エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第101話 断罪される者

 夕暮れとなりつつある空に、戦い抜いた戦士たちの凱歌が轟く。

 アヴァロンが爆発を起こしたと同時に動きを止めたリビングデッド。

 それが意味するのは人類側の勝利を他に無かったからだ。

 人種性別そして所属を問わず、傷だらけのMT同士で喜びを分かち合う戦士たち。

 

 勝利に浮かれているのは前線だけでなく、作戦指令室も同じ。

 絶体絶命の状況を人類の総力をもって覆したという事実に、歓喜の声が収まる事は無い。

 

「……」

 

 だがその中でただ一人、指揮官であるエリカだけは顎に手を当て考え込んでいた。

 

「どうした大尉。深く考え込んでいるようだが」

「……ユリウス王」

 

 仕える王に声を掛けられ、臣下の礼を取ろうとするエリカを止め続きを促すユリウス。

 エリカは話すべき一瞬悩むが、最終的には口を開く。

 

「今回起きたメシアの反乱。何かしら裏があると思われます」

「裏?」

「そもそもの話になりますが。メシアが何年も前から動いていたとしても、あれだけの戦力をジャンク島で整えるのは不可能です」

 

 あらゆる国から廃棄されたMTが集められていたジャンク島であろうと、あれだけの動きが出来るMTを万を超えて造り出すのは無理がある。

 戦乙女の二つ名を持つ大尉の考えに、ユリウスは頷きを返す。

 

「確かに。さらに言えばメシアはどうやって作れたのか? という疑問も浮かんでくるな」

「この混乱を望んだ首謀者がいるはず。見つけ出すまで、完全な終結とは言えないでしょう」

「だが今ぐらいは勝利を喜ぶといい。それぐらいは許されるはずだ」

 

 そうエリカに言い残すと、ユリウスは護衛に先導され作戦指令室を後にした。

 勝利した以上、王としてすべき事が山のようにあるのだろう。

 

「……確かに。少しだけ酔いしれようかな」

 

 未だに興奮冷めやらぬ様子の戦場と作戦指令室を眺めながら、エリカは微笑みをこぼすのであった。

 

・・・・・

 

「何と愚かな選択をしたのだ!」

 

 一方その頃、エリンから遠く離れた山岳地帯。

 人から隠れるにはもってこいの地形に、ひっそりと存在する小さな施設があった。

 だが実態は地下に広大な実験場を備えた、ある人物の隠れ家である。

 そして所有者である人物は、決戦の結果に納得できず物に当たっていた。

 

「創り出すのにどれだけの月日と費用がかかったと思っているメシア! なぜ素直にプログラムに従わない!」

 

 自らの全てを掛けて創造したAIであるメシアが自爆という結末を選んだ事が理解できず、飾ってあった花瓶を床に叩きつけ割る。

 肩から息を整えつつ、その人物は次の手を考え始める。

 

「まあいい。メシアの大部分は複製できる。五年もあれば再び、いやこれ以上の惨劇を生み出せるはずだ」

 

 そうと決まればジッと暇はない。

 僅かばかりの同士と共に、雌伏の時を過ごすのみだ。

 

「見ていろ人類。今度こそ私が全ての支配してみせる」

「……それがアナタの本音ですか。アームストロング博士」

「!?」

 

 ここに居るはずの無い人物の声を聴き、アームストロングの表情の強張る。

 同時に部屋のドアが蹴り飛ばされ、複数の武装した兵士と共に現れたのは姿を消していたスコットであった。

 

「っ! オーウェン少将! 何故ここに!」

「アナタの行動を追いかけたからですよ博士。世界を混乱させた罪を償ってもらう為にね」

 

 スコット自ら拳銃を向けると、アームストロングは慌てて更に質問を重ねる。

 

「待て待て! そもそも何故私だと思った!」

「あんなAIを創り出せるのは世界でも数少ない。ならばアナタに目を光らせるのも当然でしょう」

 

 拳銃をアームストロング向けつつ、距離を詰めていくスコット。

 逃げようにも周りの兵が邪魔して動けない状況で、スコットは一方的に喋り続ける。

 

「メシアに人類を統括させ、創り出したアナタは神のように振る舞う。雑ですが筋書をこうですかな、博士」

「っ! それの何が悪い!」

 

 追及に耐えきれなくなったのか、顔を真っ赤にして怒鳴り散らすアームストロング。

 そこから口に出されたのは、罪の告白以外の何物でも無かった。

 

「私の他にあれだけのAIを創り出せる者がいるか!? それはまさに人では無しえない御業だろう! そんな私を認めないのならば! 世界が間違っているのだ!」

「自分を見下した者たちへの復讐。それだけの為にこれだけの事をしでかしたのか」

「貴様のような俗物には分かりはしまい! さあ何処だろうと連れていけ! 無罪を勝ち取ってみせる!」

「……アナタは勘違いしてるようだな」

 

 アームストロングが意味を理解するよりも先に、拳銃から放たれた一発の弾丸が彼の右腕を打ち抜いた。

 痛みに悲鳴を上げ膝をつく博士の額に、スコットは拳銃を押し付る。

 

「罪を償ってもらうと言ったはずですよ博士。悪いがここで死んでもらう」

「し、正気か貴様! 許されるとでも思っているのか!」

「無論違法だ。だが国家レベルで平和が訪れようとしている時に、アナタを野放しには出来ない。裁判での主張もさせない」

 

 本気を示すように徐々に引き金に力を込めていくスコットに対し、アームストロングは必死に訴える。

 

「わ、私が死ねばAI技術は衰退する! それでもいいのか!?」

「……どれだけ時が掛かろうと、人間はアナタの技術を追い越す。さらばだ博士」

「ま、待って」

 

 アームストロングの懇願は銃声と共に掻き消され、その肉体は血を流しながら冷たくなっていく。

 

「ここを爆破しろ。如何なる証拠も残すな」

 

 連れてきた兵士に命じて、スコットは部屋を出ていく。

 あちこちで爆破の準備が進められる中、彼は地上に出るとオレンジに染まった空を見上げ空を飛んでいるだろう英雄に報告するのであった。

 

「終わったぞ。ユーリ」

 

 ―メシアとの決戦

 後に『メシアリベリオン』と呼ばれる事件の影で、ある山岳地帯にある施設が跡形もなく消えた

 だが大きな歴史の波によって、人々の記憶には全く残らなかったのである

 こうして歴史的な戦争は、完全に幕を下ろしたのであった

 




メシアとの戦いは、このエピソードで終了となります
ですが八章はあと二エピソードほどありますので、どうぞ結末をその目で見てもらえれば幸いです
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