エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
エデン建国まであと半月を切った、ある寒い日のこと。
あるカフェのテラスに座る三人組を、通りすがる人々が覗いていた。
三人とも女性である事は理由ではない。
服装が軍服である事も、まれではあるが珍しい事ではない。
では何故注目を集めるのか?
それは三人が軍服を着てるのは似つかわしくないほど、美人であったからだ。
「ねぇ。本当にあの話を断っちゃうの?」
童顔で可愛らしい顔立ちながら、軍服の上からでも女性らしい凹凸が見て取れるミーヤ・カレリン。
「……今からでも遅くないと思うけど」
小柄ながらクールさが際立つ、いわゆる知的美人と言われる雰囲気を醸し出すエルザ・シュミット。
「その話何度目? もう決めた事だって」
そしてモデルのような長い足を組みなおしながら、コーヒーを飲んでいくアイシャ・ウェルズの三人。
時折ナンパ目的で近づいてくる男たちを視線を威嚇しながら話し合っているのは、アイシャの今後についての事であった。
「けど特殊部隊の隊長に推薦されたのに、断っちゃうなんて」
今後戦争の規模が小さくなると見なされる中でも、特殊部隊は様々な作戦に駆り出されるだろう。
さらに隊長とならば立身出世に役立つのは、当然であった。
「いいんだって。今更階級に興味ないし」
それをアイシャは断ったのだ。
二人が心配するのも無理からぬ事だろう。
友人の意思を尊重したいミーヤは黙り込むが、代わりにエルザが切り込む。
「……断ったのは隊長が理由?」
「それ以外にある?」
さも当然のように答えるアイシャに、ミーヤとエルザは目を見合わせる。
てっきり長々と言い訳すると思ってただけに、二人は反応に困った。
「そんなにおかしい?」
「隊長なら一人でも大丈夫だと思うけど」
ミーヤが恐る恐るといったようで発言すると、アイシャはため息を吐きながらコーヒーカップを置く。
「戦闘はね。けどそれ以外の事は全然なんだから」
「それは……まあ」
ユーリの私生活はとても褒められたものではない。
洗濯物を溜める事から始まり、片手では数えられないほどの悪癖があった。
「誰かが注意し続けないと」
「……極端だけど意思は伝わった」
ミーヤもエルザも、それだけが本心でない事は理解している。
だがここで掘り起こすような事ではない事も、重々理解していた。
なので二人は仕方ないと言わんばかりに、顔を見合わせて苦笑するのである。
「と言うより。二人は準備は終えたわけ?」
「うん。もう明日のは出発かな」
「こっちは明後日には。……準備なんてとっくに終えてるから」
「そっか。しばらく会えなくなるね」
ミーヤは南方、エルザは東方の部隊に編入される事が決まっている。
集まったのもアイシャの意思を確認するためもあるが、三人で思い出を作るためでもあった。
「じゃあ隊長はアイシャに任せるね! 私は私で頑張る!」
「……任せた」
「これが最後みたいに言って。けどまあ、任された」
三人は笑顔を浮かべながら、共に過ごす時間を大切にしていく。
その輝きが、いつまでも残り続けるように。
今回はデュラハン隊の三人娘についてのエピソードでした
次回は誰のエピソードになるか、ご期待ください