ようこそ超能力者のいる教室へ   作:オールF

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前回のあらすじ

Q.超能力者で一番強いのは?
A.
占い師「え?楠雄」
探偵「状況関係なく楠雄くんですかね。あくまで私個人としては(要約)」
霊能力者「斉木さんじゃないっすか?俺以外のΨキッカーズ入れても変わらないけど」
超能力者『僕と鳥束以外の誰か』

「楠雄はさ」「楠雄くんは」「斉木さんは」
「「「優しいんだよね」」」


って感じの話でした
今回は本来前話に入れようとしていた内容となります


策士たち

 僕の貴重な放課後のひと時が他クラスの女子たちに奪われてから早くも1週間。

 僕が彼女たちの練習を見ていると同級生たちに知られては面倒なので、グラウンドなどは借りずに高育の敷地の隅の方まで来て練習をしている。

 これまでの人生で自身を鍛えるための運動などしたことのない僕に運動の善し悪しなど分かるはずもないのに、櫛田さんや椎名さんの努力を見守らされているのは一種の拷問なのかもしれない。

 しかし日に日に筋肉繊維が傷つき、それを身体が修復すると共に体力がつき、身体能力が上がっていく過程を見られるのは自分には出来ない体験なのでそれを楽しみにすることにした。

 

「はい、斉木くん。今日のお礼っ、このいちごタルト評判なんだよ?」

 

 あとは櫛田さんがお礼として持ってきてくれるスイーツも楽しみでは無いが、せっかくの厚意だ。

 あちらも僕が貰わなければ困ると思い、しぶしぶ、仕方なく、不可抗力ながらも、受け取って食している。

 クラス外で面倒ごと引き受けているため、クラス内では穏やかに過ごし、体育祭の日も含めて南雲、龍園の妨害をなんとかしていればいいかと思っていたが、世界はどうやら僕には優しくないようだった。

 

「で、話ってなんだよ副会長さんよ」

 

 椎名さんのテレパシーを読み取り、龍園が堀北さんを狙い撃ちにした妨害をすることが分かり、その具体的な方法を調べていたところ、彼は南雲に呼び出されていた。

 わざわざ副会長とつけてやるような人柄でないことはわかったため、もう呼び捨てでいく。

 

「そう焦るなよ1年坊(もう1人呼んであるんだが、あいつはここまで来るのに時間がかかるかもな)」

 

 南雲が用意したのはかつて龍園が須藤との暴力事件をでっちあげようとした特別棟にある一教室で、僕はその隣の部屋を借りて話し合いの様子を聞くことにした。

 体育祭の練習はすっぽかしたわけではなく、何を借りて来いと言われてもいいように準備してくると伝えて出てきてある。

 しかし、全員参加種目は仕方ないにしても、推薦参加の四方綱引きと借り物競争に駆り出されてしまうのは誤算だったな。

 二人三脚も出される寸前だったが、僕と組みたがる相手がいないだろうと卑屈になって出たくないアピールをしたら

 

「そんなことないよ! ね、神崎くん!」

「あぁ、俺は構わない」

 

 と、出ることになってしまった。

 Bクラス男子の足の速さが男子高校生の平均値並すぎたのは予想外だった。

 お前らもっと走れよ。

 普段運動していない超能力者に負けていては異性にモテないぞ。

 

「お待たせしました」

「坂柳? 待ってたのはこいつかよ」

「ああ、俺が呼んだ。悪いな遠くまで御足労いただいて」

 

 僕が直近のホームルームの思い出を振り返っていると役者は揃ったらしい。

 南雲が招集したのは力を失いかけているとはいえ1年AクラスとDクラスのリーダーで、2年Aクラスの南雲とは同じ赤組になる。

 クラスを束ねるリーダーの先輩として彼らにアドバイスがしたいということはなく、一之瀬さん潰しの協力者として指名したのだろう。

 

「どうした、座ってくれないのか? それとも俺が座らないと気が引けるか?」

 

 椅子に座らずに立っている龍園と坂柳さんに対して、南雲が着席を促す。

 すると、龍園は鼻で笑ってから席につき、坂柳さんも静かに椅子に腰かける。

 

「坂柳、今日はいつもの家来共はどうした? まさか1人でここまで来たのか?」

「ご心配には及びませんよ。階段のところまでは神室さんと来ましたから」

「なんだもう帰しちまったのか? 帰りはどうするんだ? 俺か副会長に送ってもらうつもりか?」

「いいえ、神室さんには話が終わり次第また来てもらいますから、お2人の手を借りることはありません」

 

 挨拶がわりなのか、2人は早速、言葉の応酬を交わす。

 そんな2人を見ながら南雲は席に着くと口を開いた。

 

「仲が良さそうでなによりだ。同じ赤組として微笑ましい」

 

 心の中ではなんとも思っていない南雲は場を和ませるために軽く話題を振ったが、どちらも無言で(早く本題に入れよ)と視線だけを南雲に向けるため、空気はますます冷たくなる。

 それを感じ取ったのか、南雲は薄ら笑いを浮かべたまま話を始めた。

 

「単刀直入に言おうか。今回の体育祭で、俺は一之瀬帆波を潰す」

 

 その言葉に、静まり返っていた教室の空気がわずかに揺れた。

 同じ目的を持つ坂柳さんは「へぇ」と口角を上げ、龍園は本心から南雲の話を鼻で笑う。

 

「……はっ。随分と物騒じゃねぇか。次期生徒会長様とあろう男が、わざわざ1年の女1人を狙うとはな」

 

 龍園は愉快そうに肩を竦めるが、南雲は言葉を弄することなく素直に頷きを返す。

 

「今の一之瀬は調子に乗っている。聞いているぜ、夏休み中にあった特別試験でお前らのクラスはあいつにいっぱい食わされたってな」

「私はその時いませんでしたが、そうみたいですね」

「ああ。否定できないくらいにな」

 

 坂柳さんが龍園の方を向くと、龍園は苛立つことなく冷静に返していた。

 

「無人島試験ではヘマをしたが、船上試験は完璧だったさ。あいつが他クラスに協力なんて持ちかけなければな」

「それを世間では負け惜しみと言うんですよ?」

「試験にも参加してねぇ奴が一丁前に口出ししてんじゃねぇよ」

 

 まあ龍園の言う通り、坂柳さんは先天的疾患の影響で夏休みの特別試験には不参加だったため、龍園にとやかく言う資格はないだろうな。

 坂柳さんもそれは分かっているのか、私がいればAクラスが勝っていましたよというタラレバの話を飲み込んで南雲へと目を向ける。

 

「それで、南雲副会長が一之瀬さんを狙うのは調子に乗った彼女を分からせるため……そういうことでしょうか?」

「ああ。あのクラス、1年Bクラスは一之瀬を精神的支柱として成り立っているクラスだ。一之瀬がいないと何も出来ない木偶の坊の集まり、その一之瀬を潰せばあのクラスの芽は消える。そうは思わないか?」

 

 俺のクラスがそうだったから分かると南雲は断言する。

 自身の実力と人心掌握術で1年Bクラスを2年Aクラスに押し上げた実績があるからこそ豪語できるのだろう。

 そして、南雲の見解に坂柳さんも龍園も頷きを返す。

 

「ええ。同感です」

「(一之瀬を潰すか。こいつらと組んでそれができるか? 無人島試験はともかく、船上試験でのアレは異常だ。法則を見抜くまでと策を実行するまでが早すぎる。体育祭は正攻法で来るだろうが、外からの妨害に何の無警戒ってこともねぇだろ)まあそれはどこのクラスも変わらねぇだろ。ただBクラスほどリーダーに依存してるクラスがないことは認めるが」

 

 龍園は内心南雲の案を疑問視しながらも、表面上は当たり障りのない対応をする。

 だが、南雲がどうやって一之瀬さんを潰そうとしているかには興味があるらしく、彼は前のめりになって尋ねた。

 

「で? どうやって一之瀬のこと潰す気だ? アンタは学年も性別も違う。手の出しようがないだろ? (まあだから俺らに話を持ちかけてるんだろうが)」

「だからお前たちを呼んだんだろう。分かりきったことを聞くなよ、龍園」

「……それが人にものを頼む態度か? 話が見えて来ねぇからわざわざ分かりきったことを聞いてやってるんだろうが」

 

 こいつら本当に高校生か? 

 なんか裏社会モノのドラマみたいになったきているが。

 そのうちもっとデカイ山を張りませんかとか言うんじゃないか? 

 

「参加表を手に入れてやるから、一之瀬が出る種目に合わせてあいつの邪魔をしろ。いや、潰せ。二度とクラス運営なんて出来なくなるくらいにな」

 

 南雲から飛び出した発言に龍園と坂柳さんは顔をしかめる。

 参加表は各クラスで管理しており、担任教師に提出し、締切を過ぎれば生徒には入手なんて不可能だ。

 これはプライベートポイントを払っても変わらない。

 だが、種目の参加者は練習を見ればある程度できても、その順番までは把握できない。

 例えば、一之瀬さんがリレーに出ることは確定していても、何レースのどの枠に出るかは不確定で、それが分かっているのは本人と参加表を持つ運営だけとなる。

 運動能力の高い一之瀬さんを種目中に潰すためにはどんな手段を使うにしても彼女に匹敵する能力を持つ生徒を出す必要がある。

 その生徒は能力の高い生徒の揃うAクラスや運動能力の高い生徒の多いDクラスでも容易ではない。

 しかし、一之瀬さんが何レースのどの枠に出るかがわかっていれば話は変わってくる。

 

「(Cは橋本とCクラスにいる橋本の恋人とやらにポイントを積んで入手してもらうつもりだったが)……なあ坂柳、俺が言うのもなんだが、この学校は一体どうなってるんだ?」

「(生徒会とはそこまでの権限があるとは知りませんでしたし、それを平気で利用するとは思いもしませんでした)私に聞かれても困りますね」

 

 龍園が道徳心を取り戻し、坂柳さんが呆れるほどには南雲の発言にはインパクトがあった。

 

「本当に手に入れられるのか?」

「ああ。現物は無理だが、コピーなら可能だ」

「それは生徒会役員なら全員できるのですか?」

「いや、会長と副会長の俺だけだ。体育祭前日17時前のはもちろん、それ以降のも見ることが可能だ」

「……随分と公平性に欠けますね。生徒会長と副会長のいるクラスが有利になりませんか?」

「あぁ、そうだな。だから、俺と会長は体育祭の際、クラスの参加表を作ることや、クラスのやつが参加表を作る際に口出しすることを禁じられている」

「会長と副会長が参加表を見れる理由はなんだ? 学校側にメリットがあるようには思えねぇが」

「単純な話だよ、龍園。運営側だからさ」

 

 南雲は肩を竦めながら、机を指先で軽く叩く。

 

「競技の進行、トラブル対応、失格確認……生徒会も学校側の補佐として動くことがある」

 

 本当に稀だがなと南雲は薄く笑った。

 

「そこに参加表の集計や記録も含まれてる。俺と会長だけが、クラスの参加表を閲覧する権限を与えられてる(まあ嘘なんだがな)」

 

 嘘なのかよ。

 僕も一瞬信じちゃったぞ。

 

(参加表は教師に手渡されたあと、体育祭の運営委員会に渡される。が、そこの運営委員会の設置場所が生徒会室の隣。体育祭前日の夕方5時に受け取ってから遅くとも夜9時までに集計し、出場種目の確定を行う。しかし、それまでは参加表は生徒の出入りできない運営委員会の教室に保管される。そして、その教室には俺と会長は入ることができる。だから参加表を見ることができる)

 

 見る権限というよりは見る方法があるだけで、見るのはアウトっぽいな。

 まあ、坂柳さんの言う通り生徒会の最高役員2人だけが事前に参加表を見れるというのは公平性に欠けるわけだしな。

 

「なるほどな、話はわかったぜ。俺は乗ってやってもいいが……やるからには何かしらの見返りは期待していいんだよな?」

「俺から用意してやるのはBクラスの参加表と報酬金としてプライベートポイント100万ずつだ」

 

 南雲の提示した報酬に龍園は眉をひそめた。

 

「100万だぁ? 2年を牛耳ってる副会長のアンタがそれぽっちしか出せねぇなんてことはねぇだろ? こっちはそれなりにリスクを背負うんだ」

「(やっぱりふっかけてくるか)どうすれば納得するんだ?」

 

 その言葉を待っていたと言わんばかりに龍園はニヤリと笑い、席から立ち上がる。

 

「1年Cクラスの参加表も貰おうか。それなら100万でも受けてやるが、前金でもらおうか」

「前金? お前が成功する保証もないのにか?」

「俺は一之瀬潰しは今じゃないと思ってるんでな。それよりはCクラスの堀北鈴音の方が最優先だ。貰えないって言うなら俺はこの話から手を引くぜ(参加表こアテはあるしな。むしろこいつの話をBに持っていってやってBから礼金を貰ってもいいくらいだ)」

(堀北鈴音? 堀北会長の身内か? だが、会長からそんな話は出たことはないが。まさか、な)

 

 礼金なんてあるわけないだろ。

 ただ、南雲とAクラスが一之瀬さんを潰そうとしていると事前にわかるのなら、僕が手を出さなくても良くなる可能性が上がるし教えて貰えるなら教えてもらった方が助かるか。

 

「わかった。前金で100万とB、Cクラスの参加表。そして成功報酬で900万つけてやる。坂柳もこれでいいか?」

(急に太っ腹だな。いや、成功報酬もつけてやるから俺にもやれってことか)

「ええ、私もそれで構いませんよ」

 

 2人の承諾を得て、南雲は「よし」と

 小さく呟いて立ち上がると2人のところまで歩き、龍園と坂柳さんに握手を求めた。

 

「俺達は同じ赤組の仲間だからな。一之瀬の件だけじゃなく、赤組の優勝を目指してお互い頑張ろうぜ」

「はっ、似合わないセリフだな。おい、坂柳、葛城派の奴らに勘づかれるなよ」

「それはこちらのセリフですよ。あなたも一之瀬さんや堀北さんたちに勘づかれないように気をつけてくださいね」

 

 既に隣の部屋にいる僕に勘づかれるどころか、気付かれているがな。

 

「それで? 龍園くんはどうやって堀北さんや一之瀬さんを潰すんですか?」

「そんなのいくらでもあるだろ。それくらいその賢い頭脳で考えやがれ」

「(まあ参加表を手に入れるということは、堀北さんに合わせて出場者を選定しプレッシャーをかけつつ、不安を煽ったり、あわよくば接触事故を起こして他の競技に出れなくするか、賠償請求でもするといったところでしょうか)……なるほど、分かりました。自分なりに考えてみますね」

 

 よくそれだけの事が思いつくな。

 どうしてそれだけの知恵を細い道で使うのか理解に苦しむが、とりあえず当日までは何もしてこなさそうとわかったのは大きな収穫だな。

 クラス表を手に入れたと悟られないためにブラフでスパイを寄越してくる可能性もあるが。

 事前に対策もできなくは無いが、僕では葛城や反龍園派との伝手がないからな。

 学年の人気者やクラス内にいる穏健派でもなければ難しいだろうしな。

 そんな伝手も僕には……いや、あるな。

 学年の人気者と、Dクラスの穏健派が。

 当日までに削れる手間は削っておくか。

 僕は南雲たちがポイントの受け渡し方法について話をして、それが終わり教室を離れるのを待ってから、その場を後にした。

 




どんなに完璧な策でも、超能力者1人に全てを台無しにされてしまうのであればそれは完璧な策とは言えない

来週に投稿すると言ったな
あれは嘘だ

生徒会長、生徒会副会長が参加表を見ようと思えば見れるのはオリジナル設定です。
原作にはそんな記述ないから勘違いしないでよね!
まあ南雲は出来るならやるやろって思うんで、やらせていただきましたぁん!

本編での坂柳ですが、空助とは会っていません
空助は呼ばれはしましたが「行くわけないじゃんそんなの」とブッチしました。
そのため坂柳は名前こそ知っていっても実際に会ったことは無いです。
日本を代表する天才と呼ばれる人間の1人くらいです。



次回から体育祭開幕となります
すぐに終わるといいなぁ
今度こそ次回は来週の火曜日か水曜日くらいになると思います!!


あと読者の方から2年生編から出る後輩キャラたちと斉木が関わるならどんな感じか書いてみて欲しいとお話がありました。
アニメ派の方にはネタバレになる部分もあるかもと思ってあえて書かなかったのですが、書いてもええんやろうか……?
オマケか特別編かはわかりませんが、アンケートで募りますので書いていいなら書こうかなと思うので投票よろしくです

2年生のお話(ifとか現段階で考えている内容のおまけなど)

  • みたい
  • どちらでも良い
  • みたくない
  • 本編進めて2年生編まで行け
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