エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第123話 ユキカゼ

 ユーリ・アカバが未来より持ち帰った情報は、軍縮に傾きかけていたエデン連邦を震撼させた。

 政府は急ぎビーストに対策するため軍部、特にMT関連の強化に乗り出すと同時に全世界に情報を共有。

 更には異なる世界への移動を可能とした連邦は、次元を超えた協力体制を構築するために奔走する。

 文明が発達している世界では技術を共有、発達してない世界ならば食料や金属などを提供してもらいビーストに襲われないよう軍の派遣を行う。

 結果エデン連邦はオーバーテクノロジーと評しても問題が無い程の技術と膨大な資本力を手にし、対ビーストにおける盟主としての役割を担うのであった。

 

 ―そして新西暦七十年。

 ビースト殲滅の下準備、その総仕上げが間近に迫ろうとしていた

 

・・・・・

 

 ―エデン連邦領土内 旧アーストン東地区

 

 青々とした草原が広がるエリア上空に、雲を引き裂きながら突き進む艦があった。

 未来技術を得て、さらに昇華させたエデン連邦が膨大な予算を用いて造り上げたエンタープライズ級。

 その二番艦である『ユキカゼ』。

 何物にも汚されぬ意思を込めた白を基調とした、全長二千メートル越えの万能戦闘戦艦こそ、今のユーリが指揮官を務める船である。

 

「全く。毎回説教されて懲りないのですか、特務大佐」

「……返す言葉もない」

 

 だが当の本人は階級だけ見れば同僚であるエリカに艦長室にて正座をさせられ、説教を受けている最中であった。

 内容は無許可で軍のジープを使用し、勝手に休憩を取っていた事に対して。

 特務と付いているだけあり、連邦内でも特殊な役割であるユーリはある程度の独断専行が許されている。

 だが理由と行動が伴わない場合は艦長であるエリカ、もしくは全部隊のまとめ役となりつつあるアイシャの説教が行われるのが通例となりつつあった。

 因みに今回ユーリが保護した少年少女は、正式な手順を終え次第エリンにて帰郷を待つ手筈である。

 

「はぁ。責任ある立場となり、色々と不満が溜まっている事は理解してるつもりです」

 

 ため息を吐きながら以前より伸びた白髪をかき上げた後、最近になってかけるようになった眼鏡の位置を調整するエリカは語気を強めて続きを口にした。

 

「ですが! 特務大佐は何・故・か! 厄介ごとを持ち込まれるので、艦長である私。せめてウェルズ中尉に伝えてください」

「止めはしないんだな」

「言ってもどうせ勝手に動くのでしょう? それ自体は構いませんし、間違った事はしないと信じてますので」

「……済まないな、いつも」

「仕事ですので」

 

 感謝を込め頭を下げるユーリに対し、エリカは呆れたように肩を竦めながら答える。

 

「もう立たれていいですよ。別件で頼みたい事もありますから」

「別件?」

 

 痺れている足で何とか立ち上がるユーリを横目に、エリカはデスクから情報端末を取り出す。

 

「これを中尉に渡して来てくれませんか? それで今回の件はお咎め無しです」

「それ自体は構わないが。……内容は機密か?」

「ええ」

 

 短く、それでいて鋭く答えるエリカの目を見てユーリは頷き端末を慎重に仕舞う。

 

「了解した。さっさと渡してくる」

「お願いしますね。聞いていた話なら、おそらく」

「多分シュミレーターだろ? それか第三格納庫。あいつの行動は分かりやすいからな」

 

 答えも聞かずさっさと部屋を出ていくユーリ。

 その背を見送りながら、エリカはまた肩を竦めながら一言を口にする。

 

「全く。読めない人ですね」

 

 連邦の切り札と言えるエンタープライズ級の艦長であるエリカ・ブレイン。

 戦乙女と呼ばれる程の頭脳を持った彼女もユーリの行動は読めず、その事が少し嬉しいと思ってもいた。




ユーリたちの新たな艦であるユキカゼ登場です!
ここからはユキカゼの戦闘描写もより書くと思うので、よろしくお願いします!
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