ヴィシア戦記 鬼神と呼ばれた男   作:kiakia

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第一話 マルスと第四の矢

 

 ヴィシア聖座所属の少女、ル・マルスにとってここ最近の一ヶ月は間違いなく人生で最も濃く、苦く、凝縮した日々であったと言えるだろう。

 

 

 リシュリュー派による亡命騒ぎが国内に与えた影響は凄まじいものではあるが、彼女にとって尊敬するリシュリュー枢機卿が国を裏切った事実に加え、親友であるフォルバンがロイヤルに亡命したという知らせはマルスの心に深い傷を与える事になった。

 

 

 だが、それでも尚マルスは折れない。確かに親友とは袂を分かつ事になった。だが、その選択を責めるつもりはない。自分だって考え抜いた結果今の選択肢を選ぶ他なかったのだから。

 

 

「大丈夫、きっと大丈夫です」

 

 

 

 ぽつりと、零れた声は彼女の覚悟を示す。彼女の心は迷いと覚悟の狭間で揺れ動いている。そして、この揺れ動きがいつまでも続く事を彼女は理解していた。だからこそ彼女は自分の心に言い聞かせる。

 

 

 全てジャン・バール、そして彼女の右腕として頭角を表しつつある若き指揮官を信じる事が最良の判断であると。ある者は思考停止と蔑むだろう。

 

 

 ある者は洗脳だと嘲笑うかもしれない。それでも彼女は自分を奮い立たせる為にそう信じ続けるのだ。それが幼いなりに彼女がたどり着いた、多くの人々を守る為の結論なのだから。

 

 

 

 

 

 

 運命の日。後世にダンケルク撤退阻止戦と名付けられた戦いを終えて数週間が経ち、国内のほとぼりも徐々に冷める最中にマルスは唐突にジャン・バールの執務室に招かれる……いや、呼び出しを受ける羽目になった。

 

 

 普段こそ快活な少女である彼女にとっては寝耳に水の話であり、無論混乱したのは言うまでもない。『スパイだと思われてる!?確かにフォルバンとは仲良かったけど…?』『それとも最近訓練で失敗したから怒られるのかな…?』などと思考回路がショート寸前に追いやられる中でもなんとか約束の時間が迫ってきていた。

 

 ちなみに彼女にとっての訓練の失敗とは、他のタルテュやル・マランといった殆どの同僚達が根を上げた新たな砲撃回避訓練で撃墜されたというモノであるのだが……後にその訓練の様子を見た軽巡ラ・ガリソニエールは『これさぁ…初見でクリアできるのってグレイゴーストくらいじゃない?』ドン引きされる程の難易度であったのはマルスの名誉の為に追記して置こう。

 

 

 約束の時間に遅れる訳にもいかず、恐る恐るとノックをしたマルスは扉を開け中に入る。

 

 

 

 

「し、失礼します!」

 

 

 

 

 殺気。

 

 

 

 一瞬、背中に蛇が這ったかのような寒気を覚えつつも、視線を上げると部屋の中には二人の人物が彼女を待っていた。片方はヴィシア陣営の顔とも言えるジャン・バールだ。マルスの憧れの人物でもある彼女は机に肘をつき右手を組みながらも彼女を値踏みするように見つめていた。

 

 

 

 もう一人は初めて見る顔である。ヴィシア製の軍服に身を包んだ青年。年の頃はジャン・バールと20代前半だろうか?アッシュブロンドの髪に切れ長な鋭い青い瞳。整った鼻筋と薄い唇はまるで彫像のようで整っているが彼女の身体を貫いた殺気の持ち主である指揮官だ。

 

 

 

 ダンケルクの戦いにてリシュリュー派に大打撃を与えた中心人物であると言え、まだ若さが残る彼を副官に抜擢するという人事には少なからず混乱を招く事になる。

 

 

 とはいえ現在ヴィシアにはル・テリブルの工作もあり、指揮官適正を持つ人物は最早彼以外は独房送りになっており、故に今更人事云々の話をする余裕すらもなく今に至る。

 

 

「あぁ、座ってくれ」

 

 

 

 椅子に腰掛けたままのジャン・バールが視線だけで促しマルスは慌てて席に座る。指揮官も腰掛け、机越しに対峙した三人はしばし沈黙の時間を共有する。その間にもマルスの心臓は早鐘を打ち、背中には汗が伝う。

 

 

「お前の戦果は聞いている」

 

 

 ジャン・バールの低い声が沈黙を破る。その言葉には威厳があり、マルスは思わず息を飲む。彼女はこれまで何度も模擬戦や演習で成果を上げてきたが、正式な戦闘での功績を評価されたのはこれが初めてだった。

 

 

 戦場で見せた勇気と機転、そして何よりも冷静さを失わずに最後まで諦めずに戦い続けた彼女の姿勢はジャン・バールの目に留まったのだ。

 

 

 

「第三目標確保、ご苦労だった」

 

 

 

 ジャン・バールの声には冷たさと厳しさが混じっていたが、その奥には微かな温かさがあった。彼女は内心嬉しく思ったものの、同時に緊張感も増していく。

 

 

「偶然とはいえ素早くあの馬……リシュリュー派の閣僚集団を捕縛した以上、亡命政府はまともに機能せずアズールレーン内での発言力は大幅に低下したはずだ。その功績で休暇の一つでも出してやるべきだろうが……生憎とあれもコイツもそこまで優しくはない」

 

 

 ジャン・バールの言葉は褒め言葉だが、同時に警告でもあった。彼女の功績は認められているものの、それで油断したり慢心すれば次の瞬間には足を掬われるぞ、と彼女の顔は語っている。

 

 

「そこでだ。お前の実力を認めた上で新しい任務を与えたいと考えている。この任務をお前がどう受け止めるかによってお前の今後の進路が決まるだろう」

 

 

 その言葉にマルスは一瞬困惑するが、すぐに気持ちを立て直す。新たな任務を受け入れる事こそが自分に与えられた使命であり、それを果たす事が自分の成長に繋がるのだから。覚悟を決めた彼女はジャン・バールの目を見て力強く答えた。

 

 

「はい!必ず!ご期待に応えます!」

 

 

 

 マルスの言葉にジャン・バールは満足げに微笑み返す。だがそんなジャン・バールと違い、指揮官はじっと観察するように彼女を見つめていた。その視線からは冷たさと共に鋭い刃のような感覚が感じ取れ、流石のマルスも笑みを一瞬消してしまったのだった。

 

 

 

「まぁそういうことだ」

 

 

 

 そう呟いたジャン・バールは机に置いてあった書類をまとめるとマルスの方へと渡す。そこには新しい辞令と同時に人事移籍の命令書が入っていた。

 

 

 

「お前には本日付けで俺の指揮下に入って貰う。いずれ部隊は拡張される可能性はあるが、今の所はジャン・バールとル・マルス。お前だけの直属の部隊だ」

 

 

「………はい?」

 

 

 

 彼から放たれた一言で彼女は完全にフリーズしてしまった。頭が真っ白になり何も考えられなくなった。ただ目の前で起こっている現実を受け入れることができず呆然とするばかりだ。

 

 

 

 ジャン・バールと。あの陣営代表であり、事実上現在の軍どころか国家のトップに匹敵するといえる、あのジャン・バールさんと私が同じ部隊?エイプリルフールはもうとっくの昔に過ぎましたよ……?

 

 

 などと混乱している彼女をフォローするかのように短く、ジャンバールはこう言い放った。

 

 

 

 

「安心しろ。お前を部隊に配属するように推薦したのはコイツだが、コイツはセイレーンへの凄まじい憎悪の持ち主だ」

 

 

「ジャン」

 

 

「黙れ。今更隠す必要あるのか?ぶっつけ本番の戦場でお前が殺意や憎悪をセイレーンにぶつけ、マルスが萎縮して轟沈すればどうする?責任を取れるのか?」

 

「……好きにしろ」

 

 

 

 不機嫌そうに吐き捨てた指揮官に対してジャン・バールは肩をすくめると改めてマルスの方を見据える。

 

 

 

「そんな男が推薦する以上、コイツが選ぶのは優秀な駒に他ならない。以前の訓練はその試験だ。あの訓練はお前の実力を試す為にコイツが計画した」

 

 

 えっ?と驚くマルスに指揮官は表情を変えずに頷いて見せる。結果だけを見ればマルス一人の為に巻き込まれた他のkansen達はとばっちりを受けた訳だが、その後、この男が主導した訓練によって『本来の歴史』と比べヴィシア海軍の練度は飛躍的に向上したのだがそれはまた別の話である。

 

 

「だから自信を持て。お前は実力で栄誉を勝ち取った。この命令を受けるか受けないかはお前の自由だ。だがもし受けるならこれから先どんな困難が待ち構えていようとも立ち向かう覚悟が必要になる」

 

 そう言ってジャン・バールはニヤリと笑う。その瞳は獲物を狙う猛禽類の眼差しそっくりでありマルスの全身に鳥肌が立つのを感じた。しかし、それと同時に高揚感と使命感に似た感情も湧き上がってくるのも感じていた。

 

 停滞した現状を打破し、皆を引っ張っていく希望となる。それが今のヴィシア陣営にとってどれほど大きな意味を持つことなのか。マルスも既に理解していた。

 

 

 

 ならば、答えなど最初から決まり切っているではないか!

 

 

 

「分かりました!謹んでお受けいたします!」

 

 

「よし、よく言った」

 

 

 

 満足気に頷いたジャン・バールは立ち上がり握手を求めマルスもそれに応じる。こうして新設された指揮官率いる特務艦隊は正式に編成され動き出したのであった。

 

 

 

 それが『本来の歴史』から既に逸れてしまったこの『枝』で、後に歴史的な意味合いを持つ大きな選択肢となったのである。

 

 

 

 

 

 

 ヴィシア聖座における現状最大の問題点は防衛力の不足である。リシュリュー派による亡命騒ぎは広大な植民地を世界中に持つアイリス教国にとって大きな負担となったのはいうまでもない。

 

 

 

 なんせ本来ならば表舞台に出ることの無いクレマンソー率いる審判廷の面々が再配置される羽目になり、現在急ピッチで無人艦を量産しているのが現状ではあるものの……レッドアクシズとアズールレーンの衝突が現実味を帯びる中、勢力感での戦闘が起きてしまえばその戦力を減らすことは避けられない。

 

 

 

 だが援助には対価が必要なモノ。ジャン・バールは鉄血への対価よる植民地の喪失や最悪支援の対価に本土割譲すらもあり得ると警戒を露わにしており、結果としてそれがレッドアクシズ陣営がアズールレーン陣営と比べ足並みが揃わないという結果につながっているのだ。

 

 

 まどろこしいことを抜きにすれば、ぶっちゃけサディアもヴィシアもレッドアクシズではあるが鉄血のことを信じきれていないのである。鉄血陣営は各国にラブコールを送りつつも軍事的な行動は陣営立ち上げから3年近くかけ一度も行っておらず国内の防衛のみを追及している。

 

 

 

 つまり、鉄血は口先だけでヴィシアやサディアを誘っておいて有事の際はこちらの要請を無視するどころか保護占領すら行いかねない連中であると認識しているのである。

 

 

 

 鉄血の陣営代表ビスマルク本人が知ればため息を吐きつつも、口先だけの言い訳しか述べる事が出来ないと諦観したように受け止めざるを得ない状況でもある。

 

 

 

 だからこそ、ヴィシアは現状。ありとあらゆる国土防衛策を模索しているのだ。それが人道の道に反するモノで得ると理解しつつも歩み続ける他ないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの…ここは…?」

 

 

 

 面談を終えたマルスはジャン・バールと指揮官に連れられとある地下施設を訪れていた。

 

 

 

 周囲を見渡せば、暗く重い雰囲気が漂いそこには人の気配がなくただ静寂が支配しているだけであった。天井は低く湿っぽく床や壁面には苔が生えており不気味極まりない光景であった。

 

 

 

 唯一の光源である松明の炎だけが怪しく揺れているだけだ。その炎が揺れる度に影が踊り蠢き不安を煽ってくる。そんな空間の中で一際目立つ錆びた扉の前で、指揮官は指を鳴らした。

 

 

「開け」

 

 

 

 それだけだ。ただそれだけで目の前にあった重厚な鉄扉は音を立てながらゆっくりと開かれていく。ギィイと金属同士の擦れる甲高い音が響き渡り耳障りな音楽となり三人の鼓膜を刺激する。やがて完全に開かれた先に現れたのは広大な空間であった。

 

 

「これは一体?」

 

 

「研究施設だ。ル・マルス」

 

 

「あ、マルスで構いません!」

 

 

 

 指揮官の説明の前にマルスが食い気味に訂正を入れる。失礼じゃないか?と少し不安になったが、周りからマルスと呼ばれ慣れている事や指揮官が明らかにプライベートではジャン・バールの事を「ジャン」と呼んでおり、少しだけ羨ましくなってしまったのは彼女だけの秘密だ。

 

 

「そうか。マルス。お前は特別計画艦については知ってるか?」

 

 

 意外な事に舌打ちの一つもなくあっさり受け入れた指揮官に少々戸惑いを覚えたものの、そんな彼の質問にマルスは不安げに頷いてみせる。

 

 

「えっと、普通のkansenと違って……遺伝子状態からセイレーンと戦う為に細胞一つ単位で改造した、すごーく強い人達で…ウチだとサン・ルイさんがそうなんでしたっけ?」

 

 

「正解だ。まぁそのサン・ルイはロイヤルに亡命したらしいがな」

 

 

 不満そうに一瞬フンッと鼻を鳴らしながら指揮官達は扉を抜けマルスもその後ろについて行く。時折見える装置や管などはどうやら冷却機構に関係するモノだろうか?松明は最早必要なく。電灯が灯された廊下を抜ければそこは開けた空間となっていた。

 

 

「これは!?」

 

 

 

 その部屋に入った途端目に飛び込んできたのは巨大なカプセルだった。まるでSF映画に出てくるような見た目をしており液体が満たされており中に人型の影が確認できた。それはまだ未完成なのか頭部と胴体しか存在しておらず四肢は付いていないようであったが、それがなんであるかは明白だった。

 

 

 

「この方が、特別計画艦……?」

 

 

 

 

 マルスは驚きの声を上げると同時に恐怖にも似た感情が芽生えた。人は股から生まれ育ち、kansenはキューブを元に顕現する。だがこのグロテスクな物体がやがては自分達と同じkansenへと変貌すると考えると得体の知れない薄気味悪さを感じてしまう。

 

 

 

 彼女とて敬虔な信徒の一人だ。休日に仲間達と教会で平和や亡命したフォルバン達の無事を祈る事も少なくない。だからこそ生命の冒涜に見えてしまうこの技術には忌避感を抱いてしまうのも仕方がない事だろう。

 

 

 

「マルス」

 

「ひゃいっ!?」

 

 

 

 そんな彼女の内心など知る由もなく指揮官は淡々とした口調で話しかける。その声色に驚いてしまい変な返事をしてしまったことに恥ずかしさを覚え赤面してしまうが、そんなマルスを無視して彼は話を続ける。

 

 

 

「お前には、建造中の特別計画艦のデータ収集役として付き合って貰う」

 

 

 指揮官の言葉を聞いた途端、マルスの頭の中は思わず疑問符で埋め尽くされていた。それはそうだろう。何故自分「だけ」に命じるのか。ヴィシア海軍には優秀なKansanも多く、彼女達に協力を頼んで大々的にデータを収集すればいい。

 

 

 

 事実、アイリス初となるサン・ルイはリシュリュー派やヴィシア聖座、審判廷とアイリスの各派閥に問わずデータの収集役として協力する事で産み出された。

 

 マルスは決して努力を怠った事はないが、決して突出したスキルや技量があるワケではない。それなのに何故自分なのか理解できず首を傾げるしかなかった。

 

 

 

「……コイツの名前を教えてやる」

 

 

 

 それまで無言でじっと培養カプセルを見つめていたジャン・バールは、様々な感情が入り交じった複雑な表情で指揮官を見る。そして大きく息を吐いた後

 

 

 

「ガスコーニュ。リシュリュー級戦艦四番艦ガスコーニュ。それがこの子の艦名だ。……オレやクレマンソー、そしてリシュリューの……姉妹艦だ」

 

 

 

 その言葉の意味をマルスが理解するのは数秒のタイムラグが生じた。

 

 

 アイリスの枢機卿であり、宗教国家アイリス教国の事実上トップと言える陣営代表リシュリュー。

 

 

 親レッドアクシズ派であり宗教色の強い通常部隊と比べ、より実戦的な対セイレーン戦に特化した部隊を抱えた護教騎士集団を母体とした勢力ヴィシア聖座。その、陣営代表であるジャン・バール。

 

 

 アイリスの信仰と諜報を司る暗部中立組織、審判廷代表であるクレマンソー。

 

 

 

 何れもアイリス教国における重鎮と呼べる姉妹艦であり、リシュリュー級はこれ以上顕現されてないのが公式発表だ。だがまさか……本来存在しないはずの四番艦を特別計画艦として創り上げるなど誰が想像しようか?

 

 

 

 

 ようやくマルスは理解した。自分はとんでもない密命を任されてしまった事を。そして、本来存在しないはずの目の前の培養された少女がどれ程までに政治的な影響力を持つ存在であるのかと言う事を。

 

 

 

「ガスコーニュの建造はリシュリューにも知られていない独自の研究で……俺がジャンとクレマンソーに頼み込んだものだ。初のアイリスの特別計画艦、サン・ルイが産まれる更に前。国土防衛や『万が一』に備え、政治的にも軍事的にも切り札として創り出した秘匿兵器」

 

 

「……っ!!」

 

 

 

「それ故にガスコーニュの存在は公には出来ず……彼女は存在さえも秘匿しなくてはならない」

 

 

 

 特別計画艦。

 

 

 文字通りセイレーンとの戦いの為に特別な計画に基づいて作られた存在。だが、指揮官の言う内容はマルスが聞いていたモノと違う。リシュリュー級という名はそれだけ宗教国家であるアイリスにおいて重要な意味を持つのものとなってしまった。

 

 四番艦ガスコーニュ。彼女に与えられた役目は秘匿兵器であると同時に、もう一つの意味合いをもつ。

 

 

 それは……この国が、蹂躙された時。セイレーン、アズールレーン、レッドアクシズ。それらの勢力により万が一、リシュリュー達がその命が脅かされる事があれば……全ての責を負い祖国を守り、導く事を期待され、創り出された『導き手』と言える存在。

 

 

 だからこそ、ガスコーニュの存在は秘匿し続けねばならない。

 

 

 リシュリュー級が全て命の徒花を咲かせ……絶望の淵にあるアイリスの人々に救済をもたらす最後の天使となる為に。全ての勢力に秘匿をし続け、最後の矢が折れた際の第四の矢となりうる存在こそがこのガスコーニュなのだ。その矢を鋭く、尖らせ続ける為には秘匿こそが最上。

 

 

 故にガスコーニュの誕生に必要な人材を絞る必要あり……その数少ない人材として選ばれたのが自分であるとこの瞬間マルスは理解した。

 

 

「ジャン・バールにクレマンソー。ダンケルク、アルジェリー、ラ・ガリソニエール……以上の面々は何があろうが祖国と国民を見捨てる事はないと俺が判断し、データ収集の協力を要請したKansan達だ」

 

 

 指揮官は喉から搾り出すようにポツポツと話し続ける。その目の奥にはセイレーンへの怒りが滲んでいるのか蒼白い焔が燃え上がっており、今にも溢れ出さんばかりであった。

 

 

「主軸となる戦艦3隻に重巡、軽巡、後は最後のピースとして駆逐のデータが必要となった。そんな時に現れたのがお前だ。戦果を上げ、試験に合格し、神ではなく牙を持たない民草を優先するであろうお前ならば……託しても良いと判断した」

 

 

 

 憎悪の炎を宿した瞳の奥、恐らく本人すら気づかないであろう感情を孕んだ熱意が垣間見えた。それはこの祖国ではなく、祖国に住まう民草を守ろうとする普遍の決意。

 

 

 護教騎士の教義である牙を持たぬ人々の為に、その身を捧ぐ事を誓った者達と同じ信念を感じるのであった。

 

「わっ……私なんかがやれるのでしょうか?」

 

 

 

 不安の声を上げるマルスに対しジャン・バールは笑みを浮かべて答える。

 

 

「無茶や無謀。他人に出来ない事を求める奴は馬鹿か愚者だ。責任は全てオレが取る。ならお前は胸を張り、己の仕事を遂行すればいい。いいな?」

 

 

 そう言って肩に置かれた手は力強く暖かく。どこか懐かしい思い出を感じさせるようで……マルスはそっと微笑み返したのだった。

 

 






Qジャン・バールが右腕認定するくらいの実力なのになんで知名度ないの?

A上記のメンバーと共にガスコーニュ製造の為のデータ集めという極秘任務に従事していたので。ゲーム的には完成度180%くらいで後はマルスが戦闘データを集めれば完成する。

Q指揮官若すぎない?なんでそんな奴が右腕になるの許されてるの?

Aリシュリュー派(正史における自由アイリス)が有用な人物を殆どピックアップして亡命させようとしたので。ゲーム内でも明らかにヴィシアは人員不足に喘いでおりその理由の一つが今作ではダンケルク港よりリシュリューたちが亡命したのが理由という解釈に。人材不足なら実力があるのなら採用せざる得ないくらいには初期スタートが終わってます。

Qガスコーニュってそんなに凄いの?

Aアイリスでは国家の代表である教皇が司法、立法、行政を司る史実のフランスとは全然ちがう独自の宗教国家だと公式資料に描かれており、その教皇から実務を任された枢機卿の地位はkansenでありながら国家のトップに匹敵するもの。その上軍の代表としてリシュリュー、戦前はより実戦的な独自部隊であったヴィシアの代表ジャン・バール。国家の暗部を司るクレマンソーなど姉妹全員が国家の中枢に関わってる重鎮。

 もちろん国民からの知名度も高く。特別計画艦+血筋も相まって三人全滅した時は国家の導き手としてガスコーニュは嫌でも中枢に行かなければならない立場だったりします。間違っても色ボケした挙句他国にすんなり嫁入りするような立場ではありませんね。はい。


 次回は少しマルスと交流の後に鉄血からの使者がやってくるお話。ダンケルクの戦いという史実とは違う道を歩み始めたヴィシア聖座。そんな指揮官達にレッドアクシズの盟主たる鉄血はもちろん放っておくはずもなく……

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