エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第150話 原初にして最終

「よし!」

 

 マザー級に対し想像以上の損壊を与えた事に、エリカは思わず声を上げる。

 かなりの硬度が想定されるマザー級。

 その内部から焼くために造られた兵器であるヴァジュラは、非常に有効であった。

 代償としてエンタープライズ級は五隻ともしばらく行動出来ないが、もはやその必要もないとエリカは判断していた。

 

(もうすぐオリオンによる援護射撃も届く。周りの護衛を駆逐して、削り続ければ勝てる)

 

 マザー級の能力に関しては不明な点が多々残っている。

 その中でも想定されているのは、全ビーストに指示を行えるだけの思考能力と自らの身を分けて眷属を造り出す分裂能力。

 もう一つは分裂に使用した肉体を回復させる修復能力である。

 戦闘に直結する修復能力を上回る火力で封じ続ければ、十二分に勝てる算段であった。

 エリカが勝ちを確定させる為の作戦を思考する中、オペレーターの一人が叫ぶ。

 

「艦長! マザー級が崩壊していきます!」

「……何?」

 

 メインモニターを見てみれば確かにヴァジュラが刺さった箇所を中心に、マザー級の肉体がボロボロと剥げていく様子が見て取れる。

 そのスピードは早く、既に三割近くが削ぎ落されていた。

 勝利を確信するユキカゼのブリッジクルーたち。

 だがエリカだけが不審な物を見る様に、モニターを注視続けていた。

 

(ヴァジュラが効いたとしても、ここまでの出力じゃなかったはず。損傷個所を切り捨てる気? それとも……)

 

 その先を考えようとした時、エリカの脳内にある考えがよぎる。

 

(可能性としては低い。けれど無いとは言い切れない!)

「全艦とMTに通達! 今すぐ攻撃をマザー級に向けて撃て!」

「え? り、了解!」

 

 突然の指示に一瞬困惑するオペレーターたちであったが、すぐさまエリカの命令を伝えていく。

 

 ―だが気付くのが遅かった

 

 マザー級の肉体が五割の崩壊を向かえた時、ソレは姿を現した。

 まるで巨体に初めから存在していたかのように生えていたソレは、絡みついていた筋肉繊維を引きちぎりながら分離。

 同時に次元の底へと沈んでいくマザー級を横目に、ソレは視線を眼下に広がる艦隊を見つめる。

 

 大きさはMT程。

 だがその姿はビーストの特徴である生物と機械の融合体である事が見て取れる。

 全長以上である黒と白の翼を広げる姿は、天使か何かが舞い降りたようにも感じ取れた。

 するとその時、ビーストの群れを突破した小隊がソレに接近していく。

 

「まずい! 今すぐ後退を!」

 

 指示を飛ばそうとするエリカであるが、その間にソレは腕を槍のように伸ばし隊長機であるデュカリオンのコックピットを貫いた。

 そのままゴミを捨てるように投げ捨てると、高速をもって他のMTに接近。

 体中からエネルギー刃を生やし、瞬く間に一小隊を迎撃した。

 

「……全部隊に通達! 先ほどマザー級から現れたビーストを『オメガ級』と命名! 持てる全てを使って消滅せよ!」

 

 思わぬ強敵の出現に困惑するブリッジを一喝するように指示を飛ばすエリカ。

 対して最終のビーストであるオメガ級も、目の前の敵を駆逐するため動き始めるのであった。




だいぶ過ごしやすい気温になってきましたが、風邪やインフルになりやすい時期でもあります。
皆さまお気を付けください。
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