エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
「さあ悪逆無道たる者らの尖兵よ! この魔王の爪にて引き裂いてくれよう!」
「ハイデンちゃんは今日も元気ねぇ。けどアタシも負けないわよぉ!」
海上を水飛沫を立てながら敵機に近づきつつ、ハイデンは敵に聞こえていないにも関わらず大言を吐く。
一方でフェニーは先陣を切るハイデンの後ろを飛びながら、自らも戦果を挙げるべく愛機の得物を構え始める。
突如現れた新型二機に対しロゴス側は初め動揺していたが、レーヴァテインによるオールレンジ攻撃が止んだ今が好機と迫る二人の迎撃を行う。
「温い! その程度でディアボロスの装甲を抜けると思うな!」
複数のMTによる弾丸が隙間なく襲い掛かるが、前を突っ切るハイデンのMTであるディアボロスの漆黒のコーティングがされた重装甲には効き目が薄い。
その事実を前に焦ったのか、二機のハウンドドッグがアックスを片手に接近戦を挑む。
だが接近戦こそハイデンが望んでいた展開であった。
ディアボロスの背中に収納されている巨大な装備。
その中から展開されたのは、まさに悪魔の腕と例えるに相応しい程に巨大なサブアーム。
ハイデンはサブアームで接近してきたハウンドドッグの頭部を掴むと、海面に叩きつけながら握りつぶす。
「脆い。ディアボロスと戦うには小物すぎる」
「やるわねハイデンちゃん。今度はアタシたちの番よセイレーンちゃん!」
フェニーはセイレーンと名付けられた愛機を操ると、ディアボロスの後ろに隠れていた時とは一転し敵陣に突っ込む。
当然近づいてくるセイレーンに対し、ロゴス側も銃口を向け撃ち落とそうとする。
「捕まえて御覧なさーい」
だがフェニーは卓越した技術をもって愛機を操り、ほとんど被弾せず回避してみせる。
さながらダンスを踊っているような軽やかなテクニックは、エデンの中でも上位であった。
「さあ行くわよ!」
隙を見つけたのかフェニーは此処で攻勢に転じる。
しかしセイレーンが手にしてるのは実体のロングソード。
接近戦を警戒して、ハウンドドッグは一斉にセイレーンから距離を取る。
だがフェニーは構わずロングソードを大きく横に大きく薙ぐ。
するとロングソードの間合いが、一気に伸びる。
油断していたハウンドドッグたちが数機まとめて両断されるのを見て、賢いロゴス側のパイロットは気づく。
あれは剣ではなく、鞭であったと。
「うーん絶好調!」
規則正しく分解されたような剣のパーツが、エーテルによって繋がれている。
使いづらそうな武器を巧みに操りながら、フェニーは次々に猟犬たちを切り伏せていく。
一方でハイデンも巨大なサブアームを振るって敵機を叩き潰していった。
瞬く間にユキカゼへの奇襲部隊は壊滅していき、残りは片手で数える程となっていた。
ロゴス側の一世一代の博打は、僅か三機のMTによって阻止されたのである。
「さて。ここは二人に任せておいて大丈夫そうだが、一体どうするべきか」
後方で観察していたユーリは撃ち漏らしが無いかを確認し終えると、どうするべきか考える。
プロメテウスの調子が悪い以上、ユキカゼに戻るのが正しい。
だが若手二人に任せて自分は帰艦という事が、どうもユーリには気持ち悪く感じた。
「マスター」
しかし考えを巡らせる前にメシアから声を掛けられる。
「何だ?」
「ユキカゼより全所属MTに通達です。射線上より退避するようにと」
「既に前線のMTは退避行動に移っています。悩む必要は無くなりましたねユーリ」
メシアの情報にアイギスが付け足す。
ユーリはその言葉に内心同意しながら、ポイントFに陣取っているだろうロゴス側の人間に少しばかり同情するのであった。
「『クロノスの刃』を使うのか。……これは塵も残らないな」
暑さで自律神経が狂わされながらも何とか書く事が出来ました蒼色ノ狐です。
皆さんも熱中症には十分に気を付け、出来れば狐の小説を読んでください。
次回は視点がユキカゼに戻ります。
クロノスの刃がどのようなモノか?
是非ご期待ください!