エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

93 / 130
第80話 メシア

 異形のMTと睨み合いの状況となったユーリは、ジリジリと距離を図る。

 対して敵機はライフルをジークフリートに向けたまま微動だにしない。

 

「アイギス。照合はしてるな」

【はい。ですが一致するデータはありません】

「完全に所属不明か。……まあどっちにしろ、武器を向けてくるなら」

 

 ユーリは覚悟を決めたようにジークフリートのスラスターにエーテルを回す。

 突撃する気配を察知してか、異業の敵機は躊躇なく引き金をひいた。

 明確に破壊の意思を持って放たれた光であったが、ユーリは難なく躱して逆に距離を詰める。

 

「やるしかないよな!」

 

 そのまま逆手で持ったサーベルを展開し、流れるようにエーテル刃で胴体を両断してみせる。

 真っ二つにされた謎のMTは、そのまま爆発をしたあと黒煙を上げて動かなくなった。

 

【流石ですね。ユーリ】

「まあこの位はな。さてと、残骸をバーナードの爺さんに見せて所属を明らかにしないとな」

 

 地面のスクラップと同じ物言わぬ残骸となった敵機に近づき残骸を回収しようとするユーリであったが、ある異変に気付き大きく後退する。

 

「……アイギス。この状況、説明できるか?」

【いいえ】

 

 ユーリの問いかけに短く答えるアイギス。

 AIであるアイギスでも、疑うような光景がそこにはあった。

 確かに切断したはずのMT。

 だが目の前には時が遡るように装甲を修復しながら立ち上がろうとしている姿が確認できた。

 

「っ!」

 

 常識を壊すような光景に固まっていたユーリであったが、意識をすぐさま落ちていたライフルに向けると射撃をして爆散させた。

 武装を失った敵機はモノアイを動かすと、残骸に埋まっていたトマホークを発掘するとジークフリートに向かって突撃する。

 

「そんな単純な動きで!」

 

 ユーリはトマホークが振り下ろすタイミングを見切ると、ギリギリで躱してみせてカウンターで肩ごと武器を持っていた右腕を切り落とす。

 だが敵機は落とされた右腕を拾い上げ引っ付けると、まるで何事も無かったように元に戻った。

 

「見間違いじゃ無かったみたいだな」

【自己修復。理論としてはありますが、実用化されているのを確認するのは初です】

「関心するのはいいが、流石に何度も修復されると手持ちの武装じゃ厳しいな」

 

 今回は調査がメインと言う事もあり、基本的な武器しか装備していない。

 それでも技量では勝てるだろうが、どれほどの修復を出来るのか分からない以上は無理も出来なかった。

 

「一度退いた方がいいか」

【……その方が良さそうですユーリ。レーダーを確認してください】

 

 アイギスに言われるがまま視線をレーダーに向けると、MTの反応が一つ二つと次々に増え瞬く間に両の手では数えられなくなる。

 

「っ! まずい!」

 

 直観で囲まれる事を察したユーリは、すぐさま空中へ離脱。

 曇天の空を背に地上を見下ろせば、まるでゾンビの如くスクラップの大地から湧いて出る異形のMTたち。

 すでに反応は五十を超えているが、反応が止まる気配は全くない。

 

「アイギス! カゲロウに小隊が着艦しだいスクラップ島から全速で離脱出来るように準備しろと連絡を!」

 

 怒鳴りながらユーリは他の三人と合流するために、最初に決めていた地点に急ぐ。

 そこでは予想通り、謎の継ぎ接ぎMTたちに苦戦を強いられているクリームヒルト三機が固まっていた。

 状況を確認したユーリは高速で移動しながらライフルを構えると、背中がガラ空きの敵機に引き金を引く。

 エーテル光が装甲を貫き爆発を起こすのと同時に、三人と敵機はユーリが来た事に気づく。

 

「隊長!」

「喜ぶのは後だ! 三人とも離脱するぞ!」

 

 ミーヤの言葉を遮って怒鳴ると、三人も察したのか空中に避難する。

 継ぎ接ぎMTは四機に向けて持っていた射撃武器で攻撃するが、フライトユニットが無いため追ってくる事は無かった。

 落ち着いたタイミングで、エルザがユーリに問いかける。

 

「……隊長。あのMTは」

「分からない。とにかく今のままじゃ火力も情報も不足してる。ここはカゲロウに戻るぞ」

 

 ユーリの言葉に三人も異議は無いようで、下からの射撃を避けつつカゲロウへと向かう。

 四機がカゲロウへ向かっている最中にも増殖は進んでいるようで、地面を見れば湧いて出てくるMTが確認できた。

 

(……何なんだ、こいつらは)

 

 得体の知れない気持ち悪さを感じるユーリの耳に、慌てた様子のアイシャの声が飛び込んできた。

 

「た、隊長!」

「何だアイシャ。もうこれ以上の厄介ごとは」

「冗談言っている場合じゃないです! レコから国の放送が乗っ取られたって!」

「っ! アイギス!」

【間違いありません。それどころかこの世界の大小問わず全てのメディアに、先ほどから同じ情報が流れている様子です】

 

 ユーリが急いで国営放送につなげると、流れてきたのは機械を通して聞こえてくるような声であった。

 

【繰り返します。我が名はメシア、人類を救うために生み出されたAIです】




皆さん年末も私の作品を見てくださり、ありがとうございます。
12月29日・1月2日も普段通り投稿するつもりですので、よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。