エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第127話 ポイントF攻略戦

「艦長。ポイントCでも戦闘開始されたと報告が」

「少し出遅れましたね。随伴艦に急ぐよう通達を」

 

 エデンとロゴスが開戦して一時間が経過した頃、ユキカゼは十隻以上から成り立つ艦隊を引き連れ攻略地点である海岸線へと向かっていた。

 足の遅い旧型艦に合わせているため予定より遅れてはいるが、エリカの計算では作戦開始時刻には間に合う算段である。

 

(さて。向こうはどう動く?)

 

 こうしている間にもロゴスの領土には随時戦力が送られており、もう数時間もすれば包囲が完了する手筈となっている。

 敵の戦力を分散させる作戦であるが向かっているポイントFは重要地点。

 味方を過信せず、敵を見くびらない。

 臆病こそが勝利する上で重要な事であると、エリカは心に刻んでいた。

 

(……多少の遅れは覚悟で艦隊を集結させるべき、か)

 

 エリカが長考の末に導き出した案をオペレーターに伝えようと口を開きかけた、まさにその時であった。

 

「! ポイントCからミサイル! 数は二十!」

「ヘッジホッグ起動!」

 

 オペレーターから伝えられるよりも早く思考を切り替えたエリカは、素早く指示を飛ばす。

 ハリネズミと名付けられた機銃たちによって、隙間なくエーテルによる弾幕によってユキカゼを覆う。

 結果ミサイルは一発も当たる事無く、残骸を海へと落下させていく。

 だがエリカは安堵する間もなく次の指示をブリッジに響かせる。

 

「すぐに敵艦隊が来ます! ユキカゼを中核として応戦! 艦砲射撃の後にMT部隊を随時投入し殲滅!」

「り、了解」

 

 ブリッジクルーも手練れ揃いであり、艦長の指示に従い各々がすべき事をこなしていく。

 その様子を見つつ今後のプランを立てようとするエリカの耳に、ギリギリ聞こえるぐらの声で話しかける白髪交じりの黒髪をオールバックにした男がいた。

 

「ブレイン艦長。第0格納庫には指示を出さなくてよろしいので?」

 

 男の口にした第0格納庫は特殊であり、オーバーテクノロジーの塊であるプロメテウス一体しか存在しない。

 有事以外は特別に言及しない限りは出撃しない決まりとなっており、先程のエリカの指示には何も触れなかった。

 つまりはユーリは出撃させないのかという確認であったが、エリカは振り向く事無く答える。

 

「敵戦力が把握しきれない以上、正面に戦力を回し過ぎるのは危険。ですから特務には備えとして居残ってもらいます」

「……なるほど。余計な口出し、申し訳ありません」

「いえ、アナタのような人が副官で助かります。ブルックさん」

 

 男の名はブルック・ホークス。

 自己主張しない性格であるため地味な存在だが、ユキカゼの副艦長を任命されるほどには実力がある人物であった。

 再び黙り込むブルックをよそに、エリカはメインモニターに姿を現しつつあるロゴスの艦隊をジッと見つめる。

 

(数は巡洋艦クラスが十隻に、空母が二隻。……やはり奇襲を狙っている?)

 

 想定よりも少ない総数に罠を警戒するエリカ。

 だが彼女は作戦を変更する事無く、艦砲射撃の準備を進めさせる。

 

(どちらにせよ問題はない。質も数もこちらが上なら、油断せずに戦えば勝利できる)

「艦長! こちらの射程距離に敵艦が入ります!」

「全艦に十分に引き付けてから砲撃するよう通達」

 

 オペレーターからの報告に指示を飛ばすと、エリカは深く深呼吸。

 脳に十分に酸素を回し、敵の艦隊が射程に入るのを耐える。

 

「副砲。一番から十番」

 

 短く飛ばした指示に従い、狙いを定める副砲。

 そして

 

「撃て!」

 

 計十二門にもなる副砲の内、半数以上がエーテル光を撃ちだす。

 エンタープライズ級にとっては副砲でも、通常規格の艦であれば主砲クラスの砲撃に襲われ、巡洋艦二隻が轟沈し空母が小破するロゴスの艦隊。

 だが被害を受けても変わらず突き進んで来る様子を確認し、エリカはMT部隊発進の準備を急がせる。

 

「さて。ここからが勝負ですね」

 

 誰にも聞こえない言葉を口にしながら、エリカは敵が講じてくるであろう作戦について思考を回すのであった。




始まりましたロゴスとの戦い。
次回はエデン側の主力も登場し、さらに濃い戦闘シーンとなる予定です。
是非次の更新をお楽しみください!
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