい。それと——」
『それと?』
「絶対に!!彼氏など作らぬように!!」
父上が普段出すことのないような声を出し、思わずたじろぐ。
『…大丈夫だって。まあ、いつ帰ってもいいならちょっと頑張ってみようかな』
「よかった。ああ、それとあやめ、これを持っていきなさい」
そういって父上は2本の刀を差し出してきた。
『これは?』
「我が一族に代々伝わる刀だ。困った時はこれを使いなさい。きっとあやめを助けてくれるはずだ」
『うん、ありがとう。じゃあ、準備してくるね』
里を出て道を進んでいく。なんとなくノリで出てきたはいいものの、どこへ行こうか。
そんなことを考えていると、前方から誰かがやってきた。獣耳も角もないということはあれが人間なのだろうか。とりあえず話を聞いてみよう。
『お〜い、そこの人間〜』
声をかけると余に気付いたようだが、すぐに走り去ってしまった。なぜなのだろうか。
その後も何人かに声をかけてみたが、みんな余に気付くや否やすぐにどこかへ行ってしまう。気になるから1人逃げられる前に捕まえてみたが、全力で逃げようとしてくる。
『ねぇ〜なんで余から逃げるの?余になんかついてる?』
『ひぃっ!私、食べても美味しくないです!どうか食べないでください…』
『食べる?余が人間なんて食べる訳ないじゃん』
『誰か助けてぇ!私まだ死にたくないぃ!』
なんか可哀想になってきたので解放してあげた。やっぱり一目散に逃げていく。どうやらオニは人間に怖がられているらしい。獣人はオニを怖がるのだろうか。それとも、逆に獣人も人間に怖がられているのか。どうやら余は思っていたより外の事を知らないようだ。
…まぁ人間に怖がられているってのは分かったし、今日はとりあえず帰ろっかな。と思ったその時、
『あれ?余、どこから来たんだっけ?うーん…あ、そうだ!困った時はこれを使えってね!…よいしょっと、どーっちどっち、どーっちどっち…』
父上から貰った刀の一本を地面に垂直に立て、手を離し刀を倒す。
『よし、こっちか!』
刀が倒れた方向に向かって進み始める。
しばらく進み続けた結果、見事に山の中で迷ってしまった。
『うーん、おかしいな…絶対こっちだと思ったんだけどな…』
疲れ切ってその場に座り込む。お腹も空いたし、これからどうしようかと思っていると、獣人が声をかけてきた。
『大丈夫ですか?』
『大丈夫…じゃないかな』
『何かあったんですか?』
『余、今日初めて里から出てきたんだけど、迷子になっちゃって。もう疲れちゃって全然動けなくてぇ…』
『それは大変ですね…とりあえず白上の家まで送っていきましょうか?あ、私、白上フブキといいます。あなたの名前は?』
『余は百鬼あやめだよ』
『あやめちゃんですね。分かりました。では、背負っていくので乗ってもらっていいですか?』
獣人はこちらに背を向けてかがんだ。獣人はオニのことが怖くないのだろうか。とにかくここは助けて貰おう。
『ありがとう…えっと、フブキちゃん、でいいのかな』
『ゔっっっ!!かわよ…』
『どうしたの⁉︎大丈夫⁉︎』
『大丈夫です…じゃあ行きますね』
フブキちゃんの家に着き、料理振る舞ってもらった。どれもとても美味しくて、疲れた体に染み渡った。
『ありがとう、フブキちゃん。ところで、フブキちゃんは余のことは怖くないの?』
『はい。あやめちゃんのことは怖くないです。でも——』
その時、急に玄関の戸が開いた音がした。フブキちゃんは誰かと一緒に住んでいるのだろうか、と考えていると、部屋に狼の獣人が入ってきた。
『こんばんは〜。あ!この娘がフブキが言ってた百鬼あやめって子?』
『あ、ミオ!そうですよ、この娘があやめちゃんです』
『はじめまして、ウチは大神ミオだよ。よろしくね』
『よろしく…』
『そういえばあやめちゃん、どこから来たか聞いてませんでしたね。近くにこんなオニがいたなんて知りませんでしたからそこそこ遠い所なんでしょうか』
『えーとね、余が来た所は…』
そこで言葉に詰まる。里の名前が思い出せない、というか、里の名前を聞いたことがない気がする。どうやって伝えればいいのだろうか。
『あれ…余、なんていう里から来たんだっけ…』
『落ち着いて下さい。どれくらいの距離ですか?』
『ええと…一日中動き回ってたから遠い…いや、いろんな方向に進んでたから近い…?』
『じゃあ隣の集落の名前とかは?』
『…ほとんど外とは交流してないから分かんない…』
『えっと、じゃあ…』
もうあの里には帰れないのか。そう考えると涙が出てくる。
『…余、もう父上にも、母上にも、里のみんなにも会えないのかな…』
『そんなことないですよ!白上たちが絶対に探してみせます』
『そうだよ!絶対また帰れるから安心して!』
『うぅ…2人とも…ありがとう…』
『とにかく、今日はあやめちゃんも疲れているでしょうし、また明日ゆっくり色々と聞かせてもらいましょう』
ミオちゃんも帰り、余も疲れていたのですぐに寝ることにした。
翌日、朝ごはんを食べた後にフブキちゃんともう一度話す。
『では、里の特徴を教えてくれませんか。どんなに細かいことでもいいです』
『余の里は、人数が数十人ぐらいで、余たちオニと獣人だけがいて、山に囲まれていて…特徴はそれぐらいかな』
『ふむふむ、かなり小さい里なんですね…これは少し時間がかかるかもしれないですね…あ、せっかくなら一人暮らししませんか?』
『一人暮らし?うーん…』
これまでずっと父上と母上に頼りっぱなしだったが、一人暮らしなんでできるのだろうか…でもいつかはしなきゃいけないことだし、今やっておくべきかも知れない。
『分かった。やるよ!』
『分かりました。じゃあ明日にでもなんとかできるよう準備しておきます。それと、最後になるんですが、あやめちゃん、ぜひここの近くにある村のみんなと仲良くなってくれませんか?』
『村のみんな、ってもしかして…人間?』
人間と仲良くしようとしたところで向こうから逃げてしまうのだから、そもそもこちらでどうこうできる話ではない気がするのだが。
『人間と獣人ですが、村のみんなは白上が説得します。ここにある程度住むなら、仲良くしておいた方がいいはずです。どうでしょうか?』
『…フブキちゃんがそういうなら、やってみるよ』
『ありがとうございます。では、白上は色々と準備してくるのであやめちゃんはなんでも好きなことをしていてください』
数日後、フブキちゃんに連れられるまま山の中を進んでいくと、ポツンと佇む一軒の小屋に着いた。中を見ると、いくつかの家具が置かれたシンプルな構造になっている。
『少し前から空き家になっていたものをパパっと直したのですが、どうでしょうか?』
『すごくいい!余、ここに住むよ!』
『よかったです。食材は冷蔵庫の中にあるので自由に使ってください。それと…これをどうぞ』
そう言ってフブキちゃんは大きな笠を差し出してきた。
『何これ?笠?』
そういうと、フブキちゃんは大きな笠を差し出してきた。
『何これ?笠?』
『これは妖力を込めた特別な笠です。これをかぶれば誰もあやめちゃんをあやめちゃんだと認識できなくなります。多分ないとは思いますが、人間と関わるのが本当に嫌になった時に使ってください』
『…うん、分かった。ありがとう』
そうしてフブキちゃんは帰り、完全に1人になった。家事がうまくできるか不安だったが、普段からちょくちょく手伝いをしていたこともあり思いの外なんとかなった。
家事を終わらせ、明日からの日々に期待と不安を感じつつ、布団に潜る。人間とはうまくやれるだろうか。父上や母上や里のみんなは元気だろうか。そんなことを考えていると、疲れが襲ってきた。そのまま眠気に身を任せ、眠りについた。
お気に感評願(定期)(コピペ)
今回の話は前回の話に比べてだいぶあやめがPONな感じになった気がしています。あと久々にネタも入れられました。シリアスな展開だとネタとか入れづらい…。
☆10話https://syosetu.org/novel/377125/14.html