エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第136話 集い始める力たち

 ビーストの殲滅を目的としたオペレーション・ノヴァの始動。

 正式な発令が新西暦七十一年。

 その始まりである一月一日と決定し、連邦軍部は来るべき決戦の為に準備を開始。

 部隊編成やパイロットの訓練など、やるべき事は限りが無い。

 

 ユーリが率いる独立艦隊も例外ではなく、誰もが鬼気迫る熱量をもってオペレーション・ノヴァに向け忙しく動いていた。

 そして夏も終わりを告げようとしていた九月の頃、ユーリはプロメテウスに搭載される装備の最終チェックを行うため第0格納庫にいた。

 

「どうですかアカバさん。可能な限り希望に添えたと思うんですけど……」

「ああ文句の付けようもない」

「良かった。これでプロメテウスの強化装備『フルパッケージ』の完成ですね」

 

 聖女というあだ名に似つかわしい柔らかな笑みを浮かべ、喜びを表現するクリスにユーリも微笑みを返す。

 設計から相当な年月を掛けた装備なだけあって、彼女の嬉しさも並々ならぬものであろう。

 

「他の機体の調整もあるのにこっちに掛かり切りになって、すまなかったな」

「い、いえ! メカニックの仕事を全うしただけですから!」

 

 顔を赤くするクリスの反応に、笑みを浮かべつつユーリは格納庫を出ようと足を進め始めた。

 

「……勝ちますよね?」

 

 だがクリスが背中越しに問いかけた事で、ユーリは足を止める。

 

「何か不安なのか?」

「当然です。常識を超えた人外が相手なんですよ? どんなに準備を重ねても、不安になるのは仕方ないじゃないですか」

「……まあな。だがなクリス」

 

 ユーリは振り向く事無く答える。

 だがクリスには彼が此処ではない何処か、もしかすればエデン全体の事が見ている。

 そんな気がしてならなかった。

 

「戦いというのは勝ちを意識して行動するもんだ。誰もが勝ちを信じて動くから、初めて勝てる戦いもある」

「……はい」

「心配するな。切り札は幾つも仕込んでいるし、他の世界からの援軍もある。十分勝ち目はあるさ」

「……聞いてくださってありがとうございます。特務大佐」

 

 緊張が取れた、いつもの口調で礼を言うクリス。

 不安が完全に除かれた訳ではないが、それでも進むだけの勇気を貰ったからだ。

 そしてユーリは一度も振り向く事無く、今度こそ格納庫を後にする。

 

「よし! 頑張ろう!」

 

 彼の背中を見送ったクリスは、頬を叩き気合を入れなおすと別の格納庫へと急ぐのであった。

 

・・・・・

 

「さてと。次は何をすべきだったかな?」

 

 格納庫を後にしたユーリは予定が書いてある端末を開きながら、適当な距離まで歩いて行く。

 本来であればアイギス、またはメシアが予定を管理しているのだが、二人揃ってのボディの調整のためいないのである。

 だが人が少ないからと端末を弄りながら歩いていたユーリは、曲がり角で誰かとぶつかってしまう。

 

「痛っ!」

「っ! すまん。大丈夫か……ってミーヤ?」

 

 直接会うのは久しぶりであるが、それでも見間違える訳が無い。

 間違いなくかつての部下であり、デュラハン隊の初期隊員であったミーヤ・カレリンであった。

 

「あっ隊長! 二人とも! 隊長ここに居たよ!!」

「ミーヤ。うるさい」

「エルザも、随分と久しぶりだな」

「隊長も。息災のようで何よりです」

 

 ミーヤの声に導かれるように姿を現したエルザ。

 礼儀正しく頭を下げる彼女に対し、ミーヤは勢いよくユーリの眼前に体を寄せて語る。

 

「隊長の下でまた戦えるなんて嬉しいです! 成長した姿、見てくださいね!」

「端折りすぎ。……気持ちは分かるけど」

 

 連邦が発足の際に部隊再編が行われ、二人はデュラハン隊を抜けそれぞれの道へと進んだ。

 だが来るべき決戦が迫り、どうせならばユーリの下で戦いたいと転属を希望。

 これを上層部が許可した経緯で、二人ともユキカゼにいるのである。

 ユーリも来る事は知っていたが、今日だと言う事をすっかり忘れていたのだ。

 

「全く。少し背は伸びても中身は変わらないわね」

「あ! アイシャ! これで四人がまた揃ったね!」

 

 そこに探していたのであろうアイシャも合流し、約十年ぶりにかつてのデュラハン隊が直接顔を合わせたのであった。

 

「じゃあ飲みましょうか。ちょうどバーが近くにあるし」

「おいおい昼間から酒か? 何時からそんな不良軍人になったんだ?」

「そう言いながら、真っ先に歩いている隊長には言われたくないと思いますけど」

「よーし飲むぞ! 大人になった所を見せるんだから!」

 

 アイシャが提案し、ユーリが口では文句を言いつつ賛同。

 一連の動きにエルザが呆れつつも後を追い、ミーヤが意気込みながらバーに駆け込む。

 

 ―例え場所が離れていようと紡いで来た絆が、酒を交わして更に深まった

 そんな一日であった




かつての仲間も合流し、オペレーション・ノヴァの準備が着々と進みます。
プロメテウスの新装備であるフルパッケージにも、ご期待ください!
次回はどのようなエピソードになるのか?
是非ご注目!
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