目の前に現れたのは、かつての演習、あるいは共同作戦で背中を預け合った面々だった。派閥が違えど同じ夢を見て、同じ飯を食い、同じ理想を胸に抱いた者たちが今敵として目の前に立ちはだかる。
聖女の名を冠するジャンヌ・ダルク、軽快なステップで戦場を駆けるエミール・ベルタン、そして冷静沈着な枢機卿の腹心であるベアルン。亡命派の主力たちが、傷つき、煙を吐きながらも、その中央に横たわる「象徴」を救うべく死地へと飛び込んできたのだ。
鉄血の追撃部隊は、遠方で残るロイヤルの残党や殿の戦艦タイプと交戦中であり、この海域に即座に戻れる戦力は限られている。盤面は、皮肉にも均衡を保ちつつあった。
「……これ以上の流血は、貴方達にとっても本意ではないはず。どうか、引かせて頂けませんか?」
通信機越しに響くベアルンの声は、理性的でありながらも、背水の陣にある者の悲痛な響きを帯びていた。その視線の先には、顎の骨を砕かれ、口から血を流して意識を失っているリシュリューの無残な姿がある。
彼女たちの目的はただ一つ、この満身創痍の枢機卿を回収し、撤退すること。その「かつての友人」たちの姿を前に、応急処置を終えて戦線に戻ったダンケルクは、絞り出すような吐息を漏らし、ル・マルスは絶望に顔を伏せた。
かつて同じ寄宿舎で眠り、同じ食卓を囲み、アイリスの輝かしい未来を無邪気に語り合った者たちが、今は波間に漂う血溜まりの中で銃口を向け合い、互いを「売国奴」や「傀儡政権」と呼び合う。その残酷な現実を、突きつけられた海風が嫌でも理解させてしまう。
「ふふ、これで数としては同数……。ですが、あちらは負傷者を抱えての逃走劇。……さぁ、どうしますか、指揮官様?」
隣で寄り添うように浮かぶローンが、試すような視線を指揮官へと投げかけた。彼女の瞳に宿る暗闇は、単なる好戦的な悦びではない。彼女は今、目の前の青年が、かつての甘い絆を完全に断ち切り、自分たち「鉄血」と同じ同胞になれるかどうかを、静かに検分していた。
選択肢など、最初から存在しない。鉄血と同盟を結び、レッドアクシズの一員として生き残る道を選んだその日から、退路は焼失している。かつて「アイリスの聖女」と仰がれた者たちであっても、今の指揮官にとっては、祖国を二分し、平和を愛する民を見捨てて他国へ逃げ出した罪人に過ぎない。理想を盾に現実を破壊した彼女たちの存在こそが、ヴィシアが背負わされた屈辱の根源なのだ。
指揮官の視線は、もはやベアルンたちの悲痛な覚悟を映してはいなかった。ただ、敵艦列の弱点と、リシュリューを再拘束するための最短距離だけを機械的に計算している。
「……全艦、戦闘開始。目標、リシュリューの再捕縛、および抵抗勢力の排除」
その声は、深海の底に沈んだ石のように冷たく、一切の情緒を拒絶していた。
対するベアルンも、眼鏡の奥の瞳に決死の光を宿し、艦載機を次々と発艦させる。
「リシュリュー様をお守りなさい!……エミールは枢機卿を!ジャンヌは私と共に時間を稼ぎます!この命に代えても、枢機卿猊下をロイヤルへ連れ戻す為に…!」
撤退戦という名の、最も凄惨な泥沼の幕開けだ。ベアルンが放つ航空爆撃の幕が、ジャン・バールの砲火を遮り、ジャンヌ・ダルクがローンの突撃を押し止める。
意識は朦朧とし、顎の骨を砕かれたリシュリューは、エミール・ベルタンの腕の中で、ただ荒く苦しい呼吸を繰り返している。その無残な姿を、マルスは正視できずにいた。
海面には、かつてアイリスが誇った高潔な騎士道の残骸が、次々と破片となって降り注ぐ。弾丸が友軍の装甲を抉るたびに、ル・マルスの悲鳴のような砲声が空を切り、ジャン・バールの怒号が激しい飛沫となって散った。
かつての同胞を殺し、かつての自分を殺す戦闘。硝煙と海水が混じり合う混沌の中で、ダンケルクだけは、真っ直ぐにリシュリューが運ばれていく姿を見つめていた。彼女の艤装からは、まだ修理しきれていない火花が散り、その手は意識を失わず、強く握りしめている。
彼女は、かつて共に誓った理想の果てに待っていたこの最悪の景色を網膜に焼き付けるように呟いた。
「……願うものは同じの筈なのに、どうして、こうなってしまうのでしょうね……」
その言葉は、爆音にかき消され、誰に届くこともなく虚空へと消えた。アイリスが二つに裂けた痛み。それは、救いようのない絶望を伴いながら、メルセルケビールの海を紅く染め続けていた。
もはや美しい碧さを失っていた。立ち昇る黒煙が天を覆い、海面には火薬の燃えカスと、かつて一つの旗の下にあった姉妹たちの「誇り」が、無残な鉄屑となって降り注いでいる。
「リシュリュー様はやらせないわよ~!」
その悲壮な決意を軽やかなステップに乗せ、真っ先に動いたのはエミール・ベルタンだった。彼女はアイリス随一の俊敏さを誇る軽巡洋艦。その狙いは、一撃で戦局を覆す圧倒的な火力を有する作戦の要である……。
「狙いは、オレか……!」
ジャン・バールが不規則な弾道の洗礼を受け、即座に砲身を旋回させる。戦艦の重厚な旋回を嘲笑うかのように、エミールは水面を滑り、雷撃と砲撃を織り交ぜた撹乱を仕掛けた。本来なら前衛艦隊が排除すべき機動。だが、今のヴィシア側に、その余裕はない。
「この程度でオレの装甲を抜けると思うなよ、エミール……!」
ジャン・バールは回避を捨てた。戦艦持ち前の重装甲で至近距離の爆発を強引に受け流し、ひたすらリシュリューを運ぶエミールたちの進路へ砲口を向け続ける。爆炎の中から突き進むその姿は、血塗られた執念そのものだった。
しかし、ジャン・バールという巨砲の固定こそが、亡命派の真の狙いであった。
「この隙にっ……!」
戦域を切り裂くように、レイピアを携えたジャンヌ・ダルクが躍り出る。彼女の瞳には、かつての慈愛ではなく、同志を救わんとする峻厳な使命感が宿っていた。彼女が狙いを定めたのは、前衛の中で最も脆い「楔」――。
「っ……! ごめんなさい、マルス!
ジャンヌの主砲が、非情な火を噴く。その冷たい金属の響きは、かつて彼女がマルスの頭を優しく撫でた、あの手の温もりを完全に否定するものであった。
「ジャンヌさん……!」
ル・マルスが悲鳴に近い声を上げる。駆逐艦である彼女にとって、軽巡洋艦……それも戦場の守護者たるジャンヌの猛攻を正面から受けるのは、死を意味する。何より、尊敬し、慕っていた「聖女」が、自分を殺すために引き金を引いているという事実が、マルスの幼い心を粉々に砕き始めていた。
回避運動をとる足取りは重く、視界は涙で歪む。かつては教えを請い、憧れた剣筋が、今は自分を深海へ引きずり落とすための凶器として迫りくる。
「どうして……どうして、みんなっ!」
マルスの放った砲撃は、迷いゆえに大きく軌道を外れ、虚しく海面を走る。対するジャンヌは、その迷いを一瞬で切り捨てたかのように、次弾を装填した。彼女の背後には、意識を失い、顎を砕かれたままのリシュリューがいる。その象徴を救うためならば、たとえ夢を語らいあった同胞を沈めてでも――。
そんな「最悪の再会」を、指揮艇のブリッジから見つめる指揮官の瞳は、一分、一秒と刻まれる残余時間だけを数えていた。
「……甘いな」
低く吐き出されたその言葉は、必死に戦うベアルンたちへ向けられたものか、あるいは未だに引き金に躊躇いを見せるマルスへ向けられたものか。
「ローン」
「好き勝手に暴れるのも……そこまでにしてもらいましょうかぁッ!」
指揮官はローンに通信を送れば、彼女は反応する。ただ名前を呼ばれただけだというのに全てを即座に把握するのは彼女が優秀である証拠なのだろう。
ベアルンの艦載機による執拗な爆撃に足止めを食らっていたローンであったが、その瞳には焦りなど微塵もなかった。むしろ、獲物が必死に抗うほどに、彼女の内側に潜む破壊衝動は静かに、しかし確実に純度を高めていく。
自身の能力によって強固な青いシールドを強引に全面展開し、降り注ぐ機銃掃射と小型爆弾の雨を正面から弾き飛ばす。衝撃波で自身の装甲が軋む音さえも、彼女にとっては心地よい旋律でしかない。強引に食い破ったローンは、そのまま一直線に獲物へと狙いを定めた。
その矛先は、幼いル・マルスを窮地に追い込んでいた聖女――ジャンヌ・ダルク。
「くっ、こちらに……!?」
「まずは貴女から……潰させてもらいましょうか!」
回避機動に移る暇さえ与えない。ローンの背後に蠢く異形なる生体艤装が、飢えた獣のように咆哮を上げ、四門の火砲を至近距離で固定した。
放たれるのは、飽和状態のゼロ距離射撃。ジャンヌは瞬時に悟った。まともに受ければ、艤装ごと肉体が霧散する。彼女は即座に、アイリスの守護者としての「ギフト」に手を伸ばした。
ジャンヌの周囲に神々しい光が包み込む。それは一定時間、あらゆる物理的・光学的干渉を無効化し、自身を「 絶対防御の盾へと昇華させる能力。しかし、代償としてその身を聖なる炎で焼き続ける自傷の呪い。ある意味ではリシュリューの盾になる事に最適な自己犠牲的な力だ。
激突するローンの砲撃とジャンヌの白き光、衝撃が海面を数十メートルにわたって陥没させ、巨大な環状の水柱を立ち上げた。
「避けきれ、きゃあっ!?」
光の膜を透過し、一発の徹甲弾がジャンヌの左肩を冷酷に撃ち抜いた。無敵のはずの障壁に生じた、致命的な淀みを見逃すローンではない。
「……あはっ、お上手ですねえ。ですが、飽和攻撃はあくまでダミー。本命は貴女の緊張が途切れる、その瞬間の一打ですよ?」
ローンは崩れ落ちるジャンヌを見下ろし、冷たく告げた。その言葉の裏には、今も戦場を冷徹に透視する「怪物」の存在が嫌でも立ち塞がっている。
「ジャンヌさん、貴女の能力は事前に指揮官さんから全て聞いています。あの人は言っていましたよ? 『亡命派の中で最も厄介なのは、最も硬いジャンヌ・ダルクだ。だからこそ、敵対した場合は最優先で潰せ』……とね」
「……あ、がっ……。これが、鉄血の……そして、貴方の選んだ……『力』……ですか……」
ジャンヌはボロボロになった艤装を支えに、膝をつきながらも執念で顔を上げた。口端からは鮮血が滴り、スキルの反動による高熱が彼女の肌を赤く焼いている。中破どころではない。
その内部機構は、ローンの暴力的な余波と自傷ダメージによって限界を迎えていた。だが、その壮絶な犠牲は無駄ではなかった。
「ジャンヌ! 今のうちに……!」
乱戦の合間を縫って、エミール・ベルタンが風のような速さでジャンヌの傍らに滑り込む。その肩には、顎を砕かれ、死人のように蒼白な顔をしたリシュリューが支えられていた。
ベアルンの残存艦載機が、追撃を阻むように最後の手厚い煙幕を張り巡らせる。
「逃がさないと言ったはずだ……!」
ジャン・バールの怒号が響くが、彼女達は一切振り返らない。傷ついた同胞を抱え、彼女たちは血に染まったメルセルケビールの中心部から、外洋へと向けて一気に離脱を開始する。
「鬼ごっこの始まりですねえ、指揮官さん?」
ローンが黒煙の向こう側を凝視しながら、歪んだ悦びに唇を震わせる。逃げる「象徴」と、それを追う「怪物達」。戦場は今、凄惨なる追撃戦という名の、第二の地獄へとその姿を変えようとしていた。
亡命派の撤退速度は、負傷者を抱えているとは思えぬほどに速かった。
元々リシュリューの救出のみを唯一無二の目的としていた彼女たちは、余計な装備を削ぎ落とし、ただ速度のみを重視している。
重厚な装甲と大火力を誇るジャン・バールやダンケルク、ローンにとって、その軽快な逃走劇は、指の間からこぼれ落ちる砂を掴もうとするような、形容しがたい焦燥感をもたらしていた。
しかし、あと少し、あと少しで射程範囲。そう確信し、メルセルケビールの外洋の水平線がわずかに歪み始めたその時だ。
「……ッ、全員散開! 最大戦速でその座標から離れろ!!」
指揮艇のブリッジで、指揮官が喉を裂くような怒号を上げた。
それはレーダーの反応でも、計算による予測でもない。幾多の死線を潜り抜け、憎悪という研磨剤で研ぎ澄まされた彼の本能。復讐鬼としての悪寒が、脳髄に警笛を鳴らしたのだ。
コンマ数秒、ジャン・バールたちが反射的に左右へと舵を切った直後。天から巨大な槍が振り下ろされたかのような、凄まじい衝撃が海面を貫いた。
爆発ではない。あまりにも凄まじい運動エネルギーが、海水を瞬時に蒸発させ、海底の岩盤を抉り取る、暴力的なまでの砲撃であった。巻き上がった水柱は雲を突き抜け、その余波だけでマルスが転覆しそうになるほどに海が狂い狂い荒れる。
「……ふん、まさかこのような展開で私の出番が回る事になるとはな……!」
立ち込める水煙の向こう側から、空間を震わせるような、威厳に満ちた声が響き渡った。間髪入れず、回避したばかりのジャン・バールたちの眼前へと、次射が突き刺さる。それは逃走を許さない覚悟の証であり、たった一隻で戦場を掌握しようとする特別な力だ。
飛沫が晴れ、陽光の中にその輪郭が浮かび上がる。そこに立っていたのは、独特の気品と、それを裏打ちする圧倒的な「重圧」を纏った一人の戦艦であった。
黒と金、そして紅を基調とした苛烈な軍装。その背後に展開された主砲群は、まるで帝王の冠のようにその主を飾り立てている。彼女は優雅に、しかし確実な殺意を込めて砲身をこちらへ固定しながら、移動を止めた。
「……さあ、この幻想の帝王に対して……抗うか、それとも下がるか……選ぶがいい!」
その言葉は、もはや一戦艦のそれではない。
実在せぬはずの設計図から呼び覚まされた、ロイヤルネイビーの「執念」そのものが形を成したような威圧感。リシュリューを抱えて逃げるエミールたちの背後で、彼女は不敵な笑みを浮かべ、その名を戦場に刻み込んだ。
「ロイヤルネイビー所属。特別計画艦!戦艦モナーク!今、メルセルケビールに参戦する! 私はここにいるぞ!!」
その場にいた全員が、瞬時に悟った。
目の前の敵は、これまで相手にしてきたフッドやリシュリューとは一線を画す存在だと。鉄血の追撃艦隊を単独で強襲し、その包囲網を力ずくで食い破ってここに現れたという事実は、彼女が単なる増援ではなく、盤面を一人で塗り替えうる決戦兵器だという事実を理解するしかなかった。
ヴィシアと鉄血の混成部隊には、もはや余裕は残されていない。ローンは負傷しており、弾薬の残数は底を突きかけ、何よりロイヤルの本隊が接近しているという時間的制約が、彼女たちの精神を容赦なく削り取っていく。
「……ッ、化け物が」
ジャン・バールが奥歯を噛み締め、忌々しげにモナークを睨みつけた。
ここでモナークと正面からやり合えば、リシュリューの捕縛どころか、自分たちの中からさらなる犠牲者が出るのは火を見るより明らかだ。戦術的な正解はここで戦果を確定させ、撤退すること。
リシュリューの身柄を逃したとしても、彼女に再起不能の深手を負わせたという事実だけで、戦略的な価値は十分にあるはずだった。しかし、ローンはどこか期待に満ちた声を指揮艇へと飛ばす。
「指揮官さん。どうされますか?私のシールドもそろそろ限界。これ以上の無理は、誰かが命を散らすことになりかねませんよ? ……ここは一度、引くのが賢明というものでしょう?」
ローンの言葉は、彼女自身の裏の渇望とは裏腹に、どこまでも正しい。だが、通信機の向こう側から返ってきたのは、大方の予想を超えた。そしてローンが渇望していた言葉であった。
「……続行だ」
その瞬間、指揮艇のブリッジを支配したのは、息の詰まるような沈黙だった。コンソールの周りで忙しなく動いていたマンジュウたちが、一斉に動きを止める。「ピヨ……?」と、信じられないものを見るような、あるいは主人の正気を疑うような鳴き声が小さく漏れた。
モニター越しに見えるマルスやダンケルクの表情は、一様に絶句に染まっている。当然だ。誰もが、今の状況での「撤退」を確信していた。傷つき、弾薬も底を突き、目の前にはロイヤルの強者が立ち塞がっている。これ以上の追撃は、犠牲が出かねないのだ。
だが、指揮官の視線は微塵も揺らがなかった。彼はもう、後には引けないところまで自分を追い込んでいたのだ。
「今、リシュリューを捕縛できなければ……ロイヤルに亡命派による傀儡政権が樹立される。そうなれば、ヴィシアの、そしてアイリスの正統性は永遠に揺らぎ続ける羽目になる…!」
震える拳を隠すように、彼は深く椅子に身を沈める。モニターの光に照らされたその横顔は、もはや青年のそれではなく、冷酷な心を殺した鬼のそれであった。
「あいつ(リシュリュー)だけは……どれだけの犠牲を払おうが、たとえこの艦隊が全滅しようが、死んでも奪還する。それがアイリスを救う唯一の道だ」
――心を冷やせ。思いを殺せ。
ここは、戦場なんだから。
自分のように、セイレーンによって故郷を焼き尽くされ、帰る場所を失う人間をこれ以上増やさないために、彼は厳しい言葉を投げかけ、非情な決断を下し続ける。
誰よりも、セイレーンを憎み。牙を持たぬ善良な人々を守りたいと願う心は今、彼に祖国の為に犠牲をも厭わぬ博打を選ばせる結果となったのだ。
「……ええ、では、続けましょうか。指揮官さんがそう仰るのなら」
不気味なほど穏やかな声で、ローンが目を伏せた。彼女は傷ついた肩の痛みさえも、指揮官の「意志」を遂行するためのスパイスとして飲み込む。ゆっくりと、しかし確実な殺意を込めて、彼女は再びロイヤルの戦艦、モナークへと向き直った。
ジャン・バールやマルス達は、何も言えず、そして何も出来なかった。
ジャン・バールが震える手で主砲のトリガーに指をかける。しかし、その指先はわずかに宙を彷徨い、行き場のない葛藤がその手を空しく切らせた。姉を撃ち、友を撃ち、今またその果てに全滅の危機へと突き進む。その重圧が、ヴィシアの誇り高き陣営代表の肩に重くのしかかる。
結局はこうなるのか。
鉄血と組んだ以上。ロイヤルと敵対した以上覚悟はしていた。しかし、ジャン・バールは悔やむ。誰かを守ろうとしたあの日の青年が誰かを殺す為に犠牲者を払ってでも成し遂げようとするという矛盾の孕んだ行動をしなければならない現実を。
何よりも密かに恋慕する男をここまで追い詰めた責任は自分にもあると言う罪悪感が、彼女の胸を締め付けた。
「……ふん、無謀か……それとも何らかの考えあってのことか。だがいいだろう、その執念、受けて立とうではないか!」
立ち塞がるモナークが、不敵な笑みを浮かべて主砲を咆哮させた。彼女の叫びが、メルセルケビールの海域に雷鳴のごとく轟き渡る。
「かかってくるがいい! この私が、お前達の絶望を現実として刻んでやろう!」
静寂を切り裂き、戦火が再び燃え上がる。それは、もはや国家の存亡をかけた戦いではなく、一つの執念と、一つの誇りが激突する、凄惨な破壊の宴の始まりであった。
・モナーク
彼女が登場する確率はロイヤル出身の艦隊の中からの完全ランダムによる結果。場合によっては駆逐艦一人だけが援軍として登場してもおかしくない超がつくほどの低確率をぶち抜いて登場しました。
dice1d21=21 (21)
1~3.ジャン君
4~6.ローン
7~8.マルス
9~11.ダンケルク
12~14.ジャンヌ
15~17.ベルタン
18~20.ベアルン
21.*おおっと*←確定
*おおっと*
dice1d10=3 (3)
1~3.戦闘していた鉄血とロイヤルの方から誰か抜け出してきた…!?←確定
4~6.この反応…ヴィシアの方から誰か来た?
7~9.…なんだ、ロイヤルでも…鉄血でもない?
10.セイレーン…!?
dice1d2=2 (2)
1.鉄血
2.ロイヤル←確定
そのkaksenが来た理由
dice1d10=8 (8)
1~5.鉄血撃退済み
6~9.押し込んだので枢機卿の救援←
10.*おおっと*
ここまでのランダムで全て低確率の選択肢ばかりを踏み抜いた上で、追加判定の3%という低確率で登場したのがモナークであり。まさに天文学的な確率で引き起こした奇跡と言えるでしょう。
・指揮官
撤退するかどうかを悩みつつ犠牲を払ってでもモナークを撃破し、今も逃亡するリシュリューの捕縛を狙う指揮官。彼の言動や行動や賛否が分かれますがヴィシア勢は大体彼が民を守る為に必死である事は理解してるが為に、犠牲が出かねない博打を選択した時点で驚きを通り越してお通夜な空気だったりします。それでも、ここで枢機卿を捕縛しなければ確実に転がり落ちる道しかなく。その先はジャン・バールメインの公式イベントで描かれた集団自沈。もう指揮官もやるしかなく、心を殺してでも前に進むしかありませんでした。
次回はそんなモナーク戦。他の作品も描いてますがこちらも忘れずに投稿しますのでお待ちくださいませ。
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指揮官のAIイラストの感想はどうでしょうか?
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イメージ通り
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なんかイメージと違う
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その他(こっちの方がいいよ!と提供など)