プラネタリウム・ドリーム   作:ななしのあ

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エタッたと思った?ワイもエタッたと思った!

お久しぶりです。難産やらテラの大地に幽閉やらが重なりA社標準時刻にて2ヶ月近くが経過してしまいました。楽しみにして下さった皆様には本当に申し訳ないです。
ある程度の妥協点を超えれたので投稿します。暇な時に読んでもらえると嬉しいです。


招待状の欠片:大湖の精霊
出航


『鯨』。

 特に人間を宿主とする全てのものの総称。

 

 遥か昔から大湖の象徴として、多くの鯨捕りを生み出し、そして喰らってきた存在。

 

 

 ある者は云う。「『鯨』は怪物である。なのに何故都市は奴等を容認しているのか?」

 

 またある者は云う。「鯨に知能は無い。加えて大湖と言う巨大な檻もある。都市は鯨を観賞魚とでも考えているのだろう」

 

 更にある者は云う。「鯨という存在自体、都市の人々の生活に強く結びついている事から、都市が回る為にはあの鯨が必要なのだと考えているのではないか?」

 

 話題は更に白熱する。「そもそも大湖はほぼ外郭とも取れる位置にある。頭は鯨に脚が生えて陸地を歩いて来ない限り、特段何も対策を取らないのではないか?」

 

 

「いんやぁ!どーせ頭の固い連中がその場凌ぎのヨイショで決めてんだろ?頭だけに」

 

 

 …………。

 

 

 酒場。

 

 U社の五大港の一つ、ダイオウエイ港船。数多の物資と人々が行き交う巨大な港船に位置する、賑やかな酒場。酒の匂いと磯の匂いが混じり合い、どこか鼻につんと来る香りがする。

 

 

「……えっと、爺さん。この兄ちゃん……誰?」

 

 

 酒を片手に討論を深めている所に、全く別の要因で手も話も止められてしまった3名。丸いテーブルの上には既に空になった酒瓶が転がり、酒のつまみとして注文した魚の干物はもう既に食い散らかされている。

 

 

「……儂の上司だ」

 

 

 そんな彼らの隣に座る者。

 とある特異点技術を用いた掲示板にて、『エイトニキ』と呼ばれる老人。隣に座ってきた若い男を一目見た後、何事も無かったかのようにつまみを口に入れる。変な色の酒をチマチマと飲みながら彼ら3人と何かしら話していたようだ。

 

 

「ええ?爺さん、こんな若い奴の下で働いてんのか?」

 

「兄ちゃんも酒飲むか?鯨酒しか無いけど」

 

「乗った!ワイも飲ませてもらお!」

 

 

 ガチャン!

 

 タプタプ。

 

 ガッ!

 

 ゴクゴク。

 

 

「はい、兄ちゃんも割り勘な」

 

 

 …………。

 

 

 突如席に割り込んで来た若い男。黒と白のコートを上から羽織っており、何やらゴツい手袋をはめている。

 

 そのテーブルに座る、計5名。所属する協会は異なれど、彼らは全員フィクサーと呼ばれる者達なのだろう。

 

 

「んで、ワイはこんな所に酒を飲む為にここにやって来たんじゃねぇんだわ」

 

「ほお?この席には酒を飲みに来た鯨捕りしかいねぇぞ?」

 

 

 周りに座る男3人。かつては濃い緑や青だったであろう上着は日差しや雨に晒され、今は灰色と呼ぶ方が近いだろう。

 しかしそれは大湖の上をそれだけ生き抜いてきた証でもある。大湖の上で長く勤めているだけでフィクサー協会は彼らに一定の地位を与えてくれる。

 

 

「あんまここじゃ見ない格好してんな兄ちゃん。フィクサー証見せてくれよ」

 

「ほい、汚すなよ。……んで、ラクス」

 

 

 若い男がフィクサー証を机の上に放り出した後、老人へと向かい合う。

 

 

「どれどれ……」

 

 

「アレの情報を追加で持って来たからさ。ちょっとだけ良い?」

 

「……ふむ。大湖を渡って直接来るとは」

 

 

 人の笑い声が酒場に響き、ガラスとガラスがぶつかり合う音が響く。よく分からない怒鳴り声が頭上を通り過ぎたかと思えば急に泣き出した者のつんざき声が耳を貫く。椅子やテーブルが軋む音がそこら中に響き渡り、いつかこの店の床が抜けるのではないかと心配してしまう程のドンチャン騒ぎ。

 

 周りに比べればそのテーブルに座る5人は良識を兼ね備えいるように見える。

 

 

「……『ルナ事務所代表』……」

 

「「「……『1級フィクサー』…………」」」

 

 

 …………。

 

 

 あれだけうるさかった酒場がほんの一瞬静まり返った。

 

 

「今回の『大湖の精霊』についてだけど……まあ色々追加で情報が出て来たからさ。ちょい確認も兼ねて会いに来たよ」

 

「……それだけならアレ(ゲゼルシャフト)で伝えてくれれば良いものを…………」

 

「あー、ワイの観光も兼ねてるから気にしなくていいよ」

 

 

 酒を飲みに飲みまくっていた彼らの酔いは完全に晴れてしまった。元々そこまで酔ってはいなかったが。

 周りの客はそんな事はもう興味ないと、また別の話題へと移ってしまった。ガヤガヤと騒音が酒場に広がり始める。

 

 

「捜索範囲は現状を継続、目新しい情報はここら辺かな?」

 

「……『稚魚の群れ』……『蛸壺の落とし穴』……『U社集団中毒事件』……」

 

「それだけじゃない。『ウニのなる木』、『幻聴の法螺貝』……最近じゃ『ピアニスト・リスペクト』も関わっているとか」

 

 

 稚魚の群れ。数多の魚が地上を泳ぎ、人を喰らい尽くすねじれ現象。

 

 蛸壺の落とし穴。地中に埋まった壺が地面に擬態し、その上を通った人物を引き摺り込んで食す事件。

 

 U社集団中毒事件。U社にて採れた鯨の体内に本来存在しない猛毒が存在し、その鯨を食べた人物に中毒症状が発生した事件。

 

 ウニのなる木。大湖に浮かぶ島にウニが収穫出来る木が生えてくる事件。

 

 幻聴の法螺貝。その法螺貝の音を聞いた者は正気を失い、殺し合いを始めるという事件。

 

 ピアニスト・リスペクト。9区のピアニストの演奏に感化された者達が、ピアニストとは違う方法で彼を超える演奏を生み出そうとする風潮の総称。ブレーメンの音楽隊とは別に区別されている。

 

 

「……その事件に加担している者こそが『大湖の精霊』という訳か」

 

「推測なら『黄金の小枝』にもね」

 

 

「……なんか聞いた事あるか?」

 

「ある。が、詳しくは知らん」

 

 

 蚊帳の外に放り出されてしまった者達3名が声を潜めながら会話をする。

 

 

「ただ、大湖の精霊ってアレだろ?変な化け物を生み出している鯨……」

 

「鯨とは限らないんじゃないか?そんな多種多様な人魚を生み出す鯨なんて聞いた事が無いぞ?」

 

「……最近、鯨とは無関係の人が人魚になるって話を聞いた事があるな。ちょっと前にU社にある小さな漁村で、人が急に人魚になったって聞いたな。なんであんな浅瀬に鯨が来るんだよとか思ったが——」

 

 

ピピ、ガガッ

 

 

 若い男が机の上にラジオを出す。今にも壊れそうな音を立てながら、人間の言葉だと思われる音が流れてくる。

 

 

「……1級の兄ちゃん?どうして急にラジオなんて出したんだ?」

 

此方L社跡捜索隊死組ガガッ此方は現在手掛かり無し

 

此方L社跡地捜索隊運び屋、ねじれと遭遇しジジッ捜索が不能ジー

 

此方L社跡地陽炎1番隊ガガッB7地点にガーーーを発見。交戦します

 

は?おい待てジー馬鹿なのかおいおガガッ

 

 

 …………。

 

 

「うーん。やっぱ板を直接繋いでラジオから流すは無茶だったか」

 

「……何故ラジオから流そうと思った。大湖の上からでもアレ(ゲゼルシャフト)は機能するぞ」

 

「いやさ、切羽詰まってる時って見る余裕も聞く余裕も無いじゃん。それに色々新技能が出てきて使いたい時に使えませんなんて事もあるかもじゃん」

 

「……今時『情報漏洩』とやらがあるのではないのか」

 

 

 ラクスが少し不安げに呟く。机の上に置かれたラジオは今にも爆発しそうな程の雑音をかき鳴らしている。

 

 

「無線機の機能を携えたラジオか?確かに金をアホ程掛けてどんな場所にいても繋がる無線機を作る奴はいるらしいが」

 

「……まぁ、外部と遮断されちゃヤバいのは嫌程分かるが……」

 

おい!無断行動はよせ!ジジジーせめてもうちょいこっちの用ガガガガガガッ

 

「……これ、あっても無くても大差無いんじゃねぇか?」

 

 

 彼ら3人からはガラクタ判定を受けてしまった。

 

 

「はいラクス。これ、あいつらからのプレゼントだって」

 

「ふむ」

 

「……爺さん。そんな変なもん大湖に持っていっても役に立つとは思えないんだが……」

 

「ああ、まだまだあるよ。確か……コレとか……」

 

 

 若い男の次元手袋から沢山溢れ出してきた荷物。犬の写真、デカい熊の木彫り、木刀、おにぎり、手作りの撒き餌、今日の運勢を占えるおみくじキーホルダー……。

 

 

「……爺さん。転職、考えた方がいいぞ」

 

「……ふむ。この犬はいつ飼い始めたのか?」

 

 

 机の上に出されたガラクタの中からラクスが興味を示したのは、一枚の写真だった。

 

 事務所で飼っていると思われる犬の写真。おそらく雑種だが、見た目はシュナウザーが1番近そうだ。

 

 

「あー、確か事務所襲撃後にひょっこり現れたらしいけど、なんかぐだぐだしてる間に住み着いちゃったんだって」

 

 

 捨て犬、もしくは野良犬。

 例の狂犬を死に物狂いで追い出した後、全員がボロボロになっていた時に一軒家へと入り込み、一部の熱心なファンの票を得て移住権を手に入れたようだ。一体誰がこの犬の生活費を出しているのだろうか。

 

 ……そんな事務所の番犬(と言える程強くは無いだろうが)のワンショット。写真からでもしっかり愛されているのが分かる。

 

 

「……ふむ」

 

「かわいいね。大湖でなくしちゃってもまた撮ってあげるから持っていきなよ」

 

「なんで生写真なんだよ。せめてペンダントとかに入れておけよ」

 

 

 シュナウザーの写真をジャケットのポケットに入れた老人。

 

 

「……他のやつはいらない?」

 

「いらん」

 

 

 余計なお世話で詰め込まれた荷物の数々は全て拒否されてしまった。当たり前である。

 

 

「そもそもなんでこんなガラクタ持ってきたんだ1級の兄ちゃん。こんなもん大湖の上じゃ邪魔になるに決まってるじゃねぇか」

 

「いやいやちゃーんと考えて選んできたんだって。例えば……あった、このフラワーロックとか無味乾燥とした大湖の航海を色鮮やかに出来る素晴らしいアイデアだと思うんや」

 

「兄ちゃん大湖をプールか何かと勘違いしてないか?」

 

 

 若い男と鯨捕り3人が熱い討論を繰り広げる光景を老人が静かに眺めている。

 

 

(…………)

 

 

 ふと、ラクスが視線を下げ、ジャケットの中に入れた写真を取り出す。先程見たばかりの犬の写真。

 

 

「……代表殿」

 

「ふぇ?どうした?」

 

「この犬を住まわせて良かったのか?」

 

 

 現在のルナ事務所の経営状況は壊滅的である。事務所は徐々に回りつつあるが、窮地を脱したとは到底言えない。

 

 

「……んー」

 

 

 本来ならそんな事をする余裕は無い。なのに目の前にいる最高責任者は止めなかった。

 

 

「ま、良いんじゃね?」

 

 

 つまりそういう事である。

 

 

「流石は1級フィクサー様だな。犬1匹抱えようが大差は無いってか」

 

「いやぶっちゃけある」

 

 

 この都市にやって来て、短くない年月が経ってしまった。

 

 雑草を死に物狂いで探し食べていた時期。迷子の猫を探し見つけていた時期。事務所の存続の為他の事務所を潰していた時期。

 

 利益の為危険を顧みず、手を伸ばして酷い目に遭った時期。手を伸ばせば何処までも掴み取れると信じていた時期。現実はそんな甘くないと腹いせの一撃で諭された時期。

 

 都市に来てからというもの、そんな日々の繰り返し。一つのやり方が合わなければすぐに手のひらを返し、それでも合わなければまた手のひらを回す。そうやって恥も外聞もかなぐり捨て、死んで直し死んで鍛えてきた。

 

 臨機応変の究極形。良くも悪くも彼ら彼女らは都市にそうやって適応してきた。

 

 なのに。

 

 

「…………」

 

 

 いつからか、ラクスは変われなくなってしまった。

 

 鯨を追いかけ、銛を突き刺し、持ち帰る。たまに協会から仕事が入るのでそれをこなす。

 大湖の規則を破らないように、決められた道を進んで戻るだけの日々が続くようになってしまった。

 

 

 …………。

 

 

 ガラクタに視線を向ける。絶対に今作るべきではない試作品の数々。

 無謀。無茶。無計画。少し前は当たり前に持っていた挑戦の志はいつの日か憧れの対象になってしまった。

 

 

『ラクス様。昔、貴方と共に大湖を渡ることを夢見た者からの贈り物……との事です』

 

『……てな訳で、いつでも頼ってね!』

 

 

 少し前にかけてもらった言葉。事務所という制度から生まれた共同体、社会集団。そこに所属する1人の老人。

 

 頼り、頼られている。彼らが作り出したボート、オール、錨、銛。それらのお陰で今のエイト組部長が存在する。

 

 

「代表殿。その道具、全部貰っていこう」

 

「え?まじ?了解」

 

「はっ!?爺さんマジ!?」

 

「……だが、ラジオだけはいらん。お前の手で処分しておけ」

 

「うそんワイのアイデアだけハブられた!」

 

 

 なら、応えなければならない。

 彼らがくれた航海道具を革袋に詰め、席を後にする。

 

 

「ご馳走様だ。……では、大湖の精霊の捜索に行ってくる」

 

「うーい。きをつけてねー」

 

 

 ラクスが酒場の扉の方へと歩いていく。

 

 

「代表殿。支払いを頼む」

 

「…………はっ?」

 

 

 ゆっくりと扉が開かれ、ほのかに入り込んできた朝焼けが室内を照らす。

 

 

「ねぇ待って!ワイ諸事情あって給料無いんやって!財布カツカツなんだっておーい!!!」

 

「ドンマイだ1級の兄ちゃん。爺さんと兄ちゃん分の飯代、払おうな」

 

「1級なんだから給料もガッポリだろ。こんくらい屁でもないだろ」

 

「だから諸事情あったんだって!!!いやだ!ワイのお土産代は崩したくない!誰か!助けて!ねぇ!!!」

 

「余裕じゃん」

 

 

 都市は変わらない。

 

 ……確かに本質は変わらないだろう。それでも、都市の生態が少し変わろうとしている。

 

 

「……出航か」

 

 

 なら、昨日とは違う明日を夢見てもいいかもしれない。

 

 心の中でそんな思いを秘め、ラクスはダイオウエイ港船から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

856:大湖在住エイトニキ

驕ュ髮」縺励∪縺励◆縲(遭難しました。)

 

857:名無しのフィクサー

は?????




Tips:ストーリー構成
ノリと勢いのみで執筆したせいで8000字を超える話もあれば3000字ぐらいしか無い話もある。
こうならない為にも良い子の皆はちゃんとプロットを立てよう!


*大湖在住エイトニキ
フィクサー名:ラクス

ルナ事務所所属エイト組部長、エイト協会所属の2級フィクサー。間違いなくルナ事務所内では最高齢。


*代表
フィクサー名:アストラ

1級になりやがったルナ事務所の代表。ちょっと前の事故で金欠になってしまった。


*酒場にいた三人衆

酒を飲んでいた3人。それぞれ、『ボルボ』、『ドリム』、『ゾウリ』と名前があるが、作者ですら誰が誰なのか把握していないのでガチで覚えなくていい。

私はあの子達に手を差し出すべき、なのかな?

  • そうだ。彼ら彼女らを、貴方が導くべきだ。
  • うーん。貴方の後輩に任せるべきでは?
  • 貴方達はあの者達に関わるべきではない。
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