エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

157 / 157
第140話 生存競争

 ―その光景を言い表すのであれば、地獄と例えるのが相応しい

 

 天も地も、何処が上か下かも分からないような幾何学模様に包まれた空間。

 漂流している岩が時折流れている程度で、他には何も見当たらない無の次元。

 

 ―そんな空間の中で、ビーストは群れをなして生きていた

 

 奴らに目的など無い。

 そもそも知性と呼べるものをマザー級から与えられていないからだ。

 ただ飢えを満たすために次元を渡って狩りをする、生物として単純な欲求に従っているに過ぎない。

 

 故に、本来であればこの次元にあるはずの無い黒い鉄の塊が幾つも浮遊していても気に留める者はいない。

 その塊がビーストが身に纏う防御膜を無効化した上で爆発するよう開発された新型兵器である事に気付いたのは、エデン時刻においてキッカリ新西暦七十一年の一月一日を迎えた時であった。

 

 轟音で空間を揺れ眩い光が次元を照らし、ビーストたちは光源へと一斉に視線を向ける。

 ビーストたちに知覚できたのは、光に包まれた同類が消え去った事のみ。

 異変に気付いたマザー級によって指示を受け、上位個体が調べに空白となった地帯を調べに動きかけるが、ほぼ同時に次の異変を感じ取った。

 

 重力場の変動。

 しかしビーストたちにとって珍しい事でも無く、狩りに出ていた同類が戻って来たのだと判断した上位個体。

 知性に乏しく、常に狩る側であった奴らにはその程度にしか考えられない。

 

 故に光源の中心に一隻の巨大軍艦が現れても、新たな餌だという認識しか持てず我先にと名の如く向かっていく。

 だが巨大艦の周りに一隻また一隻と爆発エリアを覆いつくすように艦が現れれば、知能が低くとも異常だと気づいた。

 

 しかし気付くにしても遅すぎた。

 巨大艦を中心に円球のように布陣した艦たちは、一斉に砲撃を開始。

 最新の周波数発生装置により、射程距離に入る全てのビーストの防御膜は無効化。

 そのため近づいてきた奴らはハリネズミの如く、隙間が見当たらない艦砲射撃によって塵となっていく。

 

 ビーストたちは砲撃から逃げようと距離を取る。

 だがその隙を逃さず艦からは何体もの人型機動兵器を射出し、次々に群れに突撃していった。

 

 ここまで来てようやくマザー級は理解する。

 奴らは決して餌などではなく、己を殺す為に降り立った狩人なのだと。

 だと理解していても、マザー級が下す命令は変わらない。

 己が生み出した下位存在に、ただ一つの短いオーダーを下す。

 

『殺せ』

 

 マザー級から命令を受けたビーストたちは、現れた軍艦たちに突撃していく。

 その光景を見ながらも、生み出した大本は何も感じない。

 剥がれた皮膚や爪がどれだけ消耗しようと、気にするだけの感情は持っていなかったからだ。

 だが少なくとも理解している事があった。

 

 ―これはどちらかが力尽きるまで行われる、生存競争だと




ついに始まったオペレーション・ノヴァ。
果たしてユーリたちは生き残る事が出来るのか?
次回もお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

リーガル・レジスタンス 〜ファンタジー世界で立憲国家を求める〜 (作者:ムササビ・モマ)(オリジナルファンタジー/戦記)

【あらすじ】▼黒髪赤眼の「忌み子」として生を受けた第二王子リュート。前世の法曹としての記憶を持つ彼は、狂った血統主義と特権階級の傲慢さが支配するこの国で、息を潜めて生きていた。▼だが、貴族たちの理不尽な悪意が彼のささやかな居場所を無残に蹂躙した時、絶望の淵で、少年の中に眠る冷酷な怪物が目を覚ます。▼剣も魔法も使わない。彼が選んだ復讐の刃は、前世の知識である「…


総合評価:225/評価:7.27/連載:404話/更新日時:2026年08月27日(木) 12:00 小説情報

ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~(作者:SIS)(オリジナルSF/冒険・バトル)

 友人の勧めで『ビルドロボオンライン』なるゲームを始めたサラリーマン小鳥遊将也(たかなししょうや)。▼ 最初はそこまで乗り気ではなかったものの、作りこまれたゲーム内容に魅了された彼は、文句を言いながらもなんだかんだとゲームを楽しみ、独自の道に突き進んでいく。▼ 彼は知らない。▼ 後に、自分が廃人ゲーマー達から正体不明、野生のレイドボス、なんて呼ばれるようにな…


総合評価:1864/評価:8.04/連載:133話/更新日時:2026年08月27日(木) 06:00 小説情報

【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~(作者:パンダプリン)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

【美人で最強、なのに俺の前ではうざかわポンコツな魔王様】▼女神さまにハズレ扱いされた俺は、ラスボスの魔王が超高難易度で有名なとあるゲームの世界へ転生させられてしまった。▼スキルはダンジョンマスター。種族は魔族。どう見ても主人公側ではなく、敵側としてだ……。▼途方に暮れていたところ、明らかに格上の存在と出会ってしまったが、あなたが魔王……?▼勇者たちを倒したは…


総合評価:2511/評価:8.25/連載:376話/更新日時:2026年08月27日(木) 23:50 小説情報

ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた(作者:恒例行事)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

【第11回カクヨムコンテストプロ作家部門特別賞・コミカライズ賞受賞しました】▼損耗率80%越えの異常職業、『肉壁』。▼冒険者パーティーの中でも最も粗雑に扱われる消耗品扱いの職業において絶対的な強さを誇るフィン・デビュラはドマゾだった。▼痛いのが気持ちいい。▼死ぬかもしれない恐怖がたまらない。▼日頃からアドレナリン&ドーパミン中毒で脳がぶっ壊れてる彼は出会った…


総合評価:16359/評価:9.16/連載:245話/更新日時:2026年08月27日(木) 21:00 小説情報

面倒なので黙っていたら天才参謀と誤解されました(作者:濃厚とんこつ豚無双)(オリジナルファンタジー/戦記)

後年、ノルトマルクの軍史家たちは、クラウス・フォン・ライフェンベルクを「沈黙の天才参謀」と記した。▼諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。▼だが、その大半は誤解である。▼確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院首席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。▼とはいえ本人に言わせれば、…


総合評価:12566/評価:8.81/連載:70話/更新日時:2026年08月22日(土) 05:38 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>