エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
「機密……ねぇ」
アイシャへと渡す予定である端末を弄りながら、ユーリは先程のエリカとの会話を思い出す。
権限で言えばエリカより特務大佐であるユーリの方が上であり、本来機密など意味がない。
それなのにわざわざエリカが機密と言うと事は、アイシャが個人的に知られたくない情報であるとユーリも気づいていた。
「はぁ、全く。めんどくさい立場になったもんだ」
と口では文句を言いつつも、顔には僅かに笑みが乗っているユーリ。
実際様々な雑事を引き受けてくれているエリカに、彼は感謝しているだ。
だからこそ文句の一言も無く動いているのだが、広いユキカゼの艦内をただ歩くのは暇なのであった。
「……ん?」
だからこそ反対側から来た三人組を見つけた時、ユーリはタイミングの良さに笑ってしまう。
近づいていく中、向こうもユーリに気付いたようで緊張の面持ちで敬礼をする。
「アカバ特務。何か御用ですか?」
まず口を開いたのは高身長の真面目そうな優男。
その肩ぐるしい態度に苦笑しつつ、ユーリは気さくに話しかけていく。
「いや。ただお前らの隊長を探しててな。どこに居るか知らないか?」
「ああ隊長なら第三格納庫にいるっすよ」
質問に答えたのは、金髪を軍の中では珍しいリーゼントに纏めた一見不良に見える男。
顔立ちも厳つく、初めて見た大概の人間はビビってしまうほど。
「特務がこんな近くに。……ああ、過呼吸になりそう」
ブツブツと小声で呟いているのは、紫色の髪で前髪を隠した小柄な少女。
実際は十八を超えているらしいが、童顔も合わさって分かりづらい。
三人組はそれぞれジョン、ハヤト、ミンメイ。
現在のアイシャの部下であり、引き継いだデュラハン隊のメンバーでもあった。
「ハヤト。君はもう少し上官を敬った方がいい。失礼じゃないか」
「何だと七三野郎。特務が前に砕けた態度でいいって言ってたじゃねか。従わなぇ方が失礼なんじゃねぇのか。あぁ?」
「何だって」
「何だよ」
「はぁはぁ。やばい、近くにいるだけで妊娠しそう」
(やっぱり……キャラ濃いよな。こいつら)
喧嘩寸前なジョンとハヤトの二人に、かなり危ない発言をするミンメイ。
個性的な三人をよく纏めているものだと、ユーリは改めてアイシャに対する評価を上げる。
だが何時までもこうして眺める訳にもいかず、軽く釘だけ刺して立ち去る事に。
「今は喧嘩するのも良いが、戦闘中にはするなよ」
「はっ」
「……了解っす」
渋々ながらも受け入れた二人の横を抜け、第三格納庫へと向かうユーリ。
後方から再び聞こえる喧嘩声や聞き取れない呟きを想像して、思わず笑みを浮かべ言葉を漏らすのであった。
「全く。デュラハン隊の未来は明るいな」
今回は新たなパイロット達を紹介です!
物語は停滞気味ですが、どうか首を長くして展開をお待ちください。