エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
「DEMS?」
「略さずに言えばデウス・エクス・マキナ・システム。アーストンが開発した最強で最低のシステムだ」
時間は決戦前に遡る。
初めて耳にするシステムを搭載しているジークフリートを眺めながら、ユーリは隣に立つバーナードに質問をぶつけていく。
「人間やめる覚悟があるかって聞いてきたが、そんなに危険なのか?」
「ああ。実験に参加したパイロットは、全員病院行きだ」
「……随分と物騒だな」
「作ったはいいが、こんなシステムが世に出ていい訳がねぇ。このまま用無しになってくれれば、どんだけ良かったか」
バーナードはとても深いため息を吐くと、システムの詳細について語り始めた。
「要はパイロットを戦闘マシーンにするシステムでな。特殊なスーツを介して情報処理能力を飛躍的に上げる。理論的には素人でも眼前に迫った弾丸を避けれる程の反射能力を得られるらしい」
「超人になれる訳か。二年前に過激派に見つからなくてよかったよ」
「全くだ」
ユーリの言葉に軽く笑うと、バーナードは皺をさらに深くしながら説明を続ける。
「まあ今まで脅すような事を言ったが、何も無責任に押し付けようって訳じゃねぇ。ちゃんと小僧が制御できる目があるよう手を打っている」
「どんな?」
「アイギスだ。今まで病院行きになった奴らは、揃って脳が莫大な情報を受け止めきれなかった訳だ。だから最先端AIであるアイギスが、余分な情報をカットする」
「上手くいくのか?」
「分からん。何せ使うならぶっつけ本番になるからな」
一人でもパイロットが必要な状況で、危険なシステムの最終調整と言う名の生贄は出せなかったのだろうとユーリは納得する事にした。
大体の事に納得したユーリであったが、もう一つだけバーナードに聞く事にする。
「アイギスは何か言っていたか?」
「それは当然、とことん非難してきたさ。『ユーリを廃人にする気ですか』から始めり、そんなシステムを載せるぐらいなら自爆するとまでな」
「随分と過激になったもんだ。誰に似たんだか」
「間違いなく小僧だろ。まあ最後はお前さんの意思次第という事で無理やり載せたがな」
光景を思い出したのか、バーナードはジークフリートを見上げながら軽くため息を吐く。
その後バーナードはユーリに向き直ると、真剣な表情で問いかけてきた。
「だが結局は小僧の意思一つだ。使わないって選択肢もあるって事は覚えておけ」
「まあ確かに、使わない方がいいが。必要な場合は遠慮なく使わせてもらうさ」
「……てっきり嫌がると思ってたんだがな。生きる事が信条じゃ無かったのか?」
「負ければ人として満足に生きられないんだ、だったら賭けの一つも悪くないだろ? ……それに」
ユーリは照れたように頭を掻きながら、視線をジークフリートにシステムを積んでいるメカニックたちに向ける。
「今は誰かの為に命を張るのも、そう悪い事じゃないって思えるからな。俺ばかりが命を惜しむ訳にはいかないさ」
その表情は実に透き通っていて、虚勢を張っているようには見えなかった。
・・・・・
【DEMS起動完了。ユーリ・アカバの身体への負傷率は非常に軽微】
「すごいな。自分の体がMTになったみたいだ」
未知の感覚に戸惑っている様子のユーリ。
先ほどからジークフリートの手足を動かし、システムの具合を確かめていく。
【時間は掛けられません。長時間の使用になるほど、脳への負担が大きくなりますから】
「だな。じゃあ行くかアイギス」
【ええユーリ】
サーベル二本を構え、改めてミカエルと対峙するユーリとアイギス。
―人類の未来を左右する戦いの決着は近い
いよいよ明らかになった切り札
果たして人類は勝てるのか?
期待して続きも見てください!