エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
ユーリが戦線で迫るビーストたちを相手取っている頃、別の方面でも苛烈な戦いが行われているのであった。
何せ敵は正面だけでなく、上下左右の全方位から襲い掛かる。
マザー級を捜索するB段階に移る為にも、ある程度は狩らねばならない。
「どけぇ!!」
その最中でも味方の目を引いたのは、深紅の装甲を身に纏った専用のMT。
アイシャが操るドゥルガーであった。
今も熊のような姿をした中型であるシータ級を、得物である大剣で一刀の下に切り伏せる。
接近戦は不利だと学んだのかアルファ級の一群からのエネルギー弾による砲撃に晒されるが、オールレンジ兵器であるチャクラムを射出。
AIによる自動制御によって群れに突撃するチャクラムはエーテル刃を展開し、縦横無尽に動き回りビーストの装甲を切りつけていく。
アルファ級らがチャクラムの動きに気を取られている間にドゥルガーが接近。
スラスターの勢いが加わった大剣の薙ぎ払いによって、小型のビーストたちはまとめて両断されるのであった。
「この!」
だが二匹だけではあるが、攻撃を避けたアルファ級がドゥルガーに襲い掛かる。
牙をむき出しにし大剣を振るうには近すぎる位置まで接近した二匹に対し、アイシャはすぐさま回避行動を取ろうとした。
しかしアルファ級は巨大な青い腕に掴まれ動きを止め、そのまま投げ飛ばされ指から放たれた閃光によって消滅する。
「……油断大敵」
腕の正体はエルザが乗り込むゴッテス・プランによって生み出されたMTである『イシュタル』。
一番の特徴は何と言っても肩に装備されている、身の丈以上にも思える巨大なサブアーム。
両手に持った専用の銃剣で牽制しつつ、サブアームに内蔵された十門ものエーテル砲によって殲滅するのが彼女の常勝戦法であった。
「ごめん。ちょっと舞い上がってるかもね」
エルザの忠告に対し、素直に謝るアイシャ。
だがドゥルガーのカメラごと視線を別方面に向けると、呆れたような口調で反論する。
「けど、アレはいいの?」
「……言っても無駄」
諦めたように溜め息を吐くエルザに対し、アイシャは苦笑を返す。
二人の視線の先では、オレンジ色の装甲をした重装備のMTが先陣に立って戦っていた。
それだけなら問題など無いが、後先も考えずエーテルや弾丸を使いまくる姿を見れば呆れるのも無理はない。
「このまま畳み掛けるんだから!」
MTの名は『アテナ』。
パイロットは言うまでもなくミーヤである。
中型ビーストの攻撃ならば問題無く防ぐ硬度を持ったAI制御によるオールレンジ盾を装備しており、搭載している威力重視の重火器によって殲滅するのがコンセプト。
火器の扱いには慣れているミーヤとの相性は抜群であり、何匹もの中・大型のビーストを狩ってきた実績もあった。
だがそれでも頭のネジは外れてないと実行できないであろう戦法に、二人は気の知れた友人相手に心の中でドン引きする。
今も両肩に展開した大型のエーテル砲によって直線状のビーストを消し炭にしていく。
「……まあ戦法はともかく。こっちも少しは気合入れるかな」
触発されたのか改めて迫って来るビーストたちに立ち向かうエルザ。
サブアームによる射撃を行いつつ、近づいてくる敵を銃剣で切り裂いていく。
彼女も冷静なように見えて、内心では熱くなっていたのであろう。
「よし! 私も!」
頭を冷やす時間も取れ、改めて切り込もうとするアイシャであったが、突然緊急の通信が入る。
内容を確認し、自身が今いるエリアを確認。
後ろから襲い掛かるデルタ級をサーベル機能が内蔵されたサブアームで叩き切りつつ、小さな声がコックピット内に木霊するのであった。
「オリオンが起動するか……。あんまり好きじゃ無いんだけどな」
旧デュラハン隊のメンバーが活躍するエピソード、如何でしたか?
アイシャが口にしたオリオンとは何なのか。
次回を乞うご期待!