エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第18話 盗賊退治

「で? 何だってそんな怪しい男の依頼を受けたんですか隊長」

 

 真夜中のカクラン近くにMTに乗って潜みながら、通信越しにアイシャがユーリに不満を口にする。

 

「そう言うなウェルズ。カクランの安全確保は重要だ。それに火事場泥棒のような真似をする輩は早めに叩くに限る」

「それは……そうでしょうけど」

 

 ユーリの言葉に反論できないようで口ごもるアイシャ。

 彼女としても盗賊なんて真似をする集団を見過ごせるほど冷血ではないが、単に依頼主が気に入らないという話であった。

 

「実際隊長から見てどうだったんですか? そのコーリンっていう人は?」

 

 ミーヤがそう質問すると、ユーリは困ったような顔をして少し考えて答え始める。

 

「道化を演じてはいるが、あの類いは守る物のためなら手段を択ばない。奴にとってそれが地位なのかカクランという場所なのか? 分かりはしないがな」

「そういうものですか?」

「少なくと俺はそう思うね。人間第一印象で分かるほど単純じゃない」

「三人とも喋りすぎです。集中してください」

 

 エルザからの指摘を受けて全員が黙り込んですぐ、今まで沈黙していたアイギスが起動する。

 

【ユーリ。十一時の方向からMT反応。数は十機、事前の情報通りです】

「よし、全員お仕事の時間だ。カレリンがまず一撃を与えて、その混乱に乗じて殲滅する。軍隊崩れの盗賊相手に手間取るなよ」

「「「了解」」」

 

 命令を受けて、ミーヤのMTであるヴルムの肩に装備されたキャノン砲が標的を捕らえる。

 どうやらユーリたちには気づいていないようで、ゆっくりとした動きでカクランに迫っている。

 その中で先頭を歩いているMTに標準を合わせると、ミーヤは引き金を引いた。

 夜の闇に巨大な火花と衝撃音。

 放熱をするキャノン砲が向けられた先で、少し間をおいて爆発がおこる。

 

「よし! 突撃開始!」

 

 号令と共にユーリ達が操るMTが一斉に空中に飛ぶ。

 盗賊たちが使用しているMTはペギンが砂漠戦に特化された『トリスタンⅠ』。

 ペギンにおいても型落ちではあるが、砂漠戦においてはユーリ達が不利。

 なのでユーリたちは砂塵を巻き上げながら、スラスターの出力をホバーのように抑えて戦う事に決めていた。

 

【ユーリ。予想通り混乱している模様です】

「じゃあさっさと仕留めようか!」

 

 ユーリは一気にスラスターの出力を上げると、混乱している盗賊のトリスタンⅠをエーテルライフルで撃ちぬく。

 爆散する味方を見て、ようやく盗賊たちも攻撃されている事に気づき反撃を開始する。

 マシンガンを接近してくるファフニールに向けて放つが、激しく動くためまともに当たりすらしない。

 

「遅いのよ!」

 

 ユーリに気を取られている内にアイシャ機の接近を許した盗賊は、ナギナタのエネルギー刃によって両断される。

 すぐさまアイシャ機に向けてもマシンガンの弾が襲い掛かるが、ナギナタを回転させる事で弾いていく。

 

「邪魔」

 

 ハンドガンで確実にカメラや動力部を狙い撃つエルザ機も参戦し、盗賊たちは次々に大破させられていった。

 その中で一番後方にいたMTが逃亡を始めた。

 

【ユーリ】

「分かってる!」

 

 襲い掛かる敵をエーテルサーベルで切り裂きながら、ライフルの標準を逃げるMTに合わせるユーリ。

 その引き金を引こうとした瞬間、逃げていたMTは何かに貫かれた。

 

「隊長! あれは!?」

「……コーリンの奴は思ってたより慎重だな」

 

 ユーリたちのMTのカメラに写っていたもの。

 数十を超えるMT。

 それに描かれていたエンブレムは、ペギン軍のものであった。

 

【ユーリ。向こうのMTから暗号通信です。是非会話がしたいと】

「……受けると返しておけ」

 

 この邂逅が意味するものを、ユーリは未だに知らなかった。

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