エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第62話 白と黒の共演

「ああもう。うっとしい、わね!」

 

 言葉と共に振るわれた大剣は、回転する刃で追っ手のMTを両断する。

 夜空に花火のように爆散する仲間を見ても、追撃の手は止まず少しずつではあるがカーミラを包囲していく。

 

「さてと。これからどうしようかしら」

 

 既にユーリたちは撤退しており、依頼は完了したと見ていい。

 カーミラから見れば弱くとも、やり口から見て相手は訓練を受けたプロと考えられた。

 最後まで付き合う義理があるかと問われれば、無いと即答できる程ではある。

 

「……まあいいわ。アフターサービスも大事だしね」

 

 コックピットで呟きながら、カーミラは再び接近してきた二機を大剣で横薙ぎに切り払う。

 すると後方からロングライフルで狙われている事に気づき、迎撃するために振り向こうとした時であった。

 別の方向から飛来したエーテルの光が、狙撃しようとしていたMTを貫く。

 夜空に爆散する機体を見て、カーミラは嬉しそうに笑い通信を開く。

 

「あら。一緒に戻ってても良かったのに」

「そっちこそ。もうとっくに帰ってるものだと思ってたよ」

 

 包囲の一角を崩してユーリがカーミラの背後に陣取る。

 追っ手たちはファフニールが来たのを見て、逃がさないように包囲を再開。

 その様子を見てユーリは戦況を冷静に分析する。

 

「敵は大体二十機ほど。それも訓練を受けたプロ相手なら撃退するのは困難だな」

「柄にもない事を言うわね。当たり前の事を聞くために残っているのじゃ無いのだけど?」

「……だな。エーテルの残量は」

「一緒に戦うなら十二分よ」

「よし。それじゃ……やるか!」

 

 ユーリの合図と共に、二機はそれぞれ敵機に襲いかかる。

 急いで迎撃を開始しようとした追っ手たちであったが、密集していたため射線上の味方が邪魔でライフルが使えず場が混乱する。

 その隙を逃す訳もなく、ユーリとカーミラは次々に敵機を切り刻んでいく。

 まさに苛烈と呼ぶに相応しい猛攻に、追っ手たちは段々と押されてしまう。

 だが向こうもプロの集団。

 段々と落ち着きを取り戻し、反撃に転じる者もいた。

 

「っと。させるか!」

 

 カーミラの後方から迫っている敵機が見え、ユーリはライフルで狙い撃ち代わりに迎撃する。

 

「貸し一つだな」

「そう。それじゃあ」

 

 カーミラはファフニールにアサルトライフルの銃口を向けると、その引き金に容赦なく指をかける。

 発射された実弾は吸い込まれるように、ファフニールの真後ろに迫っていた敵機に直撃した。

 

「これで貸し借り無しね」

「動いてたら当たってたぞ」

「本気で撃っても躱すでしょ?」

 

 こうして二人は迫る敵機を各自撃破していく。

 時折互いを援護しながら戦う事、約数十分。

 残るは追っ手は三機となっていた。

 その中には、隊長機と思われるバイザーを装備したMTも混ざっている。

 

「いよいよ大詰めだな」

「このまま簡単に終わると良いのだけどね」

 

 カーミラの言葉が引き金になったように、隊長機を除く二機が接近戦を挑んできた。

 迫る敵機に対してユーリはサーベルを両手に持ち、刃を形成すると自ら突っ込み迎撃する。

 

「そんな単純な攻撃!」

 

 一機のコックピットを貫くと、迫るもう一機の頭部を切り裂く。

 すると隊長機と思われるMTが、ロングライフルの銃口をファフニール向ける。

 

「こいつ! 味方ごと!」

 

 何とか射線から離れようとするが、頭部を破壊された機体が密着してきた行動を阻害してきた。

 

「ちっ!」

 

 サーベルを逆手に持ち替え、密着した機体のコックピットを貫通しさせて取り除く事に成功したユーリ。

 だがその時にはロングライフルから一筋の光が放たれていた。

 

「ちょっと。私の事を忘れてないかしら」

 

 すると射線上にカーミラ機が現れ、大剣を盾にしてユーリを守ったのであった。

 

「すまない!」

 

 詫びを入れると同時に一気に隊長機との距離を詰めたファフニールは、両腕を切断した後にカメラを潰す。

 逃げられないよう拘束してから、ユーリはカーミラに確認を取る。

 

「無事か?」

「ええ。けど最後は油断しすぎじゃないかしら?」

「返す言葉もない」

 

 ユーリは苦笑を返しながら、隊長機を抱えてカゲロウへと向かい始める。

 

「さて。戻ってコイツから情報を聞き出さないといけないな」

「……そう上手く行くかしら」

 

 カーミラの言葉の真意を聞こうとするが、その前に隊長機から高エーテル反応が現れアラートが鳴り響く。

 

「チィ!」

 

 ユーリは急いで隊長機を蹴り飛ばすと、夜空に落下しながら爆散するのであった。

 

「だから言ったでしょ」

 

 その呆れたような言葉が、ユーリの顔に深い皺を作りため息を漏らさせる。

 

 —―何はともあれ、一連の騒動に決着がついた瞬間であった。




10月に入りましたが、皆さまどのようにお過ごしですか?
季節の変わり目は体調を崩しやすいものですので、お気をつけて。
さて六章も終わりが近づき、大きな区切りな章となる七章が迫っています。
どうぞお楽しみに!
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