エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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七章 テルモの大乱
第64話 馬鹿の集まり


「大丈夫なのか中佐。その怪我で」

「問題ありませんよローランド艦長。それよりも事態を話さなければ」

 

 アーストンの国境付近で輸送艦と共に着陸させたカゲロウは、乗っていたライアンを始めとした一同を救出。

 ライアンは医務室へ向かうのを拒否し、事情を説明するためブリーフィングルームに入室した。

 そこにはカゲロウの主たるクルーが揃っており、当然ユーリとデュラハン隊の顔もあった。

 

「……中には私を知らない者も居るだろうが、説明をしている暇はない。簡潔に言わせてもらおう」

 

 ライアンは時折痛みで顔を歪ませながら、誰もが予想もしなかった言葉を言い放った。

 

「あと数日もすればガスアとの戦争が再開される」

 

 その言葉に場は一気に混乱し始める。

 各々が憶測を勝手に話し合う中、ローランドが一喝した。

 

「静かに! まだ話は終わっていない!」

 

 艦長の一声に場が落ち着きを取り戻すと、ライアンは続きを話しを続ける。

 

「皆が混乱するのも分かる。だが最後まで聞いて欲しい。これは一部の過激派が引き起こした事なのだ」

「過激派?」

 

 ユーリが小さく聞き直すと、ライアンは頷き最初から話し始める。

 

「事の始まりは先週ユリウス王がガスアとの秘密裡に行われる会談に向かわれた時だ。軍部の過激派がテルモ基地とエリンを占拠した」

「なっ!?」

 

 どこからか驚きの声が聞こえてくるが、ライアンはふらつく体を支えて貰いながら語り続ける。

 

「ろくに応戦が出来ないほど深く軍部に食い込んだ奴らは、会談の場をユリウス王ごと爆撃する気だ」

「……そうなればガスアとの戦争は避けられないな」

 

 一体どれだけの人材が会談に向かっているかなど、ユーリたちには知る由もない。

 だがもし爆撃が実行され休戦を推し進めるユリウス王とガスアの皇帝が死ぬことになれば、両者の溝は決定的なものになるだろう。

 

「私は状況を打破するために少将から送り出されて此処に来た。頼れるのは君たちしかいない」

「ですが他の基地にも応援を頼むべきでは?」

 

 ジェイドの問いかけにライアンは静かに首を横に振る。

 

「恐らく奴らは各基地にも手を回して上手く情報が回らないようにしているはず。この艦には少将が自ら査定された者しかいないからな」

「状況を整理させてくれ」

 

 今まで殆ど黙っていたユーリが立ち上がりながら口を開く。

 表情は今までにないほど真剣なものであった。

 

「要するにこれから過激派連中が占拠しているテルモ基地に特攻に行ってこい。そう聞こえるんだが」

「……そうだ」

 

 場が先ほどの比ではないほど騒めき立つ。

 過激派はどれだけの規模かは分からないが、元からいたテルモの防衛部隊だけでもカゲロウの戦力を軽く超えている。

 そこに攻めろと言うのだから、死にに行けと言っているようなものだ。

 艦長でローランドですら、顎に手を当て考え込んでいた。

 

「他の奴らを巻き込む必要はない。俺一人で行く」

 

 だが場の空気を切り裂くようなユーリの一言で、場は静まり返った。

 

「……少尉」

「無茶ぶりは何時もの事だ。気にするな」

「……隊長。少しいいですか」

 

 突然アイシャが立ち上がり、ユーリの傍まで寄ると言葉を向ける。

 

「先に謝りますね。無礼を許してください」

「は?」

 

 ユーリが言葉の意味を考える前に、アイシャの手が頬をビンタした。

 痛みよりも驚きの表情を見せるユーリの胸倉をつかみ、アイシャは涙ながらに言葉を言い放つ。

 

「どうして隊長はそんなに自分の命を安売りするんですか! 死にたくないって言いながら矛盾してて腹が立ちますよ!」

「……アイシャ」

「私も一緒に行きます。隊長となら怖くはないですから」

 

 アイシャの宣言にユーリがどう答えるか迷っていると、彼女の後ろからも声が聞こえた。

 

「私も行く! 私だってデュラハン隊の一員なんだから!」

「一人よりも二人。二人よりも三人の方が成功確率が上がるでしょうね」

「ミーヤ。エルザまで」

 

 三人の眼を見れば、固い決意をもっている事がうかがえる。

 するとタイミングを見計らったように場にいるクルーに問いかける。

 

「どうやらデュラハン隊は行くことを決めたようだが、お前たちはどうだ? この四人に負けない馬鹿だと思う者は残るといい」

 

 その言葉からしばらくしても、去ろうとするクルーはいなかった。

 満足気な表情を浮かべ、ローランドはユーリに言った。

 

「一人では死ねなくなったな。少尉」

「……はぁ。まさかこんなに馬鹿の集まりだとは思わなかった」

「類は友を呼ぶって言いますよ隊長」

「うるさい。アイシャ後で反省文だからな」

 

 場が温かな笑いで一杯になる。

 ライアンも少しだけ笑みを浮かべながら、作戦成功のための切り札の話をしだす。

 

「諸君の作戦協力に感謝する。そして成功率を少しでも高めるため、少将からの贈り物がデュラハン隊にある」

「俺たちに?」

「ああ。君たち専用の最新鋭機だ」




まずは舌の根の乾かぬ内に月曜日に更新出来なかった事、スミマセン。
体調を崩してしまいました。
体が弱いので今後もこの様な事があるかも知れませんが、完結までは走り抜けますのでよろしくお願いします。
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