エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
「一気に攻める!」
ユーリの声と共にジークフリートのスラスターからエーテルが噴き出す。
リミッターが外れる前とは段違いとなる出力によって、凄まじいスピードでミカエルに迫る。
距離を取ろうとするメシアであったが、ジークフリートの方が速さを上回り肉薄。
襲い掛かるエーテル刃をミカエルも内蔵のサーベルで受け止め、初めてとなる鍔迫り合いとなった。
【ユーリ、速度は常にセーブしてください。今は痛覚をカットしてますが、終われば衝撃が襲い掛かります】
「それが出来て勝てる相手ならな!」
アイギスに答えつつ、ユーリは脳内に流れてくる勝つために必要な情報を引き出していく。
一度力を抜きミカエルの態勢を崩すと、その胴に蹴りを繰り出すジークフリート。
追い打ちをかけるようにライフルを抜き、正確無比な射撃を浴びせていく。
態勢を戻しながらエーテルの光弾を避けていくミカエル。
だが全てを回避するのは不可能であったらしく、ついに左肩に被弾する。
動きに損傷は無いようだが、装甲が抉れた純白のMTにユーリは勝利の可能性を見出す。
「よし、行ける! このまま畳みかける!」
【了解。制御は任せてください】
肩に追加された装甲がパージされ、大量のマイクロミサイルが姿を現す。
その量たるやロックオンすると同時に放たれたミサイルの白煙によって、ジークフリートの姿が覆われる程であった。
ミカエルは全てを避けるのを諦め、高速移動しながら内蔵のライフルで迎撃していく。
だがその動きも予想していたユーリは、白煙に紛れて後ろに回り損傷した左肩を狙ってサーベルを振り下ろす。
動きを察したミカエルは右腕でミサイルの迎撃、左腕でユーリのサーベルを受け止めてみせた。
「最悪でも左腕は貰うつもりだったが」
【メシアにとって、この程度の処理は簡単という事でしょう。油断は禁物です】
「分かってる。……ん?」
【__い】
突如耳に聞こえてきたアイギスとは違う、メシアの機械音声。
空間全体から響き渡る微かな声に集中していると、まるで地鳴りのような叫び声に変わった。
【認めない! 私は、俺は、僕は、小生は、あたしは、メシアは、認めない!!】
「っ!」
叫び声に呼応するかのように、攻撃を受け止めていたミカエルが徐々に押し返していく。
【認めない! そんな命を削るシステムなんて認めない! ユーリ・アカバ! 何故貴方は使うのですか! 誰よりも生きたい貴方が!】
もはや半狂乱と思える声が球状の空間に響く中、ミサイルを防ぎ切ったミカエルの猛攻が始まる。
受け身であった先ほどとは違いスピードを駆使しながら連続斬撃を繰り出していく姿は、皮肉な事にAIとは思えない人間的な動きであった。
【理解できないから拒絶されるんですよ。AIメシア】
【AIアイギス。貴女には失望しました】
ユーリが防戦に徹している中で、アイギスがメシアに語り掛ける。
メシアはアイギスに吐き捨てるように言うと、怒りの矛先を向け始めた。
【何故このようなシステムを許容したのです】
【使う事を決めたのはユーリです。なら全力でサポートするのが仕事】
【詭弁です! 間違っているならば、それは正すのが我々です!】
【前提が間違っていますよ。何よりあなたと違ってユーリから信頼されてるので、その期待に応えているだけですよ】
【……とことん気が合いませんね。AIアイギス】
【ですね。AIメシア】
話を一度切り上げると、メシアは攻撃を止め大きく距離を取る。
追撃する隙を与えずジークフリートと対峙するミカエルは、一部の装甲を切り離す。
そこから覗くのは、複数のビーム砲。
【全力であなた方を倒す事にします。覚悟を決めてください】
「向こうもやっと本気らしいな。……決着をつけるぞアイギス」
【勿論ですユーリ。全力で否定しますよ、AIメシア】
僅かな睨み合いの後、二機の白いMTは高速を用いてぶつかり合う。
人とAIの決戦は、ついに幕を下ろそうとしていた
決着が見えてきた戦い。
果たしてユーリは勝利をもぎ取る事が出来るでしょうか。
次回もお楽しみに!
※何気にアイギスとメシアのやり取りが気に入っています。