エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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皆さま初めまして。
主に「カクヨム」にて活動している蒼色ノ狐です。
この度ハーメルンでも作品を投稿する事を決めました。
是非最後までご覧ください!


序章 アーストンの白い死神
第-1話 とある小隊の結末


 草木も眠り、月が地上を照らす時間帯。

 とある森林地帯を歩く三つの人影があった。

 ……いや、それは人間ではない。

 それは鋼の巨人。

 灰色の装甲を身に纏った、人型機動兵器であった。

 重々しい足音を響かせながら、時折周囲を警戒するためにセンサーを瞬かせる。

 

「チィ、夜の哨戒なんてやってられないぜ」

「愚痴を漏らすな。これも立派な任務だ」

「そうは言いますがね隊長」

 

 どうやらロボットの中には人間が乗っているらしく、通信で愚痴を漏らした部下を隊長と呼ばれた男が咎める。

 もう一人は無関心なようで、黙々と周囲を警戒している。

 

「こんな辺鄙な場所にある基地にアーストンの奴らが仕掛けてくる訳ないじゃないですか。無駄ですよ無駄」

「だとしても任務は任務だ。しっかりやれ」

「へーい」

 

 それからしばらく黙っていた部下であったが、急に思い出したかのように口が動き始める。

 

「そうだ。隊長はアーストンの白い死神って聞いた事あります?」

「……いや、聞いた事ないな」

 

 叱っても無駄だと思ったのか、取り敢えず隊長は話に乗る。

 それに気を良くし、部下は任務中だというのに陽気に話し始める。

 

「アーストンとの最前線にした奴から聞いた話なんですがね、何でも奴らには白いMTを操る凄腕の乗り手がいるらしいんですよ」

「……よくある話だ」

 

 先ほどまで任務に没頭していたもう一人が遮るように加わるが、話はまだ終わらない。

 

「最後まで聞けって。その凄腕、実は少年兵っていう噂だぜ」

「少年兵?」

 

 想像と外れた言葉に、隊長ももう一人の部下も思わず疑問を口にする。

 

「そうなんですよ! まあ詳しい話は嫌がって聞けなかったんですけど、面白い話だと思いません?」

 

 笑い声を押し殺しながら二人の反応を待つ部下であったが、返って来たのは想像と違っていた。

 

「……年若い子どもまで戦場に出るか、嫌な世の中ですね」

「ああ。真偽はともかく、そんな噂が出ること自体問題だな」

「二人とも、真面目に考えすぎですって。こんなのただのジョークですよ」

 

 想像と離れた反応に気を悪くしたのか、部下の言葉は若干低い。

 そんな事は気にせず、もう一人の部下が隊長に声をかける。

 

「隊長。そろそろ交代の時間です」

「了解だ。無駄話はやめて……ん?」

「どうしたんですか隊長?」

「……! 二人とも! 基地の方を見ろ!」

 

 二人が隊長の声に反応して自分たちのいた基地の方を見れば、そこには夜空に黒煙が広がっていた。

 

「な、なんだ! どうなってるんだ!」

「隊長! アレは!」

 

 慌てた二人は光景が信じられず叫ぶが、隊長はそれに答えずただ歯噛みしていた。

 

「……奇襲だ。まさかこの基地に目をつけるとは」

 

 悔しがる隊長であったが、すぐに思考を切り替えて引き返し始める。

 

「隊長!」

「すぐ戻るぞ! 今なら間に合うかもしれん!」

 

 もし間に合わなくとも、救助は出来るかも知れない。

 それにこのまま基地がやられて行くのを、ただ見るだけは出来なかった。

 

「りょ、了解!」

 

 隊長機を追いかける部下たちであったが、突如として無口な方の部下の機体からの通信が途絶える。

 

「おい! どうした!」

 

 隊長、そして部下が振り返ってみる。

 そこには頑丈な灰色の装甲で纏われたコックピットを、月明りを照らした直刀が貫いている姿であった。

 直刀が引き抜かれると、糸が切れたマリオネットの如く機体が倒れる。

 その後ろには、彼らとは違うビジュアルをした白い巨大ロボット。

 

「くっ! 下がれ!」

 

 呆然としている部下を後ろに下げると、隊長は装備していたアサルトライフルで白い機体を撃ち始める。

 だが白い機体は臆する事無く隊長機に、スラスターを吹かして直進。

 

「!?」

 

 隊長は驚きつつもライフルの照準を合わせようとするが、気づいた時には向こうは超至近距離にいた。

 

「隊長!」

 

 叫ぶ部下であったが、全てはもう遅かった。

 白い機体が撃ったライフルの銃声が、静かな森林に響き渡るのであった。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 部下と同じように地に倒れていく隊長の機体を見て錯乱したのか、マシンガンを乱射し始める。

 規則性も何もない乱射に、避ける白い機体にも何発か当たっていく。

 だがやがてマシンガンの弾が尽きると、ブレードを引き抜き突撃。

 すると白い機体もライフルから直刀に持ち替え、向かってくる機体を迎え撃つ。

 

 ……決着は一瞬であった。

 

 草木も眠る森林地帯。

 そこに灰色の装甲の腕が轟音を立てて、地面に落下する。

 

「あ、ああ……」

 

 腕を切られ、攻撃手段が無くなった灰色の機体はただ後ろに後退する。

 逆に白い機体は一歩、また一歩と直刀をライフルに持ち替えながら接近していく。

 

(な、何なんだ。こいつは一体……)

 

 混乱する頭の中で、先ほどまでしていた話を思い出す。

 

「こ、こいつ! アーストンの白い死神!」

 

 それが彼が残した最後の言葉であった。

 そこにはもう、他と同じようにコックピットを撃たれた機体が森林と一体となっている姿があるのみであった。

 白い機体は何も物言わず、何処かへ去っていくのであった。

 

 ―その日、とある基地が地図上からまた一つ消え去った。




如何でしたでしょうか?
詳しい舞台設定などは次話からとなります
是非感想など送ってもらえると励みになりますので、よろしければお願いします

*次話から本格的に投稿しますが、前書き後書きは基本書きませんのでご了承ください
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