エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
―クロノスの刃
その兵器が生み出された経緯の始まりは、四年前の実に凄惨な事故であった。
未来およびアリスとして保護されている人々からもたらされた技術を、エデン連邦は巨額を投じて研究を進めていた。
だがその日、主に異次元に関して研究を行っていた施設が突如として半壊。
……いや、半壊という言葉は相応しくないかも知れない。
正しくは施設の半分が消失したのである。
空中から確認して見れば、綺麗に円形にくり抜かれたように更地になった研究施設。
更地の中央には何らかの機材があるのみで、在勤していたはずの施設職員二十四名、彼らのDNA一片すら残っていなかった。
事故の原因を究明するべく軍は施設の生き残りに対しての聞き込み、そして残されていた資料を徹底的に調べ上げた。
その後も様々な経緯を得て、エデンはある現象を確認する事となる。
『次元断絶現象』。
強力な重力場を生成している際に、一定以上のエーテルを流し込むと起こる次元単位のカマイタチ。
触れれば物体の硬度や質量、有機無機物あらゆる条件に関わらず切断される現象。
おそらく研究施設の事故は想定外に円形の次元断絶現象が起きた結果ではないかという報告結果となった。
だがこれだけの事象を引き起こすだけの現象を、エデンは封印するのではなく活用する事を選んだ。
政治家軍人に関わらず内部から疑問視する声も上がったが、対ビーストにおいて切り札となりえると賛成派が押し切ったのである。
―こうして完全なコントロールの元に造り上げられた次元断絶現象の発生装置はクロノスの刃と呼ばれ、エンタープライズ級の主砲の一部として搭載された
・・・・・
「第一から第三動力を主砲に。姿勢固定の後、カウントダウン開始」
エリカの指示の元、ユキカゼのブリッジクルーがそれぞれの役割を忙しくこなす。
そんな中で副長であるブルックが通信機越しに確認を取る。
「我が軍の切り札を簡単に見せてしまってよろしいので?」
「先程情報が入り、ロゴス側はポイントFに戦力を集中させるようです。ここで戦力を壊滅させれば、降伏を選ぶ者も多いでしょう」
「その為に目の前の敵を跡形もなく消す事となっても、ですか?」
「……我々軍人の役割は、一人でも多くの人を救う事です。例え血を血で洗うとしても、多くを救えるのであれば。私はこの選択を正しいと思います」
「そこまでの覚悟があるのでしたら、何も言う事はありません」
通信を切り再び黙り込むブルックに、軽く感謝を示すエリカの元に発射準備完了の報告が飛び込む。
「艦長! 全工程終了! 我が方のMTは全機射線上から退避完了!」
「全クルーに報告。衝撃に耐える準備を」
エリカは首にぶら下げていた鍵を取り出し、ブリッジ前方にある鍵穴に差し込んだ。
深く一度深呼吸をしたのち、カウントを行う命令を下す。
「カウントダウン開始」
一つ、また一つと減っていく数字と共に高まる緊張感。
そしてゼロになった瞬間エリカは最終ロックである鍵を回し、高らかに声を上げる。
「次元砲クロノス、撃ぇ!!」
艦長の号令と共にユキカゼの砲塔から黒い巨大な閃光が、まさに瞬く間に海面に展開してるロゴス艦隊を通り越し、その先に布陣していたポイントFの守備隊まで届く。
だが多くの者は黒い光が通り過ぎた事も近く出来ずに、この世界から消え去った。
直撃を避けた者たちも、衝撃波に呑まれて多くが撃沈。
たった一発の砲撃によって、ロゴス側の守備隊は立て直す事が不可能なほど叩きのめされたのであった。
―僅か十数分後、ポイントFは全面降伏
ロゴスの中核が猛攻に耐え兼ね降伏したのは、これより僅か三日後の事。
こうして最後の戦争とされたエデンとロゴスの戦いは、実にあっけない終わりを向かえたのである。
ようやくロゴス戦が終わりを迎えました。
何故か思うまま書いていったら、かなり長めになってしまいました。
物語はついにビーストとの最終決戦へ。
どのような戦いが待ち受けているのか?
ご期待ください!