エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第76話 大乱の幕引き

「くそ! 何故こんな事に!」

 

 過激派の将校は司令部から離れながら怒りを募らせる。

 僅か四機のみの反乱であったはずが、いつの間にか基地内の半分以上が敵に回り、さらには切り札であった巨大MTまで破壊されたのだからその反応も当然と言えるかもしれない。

 

「グッドマンめ。刑務所から出してやったと言うのに、役に立たない奴だ!」

 

 将校が向かう先には、高速艇が用意されている。

 どうにかエリンまで逃げ切り他の過激派と合流し、反乱を起こした奴らを法の下で裁くのが目的だ。

 

「今は調子に乗っているがいい。待っているのは銃殺刑だ」

 

 自身の有利を確信し、将校は嫌らしい笑みを浮かべる。

 すると準備させていたはずの部下が慌てて戻って来ていた。

 

「何をしている。高速艇は準備できたのか」

「お逃げ下さい! この先には奴が」

 

 何かを必死に伝えようとする部下であったが、その言葉は一発の銃声によってかき消され、額に風穴が空いた部下は通路に倒れた。

 

「ひぃ!」

 

 予想外の事態に思わず腰を抜かす将校の耳に、複数の足音が聞こえてくる。

 

「だ、誰だ貴様らは!?」

 

 武装した兵士二十人ほどに囲まれ、過激派将校は混乱する。

 何も答えない兵士たちに銃口を向けられて、冷や汗が止まらない。

 だが兵士たちのさらに奥からやってくる人物を見て、彼の感情は驚きで占められるのだった。

 

「お前は、オーウェン! 死んだのではなかったのか!」

「まだまだ心配事が多くてな。おちおち地獄にも行けんのだよ」

 

 現れたスコットは自らも銃口を向けながら、挨拶するかのような感覚で話す。

 一方で過激派将校は、先ほどよりも多くの冷や汗が背中を流れていく。

 何せ目の前にいる男を殺すように命じたのは、自分自身なのだから。

 

「一々聞かれるのは面倒だから先に言わせてもらうが、既にテルモ基地の過激派は掃討されつつある。そしてエリンの過激派も、先ほど排除させてもらった」

「なっ!」

 

 将校は驚きのあまり、それ以上の言葉は出なかった。

 基地内はともかく、王都であるエリンは基地内と同程度の過激派がいた。

 それが自分の知らぬ間に制圧されていたと知ったのだから、無理もない。

 

「残る首謀者はあなた一人な訳だが、承認はもう足りているのでな」

「ま、待ってくれ!」

「いや待たない。既にユリウス王は事態を知っていて、会談が終わり次第戻られる。それまでに少しでも整理しなければならないのでな」

 

 引き金にゆっくりと力を込め始めるスコットに、過激派将校は一周回って怒りが込めあげてくる。

 

「わ、我々は正義のために立ち上がったのだ! ガスアが何時までも現状を受け入れると思っているのか! 今やらねば、奴らはいつか侵攻を始める! その為に」

「もういい。黙れ」

 

 スコットは聞くに堪えないと言わんばかりに、過激派将校の額に向けて引き金をひく。

 断末魔すら上げる事無く、彼は物言わぬ死体となった。

 

「イフの話を幾らした所で答えなど出ん。我々はただ人々の平和が続くように動けば良い」

 

 冷たくなっていく将校に言い残すと、スコットはこの場を部下に任せて一人歩き始める。

 

「全く。無茶をしてくれる」

 

 その言葉を誰に向けて言ったかは定かではないが、口元は緩んでおり、機嫌は悪くない事が分かる。

 スコットはそのまま、戦闘が終結したであろう外へ向かう。

 自慢の部下たちに自分の生存を伝えるために。

 

 ―数分後、過激派は完全降伏

 新西暦五十六年十二月初旬

 テルモ基地にて起こった最大の反乱は、こうして終わりを告げた




今回で七章を終わらせるつもりでしたが、思っていたより長くなりそうなので分割させてもらいました。
次回こそラストですので、是非見てください!
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