エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー 作:蒼色ノ狐
「まさか光学迷彩を使ってくるとは思いませんでした」
「向こうは文字通り人知を超えた存在だからな。何をして来ても可笑しくない」
プロメテウスの出撃準備を整えつつエリカと通信を行い状況を確認するユーリ。
既にアイギスとメシアは接続を終え待機しており、あとは最終的な確認のみであった。
「とにかくマザー級は既に意味を姿を隠す事が無意味だと悟ったようです。光学迷彩を解除し、散っていたビーストたちを集結させています」
「総力戦になるな。時間を掛けたら不利だな」
「ええ。なので此方はエンタープライズ級を集結させ、『槍』を使いマザー級を半壊させるつもりです。MTは他のビーストを寄せ付けないでください」
「了解した。精々頑張るとしよう」
「……生き残ってくださいね」
エリカの一個人としての言葉。
それに対しユーリは返事する事はなく、ただ笑みを見せて通信を切った。
「よし。じゃあ行くとするか」
「準備は出来ていますよユーリ」
「決戦ですマスター。絶対に勝ちましょう」
意気込みを口にする二人のAIに頷きつつ、プロメテウスをリニアカタパルトへと向かわせる。
そしてオペレーターの指示の元、全ての準備を終えたユーリは軽く深呼吸をしてユキカゼから射出されるのであった。
「これはまた……地獄絵図だな」
既に戦闘は始まっており、無数のビースト群とMTを中心としたロボット軍団が火花を散らす。
アルファ級の集団が小隊を襲い壊滅させたかと思えば、逆に大型のエーテル砲を使ってMTがビーストたちを薙ぎ払ったりと一進一退の様相を見せている。
数多の光が輝いては散って、皮肉にも宇宙のような美しさを見せていた。
「メシア。レーヴァテインを四機ほど苦戦している部隊の援護に回せ。アイギス。状況の変化は細かく報告を」
「了解しましたマスター」
「フォローはお任せください。ユーリ」
「頼もしい事この上ないな! 全く!」
四機のレーヴァテインが飛び立つと同時に、エーテルを吹き出し敵が集結している箇所へ切り込んでいくプロメテウス。
その姿はまるで宇宙を天翔ける白き彗星のようだと、あるパイロットは戦闘中に関わらず思う程であった。
ユーリの奮戦に勇気づけられるかのように、ビーストたちを押し返していく。
だがそれが一時的な効果である事を、作戦指揮官であるエリカは理解している。
「艦長! 全エンタープライズ級集結まで、あと十分!」
「五分以内に槍の発射準備まで完了させるように! またオリオンをマザー級に向けて放つように伝達を! チャージが不十分でも囮に使えます!」
故に急いでいた。
この有利な状況がひっくり返される前に、決定的な一打を与えるために。
そしてエリカの体感にして一時間。
実質時間では七分後に、ついにその時が来た。
「全艦集結完了しました! 槍の準備も整っています!」
「よし。全MTに通信を! これより槍の一斉射を行う! 絶対に射線に入るな!」
作戦指揮官の通達は瞬く間に戦場に出ている全機に伝わっていき、射線には瞬く間にMTの影は見当たらなくなった。
それを隙だと思ったのか、ビーストたちは光に集る蛾のように向かってきた。
だがエリカの顔に恐れはなく、逆に不敵な笑みを浮かべる。
「向かって来る敵には構わずスリーカウントの後に一斉射を行う! 狙いはマザー級のみ! 三。二」
徐々に減っていくカウント。
それと同時に向かってくる敵が近づいてくるが、阻止するためにMTたちが動く。
作戦を成功させるため、命を省みず戦う戦士たちに感謝しつつ、エリカはカウントダウンを続ける。
「一。……『ヴァジュラ』! 撃てぇ!」
人類としての誇りが込められた叫びと共に、集結した五隻のエンタープライズ級から槍ことヴァジュラが放たれるのであった。
ついに幕を開けたマザー級との決戦
槍ことヴァジュラにて、勝利を掴める事は本当に出来るのか?
次回もご期待ください!