エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
幕間 新たなる道
「連邦国家か」
「どうしたユーリ。何か不満か?」
時はエデン連邦が建国する一か月前。
エリンにある執務室にて話していたユーリの呟きに、部屋の主であるスコットが反応する。
「まさか。これから平和になろうって言うのに、不満なんてある訳ない。ただ展開が早かったと思って」
「確かにな。本来であれば時間をかけていくべき事ではあっただろうな」
仕事をしていた手を止めて、ユーリの言葉に頷くスコット。
世界の中核と言える二か国と十を超える国々が一体となる。
言葉にすれば短いが、そこには大変な苦難と反発があった。
それでも僅かな期間で連邦が樹立するのは、やはりメシアリベリオンの恐怖が人々に根付いていたからだ。
「人は大きな恐怖を前にすると団結する。だが一時手を組むのでは意味がないのは、今回の事件で多くが理解したはず」
「そして導き出された解決案が連邦か。……続くと思うか?」
ユーリの言葉はこれから連邦の人間として生きる、多くの民衆が抱える不安であった。
一つになると聞こえはいいが、そこには数多の問題を生み出す。
現に一部の有力者は連邦を離れ、他の国へ逃げる者も少なくない。
「続けさせるさ。その為に私は軍を抜け、政治家になるのだからな」
連邦は議会制となっており、国々から選ばれた者たちが議員となって協議を重ねていく。
軍人として生きる道が用意されていたスコットであるが、自らの意思で一議員として国を支える事にしたのだ。
いま片付けている仕事も、後釜への引継ぎ作業が主であった。
「まあ難しい話は任せるよ。こっちはこっちで手一杯だからな」
「ああ。活躍を期待しているよ、英雄」
笑い合う二人であったが、スコットは急に表情を暗くしユーリに問いかける。
「ユーリ。お前は本当に軍に残るのか?」
「何だ突然」
「これから先、大きな戦争が起こる可能性も低いだろう。軍に連れ込んだ私が言えた義理では無いが、辞めてもいいのではないか?」
父性か、それとも罪悪感か。
スコットが思わず口にした言葉にユーリは目を丸くしたかと思うと、深いそれは深いため息で答えた。
「本当に今更だな。まさか俺が無理して此処にいるとでも?」
「……」
「確かに俺は生きる為に戦うのは今後も変わらないだろうな。けどただ一人で生きていたって、仕方ないだろ? 戦って皆を守って、その上で生きる。それがいま出せる答えだ」
「ユーリ」
「それと一応言っておくが。守るべき皆にはあんたも入っているんだから、無理して簡単に死んでくれるなよ?」
「……ああ。勿論だとも」
思わぬ言葉に目頭が熱くなるスコットを、ユーリは微笑みながら見守っていた。
さながら親子のような時間を、二人は過ごしていくのだった。
今回はユーリとスコットに焦点を当ててみました
次回はどんなエピソードになるか?
ご期待ください!