エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
ユーリが子ども達の元から離れ基地の中心部に戻る頃には、時間はもうすぐ夕方を示そうとしていた。
自室に向かって歩いていると、反対側から向かって来る目立つ二人を見つける。
「ユーリ。ここに居たんですね」
「基地内には居るから問題は無いと言ったのですが、AIアイギスが探すと聞かないので」
嬉しそうに近づくアイギスの後方から、メシアが呆れたような表情を覗かせる。
するとアイギスは一気に表情を引き締めユーリを見つめた。
「AIメシアの発言は無視してください。そのような駄々を捏ねた事はありません」
「はぁ。数分前のデータも思い出せないとは、これでは先が思いやられますね」
「まるで今でも性能が上のような言い方ですね。何なら性能比べでもしますか?」
「いえいえ。そんな結果の分かり切った事をするなんて、時間の無駄でしょう」
「そうですね。比べるべきもありませんよね」
「……」
「……」
「お前ら。仲の良さを見せるために来たのか?」
相変わらず険悪な雰囲気なAI二人に、苦笑を浮かべるユーリ。
その時アイギスが、左手首に見慣れないブレスレットを捉えた。
「ユーリ。それは?」
「ん? これか? 子どもがお守りにって」
「……マスター。何かありました?」
「何が?」
「朝よりも顔色が良くなっています。子ども達との触れ合いで、何か得られましたか?」
メシアのマスターと言う呼称にアイギスは文句がありそうであったが、話題が話題だけに自重する。
ユーリは一つ息を整えると、お守りを掲げながら独白するように語り始めた。
「まあ単純な話でさ。あんな子ども達が真実を知っていても今を生きてるのに、託された側が暗い顔をする訳には行かないって思っただけだ」
「ユーリ」
「……」
「生きる為に戦って、最近ようやく誰かの為に生きるのも悪くないと思えてきた。だから今度は、誰かの為に生き残らないとな」
夕暮れになっても雷鳴轟く空を見上げながら、ユーリは決意するように強い口調で誓う。
「そうですねユーリ。最後まで生き残ってみせましょう。微力ですが助力します」
「我々三人であれば、どのような状況だろうと戦い抜けますよ」
AI二人も、それぞれの言葉でユーリを支持する。
アイギスはメシアに何かしら否定的な事を言いたげな顔をしていたが、結局何も言わずユーリと腕を組んで歩き始めた。
「明日に備えて早く寝ましょう。猶予はあまり有りません」
「意見には同意しますが、抜け駆けは見過ごせないですよAIアイギス。では逆の腕はこのメシアが」
「両方組んだら歩きずらいだろ。……聞いてるか?」
結局部屋まで一緒に歩いた三人。
まるで仲の良い家族のようでもあったと、通りがかった人物らは評していた。
―そして、運命の時がついに訪れる
今回は展開上、いつもより短めとなりました。
次回はついにユーリを過去へと戻す一大作戦!
どのような展開が待ち構えているのか?
是非ご覧ください。