エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

67 / 130
第58話 事件の始まり

「お前も好き者だなぁ。わざわざ休みだって言うのに機体の調整なんぞ」

「他のメカニックを休ませておいて、一人残って調整していたアンタには言われたくないよ」

 

 ユーリは反論しながら気になった部分をバーナードに報告する。

 すぐさま取り掛かるバーナードであったが、熟練された手つきと共に口も動かしていく。

 

「で? 今日は嬢ちゃんたちは何処に行くって?」

「レコを連れてショッピングだと。色々とやる事があって羨ましい事」

「小僧も歳は変わらないだろう。年寄りみたいな言い方してるんじゃねぇよ。よしいいぞ、試してみろ」

 

 バーナードの調整が終わると、気になっていた部分が修正されており頷くユーリ。

 そのタイミングを見計らってか、この場にいるもう一人が声を上げる。

 

【しかし聞いている限りユーリには趣味が無いように思われます。これを機会に取り組んでみては如何ですか?】

「趣味か」

 

 アイギスの言葉に渋い顔をするユーリ。

 趣味を見つけろと言われても、何もしっくりこないと言うのが本音である。

 

「まあ確かに。小僧はやる事が無さ過ぎだな」

「そうは言ってもな」

【確かにユーリの幼少を考えれば無趣味でもおかしくはありませんが、いつまでもそれを言い訳にする訳にはいけません】

「……厳しいお言葉で」

 

 何も言い返せないユーリは、一度コックピットを出て凝り固まった体をほぐす。

 

「しかしアイギスの嬢ちゃんも随分と言うようになったじゃねぇか」

「だな。もう十分学習したと思うぞ」

【いえ、まだまだです。戦闘面でも感情面でも、ユーリから学ぶべき事は多々あります】

「俺ばかり学習して感情面は大丈夫なのかね」

 

 自虐するように笑うユーリを呆れたように見つめるバーナード。

 そこにアイギスが思いもよらない言葉をかける。

 

【……ユーリには感謝しています】

「何だいきなり」

【確かに模範的とは言えないユーリですが】

「おい」

【ただのAIに過ぎない当機を、あなたは気さくな友人のように接し。それだけでなく任務以外でも顔を出してくれました】

「まぁ、命の片棒を担いでもらっているからな」

【それはユーリ自身が持っている優しさ故の事でしょう。そんなあなたの補佐が出来る事、嬉しく思います】

「……」

「なんだ小僧。照れてるのか」

「うるさい」

 

 絡んで来たバーナードを避け、ユーリは再びファフニールの調整に戻ろうとする。

 すると誰かが大声を出してこちらに向かって来ているのが見えた。

 

「少尉!」

「レコ?」

 

 よく見ればアイシャたちと買い物に出かけたレコが、汗を掻きながら走ってきていた。

 

「どうした? 荷物持ちでも必要になったか?」

「冗談を言っている場合じゃないんです!」

 

 軽い冗談に顔を赤くして否定するレコの姿に、ただ事ではないと頭を切り替えるユーリ。

 

「何があった」

「あ、アイシャさんたちが……。誘拐されました」

「っ!」

「私は逃がされてこれを渡すようにって」

 

 レコは握りしめていた手紙をユーリに手渡すと、その場に倒れ込んでしまった。

 

「レコ!」

「大丈夫だ心配ねぇ。気を失っただけだ」

【ユーリ。犯人たちは何と】

 

 ユーリは手掛かりである犯人たちからの手紙を開く。

 そこには取引場所と時間を除けば、要求が一つだけ書かれていたのみであった。

 

 —―MTファフニールを渡せ、と。

 




今回は少し短めのエピソードとなりましたが、如何でしたか?
この事件がどのような展開になるのか?
ご期待ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。