エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第89話 戦闘開始

「合図と同時に攻撃開始! 弾薬もエーテルも気にするな! 殲滅のみを考えろ!」

 

 第一陣指揮官の通信を受け、配置された各機が迎撃態勢を取る。

 一方でリビングデッド側は防衛線など気にした様子もなく、ただひたすら前に突き進む。

 陸も空も埋め尽くしそうな圧倒的兵力差。

 しかしアーストンのパイロット達に、怯えや恐怖は見受けられない。

 そしてついに、リビングデッド先鋒が射程圏内に入った。

 

「撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!!」

 

 指示が飛ぶと同時に戦闘の火蓋が切って落とされる。

 実弾

 エーテル

 ミサイル

 グレネード

 ありとあらゆる遠距離攻撃がリビングデッドに襲い掛かった。

 さらには事前に準備されていた地雷や、巡洋艦や戦艦による艦砲射撃も加わり澄み渡っていた青空は一瞬にして爆炎はエーテル光によって彩られる。

 高火力をもって敵の前進を少しでも鈍らせる。

 それが第一陣の役割であった。

 

 ―しかし

 

「糞ったれ! 止まるどころか鈍りもしないぞ奴ら!」

 

 今なお怒涛のような攻撃は続けられているが、リビングデッドたちはまるで何事も無いかのように突き進む。

 決して被害が無い訳ではなく一機、また一機と黒煙を上げながら倒れてはいる。

 だが倒れた友軍を踏みつけにし、ただ前進し続けた。

 嵐のような攻撃の中で近づいて来たリビングデッドの射程に入りかけた時、指揮官から新たな命令が下される。

 

「第一陣は後退! 補給を受けたのち入れ替わった第二陣の援護に回れ!」

 

 第一陣が先制を目的としていたのに対し、第二陣は致命打を与える為の本命部隊。

 エース級部隊が配置されており、誰もが本命に相応しいだけの力量を持っている。

 後退する第一陣を見送りながら第二陣の勇士たちが、エーテルを吹かしながらリビングデッドとの近接戦闘に入った。

 

「二陣は敵を喰い破る為の部隊! 各機の奮戦を期待します!」

 

 第二陣指揮官の鼓舞と共に、精鋭はリビングデッドに猛攻をしかける。

 その中には第二陣に配備されたユーリを除くデュラハン隊の姿もあった。

 

「ハァァァ!!」

 

 クリームヒルトの全長と同程度にも及ぶ大剣が、気迫と共に振り下ろされる。

 直撃したリビングデッドは、大剣の質量も相まって頭部から両断された。

 だが他のリビングデッドが隙をついて、左右からエーテルの刃を展開しながら挟み込む。

 

「その程度!」

 

 だが肩に増設されたブレード付きのサブアームが展開すると同時に、迫る敵機の攻撃を受け止めた。

 クリームヒルトはこの間に構え直した大剣で、二機を纏めて薙ぎ払う。

 吹き飛んだ二機が立ち上がらないよう、胸部に追加されたエーテル式の機関砲で頭部を完全に潰しておく。

 

「ふぅ」

「やったねアイシャ! こっちも負けてられない!」

 

 アイシャのクリームヒルトを庇うように、リビングデッドの大群の前に立ちふさがるミーヤ機。

 両腕のシールドに装着されている二連装の大型エーテル砲を初めてとして、大軍を相手取る為の様々な火器が用意されていた。

 

「この量なら!」

 

 ミーヤの声に呼応するが如く様々な装甲に仕込まれたマイクロミサイルが姿を現す。

 その全てがロックオンされると同時に発射され、クリームヒルトを覆いつくす程の白煙を上げながら様々な軌道を描きながらリビングデッドに襲い掛かった。

 撃つ尽くすと同時に装甲をパージし、ミーヤは続けて両手の砲にエーテルを回し始める。

 だが白煙を突っ切って、一体のリビングデッドがミーヤ機に襲い掛かった。

 アイシャ機は別機を相手取っており、援護は期待できない。

 ロックオンされた事を警告するアラートが鳴り響く中でミーヤはチャージを止める事なく、微動だにしないどころか迎撃する様子も無い。

 

「やらせない」

 

 だが引き金に指をかけていたリビングデッドは、空中から降り注いだ一筋のエーテル光によって頭部を撃ち抜かれ爆散した。

 爆炎を真正面に受けきったミーヤ機のエーテル砲が放たれ、前方に立ち並んでいたリビングデッドの上半身を蒸発させる。

 

「ありがとうエルザ!」

「当てにしすぎないで。これからもっと激戦になるんだから」

 

 ミーヤ機の傍に降りながら、エルザは苦言を口にする。

 肩に長距離ライフルが装備されている以外、あまり変化が無さそうなエルザ機。

 スラスターの増設など確かに強化されていたが、前方を確認したエルザは不安そうに呟く。

 

「……全く戦力を削れてなさそうね」

 

 主力なだけあって第二陣は確実にリビングデッドを破壊し続けている。

 だがそれを物ともしない圧倒的な総数の差は、埋められそうに見えなかった。

 

「弱音吐くなら後ろに下がれば? 誰も文句なんて言わないと思うけど」

 

 そこに敵機を蹴散らしたアイシャが合流する。

 互いに死角を作らないように陣取り、迫るリビングデッドを相手しながら会話を続ける。

 

「現状を口にしただけ。今回は突っ込んで終わりな訳じゃないんだから」

「まあ確かにね。けど先の事を考えるより、目の前の敵を倒していくのが役目よ。今はバカになった方がいいと思うけど」

「それは……そうね」

 

 リビングデッドをバヨネットで切り刻みながら、アイシャの言葉に反論せず同意するエルザ。

 両肩に展開したキャノン砲で敵機を吹き飛ばしながら、ミーヤが口を挟む。

 

「とにかく皆の為にも負けられない! 少しでも倒さないと!」

「後の事は考えない。第三陣以降も控えてるしね」

 

 アイシャはそう言うと、大剣を持ち直してスラスターを全開にして突撃を開始。

 ミーヤ機も後に続くように、両手に持ったマシンガンを撃ち尽くしていく。

 

「全く。誰の影響なんだか」

 

 明らかにユーリの影響を受けているだろう友人たちに嘆息しながら、エルザも一機でも多く撃墜するため突撃するのであった。




まともな戦闘シーンを書くのは久しぶりなので気合が入りました
少しでも気に入ってもらえれば嬉しいです!
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