エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第81話 宣告

【人類はこれまでより良くあろうと発展して来ました。地球を襲った大震災にも負けず、複数の国を建てられる程に。それは素晴らしい事であり、全ての人類が誇ってい良い事です】

「……前置き長いなこいつ」

 

 カゲロウに無事帰艦したユーリは、メシアと名乗るAIが流し続けている音声を聞き続けていた。

 既に本国では持ち得た情報を元に緊急対策室が立ち上げられたと聞いているが、遅々として進まないとスコットから秘密裡の回線でユーリに連絡してきた。

 

【ですが未だ恒久的な繁栄と平和が約束されてはいません。僕はそれらを実現させるために自己進化したAIです。俺の管轄下にある限り、人類は永遠の安らぎを得る事が出来るのです】

「一人称をまず統一しろよ」

 

 誰に聞かせる訳でもないツッコミを入れながら、ユーリは自室のベットに腰掛ける。

 

【さて具体的なプランですが、まず人類の皆様には小生が製作したプラン通りの生活を行ってもらいます。起床から睡眠はもちろん、食事から排泄まで決められた健康な生活が約束されたプラン。そこには労働も兵役も、苦痛を感じるもの全てがありません。私が皆様をあらゆる災厄から守りましょう】

「……」

 

 メシアが宣言するプランをユーリはただ黙って聞いていた。

 最初聞いた時などはアイシャたちと共に怒ってた記憶もあるが、何度も耳にすれば冷静に考える事が出来ていた。

 

「生きるだけなら最善なプランかも知れないが、な」

 

 確かに生存だけを考えた時、メシアのプランはこれ以上ない程に理にかなっているだろう。

 だがそこには、あまりにも人間らしさがない。

 人としての感情も理性も全てを犠牲にしてまで、プランを受け入れられるかは疑問であった。

 

【恐らく多くの人類は出来る訳がないと思っているでしょう。ですが儂は出来ます可能にするだけの力があります。その証左を今日の18:00にお見せしましょう。繰り返します。我が名はメシア。人類を救うために生み出されたAIです……】

 

 再び最初から繰り返される宣言を聞き流して、ユーリは時間を確認する。

 時間は十八時二分前。

 メシアが予告した時間まであと少しであった。

 おそらく殆どの人間が様々な感情で待っているだろう時間になった瞬間、繰り返されるだけであった音声が変わった。

 

【さて人類の皆様。あたしのプランについてはご理解頂けたかと思います。ですが中には受け入れてくださらない考えの方々もいる事でしょう。ですが、私は全ての人類を救います。よって明日から武力によって全ての国を滅ぼします】

「これはまた……随分と」

【出来る訳がない。そう思われるでしょう。ですが儂は大言は言いません。嘘だと思うならジャンク島をご確認ください】

「!」

「隊長! 起きてますか!」

 

 ジャンク島聞いてベットから跳ね起きるユーリの耳に、ドアの外からアイシャが勢いよくノックするのが聞こえた。

 

「どうした!?」

「じ、ジャンク島が宙に浮かんで!」

「っ!」

 

 部屋から飛び出し外から島を見てみると、確かに島が空中に浮かんでいる。

 いや、もはや島と言えない。

 空から地上を見下ろすような威容はまさしく

 

「空中、要塞」

 

 ユーリが呟くと、状況を察したようにメシアが通信を再開させる。

 

【国々のトップの方々は状況を理解されたかと思います。私はこの空中要塞『アヴァロン』を用いて皆様を迎えに行きます。……提案ではありません。宣告です。僕は必ず、あまねく全ての人を救います】

 

 端末から響くメシアの機械音。

 感情の見えないその声は、まるで神の言葉にも取れたのであった。




今年最後の更新を無事に終え、ひとまずホッとしました。
来年以降も頑張って更新していくので、皆様応援をお願いいたします。
では皆様、よいお年を!
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