エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第125話 魔女と聖女と英雄

 全長二千メートルを超えるユキカゼには、当然相当数のMTが搭載されている。

 故に格納庫は第一から第六まで用意されおり、艦内で兵器開発できる工房まであった。

 そして多くのエースが揃うユキカゼのパイロットの中でもトップクラスに位置し『魔女』と異名を取るアイシャは、よく第三格納庫に入り浸っていた。

 

「さてと。何処にいるかなっと」

 

 多くのMTが立ち並ぶ光景を横目に、ユーリはアイシャの姿を探る。

 やがて見慣れた長い黒髪を見つけ、近寄っていくと誰かと一緒にいるようであった。

 

「ですから装甲を追加するとしも、武装との兼ね合いが……」

「それは分かるけど、武装を追加するよりも装甲の方が先じゃない?」

 

 どうやらメカニックと話し合っているようであったが、そちらとも知り合いのためユーリは割って入る事にする。

 

「何を揉めてるんだ?」

「たい……じゃなくて特務大佐」

「お久しぶりです。アカバさん」

 

 思わず隊長と呼びかけたアイシャと、メカニックらしく汚れたツナギを着た少女が挨拶を返す。

 少女の名はクリス。

 何を隠そうカゲロウのメカニックであったバーナードの孫であり、本人も優秀なメカニックである。

 一部からは『メカニック界の聖女』と呼ばれる程の優しい性格であるため、隠れファンも多くいる。

 

「揉めてないって。ただ意見の交換をしてただけ」

「重装備について武装と装甲の比率について意見をウェルズさんに伺ってました」

 

 話に納得する一方で気になる事があり、ユーリは思った事をそのまま口にする。

 

「両方限界まで乗せれば良くないか?」

「そ、それはちょっと……」

「誰もが大佐クラスの化け物じゃないから」

 

 困ったように苦笑するクリスに対し、呆れ顔のアイシャはバッサリと言い切る。

 

「人を化け物扱いするなよ」

「一々こんな事ぐらいで怒らないでしょ?」

 

 さも当然のように答えるアイシャに、ユーリは軽い笑いを返す。

 初めて出会ってから何年経とうとも、二人の距離感は変わらないでいた。

 二人特有の雰囲気を目の前で見せられて、クリスは困ったように細々とした声で話しかける。

 

「そ、それでアカバさんは何か御用ですか?」

「おっと忘れる所だった。アイシャ、艦長から極秘だと」

「? ああ、これか」

 

 ユーリから手渡された端末をマジマジと見たアイシャは、一瞬怪訝な顔をした後に納得する。

 

「わざわざ探しに来なくても、こっちから行ったのに」

「暇だったからな」

「極秘情報なら離れましょうか?」

「いいよ別に。個人的な極秘だしね」

「「個人的?」」

「……お見合い相手なんだよね。七度目の」

 

 心底嫌そうな表情をするアイシャを見てクリスは心配半分、興味半分で声を掛ける。

 

「お見合い……ですか?」

「親がそれなりに裕福だとそれなりに、ね。今度はどうやって断るか、考えるだけで疲れるよ」

「あ~。それは役に立ちそうにないな」

 

 ユーリが特に考えず漏らした言葉に対し、アイシャはジッと見つめるとポツリと小さなしかし聞こえる音量の声を出す。

 

「人生観を壊したどこかの誰かさんが貰ってくれると助かるんですけどね~」

「……」

 

 思いっきり目を逸らすユーリをジッと見つめ続けるアイシャ、そしてドキドキしながら様子を伺うクリス。

 しばらく同じ光景が繰り広げられたあと、アイシャが諦めたようにため息を吐き話題を変える。

 

「それより。例の作戦、ついに始まるのよね」

「ああ。ほぼエデンの動ける戦力全てを使った電撃戦だ」

「いよいよ……なんですね」

 

 覚悟を決めるように重く言葉を吐くクリスに、二人は大きく頷く。

 ユーリは立ち並ぶMTたちを眺めながら、決意を込めて今度の作戦について口にするのであった。

 

「何せ人類最後の戦争になるかも知れないんだ。気合入れないとな」




前回に続きまして新キャラ登場です!
そして動き出す戦闘の予感。
今後のユーリたちの活躍にご期待ください!
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