エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー   作:蒼色ノ狐

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第86話 いつもの三人

 ―アヴァロン接近まであと二週間を切ったある日

 

 エリン内にある軍関係者の宿舎。

 領土内から集められた兵士たちの為に緊急で拡張された施設の食堂に、アイシャたち三人の姿もいた。

 戦意を保つ為か、やや豪華な食事を口にしながら何時ものように会話する三人。

 

「私たちは第二防衛ラインで、隊長は突撃部隊。離れ離れになっちゃったね」

 

 ミーヤが魚を食べながら不安そうに呟くのに対して、エルザはサラダを口に入れるのを止めてため息を吐く。

 

「この一大事に何を気にしてるのよ。いい加減に軍人だという自覚を持ちなさい。カレリン」

「そうは言っても……」

「はぁ、ウェルズ。あなたも何か言えば?」

 

 話を振られたアイシャであったが、一向に返事をする様子がない。

 見てみれば端末を凝視しながら、顔に皺を寄せていた。

 

「どうしたのアイシャ?」

「これ」

 

 短く答えたアイシャは二人に見えるように端末を見せる。

 そこにはメシアを信仰化する暴徒たちが、各地で出没しているというネット記事であった。

 

「ああ増えてるみたいね。アーストン内にも少なくない人数いるとか」

「自暴自棄になってるのかな? 早く倒して安心させないと」

 

 一人奮起するミーヤをよそに、アイシャは端末をしまってカレーを食べ始める。

 

「暴徒が出てるのも問題だけど、重要なのはそこじゃ無いわよ」

「……メシアに同意する人間が一定数いる事?」

 

 エルザの問いかけに頷いたアイシャ。

 ミーヤはその様子に首を傾げながら問いかける。

 

「けど仕方ないんじゃないかな。こんな世界だから僅かな希望にだって縋りつきたくもなるよ」

「ミーヤ、たまに真面な事を言うわね」

 

 苦笑しながらアイシャは口に運んでいたスプーンを置く。

 

「別に希望を見出すのは悪い事じゃないと思う。私がイラついてるのは、ここぞとばかりに暴れまわる奴がいるからよ」

「それは確かに問題だけど。現状は、どうしようも無いでしょう」

「分かっているからイラつくんじゃない」

 

 再び乱暴にカレーを食べ始めるアイシャ。

 会話が途切れたため、二人も食事を再開させる。

 周りは騒がしいが、静かに食べ終えた三人。

 するとエルザは思い出したかのように、口を開く。

 

「話は戻すけど。暴徒云々よりもあの空中要塞を攻略しない事には未来はないから」

「なに言ってるのよエルザ。勝つに決まってるじゃない」

 

 何の疑いもなく断言するアイシャに驚きつつ、エルザは質問する。

 

「兵力差、分かってる?」

「勿論」

「敵の厄介さも?」

「当然でしょ」

「この作戦の成功率、相当低いわよ」

「関係ない」

「……どうしてそこまで自信があるか聞いていい?」

 

 呆れて頭に手を当てるエルザに、アイシャは立ち上がりながら自信満々に答える。

 

「簡単よ。隊長が懐に飛び込むんだもの、何が何でも勝つに決まってるわよ」

 

 満面の笑みを浮かべたアイシャは、食器を片付けに向かっていく。

 ミーヤもまるで同意するように勢いよく立ち上がり、アイシャの後を追いかける。

 

「隊長を信頼しすぎでしょうに」

 

 軽くため息を吐くエルザであったが、二人に続いて立ち上がった時の表情は、二人に負けない程の笑みが彩られていた。

 

 ―歴史を揺るがす防衛戦発令まで、あと二週間

 緊張がアーストンを包む中でも、三人のユーリに対する信頼は揺るぎはしなかった




久しぶりに三人娘に焦点を当てたエピソードとなりました
少し短いですが、そこはご勘弁を
次回は通算100話!
頑張って書いていきます!
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