エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
エリン近郊の上空に陣取る空中要塞に、弾道ミサイル三十発が軌道を描きながら迫っていく。
だがアヴァロンの護衛用に配備されていたリビングデッドたちも、接近してる事に気づき始める。
メシアから新たな指示は送られて来てないため、与えられた役割を全うするため迎撃を開始。
放たれた実弾やエーテルが近づくミサイルに着弾しようとした時、搭載されていたMTたちが一斉に姿を現した。
「よし! 各機散開! この戦いに決着をつけるぞ!」
この部隊の隊長に選抜された男の声と共に、一斉にアヴァロン内へと突撃を開始する三十人の精鋭たち。
その中には一際目立つ白のジークフリートの姿もあり、一二を争う速さで要塞内部へ突入していく。
「何とか入り込めたな」
【どれだけの戦力を伏せているか分かりません。ここからは慎重に行きましょうユーリ】
普段と変わらない様子のユーリは、アイギスの忠告通り確かめるようにジークフリートを進めていく。
すると早速リビングデッド三機が前方に立ちふさがり、バズーカ砲をそれぞれ構える。
「遅い!」
だが引き金がひかれる前にスラスターを全開にして距離を詰めたユーリは、エーテル刃を展開すると弱点である頭部を瞬く間に潰した。
物言わぬ金属の塊となったリビングデッドを放置し、中心部への道を探っていく。
【想定より内部は入り組んでいません。この分であれば時間はあまり掛からないかと】
「罠も仕掛けられている様子も無さそうだしな。内部での戦闘はメシアの想定外なのか?」
【或いは余程の勝てるだけの算段があるのか、です】
「どちらにせよ油断はしない。一番槍になりたい訳じゃないし、ここは慎重に進もう」
自分以外の突入部隊も、精鋭の中の精鋭。
誰もが戦況を覆すだけの力を持っているのだから、無理して先行する必要はないとユーリは考えていた。
途中迫るリビングデッドを撃破しながら進んでいくジークフリート。
損傷もなく進んでいくユーリであるが、得体の知れない不安に襲われる。
「アイギス。どう思う」
【間違いなく誘導されているかと】
「だよな」
アイギスの断言を受けて、ユーリの不安が確信へと変わる。
その後もあまりに少なすぎるリビングデッドたちの頭部を潰しながら、中央部近くまで辿り着く。
「他の状況はどうなっている」
【通信がジャミングされているため確かな事は分かりません】
「行き当たりバッタリになるが、まあ仕方ない」
ジークフリートのスラスターを吹かし、ここは一気に突入するユーリ。
すると球体にくり抜かれたような、かなり広い空間に出た。
「ここは」
【今までの移動距離を考えれば、間違いなく中央部直前の空間だと思われます。それとユーリ、見えてますか?】
「……ああ」
どうやら此処でも戦闘があったらしく、黒煙が白で統一された空間に充満している。
それも残骸から見れば、やられたのはリビングデッドではなくアーストン側であった。
ユーリは一瞬の油断もせず、いつでも動けるように操縦桿を握っていると、突如アラートが鳴り響く。
【ユーリ! 上です!】
アイギスの声が聞こえると同時に、ユーリはサーベルを引き抜くと攻撃を受け止める。
鍔迫り合い状態となる中、別の突入部隊の誰かが援護のため敵を狙い撃つ。
「!」
だが謎のMTは驚異のスピードで躱してみせて、撃った味方を切り裂いた。
動かなくなり爆散する味方を背に、ようやく敵機の姿が明らかになる。
白一色でカラーリングされた、まるで天使をイメージしたかのようなデザイン。
しかし頭部は見受けられず、カメラらしき物も見受けられない。
優雅なデザインも相まって、より異形らしさが極まっていた。
エーテルサーベルを構え相対するユーリの耳に、アイギスではない機械音声が聞こえてきた。
【初めましてユーリ・アカバ。そしてAIアイギス】
「……メシアか?」
【はい。長い話は望んでいないでしょうから簡潔に伝えますが、降参してください】
「問答無用で襲っておいて、随分とお気楽な思考をしてるな」
【無礼はお詫びします。ですが本人と確かめる為には接触する必要があったのです】
「そうか。なら俺が素直に頷く性格じゃないのも知っているか?」
サーベルをもう一つ引き抜き構えるユーリに対し、謎のMTは攻撃するような予兆は一切感じられない。
【ならば仕方がありません。負けを認めるまで叩きのめしましょう。この『ミカエル』で】
人を救う天使と名付けられたMTは、名に負けない程の威圧感を持ってジークフリートを見下ろすのであった。
久しぶりにユーリの登場です。
メシア側の秘密兵器登場で、さらに混沌とする戦況。
果たして人類は勝つ事が出来るのか?
今後もご期待ください!