エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第47話 道

「ああもう! 腹立つ!」

「ウェルズ。声が大きすぎ」

 

 無事バンデルからの客人を乗せたカゲロウは、ダラクを離れアーストン側へと抜けようとしていた。

 そんな艦内でアイシャはイライラを隠そうともせず、エルザとミーヤと共にシミュレーションで怒りを発散していた。

 

「出したくもなるわよ! あのダストンとか言う奴、わざわざ呼びつけては細かな事までイチャモンつけて! こっちはサービス業じゃないっての!」

「け、けど向こうも国が滅んで荒んでるのかも……」

 

 アイシャに同情しながらも、ミーヤはダストンをフォローする。

 だがそれが逆に彼女の怒りを加速させていく。

 

「いーや! あの性格のいやらしさは絶対に元からよ! 自分以外は馬鹿にしてる雰囲気が嫌でも分かるわ」

「はぁ。……隊長には相談した?」

「勿論したわよ。どうしても無理ならとは言ってくれたけど、あんまり隊長に負担かけるのもね」

「だからって私たちに八つ当たりしないで。いい迷惑よ」

「何よ、そっちは関わってないんだからその位いいじゃない」

 

 エルザとアイシャがちょっとした口喧嘩をしている中、ミーヤはある事に気づく。

 

「そう言えば隊長は? 何時もはシミュレーターに付き合ってくれるのに」

「確かに。ウェルズ、何か聞いてる?」

 

 そう聞かれるとアイシャは、ため息を吐きながら答えた。

 

「ああ、隊長なら来れないわよ。もう一人のお客様に呼ばれたからね」

 

・・・・・・・・・・・

 

「わざわざ来て頂いて申し訳ありません」

 

 与えられた一室でイレーナはユーリを部屋に通すと、まずは立ち上がり頭を下げる。

 

「顔をお上げください。当然の事ですので」

「そうは思いません。亡国の姫と軽んじる事無くアナタ方は接してくれています。どれだけ感謝しているか」

「仕事ですので」

「分かりやすい理由ですね。だとしても感謝は変わりませんが」

 

 微笑むイレーナに釣られ、軽く笑うユーリは質問をする。

 

「ダストン殿はおられないので?」

「少しの間、離れてもらいました。……彼が居ると話が逸れそうなので」

「それは、まあ確かに」

 

 ダストンの態度はイレーナも問題視しており、毎度の如く止めるよう言っているが聞く耳を持っていないようであった。

 

「実を言うとワタクシとしても彼をそこまで知っている訳ではないのです。ですが国を脱出する際、彼は命がけで守ってくれました。……性格に難はあっても、忠臣なのは確かです」

「……それで、ご用件は何なのでしょう」

「あ、申し訳ありません。話がずれてしまいましたね」

 

 イレーナは用意されている椅子に腰かけると、ユーリにも座るように勧める。

 一瞬戸惑うユーリであったが、勧められるままに座る事にする。

 

「アナタは初めてあった時、何かを言いたげにしていました。それを聞きたいと思っていたのです」

「一介の軍人の言う事など、聞くに値しないと思われますが?」

「それを決めるのはワタクシです」

 

 どうやら意思は強固なようで、逃す気はないと彼女の視線が物語っていた。

 

「あなたはバンデルに戻る事を決意されている。ですが、あなたを生かそうと命がけで戦った者たちはそれを望んでいるのでしょうか?」

「どういう意味でしょう?」

 

 心底分からないといった表情を見せるイレーナに、ユーリは自分の出自を明かす。

 

「自分は元々孤児で、少年兵として戦いました」

「……そうだったのですね」

「ある因果で再び軍に戻りましたが、今も昔も生きたいという気持ちは変わりません。今も国のため命をかけて戦っている者を否定はしませんが、まず第一は生きる事を考えるべきでは?」

「アナタの考えに対し、否定はしません。ですがワタクシの道はコレしか無いのです」

「自分も戦うしか能のない人間です。ですが、アナタは最初から他の道を塞いで自らを追い込んでいる。そう見えて仕方がない」

 

 ユーリの言葉にしばらく黙り込むイレーナ。

 その表情は怒りも悲しみも見えず、ひたすら困惑しか見えなかった。

 

「……言いたかった事はコレだけです。では、自分はこれにて」

「待ってくださ」

 

 イレーナが立ち上がろうとするユーリを止めようとした時であった。

 大きな衝撃と共に、艦内に警告のアラートが鳴り響く。

 

「きゃっ!?」

「危ない!」

 

 咄嗟の事で転びそうになったイレーナを、ユーリは抱き寄せて倒れるのを防ぐ。

 

「大丈夫ですか?」

「え、ええ。ありがとうございました」

「レコ、一体何が起こった!」

 

 通信機越しにオペレーターであるレコに確認を取るユーリ。

 そしてレコから発せられた言葉は、ユーリの緊張感を一気に高めるのであった。

 

「大変です少尉! MTによる襲撃です!」

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