エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第49話 友との戦い

「よく俺だと分かったな」

「射撃に移る時のブレ、早く直せっていつも言っただろ」

 

 まるでダラクで会った時と変わらないような気安さで、黒煙広がる戦場にて会話を繰り広げるレイとユーリ。

 だが口調とは裏腹に、二人の表情からは笑顔は見受けられない。

 

「そうだったな。ったく、相変わらずそんな事には鼻が利く」

「一つ聞く。ダラクで出会った事も計算の上なのか?」

「……いや。お前が元王女のナイトなのはあの後に知った事だ。まあ出会った時に嫌な予感はしたがな」

「そうか。……神様っていうのは余程意地が悪いらしい」

「ああ。全くだ」

 

 ユーリの言葉にレイが皮肉るように軽い笑いを漏らす。

 だが突然表情を引き締めると、レイはブレードを展開させユーリに向かって機体を突撃させる。

 それに対しユーリは、動揺する事もなく同じくブレードを展開させてレイの横薙ぎを防ぐ。

 

「相変わらずの腕だなユーリ! 流石はアーストンの少尉様だ!」

 

 レイはすぐさまブレードを引くと、バーニアからエーテルを吹かせながら縦横無尽に移動し切りかかる。

 対照的にユーリは大きな動きは見せずに、最小限の動きで襲いかかる剣戟を捌く。

 サラマンダーの赤とファフニールの白。

 薄暗い夜に目立つカラーの二機が見せる剣舞は、観客がいるならば魅了した事だろう。

 

「どうした! まさか昔馴染みとは戦えないとか思うような奴じゃないだろ!」

【ユーリ】

「……心配するなアイギス」

 

 アイギスにそう返すと、ユーリは迫る白刃を躱しカウンター気味にサーベルでコックピットを一閃する。

 

「っ!」

 

 レイはスラスターを限界まで吹かせて後退する事によって、直撃を避ける。

 だがコックピットを切り裂かれ、内部が丸見えとなった状態となったサラマンダーはジリジリとファフニールから後退し始める。

 

「ちっ、やっぱり一対一で攻めるのは無理があったか」

「降伏するか?」

「馬鹿言うな。こっちには部下が」

 

 レイが最後まで言い切る前に、後方から爆発音が鳴り響いていく。

 思わず振り返って確認して見れば、いくつもの黒煙がレイの部下のMTの数だけ立ち上っていた。

 

「悪いが。こっちにも部下はいる」

「……らしいな。しかも優秀だな」

 

 ユーリの言葉にそう返すと、レイはすぐさま背中を見せて引き上げ始める。

 

「悪いがお楽しみはここまでだ」

「逃がすと思うか?」

「普通なら逃げきれないだろうな。……まあそんな余裕があるならだが」

「どう言う意味だ」

「いわゆる勝負に負けて試合に勝つって奴さ。すぐに分かる」

「レイ」

「じゃあなユーリ。精々虫に刺されないようにな」

 

 レイが言い終わる頃には、サラマンダーは目視では確認できない程まで移動していた。

 

【レーダーで追いますか?】

「いや、止めておく。イレーナ王女の身が第一だ」

 

 アイギスにそう答えると、ユーリは三人と合流するために移動し始めるとカゲロウから通信が入る。

 

「アカバ少尉! 大変です!」

「レコ。どうした」

「王女が……イレーナ王女が行方不明なんです!」

「っ!」

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