エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第74話 閃光は白く煌めいて

「はあぁ!!」

 

 気迫を込めた声と共に、ナギナタを振り上げて突っ込むアイシャ機。

 だがタイラントに仕込まれた機銃による弾幕によって、突撃が中断されてしまう。

 

「っ! やっぱり機銃を何とかしないと!」

「そんなこと言っても!」

 

 苦情を言いながらガトリングによる乱射を続けるミーヤであったが、タイラントの装甲が非常に厚いうえに攻撃を避けながらのため有効打を与えられない。

 

「二人とも。無駄口を叩く暇があるなら動いて」

 

 エルザもバヨネットによる射撃で牽制や囮を引き受けるが、効果は薄い。

 最新鋭の機体に乗る三人であっても、三倍の大きさを持つタイラントに苦戦を強いられていた。

 そんなアイシャたちを馬鹿にするように、ジェイソンが鼻で笑う。

 

「まさにハエだな。我々の偉大さも気づかず安い倫理でうごめくハエ」

「無責任に戦争を起こそうとする奴が人間なら、ハエで十分よゴミ野郎」

 

 アイシャの切り返しに腹を立てたのか、ジェイソンはヒステリックに叫ぶ。

 

「黙れ! 世界は真に強き者が統一して、初めて幸福を得られるのだ! それすら分からないのか!」

「自分が強い者のつもり? ただ弱い人間を虐げているだけじゃない」

「弱い人間は強い者の贄となる。それのどこが悪い! 真理に気づいた私にはその資格がある!」

 

 苛立ちを隠そうともせず吠えるジェイソンの言い分に、呆れるしかないエルザ。

 代わりに反論したのはミーヤであった。

 

「そんなのが真理な訳がない! 人間は支えあって生きていくんだから!」

「それこそが弱者の思想だ!」

「あなただって一人で生きてきた訳じゃないでしょう!」

「黙れ黙れ黙れ! 私は間違えない! 私が正義! 私こそが人類の希望!」

 

 ジェイソンがヒートアップすると共に、機銃による攻撃の勢いも増していく。

 三人は一度距離を取ると、通信を取り合う。

 

「ごめん。怒らせちゃった」

「気にする必要ないわよ。あっちが論外なの」

「強い力を得て、ますます拍車がかかってる」

「で? どう倒す?」

 

 アイシャの問いかけに、二人は即答できない。

 度重なる連戦でエーテル残量は残り少なく、受けたダメージもそれなりにある。

 長期戦はまず無理であり、早期に決めようにも決め手がない。

 だがユーリが来れるか分からない以上、自分たちで仕留めなければならないのは三人の共通認識だ。

 

「やる事は決まってる。今の装備なら一点突破しかない」

「それしかない……か」

 

 エルザの発言にアイシャはため息を吐きながら同意する。

 ミーヤも頷いたため、三人は作戦を詰めていく。

 

「カレリン。エーテルを気にしないでとにかく撃って。目くらましにならばいいから」

「分かった!」

「ウェルズは突っ込んで一撃で仕留めて。私が援護する」

「了解。単純で分かりやすいわ」

「よし。三つ数えたら作戦開始」

 

 一つ二つとカウントが進む中、三人とも集中力を高める。

 もしかすれば誰かが死ぬかも知れない。

 だが倒れても他の二人に託す。

 別れの言葉は言わず、ついにスリーカウントが数え終わった。

 

「当たれ!!」

 

 同時にミーヤ機のガトリングによるエーテル弾がタイラントに向け、ばら撒かれる。

 

「えぇい! うっとうしい!」

 

 弾はタイラントの強靭な装甲によって弾かれていくが、ジェイソンの意識はミーヤに逸らされていた。

 その隙を狙い、アイシャとエルザは弾幕の隙間を縫って接近していく。

 

(よし! いける!)

 

 確信を得るアイシャは、ナギナタにエーテルを回す。

 

 ―その時であった

 

「ウェルズ!」

 

 自身を呼ぶエルザの声に反応し、振り返ろうとするアイシャ。

 警告のアラートが鳴り響くのと、タイラントの右腕が接近していた事に気づいたのは同時であった。

 

(え? どうして? まだ腕が届く範囲じゃないのに)

 

 頭の中で思考するアイシャの目の端に、タイラントの右腕につながれたワイヤーが見える。

 

(ああ遠隔操作できるんだ。少し舐めてた。迎撃……は無理だろうな。何でだろう? 凄くスピードがゆっくりに見える。走馬燈ってやつかな)

 

 視線を移せばエルザ機が自分に手を伸ばそうとしてるのが見えるが、その距離は遠い。

 ミーヤも右腕を破壊しようとガトリング砲を向けている。

 だが間に合わないのは明白であった。

 

(ここまでか。後悔はないけど、もう少しだけ生きたかったな。二人とも先に逝くね。……隊長。ごめんなさい)

 

 心の中で謝罪し、アイシャは諦めて目を閉じる。

 

「諦めるなアホ!」

 

 だが叱る声に目を開けると、巨大な金属の塊が目の前を飛翔しタイラントの右腕に突き刺さる。

 衝撃によって方向を変えた隙に、アイシャはエルザ機によって射程外まで避難された。

 

「あれは、バルムンク! っていう事は!」

 

 全てを言葉にする前に、白い閃光が目の前を過ぎると共にバルムンクに蹴りを加えさらに押し込む。

 右腕は耐えられずに破壊され空中にパーツが舞う中、同じく落下していたバルムンクをキャッチするMTに乗る人物の名を三人は叫んだ。

 

「「「隊長!」」」

「待たせたな。さあいい加減終わりにしよう」

 

 ―テルモ基地にて起きた反乱事件

 それも終わりに近づこうとしていた。




7章も終わりが近づいて参りました。
果たしてユーリたちは生き残る事が出来るのか?
是非お見逃しなく!
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