エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第70話 暴君顕現

「このぉ! どいて!」

 

 ユーリがカーミラとの激戦を再開した頃、アイシャたちはテルモ基地へと突入していた。

 幸運な事に基地内にも反乱の波は来ているようで、三人が予測していたよりも楽に切り込む事が出来た。

 ミーヤが追撃してきた過激派側のMTらに向け、残っていたミサイルを撃ち尽くす。

 ミサイルラックをパージし多少身軽になったクリームヒルトを操り、先行していたアイシャとエルザに追いつく。

 

「二人とも! 大丈夫!?」

「心配しなくとも無事よ! それより自分の心配しなさい!」

「うぅ。アイシャが厳しい」

「二人とも。遊ばないで」

 

 そのようなやり取りをしながらも、三人は迫る過激派のMTを次々に撃破していく。

 特に機体コンセプトもあり、ミーヤの活躍は凄まじかった。

 シールドガトリングで敵を薙ぎ払いながら搭載された重火器も扱う姿は、鬼神と評してもおかしくはない。

 二機がそれぞれ奮戦する中、エルザが倒したMTから情報を収集していた。

 

「二人とも。爆撃機の場所が分かった。第十格納庫に集められているみたい」

「よし! 此処からなら第十に近いよ!」

「私が先陣を切るから、二人は援護をお願い! 隊長の分まで暴れるわよ!」

 

 宣言した通りアイシャ機が先駆けとなり、三機は第十格納庫までの道を突き進む。

 突き進み無事にたどり着いた三人であるが、その表情は緊張感に包まれていた。

 

「……どう思う?」

「罠、だよね。多分」

「十中八九ね」

 

 格納庫に近づく程に防衛するMTが数が減っていき、三人の警戒感は非常に高くなっていた。

 更には第十格納庫の前だけ、何故か過激派の部隊が展開されていない。

 ここに罠が在りますよと言いたげな布陣であるが、三人の突撃する事を決めていた。

 長引けば不利である事は、作戦開始前から何度も話し合った事だからだ。

 

「ウェルズ、悪いけど先行して。私とカレリンで援護する」

「オーケー。任せて」

 

 アイシャはナギナタを構えながら格納庫へと一歩、また一歩と接近していく。

 何があっても対応できるよう、少し後ろにエルザとミーヤも後を追う。

 すると格納庫の扉がゆっくりと、だが確実に開き始めた。

 

「っ! カレリン!」

「分かった! アイシャ! 退いて!」

 

 すぐさまガトリングの砲門を格納庫へと向けるミーヤ。

 アイシャはすぐさま射線上から離れ、エルザは二人を補佐できるようにバヨネットを構える。

 

「当たれ!」

 

 二門のガトリングが回転しながらエーテル弾を撃ち出していく。

 さながら光の洪水とも言えるような攻撃は、あっという間に格納庫を蜂の巣にする。

 撃ち終わり放熱するガトリングを下げた時、ミーヤの目の前には廃墟化した格納庫がある……はずであった。

 

「……え?」

 

 一瞬ミーヤは考える事を放棄した。

 いやミーヤだけではない。

 エルザもアイシャも。

 敵も味方も。

 その姿を見た誰もが言葉を失った。

 

 恐竜をイメージしているのは珍しくない。

 全身が紫でカラーリングされているのも、変わっているが少なくはない。

 だが、そのMTは明らかに巨体であった。

 平均的なMTの二倍以上はある鉄の塊。

 それがアイシャたちを見下ろしていた。

 

「来たか悪逆の先兵め! このアーストンの技術の粋を集めたタイラントで貴様らを葬りさってくれる!」

「え? この声って」

「聞いた事あるわね」

「……二度と聞きたくなかったけど。間違いない」

 

 鳴り響く大声に聞き覚えのあった三人は、ようやく我に返る。

 特にエルザは操縦桿を握りつぶさんばかりに、力を込め怒りを堪えていた。

 

「このジェイソン・グッドマンに討たれる事を誇りに思うがいい!」

 

 やはりという落胆の気持ちと、勝手に名乗る愚かさに呆れる三人。

 かつてアーストン解放戦線を結成し、ユーリたちに捕縛されたテロリストであるジェイソン・グッドマン。

 経緯は不明であるものの、彼の主張を考えれば過激派と手を組んでいてもおかしくはないとエルザは結論づけた。

 

「死ね! 悪逆の徒よ!」

 

 タイラントの右腕が三機の前にかざされると、エーテルが収束していき巨大な光弾となる。

 

「っ! 二人とも!」

 

 逃げて

 エルザが言い切る前に光弾は放たれ、三人に迫る。

 それぞれ何とか避けるが、光弾の余波によって大きく飛ばされる。

 

「痛っ! 二人とも無事!」

 

 衝撃で頭を激しく打ったアイシャは、痛がりながらもエルザとミーヤの無事を確認する。

 

「こちらミーヤ。私は無事だけど長距離砲の砲身が」

「エルザ機。左腕を負傷したけど、大丈夫。動ける」

 

 ミーヤとエルザ、二人とも被害はあるようであるが命に別状はなさそうであった。

 だが光弾が直撃した地面はかなり抉れており、威力の高さが伺えた。

 

「あれ、倒せると思う?」

「流石に厳しい……かも」

 

 タイラントの巨体と光弾の威力にアイシャとエルザが弱気になる中、ただ一人エルザはバヨネットを構え交戦の意思を見せる。

 

「私は引かない。あの男相手に、引くわけにはいかないの」

「「……」」

 

 エルザに触発されたのか、弱気になっていた二人も武器を構えタイラントと対峙する。

 

「二人とも」

「エルザだけ残すなんて出来ないよ! 一緒に戦おう!」

「どうせ逃げ場なんて無いし、これさえ倒せば敵に手札は無いでしょ。気合入れて行くわよ!」

「……うん、行こう。三人で」

 

 三機のクリームヒルトが暴君と名付けられたMTとの対決に挑む。

 テルモ基地における反乱は、更なるステージへと向かっていた。




ギリギリの執筆となりましたが何とか間に合いました(笑)
まさかの男も再登場し、物語も盛り上がりを見せています。
是非この先も見てもらえると嬉しいです!
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