エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第126話 世界統一戦

 現在エデン連邦は世界のおよそ七割を領土とし、一割に当たる国々を同盟ないし中立関係としてる。

 しかし残る二割。

 新しく建立された国家『ロゴス』の対処に、エデン連邦は苦慮していた。

 

 そもそもロゴスはアーストンやガスアの上級階層だった者たちが主軸となっており、利権を取り上げられた彼らが報復の手段として建国した背景がある。

 ビーストの件に関してもエデンのでっち上げと評し国民にはひた隠しにしており、アリスに対しても奴隷同然の扱い。

 連邦としてはビーストという厄災を前に事を荒げるつもりは無かったが、説得に向かった議員一行を捕まえ公開処刑した為に決裂。

 

 そして新西暦七十年の三月。

 エデンの議会はロゴスに対し軍を動かす事を承認。

 各地にビースト襲来用の防衛戦力を残した上での、大戦力による電撃戦が行われようとしていた。

 

・・・・・

 

「この戦いの勝利は決まっているも当然。如何に勝つかが重要ですよマスター」

 

 ユキカゼに用意されたユーリの個室。

 他の士官の個室よりも僅かばかり広めに設計された室内で、メシアは銀の髪を靡かせながらユーリに会話する。

 話題は今回の作戦について。

 ユーリのロゴス相手に戦力を使いすぎなのでは、という意見に対してのメシアの返答は実にキッパリとしたものであった。

 

「今更説明するまでもありませんが、この戦いはビースト殲滅戦の前哨戦。余計な横槍は入らないようにするための予防線」

「流石にそれは分かる。だからこそ使える戦力は温存すべきじゃ?」

「マスターの意見も間違っているとは言い切れません。ですが下手に出し渋り抵抗される時間を与えるのも問題です」

「まぁ確かにな」

 

 メシアはユーリが理解し頷いたのを見ると、加えて情報を口にする。

 

「加えて戦力の露呈もビースト相手ならば考えなくていい。他にも考慮すべき事案はありますが、被害を無視してでも短期決戦に持ち込んだ方が得策なのです」

「単に上が焦っている。……という訳じゃないんだな」

「少なくとも今回は、ですが」

「ならいい。元々細かい事を考えるのは向いてないしな。思案はエリカやお前らに任せる」

「お任せを。マスターを勝たせる事が、今の存在理由ですから」

 

 微笑みを向けるメシアに、ユーリを笑みを返す。

 未来にて再会してから七年。

 およそ語りつくせない死地を潜り抜け、二人の間には確かな信頼が結ばれていた。

 

「……所でマスター。先日は何故アイギスだけを連れていったのですか?」

「いや、何でと言われても」

 

 ユーリは初め答えにくそうにしていたが、やがて意を決したようにメシアに向き合って口にする。

 

「メイド服を着ている奴を連れ回せないだろう」

 

 何時だったかは定かでは無いが、メイド服を着て過ごすようになったメシア。

 あまりに自然に着こなすため誰も何も言わなかったが、艦内の誰もが疑問に思っていた事であった。

 

「? 仕える者として正しい服装では?」

「いや、それだとアイギスも着替えないと」

 

 軍服を着こなし今もプロメテウスの調整を行っているアイギスを例に出すが、メシアは特に気にした様子もない。

 

「それはそれ、これはこれ。ですよ」

「いや本音言えば止めて欲しいんだけど。俺の趣味みたいに思われてるだが」

「メイド服を脱ぐとき、それはスクラップになる時です」

「こだわり過ぎだろ」

 

 その後の説得も意味を為さず、メシアはメイド服を着続ける事に。

 世界統一の戦争まで数週間。

 実に緊張感の無い、平和なやり取りであった。




次回は戦闘シーンに突入(予定)
ユキカゼも活躍しますので、是非見てください!
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