エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

96 / 130
第83話 敗北

 あれほど燦燦と照らしていた太陽も、黒い煙によって遮られてしまっていた。

 戦場となった街はもはや見る影もなく、廃墟と見分けがつかなくなっていた。

 

 ニューブルックリンとアーストンの連合対メシアが率いる無人機の軍団。

 世界中が視線を送っているであろう一戦は意外なほどあっけなく、数時間ほどで決着がついてしまった。

 

 ―連合側の敗北という形で

 

「っ! まさか撤退する事になるなんて」

「愚痴るなアイシャ! 今は生き残る事だけ考えろ!」

 

 ユーリは怒鳴りながら、迫りくる無人機をバルムンクで切り伏せる。

 切られたMTたちは両断され動かなくなるが、すぐに他の部品とつながり立ち上がってくる。

 

「切っても撃っても効果ないな」

【何か仕掛けがありそうですが、調べている余裕は無さそうですね】

「負けるにしても出来れば一機ぐらい持ち帰りたい所だが」

 

 有力な情報を持ち帰るため最後まで戦っているデュラハン隊。

 既に殆どのアーストンの部隊は撤退を完了しつつあり、ユーリたちもカゲロウに帰艦するタイミングを計っていた。

 一方で無人機は動かなくなった連合側のMTに近づくと、コックピットをえぐり取り大切そうにアヴァロンへと戻っていく。

 

「隊長!」

「構うなミーヤ! 今の俺たちに彼らを救えるだけの力は……ない」

「けど!」

 

 次々に連れ去られていくパイロットを今にも救出しに行きそうなミーヤであったが、エルザが機体の肩を掴んで静止させる。

 

「いい加減にして。助けに行っても逆にやられるだけ。それが分からないほどバカじゃないでしょ」

「……」

「悔しいのはカレリンだけじゃない。だから耐えて」

「……ごめん」

「エルザ。ミーヤを連れて先に帰艦しろ。二人ともエーテルが厳しいだろ?」

「了解」

「隊長もアイシャも気を付けてね!」

 

 二人がカゲロウへと戻っていく中、ユーリはアイシャと共に迫ってくる無人機の相手をする。

 バルムンクとナギナタが振るわれるたびに、無人機たちは両断され地面に倒れていく。

 だがすぐさま他の機体のパーツと、中には連合のMTを吸収して立ち上がる。

 

「ホントに切ってもキリがないない!」

「流石に爆散したら動かなくなるみたいだがな。それは回収しきれないし」

 

 そのまま切り続け数十分。

 周りから味方がどんどんいなくなり、流石のユーリも撤退のタイミングを図っていた頃、ある事に気付く。

 

(? 爆散していないのに動かなくなっている無人機が何体かある)

 

 ごく僅かではあるが確かに動かなくなっている無人機。

 大した損傷も無さそうであり、回収できれば不死身の謎も解けるかも知れない。

 

「アイシャ! フォローを頼む!」

「隊長!?」

 

 言うが早いか、すぐさま動かなくなっている無人機の元へ向かうユーリ。

 数十機からの雨のような遠距離からの攻撃を避けつつ、無人機の傍まで寄るジークフリート。

 確かに静止しているのを確認し、手足を切断して胴体を抱え込む。

 

「このまま撤退する! アイシャ遅れるなよ!」

「り、了解!」

 

 後退するユーリたちに無人機たちは興味を無くしたように攻撃を止めると、倒れているMTからパイロットを引きずり出していく。

 抱えているMTが勝利の鍵になる事を信じて、ユーリたちはアーストンへと撤退した。

 

 ―メシア対人間の戦い

 その一戦目は人間側の圧倒的な敗北であった。




正月気分も終わり、いつもの日常が戻って来た感覚がしますね。
仕事や学業も、頑張って行きましょう!

P.S.一日休んで申し訳ありませんでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。