エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第97話 英雄と天使

 楽園の名が付けられた空中要塞。

 その中心部にて激突する白と白のMT。

 片や人類救済を目指すAIが造り上げ人間では不可能な軌道を描く、天使の名を冠する機体。

 片や人類の業を希望に変え人間の限界を超えた速度へと到達した、英雄の名が付けられた機体。

 そんな二機の戦闘は、まさに頂点に達しようとしていた。

 

【ユーリ!】

「了解!」

 

 アイギスからスーツを通して高速で送られる情報を受け取り、ユーリは早速回避行動に移る。

 と同時にメシア操るミカエルは超スピードで飛び回りながら解放したビーム砲を撒き散らす。

 回避されるのもお構いなしに放たれた赤いエーテル光が、球体上にくり抜かれた要塞内部に直撃していく。

 一方でユーリが駆るジークフリートは空間を縦横無尽に飛び回りながら、ミカエルの赤き閃光を躱し続ける。

 だが防戦一方と言う訳でもなく照射され続けた砲撃の勢いが弱まるや否や、ライフルを撃ち牽制しつつ瞬く間に距離を詰める。

 

「これで!」

 

 サーベルを引き抜き刃を形成すると、心臓ともいえるエーテルの貯蔵部に突き立てようとする。

 

【させません】

 

 しかしミカエルも右腕に内蔵されたサーベルを形成し受け止めると、左腕のサーベルにて逆に貯蔵部を狙ってきた。

 

「まだだ!」

 

 するとユーリは右のマニピュレーターでサーベルを掴むと、前の攻撃で装甲が薄くなっていた左肩を力一杯もぎ取る。

 思わぬ反撃にメシアが一旦引くと、ユーリも距離を取る。

 互いにリミッターを外してからようやくの小休止。

 無音の空間の中でそれぞれの機体から漏れ出る起動音と、火花が弾ける音だけが響いていた。

 

【ユーリ。もう時間的余裕がありません】

「……分かった」

 

 脳を酷使するDEMSを使用して、既に五分が経過。

 これ以上は勝っても廃人となる可能性が出てくる。

 アイギスの忠告に頷くと、ユーリは余分な装甲を兵装ごとパージ。

 サーベルの出力を上げ、次の一撃で決める覚悟をした。

 

【なるほど。でしたら此方も答えましょう】

 

 一方でメシアもサーベルの出力をギリギリまで上げ、真正面から迎え撃つ体勢を取る。

 互いに隙を伺うように突撃のタイミングを図っていく。

 一秒

 十秒

 と時間が流れていく中、その時はまさに突然来た。

 

「!」

【!】

 

 飛び出したのは同時。

 持てる全開のスピードを持って、白と白のMTは真っ向から切り結ぶ。

 

「っ!」

 

 結果ジークフリートのサーベルが弾かれる。

 ミカエルの方もマニピュレーターに損傷こそあるものの、内臓であるが故に手放す事がなかった。

 

【終わりです】

 

 短く宣告したメシアは大きくサーベルを振り上げ、ジークフリートを切り裂こうとする。

 その姿はまさに名の如く、天使が人を罰するようでもあった。

 

「まだまだ!」

 

 しかし目の前にいるのはただの人でなく、諦めの悪い英雄であった。

 左腕で引き抜くは、機体の名に連動して名を付けられた実体剣であるバルムンク。

 

【!!】

 

 すぐさま察したメシアは、希望を断つためサーベルをジークフリートの左腕に振り下ろす。

 対してユーリもバルムンクをミカエルのエーテル貯蔵部を狙い突き出す。

 刹那の攻防が繰り広げられ、決着もまた一瞬でついた。

 

【終わりましたね。ユーリ】

「……ああ、終わった」

 

 ジークフリートの大きく切り裂かれた左肩を確認しながら、ユーリは息を吐く。

 全てを達観したような表情をしつつ、目の前のミカエルに言い放つ。

 

「メシア。悪いがこっちの勝ちだ」

 

 貯蔵部にバルムンクが突き刺さり、エーテルが漏れ出すミカエル。

 まるで血のようにエネルギー元を断たれた天使は、力なく下へと墜ちていく。

 地に伏したミカエルを見下ろすユーリに、アイギスは一言だけ掛ける。

 

【天使殺し、お見事でした】

 

 人と機械

 その粋を極めた戦いは、僅かな差をもって人類に軍配が上がったのであった。




書いているのは深夜帯なのですが、妙なテンションもあって中々の戦闘シーンが出来たのではと自画自賛。
MT同士の戦いは終わりましたが、メシアとの決着はもう少しかかります。
もう少しばかりお付き合いください。
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