エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
「さてと……そろそろ出番か」
ついに始まったビーストとの最終決戦。
艦長かつ作戦指揮官でもあるエリカから、一拍置いての出撃を命じられたユーリ。
カタパルトデッキの上で様子を伺い、頃合いだと感じているとエリカから通信が入る。
「特務。準備は出来ていますね」
「当然だ。むしろ通信が無ければ勝手に出ていた」
「やる気十分なのは結構ですけど、本番はまだまだ先だと忘れないでくださいね」
出撃前だと言うのに普段と変わらないやり取り。
その事が逸ろうとする二人の気持ちを落ち着かせていく。
「戦況は?」
「現在は勢いもあり、どのエリアも順調です。ですが敵の総数は未知数、いつ押し込まれても不思議じゃありません」
「で? どこに切り込む?」
「お好きに。英雄殿が縦横無尽に駆け回る。それだけで士気が上がるので」
「了解。色々考えるよりは向いているしな」
ニヤッと笑みを浮かべるユーリに対し、エリカも釣られて頬が緩む。
しかしすぐに艦長としての顔に戻り、最後に一言だけ付け加える。
「……死なないでくださいね」
「確約は出来んが、最大限努力しよう」
「十分ですよ。では特務。ご武運を」
最後にそう締めくくり通信を切るエリカ。
ユーリは軽く息を吐き呼吸を整えると、共に戦うAIたちに声を掛ける。
「さて。そういう訳だが、何か質問はあるか?」
「問題ありませんよマスター」
「ええユーリ。プロメテウス、何時でも行けます」
「よし。じゃあ行くか」
非常に軽やかに、しかし覚悟を内に秘め出撃を口にするユーリ。
アイギスとメシアは頷きを返すと、プロメテウスと繋がり一体となる。
既に準備は整っており、後は飛び立つだけという段階。
ユーリは気負う事もなく、ただ目の前を見つめ操縦桿を握り込む。
「プロメテウス。ユーリ・アカバ……出る!」
カタパルトから射出され、ついに英雄が乗り込む白のMTが戦場に姿を見せる。
その事実が伝えられると同時に、エデン軍が一気に勢いづく。
「ユーリ。どこから切り込みますか?」
「まずは正面。後は艦隊から離れすぎないようにしながら、とにかく狩っていく」
「本来ならマスターを止めるべきでしょうが、この数の差では仕方ないですね」
モニター越しに映るビーストの大群。
本来ならば空間に浮かんでいる幾何学模様も奴らの姿によってかき消されてしまう程の総数には、下手な作戦は通じない。
人工知能として若干の敗北感を感じつつも、メシアはユーリのフォローに専念する事に。
一方でアイギスは元より気にしていないのか、突撃に最適なルートを割り出す。
「各システムも問題無し。何時でも行けますよユーリ」
「レーヴァテイン完全同調。後ろは気にせず自由に暴れてくださいマスター」
「言われなくても!」
二人のAIに勢いよく返事しつつ、ユーリは新装備であるフルパッケージ。
その一つである実体槍である『ムコツ』を構え、プロメテウスのスラスターにエーテルを回す。
「……さあ。人類の底力を見せてやるぞ、獣ども」
決意を口にしながら、白い閃光となって前線へと向かうユーリが駆るプロメテウス。
―オペレーション・ノヴァ開始から僅か五分
作戦は始まったばかりであるが、勢いは人類側に傾いていた
か、書きたい事が多すぎて予想以上に長くなりそうです
本来であればフルパッケージのお披露目と生きたかったですが、また次回のお楽しみという事で……
まだまだ続きますが、どうか皆さん最後まで見て貰えればと思います
では次の更新にてお会いしましょう!