エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

124 / 130
第107話 獣

「状況報告を!」

「異常な重力力場としか現在分かりません!」

 

 曇天の空に現れた巨大な穴。

 気づくと同時に状況を確認しようとするエリカであるが、得られた情報はごく僅か。

 突然の事でブリッジも混乱する中、状況はさらに動く。

 

「艦長! 穴から何か出て来ます!」

「カメラを最大望遠で! メインモニターに映してください!」

 

 この状況の手掛かりを掴み取るためモニターを注視するエリカ。

 ブリッジクルーも見守る中で、穴の中から現れたのは

 

「兵器が生えた……動物?」

 

 エリカが呆然と呟いた通り、背中から砲塔が埋め込まれている犬のような動物と言うのがしっくり来る。

 だがその大きさはMTと遜色なく、どう考えても普通では無い事だけは理解できた。

 

(生物? それとも似せているだけの機械? いずれにせよこのまま放置する訳には……)

 

 周りが呆然とする中、エリカは一人頭をフル回転させ捕獲の指示を出すことに決めていた。

 しかし指示を伝えようと言葉に出そうとした時、さらに状況は動く。

 

「か、艦長! 穴の中から次々に現れます!」

「なっ!」

 

 エリカが改めてモニターに視線を送れば、穴から先ほどの犬のようなモノから鳥のような形態のモノまでおよそ二十匹ほどが穴から這い出てきた。

 状況が信じられず誰もが固まる中、這い出てきたモノたちはついに行動を起こし始める。

 

「建物を食べている!?」

 

 周りにMTがいるのにもお構いなく、犬や鳥の形をしたモノたちは我先にと教団の施設へと群がり強固な建物を食べていく。

 だがその考えが間違っていると気づいたのは、やはりエリカであった。

 

「……いえ。建物を食べているのではなく、人を食べている!」

 

 エリカの記憶が正しければ、群がっているのは教団の司令部のハズ。

 望遠カメラでもハッキリと確認できないが、建物を食べているよりは理解できなくもなかった。

 しかし理解できるからと言って、それを許容できるかは別問題である。

 

「今よりあの生物を『ビースト』と呼称! 危険生物として一匹残らず駆除するように各MTに通達を!」

「よ、よろしいのですか?」

「このままでは突入した白兵部隊にも被害が行くかも知れません! それに死体からでも分かる事はあります!」

「り、了解!」

 

 艦長の指示を受け多少の冷静さを取り戻したクルーたちはそれぞれ役目を全うしていく。

 だが通信を受けるよりも早く動き出したMTがいた事を、モニターを見ていたエリカは気づいていた。

 

「アカバ中佐」

 

・・・・・

 

【攻撃許可はまだ出てませんが、いいんですか?】

「もたもたしてたら全員食われる! 流石にテロリストでも目の前で死なれるのは後味が悪い!」

 

 カゲロウよりも近くで見ていただけあって、ユーリもビーストたちが人を食べているのに気づいていた。

 しばらく固まってしまっていたが、見てしまった以上は動かざるを得なかった。

 ジークフリートのスラスターからエーテルを吹き出し、サーベルで近場にいた犬型のビーストを切りつける。

 

 ―だが

 

「なっ!」

 

 エーテルで形成された刃は届く事なく、ビーストは何事も無かったように食事に没頭している。

 

「なら!」

 

 近接がダメならとライフルでの遠距離攻撃に切り替えるユーリであったが、結果は同じく掠りもしない。

 

「っ! どうなってる!?」

【何らかのシールドでしょう。攻撃が届く前にエーテルが霧散してるようです】

「アイギス! 各隊に通達! エーテル兵器は使用せず実体剣か実弾を使用するようにと!」

【了解!】

「……勝てるか?」

 

 珍しく弱気なユーリの声がコックピット内に響くが、答える者は当然居なかった。




突如現れた生物(?)
果たして奴らは何なのか?
今後もご期待ください!
(純粋な軍事モノを期待してくださった方、ごめんなさい!)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。